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カーボンニュートラルへの取り組みから生まれるメリット

作成者: 三井化学|Apr 11, 2024 7:51:00 AM

カーボンニュートラルは世界的な社会課題である地球温暖化の抑制に寄与するため、その実現は、人々の生活と地球環境そのものの持続可能性を高めることができると考えられています。ただ、カーボンニュートラルは局所的ではなく地球規模で取り組む必要があります。産官学における取り組み、新技術の開発だけではなく、私たち一人ひとりの生活における活動の積み上げも必要不可欠です。今回はこうしたカーボンニュートラルと、その実現を通じて生まれるメリットを解説していきます。

身近なカーボンニュートラル対策

身近な行動でもカーボンニュートラル対策は可能です。モノを大切に使う、食べ物を無駄にしない、といった小さな行動の積み重ねは、実はカーボンニュートラルに繋がっているのです。食品ロスの発生により日本国内のサプライチェーンを通して直接的、間接的に発生した2015年の温室効果ガス排出量は二酸化炭素換算で1,560万トン強に達し、同年の日本の温室効果ガス総排出量の1.2%を占めているとの調査結果*1もあります。

そういった側面から見ても、私たちが食品ロスを最小限にとどめることで、削減できる二酸化炭素排出量は決して少なくありません。

お味噌のプラスチック容器、実は「環境にやさしい」

近年、使い捨てのプラスチック容器は環境に良くない、使い捨てのプラスチックの使用を廃止すべきだという意見を耳にすることがあります。日本政府も2022年4月、プラスチック資源循環促進法(プラスチック新法)を施行し、そのなかで使い捨てプラスチック製品の使用の合理化対策として、コンビニやスーパーで無料配布されるフォークやスプーンなどのカトラリー、宿泊施設のアメニティ(ヘアブラシや歯ブラシなど)の使い捨てプラスチック製品合計12品目について使用を減らすことを求めています。

詳しくは「プラスチック資源循環に向けた法律 #01「プラスチック新法」による新しい一歩」をご覧ください。

実際、いくつかの大手飲食チェーンで提供されるストローなどは紙製のものに変わり、ホテルのバスルームにあった様々なアメニティの数も減少しました。その一方で、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなど小売店の店頭では、食料品、衣料品、生活用品など、ほとんどの製品がプラスチック容器やフィルムで保護されて販売されています。

こうしたプラスチックの使用をやめない小売店は環境に配慮していないかというと、決してそうではありません。小売商品は安価で水分や汚れを防いでくれるプラスチック容器があるからこそ、品質の劣化や輸送中の破損などによる製品ロスを減らすことができています。

例えば、発酵食品である味噌は、空気に触れると黒ずんだり、カビが発生したりして、味が落ち、食品ロスに直結します。発酵が進むと炭酸ガスが発生し、膨張したり、水漏れを起こしたりします。プラスチックはこうした様々な不具合が起きるのを防止します。味噌のカップ本体は、外側は剛性を保ちかつ衝撃に強くするためのプラスチックが使われます。また本体内部には酸素を遮断し、保管する機能を持った別のプラスチックが用いられます。味噌の容器に「賞味期限6か月(常温)」と表記できるのは、プラスチック容器が味噌の品質や風味を守っているからです。

味噌容器にカーボンニュートラルに貢献するバイオマスプラスチックを採用する動きも見られています。また、紙は匂いがついたものなどはリサイクルできませんが、プラスチックは洗浄して分別回収すると再び原料としてリサイクルすることができるため、循環型資源として環境負荷低減に貢献します。

そういった意味では、紙や金属を含め、各種素材の特性をうまく適材適所で活用しながら、カーボンニュートラル社会につなげていくことが重要であり、プラスチックも環境価値向上に寄与する重要な素材のひとつだと言えます。

先述のストローの紙化についても、科学的に環境負荷(ライフサイクル全体でのGHG排出量)の側面で見ると、紙ストローは原料生産・製品生産において、プラスチック製のストローと比べ多くのCO₂が排出され、ライフサイクル全体でみると環境負荷の数値が大きくなっている調査結果もあります。真に「環境にとって良い方向」へと進むためには、私たちは科学的なデータに基づき、適材適所で「環境に良い選択」をすることが重要です。

詳しくは、「ストローのLCA比較でみたプラスチックとその代替」をご覧ください。

「置き配」がカーボンニュートラルに貢献する!?

