そざいんたびゅー

日常の「なぜ?」が生活を面白くする。
くられ先生×ツナっちが気になる素材

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取材・執筆:宇治田エリ 写真:小坂奎介 編集:川谷恭平(CINRA)

実学と科学の分離に警鐘を鳴らす。子どもが夢中になる体験へ

MOLp:くられ先生は「ヘルドクター」とも呼ばれ、爆発物や麻薬、毒の紹介をするなど刺激的なコンテンツをつくることでおなじみですが、紹介するにあたって気をつけていることはありますか?

くられ先生:ぼくは必ず、「明白かつ現在の危機」という観点で紹介するものを線引きするようにしています。これはつまり、速やかに悪用ができて、カジュアルに被害が出てしまうような情報は発信しないということです。

ツナっち:初耳です。くられ先生のなかにもそんな線引きがあったんですね。

くられ先生:日本で武器を製造するのは犯罪という大前提がありますが、仮に「レールガン」のつくり方をレクチャーしたとします。レールガンはつくる過程で、危険で難しい高電圧の扱い方や仕組みを学ばなければいけないので、教えたところでまねできませんよね。

でも、薬局で手軽に手に入るもので「爆発物」をつくる方法をレクチャーすると、簡単にまねできて大きな被害が出てしまう。だから「明白かつ現在の危機」にあたる内容は絶対に載せないようにしています。

MOLp:なるほど。

くられ先生:一方で、受験のことばかりを気にして、「これだけ勉強しておきなさい」と押しつけてしまっている、現在の中学・高校の学校教育のあり方は、実学と科学を乖離させているという問題があります。

そもそも、科学を勉強し、研究する過程においては、善も悪もありません。やってみないとわからないのに、その好奇心を削いでしまっては、面白さも感じられないし、いい結果も出ません。

だからこそ、子どもたちの「なぜ?」「どうして?」という純粋な疑問を科学の興味につなげていくこともまた、大きな課題だと思っています。

激辛焼きそば検証動画の真相。身近にある面白い科学をアイデアに

MOLp:おふたりが最近おもしろいと思った素材はありますか?

くられ先生:素材というか成分ですが、「カプサイシン」や「メントール」など、味覚にまつわる物質はおもしろいと思いましたね。

MOLp:たしかに、メントールで「ペヤング 獄激辛やきそばFinal」の辛さを抑えられるかどうかを検証する動画は本当に面白かったです。

動画【狂乱の大実験】キワミ冷感液を口に入れれば辛味無効で激辛が食べられる?

ツナっち:「人は辛味を感じるセンサよりも、冷たさを感じるセンサの方が優位になる。だから激辛料理に『メントール』を合わせたら、辛さを感じないんじゃない?」という、くられ先生のアイデアが発端です。

で、ぼくがいつものように実験台になったんですけど、本当に辛さが無効になって驚きました(笑)。

くられ先生:あの激辛ペヤング、ツナっちはひと口で唇が腫れるほどだったのに、メントールを挟むことでけっこう食べられたよね。味は極激マズだったけど(笑)

くられ先生の白衣が光る仕様に? 2人が気になった三井化学の素材

MOLp:先日の『ニコニコ超会議2022』は、薬理凶室とMOLpが初のコラボレーションをしましたが、新たなアイデアは生まれましたか?

くられ先生:展示物で気になったのは太陽光をあてると光るプラスチック素材「SHIRANUI」ですね。あの素材を白衣に取り入れて、外に出るとイメチェンできる白衣をつくってみると面白そう。

「SHIRANUI」を使って制作したバングル

ツナっち:実用的ですね。ぼくは会場でいただいたお米のつかないしゃもじを愛用しています。

MOLp:しゃもじには、「TPX®」という、耐熱性・離型性・透明性を有する高機能ポリオレフィン樹脂が使われています。つい先日も、その素材を応用して、酸素を透過する細胞培養容器「InnoCell」を発表したばかりです。

剥離性の高い「TPX®」を使い、表面にご飯がつきにくい仕様になっている
細胞培養ツールとして2022年度末を目標に市場で販売していく

ツナっち:こういうユニークな素材がすぐに手に入れられる場所があってもいいのかも。

くられ先生:加えて、素材の知識をインプットできて、実際に扱いながら気軽に実験できる場所が一緒になっているとさらにいいですよね。

MOLp:そうですね。くられ先生、ツナっちさんの視点とわれわれが持っている素材と知見を合わせると、新しい科学の面白さを伝えられる可能性がありますね。

くられ先生:三井化学の研究者たちにアドバイスをいただきながら実験してみたいですね。MOLpのラボもぜひ行ってみたいです。

ユーザーのリテラシーの高さにヒヤヒヤ?くられ先生とツナっちのこの後の目標

MOLp:くられ先生が今後挑戦してみたいことはありますか?

くられ先生:科学の実験の改良ですね。授業で行なうような「炎色反応」の実験とかも、火炎放射器を使って、3mくらいの大きさの火柱を出してみる。子どもたちはきっと喜ぶだろうな……。

ツナっち:テーブルの上でライターの小さな火で実験するより、100倍楽しくなりそう(笑)。

MOLp:たしかに迫力がすごそうです。最後に、科学者を目指す若者たちに向けて、メッセージをお願いします。

くられ先生:『ニコニコ超会議2022』など、オフラインのイベントに来たお客さんと接していると、リテラシーが高い人が本当に多くて。仕掛けが見破られて、企画倒れにならないかヒヤヒヤしつつも、うれしく感じています。

科学の知識があれば、身近にあるものの解像度がグッと上がるし、暮らしがもっと創造的になるはずですので、「なぜ?」と問いかけ、探求していってください。

ツナっち:科学的な視点があれば、行き詰まった時も原点に戻って、意外なところから解決策を導き出すことができるはず。ぜひYouTubeを見て楽しみながら、科学の知識を身につけていってくださいね!

PROFILE

くられ先生Dr.KURARE

サイエンス作家、タレント。シリーズ累計20万部の『アリエナイ理科』シリーズをはじめ、楽しい科学書の分野で15年以上活躍。週刊少年ジャンプで連載していた漫画『Dr.STONE』では科学監修を務め、フィクションと実科学の架け橋にも。TV番組『笑神様』『MATSUぼっち』の出演や、YouTubeで120万再生を超える科学動画をゲーム実況者集団「主役は我々だ!」と共同製作。

PROFILE

ツナっちTSUNATTI

「そこらへんのクソガキ」でおなじみの薬学系YouTuber。薬理凶室のメンバーとして、YouTubeチャンネル「科学は全てを解決する」で活躍。