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カスケードリサイクルとは?水平リサイクルとの違いや課題を解説

作成者: 三井化学|Nov 29, 2023 6:37:16 AM

リサイクルの主な目的は、廃棄物や不用品を〝資源〟として再利用することにより、循環型社会を形成していくことにあります。リサイクルにはさまざまな手法がありますが、例えば回収した使用済みペットボトルを原料にして再びペットボトルを作れば、同じものとして循環させることができます。しかし、廃棄物や不用品の状態によっては同じものにリサイクルできないケースも少なくありません。そのようなケースでも〝新たな資源〟として再利用するための取り組みとして、今回はカスケードリサイクルについて解説します。あわせて水平リサイクルとの違いや課題もお伝えします。

カスケードリサイクルとは?

リサイクルの手法は、大きく次の3つに分けられます。

  • マテリアルリサイクル(メカニカルリサイクル) 物理的処理を経て再び製品の原料として再利用
  • ケミカルリサイクル 化学的・熱的に処理・分解し化学原料や分解油などに転換して再利用
  • サーマルリサイクル 熱エネルギーとして再利用

そのなかで、「カスケードリサイクル」とは、マテリアルリサイクルする際の再生原料の品質に合わせ、リサイクル前とは別の、品質的に低位な製品の原料として再利用することを指すものです。例えばペットボトルの場合、飲料を入れても安全なレベルの品質(強度面、衛生面等)を有した原料が必要になりますが、マテリアルリサイクルによる再生原料が飲料ボトルに求められる品質に満たないことも考えられます。そうした場合に、品質に見合ったほかのプラスチック製品の原料として再利用することがカスケードリサイクルに該当します。代表的なものではペットボトルからフリースなど繊維製品にするケースがあります。

このように、カスケードリサイクルはリサイクルの手法自体を表すものではなく、マテリアルリサイクルの過程で生まれた再生原料の使い方を表したものです。

マテリアルリサイクルについて、詳しくは「マテリアルリサイクルとは?具体例や現状の課題、これからのリサイクルについて解説」を、ケミカルリサイクルについて、詳しくは「ケミカルリサイクルとは?メリットや課題について解説」をご覧ください。また、サーマルリサイクルについては、「サーマルリサイクルとは?メリットや課題 持続可能な社会に向けて新たな取り組みを解説」をご覧ください。

カスケードリサイクルで広がる廃プラの〝資源〟としての可能性

カスケードリサイクルのカスケードとは、日本語では「滝」を意味する言葉で、滝が流れ落ちていくように別の製品に段階的にリサイクルすることをイメージして名付けられています。

具体的な例としては、ペットボトルから食品用トレイや卵パック、繊維製品(フリース、ネクタイ、白衣など)、バッグ、洗剤用ボトルなどにマテリアルリサイクルすることが挙げられます。他素材では、上質紙からトイレットペーパーへのリサイクルもカスケードリサイクルに含まれます。

また、カスケードリサイクルはマテリアルリサイクルと同様の工程で進められます。ペットボトルの場合、回収したボトルのラベルを剥がし、洗浄をしたあと、細かく砕いて再生フレークという原料にします。この再生フレークを使い、シートや繊維、成形品などペットボトルとは別製品に作り替えるのがカスケードリサイクルです。

これにより、段階的にリサイクルできる製品も増えるため、廃棄物や不用品がさらに幅広く〝資源〟として活用される社会の実現につながります。

廃プラスチックのリサイクルによって得られるメリットについてより詳しくは、「廃プラとは?廃プラスチックが抱える課題と課題解決のための取り組みをわかりやすく解説」「廃プラスチックのリサイクルはなぜ必要なのか?その理由やリサイクル方法、課題を解説」をご覧ください。

 

水平リサイクルとの違い

マテリアルリサイクルには、カスケードリサイクルのほかに水平リサイクルがあります。カスケードリサイクルとの違いは、再利用前と同じ製品にリサイクルする点です。例えば、ペットボトルからペットボトル、段ボールから段ボールなどへのリサイクルで、ペットボトルについては、特に「ボトルtoボトル」と呼ばれる場合もあります。

水平リサイクルは、廃棄されたものを元の製品に戻すリサイクルであり、使われたものが再び同じものとして還ってくるため、私たちにとっては理解しやすく、納得性があるリサイクルになります。

