TCFD提言への対応

三井化学グループは、2019年1月にTCFDの提言への賛同を表明しました。化学企業として気候変動に真摯に向き合い、事業に影響する機会・リスクへの理解を深化させ、その取り組みの積極的な開示に努めていきます。

TCFD提言

TCFD:
金融安定理事会によって設立された気候関連財務情報開示タスクフォース。2017年6月、気候変動の影響を金融機関や企業、政府などの財務報告において開示することを求める提言を公表した。

TCFD提言では、気候変動に関するガバナンス、経営戦略、リスク管理、指標と目標の各項目に関する情報開示が求められています。当社グループは、TCFD提言に沿って次のように対応を進めていきます。

1. 気候関連リスクの重要性評価

気候変動にともなう当社重要事業のリスク・機会の定性分析

2. シナリオの範囲の特定および決定

気候変動にともなう当社事業環境変化(シナリオ)を予想して影響を検討

3. 事業影響の定量化

当社シナリオから将来の事業戦略と財務への影響を定量化し、戦略に反映

4. 潜在的な対策の特定

気候変動戦略の対策決定、マネジメント管理指標の選定

1. 気候関連リスクの重要性評価

ファーストステップとして、当社グループ事業の気候変動による影響評価を行いました。

1)評価対象

当社グループ主要事業のうち、気候変動の影響を受けやすい事業分野を選定。

① モビリティ、② 石化原料、③ 農業、④ ヘルスケア、⑤ 電気電子、⑥ 包装、⑦ エネルギーソリューション

2)評価実施方法

① 気候変動リスク・機会の洗い出し

TCFD最終報告書に示されている情報開示のフレームワークに基づき、移行リスク・物理的リスクおよび機会を洗い出し。

② 重要なリスク・機会の抽出

上記から、発生の可能性、事業へのインパクト(人的損失、財務的インパクトなど)をふまえ、特に重要なリスク・機会を抽出。その際、国際的な議論の動向、展開地域、他社事例なども考慮。

3)評価結果(リスク、機会)

この表は横にスクロールできます。

評価項目 共通 事業分野別
① モビリティ、② 石化原料、③ 農業、④ ヘルスケア、⑤ 電気電子、⑥ 包装、⑦ エネルギーソリューション
物理的
リスク/機会
急性 風水災(洪水・暴風雨)によるリスクの上昇  
慢性 潮位上昇(高潮)によるリスクの上昇
利用可能な淡水不足によるリスクの上昇
農作適地変化と新たな農業技術開発
害虫、雑草、細菌類の分布拡大
気候変動による感染症の流行拡大
低炭素社会移行
リスク/機会
政策および
法規制
炭素価格導入、上昇によるリスク
訴訟リスクの増加
EVシフトによる事業への影響 ①⑤
合成化学肥料の使用規制
技術 再生可能エネルギーの普及
CCU技術、高度化リサイクル技術の開発加速
バイオマスプラスチックの普及 ①②⑥
低GHG排出技術への移行加速 ②⑤⑥
市場 サーキュラーエコノミーの普及
再生可能原材料への転換
再生可能エネルギー使用へのメーカー要請
EVシフト、水素社会の低炭素移行による希少資源価格上昇
ライドシェア、カーシェアの増加などによる自動車製造・販売量の減少
石油生産量の低下によるナフサの不足
再生可能エネルギーの需要増加
評判 投資家によるアプローチ増加  

外部情報として、IPCC_RCP2.6、RCP8.5、IEA_B2DS、SDS等を活用。

2. シナリオの範囲の特定および決定

「3~4℃の世界」と「1.5~2℃の世界」を選定。(2100年の世界平均地上気温が1986年~2005年平均と比較して、3~4℃および1.5~2℃上昇した場合を想定。)なお、2020年11月のカーボンニュートラル宣言にともない、想定シナリオの修正を行いました。