また、別の身近な取り組みでは、最近定着してきた「置き配」も、宅配便の再配達の頻度を下げることができるため、再配達時のエネルギーの節約により、温室効果ガス削減に貢献できる取り組みです。2022年長野県諏訪市で行われた置き配バッグを活用した実証実験では、再配達率を84.6%削減することに成功し、二酸化炭素排出量も約1.8t削減(杉の木約204本が1年間に吸収するCO2量に相当*2)される効果が実証されました*3

関連記事「ストップ地球温暖化!二酸化炭素や温室効果ガスの排出状況」も合わせてご覧ください。

企業がカーボンニュートラルに取り組むメリット

カーボンニュートラルは 各業種の状況に応じた最適な取り組みを進めることで、様々なメリットをもたらします。日本政府もカーボンニュートラルを「経済成長への制約やコストとする時代は終わり、成長の機会と捉える時代に突入した」と「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略*4」のなかで述べています。企業も受動的ではなく、ESG経営のなかで、カーボンニュートラルを非財務指標に取り入れ、KPI(重要業績評価指標)として設定するなど、カーボンニュートラルを成長戦略の核に据えることが主流となりつつあります。

見逃せない「省エネ」「省資源」のメリット

資源小国である日本は1970年代のオイルショック以降「省エネ」に地道に取り組んできました。現在、自動車には様々なプラスチックが使われていますが、金属素材からの転換のきっかけは燃費向上、つまり「省エネ」です。以来、「省エネ」は製造業全体に広がり、様々な知恵と工夫が化石資源の節約と製造コストの削減という大きなメリットをもたらしてきました。「省エネ」はカーボンニュートラルへの重要な施策であり、企業収益にも大きく貢献します。

先んずれば制す、カーボンニュートラルのメリット

企業にとってカーボンニュートラルに取り組むメリットとしては、企業イメージの向上もそのひとつに挙げられます。また海外展開を行っているグローバル企業、東証プライム上場企業と取引関係のある企業は、温室効果ガスプロトコルなど適切な国際基準による温室効果ガス排出量算定結果の開示を義務づけることを金融庁が検討しており、こうした面でも先手を打って対応していくことが重要になります。

また、欧州で広がりつつあるカーボンプライシング*5は今後、日本でも導入されることが決定しています。現在、日本では地球温暖化対策税として二酸化炭素1トンあたり289円の税金がかけられていますが、2026年度にもカーボンプライシング全面導入が実現すれば、賦課額は2026~2050年平均でトン6,400円と現在の22倍強にアップすることが見込まれます*6

こうした様々な側面を先んじて織り込み、カーボンニュートラルへの取り組みを進めることで獲得するメリットは決して小さくありません。

カーボンニュートラルへの取り組みについては「カーボンニュートラルと企業の取り組み最前線」もご覧ください。

三井化学はバイオ&サーキュラーな世界を描き、カーボンニュートラルの実現に貢献していきます

現在、地球温暖化につながるGHG排出量の削減は全世界共通の大きな課題とされています。この課題への有効なアプローチの一つが、GHGの排出量を削減しカーボンニュートラルに貢献するバイオマス化の推進です。プラスチック関連では、2021年1月に環境省、経済産業省、農林水産省、文部科学省が合同で「バイオプラスチック導入ロードマップ」を策定し、バイオマスプラスチックの導入量を2030年には約200万トンにするという、高い目標が掲げられています。

また他方では、プラスチックごみの処理も課題の一つに挙げられています。この課題に対しては、廃プラスチックを〝資源〟としてリサイクルで再利用し、サーキュラーエコノミー社会を実現していくことが重要になります。最初の製品製造ではGHG削減効果の高いバイオマスプラスチックを採用し、使用後の廃プラスチックはリサイクルして資源を循環させる。そのようなバイオ&サーキュラーな世界にしていくことが、サステナブル(持続可能性)を超えたリジェネラティブ(再生的)な社会の実現につながると三井化学は考えています。

こうした取り組みを進める上で、三井化学が掲げたキーワードが「素材の素材まで考える」。つまり、原子の由来を見直していくことです。プラスチックの素(原料)であるナフサ(炭化水素)そのものを、従来の石油由来からバイオマスやリサイクル由来の炭化水素に変えていくことで、そこから造られるプラスチックをバイオ&サーキュラーにしていくアプローチです。


カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミー社会に向けた対応を検討されている企業の担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

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