カスケードリサイクルのメリット

マテリアルリサイクルのなかでも、カスケードリサイクルを行うことにはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、主なメリットについて解説します。

  • 比較的容易に行える

カスケードリサイクルは、主に元の製品よりも低い品質の原料で製造可能な製品に再利用されるため、リサイクル前と同じ品質の製品として再利用される水平リサイクルに比べ、比較的容易に行えます。

  • 製造コストの削減につながる

水平リサイクルに比べ再利用の手間が少ないため、エネルギーの効率的な活用や製造コストの削減につながります。

  • 幅広い用途で使用することができる

水平リサイクルとは異なり、より低位の品質のものに展開できるため、幅広いさまざまな用途で多くの需要を取り込むことができます。

カスケードリサイクルが抱える課題

リサイクルにおいてメリットも多いカスケードリサイクルですが、マテリアルリサイクルと同様の課題点もいくつかあります。具体的には次のとおりです。

  • 無限にリサイクルできるわけではなく、リサイクルのたびに再生原料の品質が劣化する

リサイクルをするたびに再生原料の品質劣化が進むため、リサイクルできる回数には限りがあります。そのため、リサイクルではなく新たに製造された同商品に比べ、品質が低下する場合があります。

  • リサイクルだけでは地球温暖化(CO2削減)の根本的な解決につながらない

カスケードリサイクルは、ごみの排出量削減、枯渇性資源の保護には貢献するものの、リサイクルをする際にもCO2は排出されるため、地球温暖化の解決にはつながらないケースもあります。各製品のライフサイクルを把握したうえで、本当に環境に貢献するのかを見極めることが重要です。実際、デンマーク玩具大手のレゴは、2023927日、最終的にCO2排出量の削減につながらないため、リサイクルPETを原料としたブロックの製造計画を断念することを発表しました。この結果自体は残念なことですが、今回の判断は、レゴが誠実かつ本気で地球温暖化問題と向き合っていることをあらためて知る機会になりました。

レゴのプレスリリースの詳細内容は「We remain committed to make LEGO® bricks more sustainable - About Us - LEGO.com」をご覧ください。

もちろん、マテリアルリサイクルすることに意味はありますが、日本が2050年までにCO2排出量ゼロを目指すには、バイオマスの活用も組み合わせながら、〝素材の素材〟から根本的な解決策を講じていく必要があります。

三井化学はサーキュラーエコノミー実現に向け、バイオマスとリサイクルの両輪で「世界を素から変えていく」

カスケードリサイクルとは、マテリアルリサイクルを行う際に製品品質が下がるものを表します。リサイクル前と同じ製品を、品質を下げずに作る水平リサイクルに対し、ペットボトルから白衣、上質紙からトイレットペーパーなど品質の低下を伴うリサイクルです。


水平リサイクルに比べ、より低位の品質のものに幅広く展開できるため、比較的容易に行え、リサイクルの際の製造コスト削減につながるなどのメリットがあります。


ただし、元の製品に比べ品質が低下してしまうことや、リサイクルのたびに品質劣化が進むことから、いずれはカスケードリサイクルでも処理しきれないものが出てきます。

そこで三井化学では、サーキュラーエコノミー実現に向けた「RePLAYER®」という取り組みのなかで、マテリアルリサイクルだけでなく、ケミカルリサイクルの展開も強化しています。ケミカルリサイクルとは、廃プラを化学的・熱的に分解・処理することにより、分解油や合成ガスといった原料やモノマーに戻し、再度プラスチックや化学製品としてリサイクルするアプローチです。マテリアルリサイクルでは処理が難しいものも、ケミカルリサイクルで再資源化できることもあり、その活用はサーキュラーエコノミー実現に貢献します。


さらに、リサイクルだけではカバーしきれない地球温暖化問題の解決に向け、社会のバイオマス化を推進する「BePLAYER®」という取り組みも展開しています。その中で、2021年12月より従来の石油由来のナフサの代替品として「バイオマスナフサ」を原料として利用開始しました。プラスチックの〝素材の素材〟からバイオマス化を図ることにより、カーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます。


三井化学が展開している「BePLAYER🄬」「RePLAYER®」では、バイオマスとリサイクルの両輪を回しながらさまざまな廃棄物を〝資源〟として活用し、「世界を素から変えていく」ことを目指しています。


これからの社会に向け新たな道を模索している企業担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。


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