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ストップ地球温暖化!二酸化炭素や温室効果ガスの排出状況

作成者: 三井化学|Jan 15, 2024 5:43:00 AM

気候変動の要因とされる温室効果ガス(GHG:Greenhouse GAS)。その代表である二酸化炭素の排出状況は、地球規模では実際どのようになっているのでしょうか。今回は世界全体のGHG排出状況とそのなかにあって日本の排出量や、世界での日本の位置づけなどについて解説していきます。

世界における二酸化炭素やGHGの排出状況の今

GHGとは、大気中の熱(赤外線)を吸収する性質を持つガスのことを指します。その代表的なものとして二酸化炭素、メタン、一酸化窒素、代替フロンなどがあります。2018年に日本で排出されたGHGの内訳をみると二酸化炭素が91.7%、次いでハイドルフルオロカーボン類が3.8%、メタンが2.4%、一酸化二窒素が1.6%、パーフルオロカーボン類が0.3%、六フッ化硫黄が0.2%となっています。

このようにGHGには様々な種類のガスがあり、それぞれ温室効果も異なります。例えばメタンは二酸化炭素の25倍の温室効果があり、一酸化二窒素(亜酸化窒素)やフロンガスはさらに高い温室効果を有しています。しかしながら温暖化を促進する影響度(寄与度)は「温室効果」と「濃度増加」の掛け算で決まるため、濃度増加率が高い二酸化炭素はGHGの中でも最大の温暖化寄与度を示しており、その削減が急務となっているのです。また、二酸化炭素以外のGHGの温暖化寄与度は二酸化炭素に換算した重量で示されます。




世界全体の二酸化炭素排出状況をみると(EDMC/エネルギー・経済統計要覧)、新型コロナウイルスのパンデミックがはじまった2020年の世界の二酸化炭素排出量は約314億トンでした。このうち中国が全体の32%強を占め、次いでアメリカ、インド、ロシアの順で、日本は第5位の3.2%で、排出量は中国の約10分の1です。
国別の二酸化炭素の排出量は「生産ベースCO2排出」と呼ばれる推計を用いて測定しています。生産ベースCO2排出とは、直接、計器などを使って空中のCO2を測定するのではなく、ガソリン・電気・ガスなどの使用量といった経済統計などで用いられる「活動量」に「排出係数」をかけ算して求められています。

伸び続ける世界の二酸化炭素排出量

国際エネルギー機関(IEA)によると、2022年の世界の二酸化炭素排出量は前年比0.9%増加し、368億トンと史上最高記録を更新しています。ただ、この伸び率は経済成長率の3.2%と比べると緩やかになっています。

2021年はアフターコロナにおける経済活動のリバウンドが生じたことなどを受け、二酸化炭素排出量も前年比6%増という高い伸びを示しましたが、それに比べると2022年の増加率は様変わりとも言える水準に落ち着いています。これはロシアのウクライナ侵攻にともなう天然ガス供給制約の下で、欧州を中心とする省エネルギーへの取り組みが一定の効果をもたらしたことを示しています。また太陽光発電や風力発電などのクリーンエネルギーの拡大効果も出ています。

2022年の二酸化炭素排出量を部門別でみると、産業部門からの二酸化炭素排出量は前年比1.7%減となりました。これは最大の二酸化炭素排出国である中国の産業部門の排出量減少が寄与しており、その要因としては同国の経済成長の鈍化や建設活動の減少に伴い、セメントと鉄鋼の生産量が減少したことが大きく影響しました。なお、部門別排出量の増加率が最も大きかったのは電力と熱発電で、この部門の二酸化炭素排出量は前年比1.8%増加しました。

日本における二酸化炭素排出状況

一方、日本の二酸化炭素排出の現状はどうなっているのでしょうか。2021年度の日本の二酸化炭素排出量は約10億6400万トンです。これを部門別に分けると、エネルギー転換部門(発電、石油精製、コークス類製造、都市ガスの自家消費など)が40.4%とトップで次いで産業部門25.3%、運輸部門16.7%と続きます。家庭から排出される二酸化炭素の割合は4.8%です。

CO2排出量については関連記事「CO2排出量を知る -Scope1・2・3- #01 GHGプロトコルとScopeの基礎知識」もご覧ください。

二酸化炭素排出削減への方途

二酸化炭素の排出量はエネルギーや資源の消費量と比例して増加するため、様々な消費を減らすことが最も直接的な排出削減につながります。循環型社会を目指すためのキーワードである3Rの1つはReduce(発生抑制)です。多くの企業が省エネルギーを二酸化炭素排出削減の施策として取り組みを強化しているのもその一例といえるでしょう。産業部門では鉄鋼業に次いで2番目に二酸化炭素排出量が多い化学工業においても、省エネルギーは継続的な課題として進められています。

ただ、消費を抑制することは二酸化炭素をはじめとするGHGの削減には有効な手段ですが、世界の人々の経済や社会生活を維持するために必要な消費を減らすことには限界があります。こうした中で、持続可能な社会、さらにはリジェネラティブな社会を実現するには、エネルギーや資源を消費する際に、より二酸化炭素排出の少ない方法に置き換えていく新しい技術や製品、さらには環境負荷低減につながる新しい考え方(アプローチ)の社会実装をさらに加速させる必要があります。