世界平均地上気温変化

世界平均地上気温変化

出典:IPCC ARS SYR Fig.6

シナリオ分析の対象範囲

対象事業分野全事業分野(ただし、財務、GHG排出に大きく影響する以下の分野を優先)

モビリティ事業

将来の売上収益・コア営業利益に大きく寄与

製品のライフサイクル全体において気候変動に大きく影響

モビリティ事業の売上比率・コア営業比率

石化原料事業

製品製造に欠かせない原燃料、エネルギー(電力)に関わる

自社でのエネルギー生成、製品製造が当社GHG排出量の約75%を占める

モビリティ事業のコア営業比率

対象期間現在から2050年まで(物理的リスク・機会については2100年までの情報も考慮)

外部情報として下記を活用
低炭素移行情報:IEA SDS、2DS、B2DS、NZE2050、The Future of Petrochemicals
物理的情報:IPCC RCP2.6、RCP8.5

想定される世界

3~4℃の世界

経済活動優先で
脱炭素移行は消極的
◆ 現時点での気候変動政策のみ実施
◆ 炭素税導入
◆ 化石エネルギー、原料の需要拡大
  • 石炭、ガス、石油価格上昇
  • 化石燃料由来電力価格上昇
◆ 異常気象による自然災害が激甚化
◆ GHG排出量が約1.3倍に増加(2050年)

1.5~2℃の世界

脱炭素社会の実現が最優先
◆ 野心的な気候変動政策を実施
  • 炭素税率大幅アップ
  • ICE販売中止、EV化
◆ エネルギー、原料の脱炭素化
  • 再生可能エネルギーの主流化
  • リサイクルによる化学品節約
  • バイオ、CO2原料からの化学品製造
◆ 自然災害は徐々に甚大化
◆ カーボンニュートラル実現(2050年)

3. 事業影響の定量化

想定シナリオ (「3~4℃の世界」、「1.5~2℃の世界」)におけるリスクおよび機会に関する事象のインパクト評価を行い、当社グループにとって影響の大きい事業インパクトを特定しました。

特定した事業インパクト

この表は横にスクロールできます。

シナリオ 事象 事業インパクト(リスク、機会)
3~4℃の世界 自然災害の激甚化 河川、沿岸洪水発生による生産拠点の被害増加(資産損傷、操業率低下、サプライチェーン寸断等)
温暖化適応製品の需要増加 Rose Value®製品(防災減災対応、感染症予防等への貢献)の売上増加
1.5~2℃の世界 脱炭素社会に向けた法規制強化 炭素税導入にともなう、化石由来原燃料の課税による製造コスト増加および収益悪化
炭素税等の法規制先取り対応による収益悪化回避および法規制対応製品の売上増加
脱炭素移行にともなう市場変化 化石由来燃料の消費量減少にともなう、ナフサ生産量減少による原料コスト増加
バイオマス原料・非化石燃料・再生可能エネルギー利用による、バリューチェーンでのGHG削減に貢献するBlue Value®製品の売上増加
サーキュラーエコノミーの拡大加速 求められるリサイクル(マテリアル、ケミカル)・CCUS技術導入による新たなビジネス機会の創出
ステークホルダーからの要請対応 顧客・投資家からのGHG削減要請への対応不十分による評価低下および投資獲得機会の減少
気候変動対応(戦略、進捗)の積極的な情報開示による企業価値向上および投資獲得機会の増加

4. 潜在的な対策の特定

想定シナリオにおけるインパクト評価結果を考慮し、長期経営計画「VISION 2030」にカーボンニュートラル戦略を組み込みました。カーボンニュートラル戦略では2050年カーボンニュートラルに向けて、Scope1とScope2を対象とした自社のGHG排出量削減のロードマップを策定し、2030年のGHG排出量削減目標も設定しています。今後、カーボンニュートラル戦略を事業ポートフォリオ別戦略に取り込み、具体的なアクションプランやKPI等を検討していく予定です。

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