そざいんたびゅー

「捨てるという概念を捨てる」。
Loopが切り拓くリユースの可能性

  • Life
  • Social

取材:MOLpおじさん

企業にも社会にもやさしく。Loopが注力するパッケージデザイン

MOLp:パッケージを拝見すると、いままでの使い捨てのパッケージよりもインテリアになじむというか、ぐっとおしゃれになっているように思います。

エリック・カワバタ:リユースのシステムを構築しただけでは利用者は増えませんよね。人々の生活に定着させるには、見た目のデザインにも力を入れなければなりません。従来の使い捨て容器にはないスタイリッシュさはLoopの魅力です。

また機能的なデザインという点では、リユース容器がより循環しやすいように「洗浄のしやすさ」「繰り返し使える耐久性」「寿命を迎えたときのリサイクルのしやすさ」に関して独自の基準を設けています。

MOLp:見た目だけじゃなくて、機能面にも工夫があるんですね。

エリック・カワバタ:容器のクオリティーが高いぶん、使い捨て容器に比べ初期費用はかかりますが、再利用するほど1回あたりの容器コストを大幅に抑えることが可能です。

メーカーにとって「使い切りのコスト」であった容器が、長く使える「資産」となり、CO2排出量の削減にもつながっていく。つまり、デザイン性の追求は会社にとっても、社会にとっても大きなメリットがあるんです。

MOLp:日本の生活者は、価格が上がることに敏感な風潮がありますがこれなら受け入れられそうです。自宅のテーブルにあるのを想像するとすごく気持ち良くなってきました。

エリック・カワバタ:「環境に悪いけれど安いもの」を選ぶか、「環境に良いけど高いもの」を選ぶか。私たちは、目の前の利益より長期的に考えてなにがベストか、考えていく必要があります。

優れたものを買うには、生活に余裕がないと難しい。バブル期以降上がらない日本の給与事情が大きな壁となっているのも事実ですが、日本はもっと人や環境に優しい社会に変えていけるポテンシャルを持っていると思います。

大塚製薬のポカリスエットともコラボ / Loop JapanのInstagramより

プラスチックは環境に悪い? 三井化学をはじめ素材メーカーに期待すること

MOLp:Loopのサービスには金属やガラス容器が使用されていますが、プラスチックにはどのような印象をお持ちですか?

エリック・カワバタ:誤解がないよう説明すると、私たちはプラスチック自体を否定しているわけではありません。改善しないといけないのは、長く使用されないプラスチックの用途やそれを使う消費者の意識です。

三井化学のようなプラスチックの素材メーカーに期待したいのは、耐久性の高いプラスチックですね。ガラスや金属の容器は重いので、物流時のCO2の排出量も増えてしまいます。

また、ガラスだと割れや欠けの問題もあります。軽くて洗浄しやすく、においが残らず、リユース・リサイクルしやすいプラスチックがあればぜひ使っていきたいです。じつは、すでにいろいろなプラスチック素材で検討を進めています。

これから取り組むアクションとは?「使ってみたい」の声を増やす

MOLp:Loopでは今後どのような取り組みを行なっていくのですか?

エリック・カワバタ:まずは、地域の中小企業、メーカー、小売店や行政とタッグを組んでLoopをローカルに展開する「Loop Go Local」という取り組みを開始します。

いつでもどこでも手軽に商品の購入や容器返却ができるようネットワークを広げ、より多くの人に「使ってみたい」と思うきっかけづくりの場の提供を目指しています。

MOLp:身近にあることで「使いやすい」にもつながりますね。

エリック・カワバタ:利用者が広がることで「リバースロジスティクス」も活用しやすくなります。リバースロジスティクスは、生産者から消費者へ商品を運ぶ「ロジスティクス」に対して、消費者から生産者へと反対方向に流れることを指しています。

たとえば、イオンの物流センターから各店舗へ商品を届けたトラックに空の容器を載せて戻すことが実現できれば、物流における環境負荷にも貢献できるようになるのです。

現在、消費者の皆さまから「もっと商品の種類を増やしてほしい」という要望をたくさんいただいています。今後もさまざまな企業に働きかけ、商品のラインアップを増やしていくとともに、利用可能な店舗の拡大を進めていきます。

都市や自然はきれいな日本。でも環境に対する意識は低い……どうやって改善する?

MOLp:Loopのサービスが日常に浸透していくと、「ごみの日」が「リユースの日」になるかもしれないですね。

エリック・カワバタ:そうなると良いのですが(笑)。日本は都市や自然もきれいな国で、ごみの分別もしっかりやっていますが、ごみ問題は確実に存在しています。手遅れになってしまうまえに、私たちにはやるべきことがあります。

MOLp:やるべきこととは具体的にどんな取り組みでしょう?

エリック・カワバタ:ごみ問題は「誰かが解決してくれる」と人任せにしないで、いま自分になにができるかを考える。多くの人が危機感を持って行動していけば、サステナブルな未来が実現できるはずです。Loopを通じて、消費者一人ひとりが環境問題を「自分ごと」として感じられるよう、訴えかけていきたいですね。

誰かがアクションを起こすのを待っていても、世界は変わりません。Loopが目指すリユースの輪は、私たちが普段の生活で身近に起こせるアクションのひとつなのです。

ゼロウェイストを目指すためのガイド / Loop JapanのInstagramより

PROFILE

エリック・カワバタERIC KAWABATA

東京大学大学院法学政治学研究科特別研究生、金融機関の法律顧問、投資銀行役員、サステナビリティ関連のNPOなどを経て、米国テラサイクル入社。現在、テラサイクルのアジア太平洋統括責任者と米国テラサイクルが設立したLoop Japanの日本代表を務める。