再生可能エネルギーへの転換はオールマイティではない

エネルギーや資源の消費を、より二酸化炭素排出の少ない方法に置き換えていく方策として再生可能エネルギーの拡大が大きなテーマになっています。石油や石炭を燃焼させて作っている電力エネルギーを、太陽光発電や風力発電など、エネルギー産出時に二酸化炭素を排出しない発電方式に切り替えていくことは、二酸化炭素排出量削減の鍵と考えられています。その一方で、近年、再生可能エネルギーへの転換が各国で進んだ結果、再生可能エネルギーによる発電方式には、様々なデメリットもあることが分かってきました。

太陽光発電のデメリット

物質に光が当たると、その物質から電子が飛び出します(光電効果)。この仕組みを利用して発電するのが太陽光発電です。太陽光発電ではソーラーパネル(半導体)を使って光エネルギーを電気に変えます。この技術の最大のメリットは発電時に二酸化炭素を発生しないという点です。
一方、発電量が日照に左右されることや、設置コストが高いことに加え、自然破壊を起こすケース(メガソーラー工事による森林伐採等)がある、といったデメリットもあります。また、日本の場合、山陰、北陸、東北地方などの日本海側は一年を通じて日照時間が短く、太陽光発電のパフォーマンスは他の地域に比べて下がります。

風力発電のデメリット

風力発電はブレードと呼ばれる風車を自然の風で回し、その回転エネルギーを電気エネルギーに転換する仕組みです。太陽光発電と同様、発電時に二酸化炭素は発生しません。また風が吹いていれば一日を通じて発電できます。
一方、風の状況により発電量が不安定になるというのが最大のデメリットです。また、基礎工事、電力ケーブルの敷設、維持管理費に大きなコストがかかるというデメリットもあります。こうしたデメリットを軽減するため、安定的かつ高効率で発電することが可能な洋上風力発電の設置が進められています。日本政府は2040年までに洋上風力発電の規模を原子力発電45基分(45GW相当)まで引き上げるという目標を掲げています。

地理的条件に適した選択が大切

日本は国土面積の67%を森林が占めます。また世界に冠たる台風被害の多い国です。森林が多いことは太陽光発電を普及するハードルであり、台風が多いことは洋上発電の大きなリスクであることを理解しておく必要があります。

二酸化炭素排出をライフサイクルで管理する

二酸化炭素の排出量削減に関しては、生産・消費活動の一点だけを捉えた直接的な削減効果だけでなく、間接的な影響などを総合的に見ながら複合的かつ本質的な削減効果を追求していくことが重要になってきます。例えば、太陽光発電所を設置する場合、完成した設備の排出量だけに目を向けるのではなく、機器や設備の製造過程における二酸化炭素の排出、また耐用年数を過ぎた機器・設備の廃棄プロセスまで、ライフサイクル全体を見て排出量削減効果がどの程度あるのかを見極めていく必要があります。
ライフサイクル全体を見ることの重要性を示す例としては、世界最大の玩具メーカーであるデンマークのレゴ社(Lego)の取り組みが事例として挙げられます。

2023年9月、レゴ社は再生プラスチックを用いたブロック玩具を製造する計画を断念したことを発表しました。同社のトレードマークであるカラフルなブロックを再生PET樹脂(ポリエチレンテレフタレート)から作る計画を立て、2年以上開発を続けてきましたが、その結果「最終的には二酸化炭素排出量の削減に貢献しないことが分かった」として、再生PET樹脂を原料にしたブロック玩具の製造を断念し、より優れた代替案を追求していく方針を示しました。

レゴ社は主にABS樹脂(アクリルニトリルブタジエン樹脂)というプラスチックからブロック玩具をつくっていますが、その原料をペットボトルのリサイクルから得られる再生PET樹脂に転換すべく試作を進めていました。しかしながら、再生PET樹脂はABS樹脂に比べて強度が低いため、組み立てや分解のための強度を維持しつつ、素材をABS樹脂から他のものに代替するのは極めてハードルの高い課題でした。また、既存のプラスチックと同等の安全性と耐久性を与えるには追加素材が必要となり、加工に要するエネルギーも増大することから、製品のライフサイクルアセスメント(LCA)の観点から環境負荷はむしろ大きくなるとして、計画を断念しました。

期待した結果が出なかったことは残念ですが、このLCAの観点から再生PET樹脂を採用しないという判断は、環境負荷低減に向けた施策を本質的に追求し、その検証結果に誠実に向き合っているレゴ社の企業哲学や本気度を知る機会にもなりました。

参考:Lego ditches oil-free brick in sustainability setback

三井化学はバイオマスを使ったプラスチック製品の生産を開始

環境負荷を低減するために何が必要なのかを本質的に考え、ユーザーに供給する製品の二酸化炭素排出量の削減に取り組んでいる化学企業もあります。三井化学はカーボンニュートラル実現に向けたバイオマスソリューション「BePLAYER®」の取り組みの一環として、バイオマス由来原料を使用したプラスチックや化学品の生産に乗り出しています。原料にバイオマスナフサを使うことで、製品の廃棄時の燃焼による二酸化炭素排出の抑制に寄与することができます。

脱炭素や循環型社会への対応を検討している企業の担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

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