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2020.01.31

これからのメガネ店のあり方②
株式会社フレネルライン
代表取締役 ビジネスプロデューサー
竹本 圭太 氏

profile

全国の大手チェーン店をはじめ地域専門店並びに、ボランタリーチェーン、メーカー商品開発にまで多岐に渡るコンサルタント活動を実践。国際メガネ展(IOFT)ではセミナー講師を引き受ける。現場に密着した即実践活性化手法は、全国の業界関係者から高い評価を得ている。

株式会社フレネルライン http://furesnelline.co.jp/plofile/

フレームよりレンズの販売を重視したほうがいい理由はなんですか。

レンズ販売に力を入れたほうがいい理由は、お客さまが本来望んでいることだからです。どんなときにメガネを買われますかという調査結果があるのですが、「見えづらくなったから」、「修理が必要になったから」と答えた方がほとんどで、「ブランドが新しく出たから」とか、「デザインが斬新だから」と答えた方は少数です。どの年齢層でも「見え方」を重視しており、ここからでもレンズの販売に力を入れたほうがいいことが分かります。
一般的なメガネ店ではレンズが全体の粗利額を創出していると思われます。専門店では70%近くを占めることもあるでしょう。また、レンズは受発注なので在庫がなくてすみますし、自分たちで値決めができることもポイントです。それによって、価格以上のものを提供することができるのです。徹底的に検査をしますということも、お客さまの目の状態、要望に合わせて良質のレンズを提案する礎につながり、提案されたレンズに対する説得性を伝えられる一つの方法でした。
お客さまがメガネを買い替えるのは、平均すると4年に1回といわれています。そして、大切な役割を持つメガネを4年も使うなら1ランク上の見やすさを買いたいと思うのは当然です。それと、フレームで選ぶお客さまよりレンズで選ぶお客さまのほうがリピーターになる可能性が高いともいわれています。一度快適な見え方を体験したお客さまは、次もそのメガネ店に買いに行きます。もう量販店のレンズには戻れないからです。

高齢化の時代にメガネ店はどう対応していったらいいですか。

2018年の日本のメガネ購入者1,900万人のうち1,000万人が45歳以上の人でした。これは全体の54%です。購入金額でみると、4,035億円というメガネ市場規模のうち、45歳以上による購入金額は2,700億円で、全体の67%を占めていました。メガネ市場の約7割は45歳以上の人たちが支えていることになり、この比率は今後も増え続けると予想されています。そして日本ほどでないにしても、高齢化は世界中ですすんでいます。
どんどん年齢層が上がっていくことに対して、いろいろな問題や課題とかがお客さま一人ひとりの視力に出てきます。たとえばこの層の人たちの特徴として、老眼が入ることにより、累進レンズを必要とする比率が高いことがあげられます。販売数では全体の58.5%を、販売額では全体の68.1%を45歳以上の人が占めており、販売枚数、販売金額とも伸びしろはここにあるといわれています。でもこういう人たちが量販店に行っても、調節に手間のかかるレンズは時間的にも技術的にも対応が難しいからと親身になってもらいにくい。これは低価格を柱に量をこなさなければならない量販店の宿命です。その結果として量販店のレンズでは対応しにくい「メガネ難民」が増えてしまいます。そうした行き場をなくしたお客さまのさまざまな課題を解決できるメガネ店、つまり視機能の変化に対応したビジョンケアを行ってメガネを提供できるメガネ店が今まで以上に必要になってくるのです。

これからのメガネ店はなにを目指していけばいいですか。

物販店としての位置づけで販促費をかけて大量販売する店と、ビジョンケアとしてのメガネの持つ価値を追求して販売する専門店、この2極化はますます進むと考えられます。これは言いかえると、価格で売るか、ココロで売るかということになります。
そんな中でお店の販売スタッフに求められていることは、レンズ(見え方)についてよく知ることです。そのうえでお客さまの必要としていることを引き出し、見え方を提案することです。見え方の違いと価値をどうすればお客さまにわかりやすく伝えられるかという部分を販売スタッフが共有できればお店の強みになります。
メガネ専門店も一時期、量販店の売り方に極端に偏ってしまいました。その一つがレンズ付きセット販売です。セット販売は最初に予算が来ます。お客さまに2万円出していただければ、薄型レンズも遠近両用レンズでも付いてきますよという選べるレンズ付きセットです。これは、極端なことを言えば、入社したばかりの店員でも売りやすいチェーン店のシステムです。専門的な説明がいらないからです。つまり、お客さまの予算があって、1万円、2万円の価格に、お客さまの目を合わせにいっているみたいなものです。そしてこれで買われたお客さまは、どんなイメージをメガネに持つでしょう。好きなフレームを選べばレンズはオマケで付いてくるものだと思いませんか。本来のメガネの価値である見え方や粗利額の源泉であるレンズというメガネ専門店としての見え方の価値を捨ててしまっていたのかも知れません。かといって予算で購買されるお客さまもおられるので完全否定をしているわけではありませんが、同じシステムでは資本力と展開力のあるチェーン店には中小店が勝てるはずがありません。簡単に売ることに慣れてしまっていたら、もういちどビジョンケアの専門店として原点に戻って提案していけばいいと思います。
たくさんのメガネ店で販売スタッフの方々を見てきましたが、楽しんでいる人には勝てません。お客さまの満足する顔を見たいという思いをもとに、自分がプロとしていろいろな技術、商品を知ったうえで、お客さまにどんなメガネを提案できるのか。どんなメガネをつくれば本当に喜ばれるのだろうか。そうした意識を持っていると、どんどんとレベルが上がって、それがお客さまにも伝わってきます。
最後は人に行きつきます。最新の測定機器を使いこなして的確な提案ができる販売スタッフのいる店、レンズの技術的進化をとらえて的確な提案ができる販売スタッフのいる店、フィッティング技術によって、最適な見え方を提案できる販売スタッフのいる店、接客によってお客さまの見え方のニーズを引き出せる販売スタッフがいる店。そうしたメガネ店がこれからは伸びていくと思います。