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ケミカルリサイクルとは?メリットや課題について解説

作成者: 三井化学|Nov 29, 2023 6:39:42 AM

持続可能なサーキュラーエコノミー社会の実現を目指していくうえで、大きなテーマのひとつに挙がるのが廃プラスチックの処理問題です。産業用途から私たちの身の回りの生活に至るまで、さまざまなシーンで利用されているプラスチックですが、同時に大量の廃プラスチックが排出されていることも事実です。
本記事では、プラスチックのリサイクル方法のひとつ、「ケミカルリサイクル」について解説すると同時に、メリット・デメリットをご紹介します。

ケミカルリサイクルとは

3種類のリサイクル方法

廃プラスチックのリサイクル方法は、大きく分けて3つあります。1つ目は物理的処理により廃プラスチックをそのまま原料にして製品をつくる「マテリアルリサイクル(メカニカルリサイクル)」。2つ目はごみ焼却施設での発電・熱利用焼却、セメント原・燃料化、固形燃料化(RPF、RDF)などで再利用する「サーマルリサイクル」。そして3つ目が「ケミカルリサイクル」と呼ばれる方法です。

マテリアルリサイクル、並びにそのなかに分類されるカスケードリサイクルについて、詳しくは次の記事をご覧ください。

マテリアルリサイクルとは?具体例や現状の課題、これからのリサイクルについて解説
カスケードリサイクルとは?水平リサイクルとの違いや課題を解説

サーマルリサイクルについて、詳しくは「サーマルリサイクルとは?メリットや課題、持続可能な社会に向けて新たな取り組みを解説」をご覧ください。

ケミカルリサイクルの手法例

私たちが日常的に使用しているペットボトルについても、ケミカルリサイクルを活用することにより、使用済みペットボトルから再びペットボトルをつくる「ボトルtoボトル(BtoB)」の取り組みを加速させる動きが見られます。

ケミカルリサイクルでは、まず回収された使用済みペットボトルを選別・粉砕・洗浄し、異物を取り除いたうえで解重合を行うことにより、ペット樹脂の原料または中間原料まで化学的に分解します。そして、この中間原料を精製したものを重合し、新たにペット樹脂を生産します。

リサイクルの工程として、使用済みPETボトルから再生フレークをつくるまではマテリアルリサイクルと同様です。ただ、ペットボトルをマテリアルリサイクルすると、品質の観点からそのままボトルには使用できないロスが一定量発生しますが、ケミカルリサイクルでは化学的に処理する過程で微小な不純物まで取り除くことができるため、マテリアルリサイクルで発生したロス原料もケミカルリサイクルで再利用し、バージンと同等のボトル原料として戻すことができます。

ケミカルリサイクルのメリット

  • 資源の有効活用につながる

ケミカルリサイクルは、廃プラスチックを化学的に分解することで分解油や合成ガス、モノマーといった化学原料に戻し、再利用可能な物質にします。また、リサイクルによって新たなプラスチック製造も抑制できるため、限りある資源の消費量削減に貢献します。

  • リサイクルの精度が高く、原料循環の実現につながる

代表的なケミカルリサイクルの手法では、解重合/再重合の間に異物、異種材質が取り除かれるため、バージン樹脂と同等の高品質なリサイクル樹脂に再生することができます。そのため、マテリアルリサイクルでは使用が困難な汚れたペットボトルの水平リサイクル(元の製品へのリサイクル)も可能です。
また、ケミカルリサイクルのなかでも、廃プラスチックから熱分解油(廃プラ分解油)を製造する油化プロセス技術では、さまざまなプラスチック素材のケミカルリサイクルが可能です。さらに、ここで製造した廃プラ分解油を化学コンビナートの心臓部である既存のナフサクラッカー(ナフサ分解装置)に投入して、再びさまざまなプラスチックを製造することができます。
廃プラスチックや、廃プラスチックのリサイクルについて詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

廃プラとは?廃プラスチックが抱える課題と課題解決のための取り組みをわかりやすく解説
廃プラスチックのリサイクルはなぜ必要なのか?その理由やリサイクル方法、課題を解説

ケミカルリサイクルが抱える問題点

ここまで見てきたとおりメリットが大きいケミカルリサイクルですが、一方で課題もあります。

  • まだケミカルリサイクルの割合は低い

一般社団法人 プラスチック循環利用協会の資料「プラスチックリサイクルの基礎知識2023」によると、2021年の国内における廃プラスチックの総排出量は約824万トンに達しています。この排出された廃プラスチックのうち、サーマルリサイクルで再利用されたものが約511万トン(約62%)、マテリアルリサイクルが約177万トン(約21%)に達しているのに対し、ケミカルリサイクルはまだ約29万トン(約4%)にとどまっています。なお、残りの約108万トン(約13%)は単純焼却と埋立で処理されており、この部分は未利用資源になっています。

  • コスト面でほかのリサイクルに劣る

2021年時点で最も利用されているサーマルリサイクルは、既存の焼却施設を利用して排熱やガスを回収することが可能です。その一方で、ケミカルリサイクルは新たに設備投資が必要となるケースが多く、コスト面との兼ね合いが普及のネックになっています。また、物理的処理によるマテリアルリサイクルと比較しても、ケミカルリサイクルの方がコスト高になります。

  • リサイクル時に新たなエネルギー消費が必要となる

例えば、プラスチックの製造とは逆のプロセスを経る解重合や油化技術では、新たなエネルギーを必要とします。加熱のためにさらにエネルギーの追加投入が必要になるため、その製品が原料から廃棄までの工程で、環境にどのような影響を与えているのか把握する「ライフサイクル」の観点から考えると、課題が残るという指摘もあります。

とはいえ、ポリエチレンやポリプロピレンを油化してケミカルリサイクルのプラスチックを製造した際のLCA(ライフサイクルアセスメント)を見ると、三井化学の試算では50%程度CO2排出量が削減されることが確認されています。バイオマス化ほどの効果ではありませんが、LCAの観点では確実にCO2排出量の削減が見込まれるため、有望なリサイクル手法です。

ケミカルリサイクルのLCAについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ChemCyclingTMのライフサイクルアセスメント(LCA) (basf.com)」

三井化学はサーキュラーエコノミー実現に向けた取り組みを進めています

廃プラスチックからバージン樹脂と同等の高品質なリサイクル樹脂をつくることができるケミカルリサイクルは、大きな可能性を秘めた技術です。ケミカルリサイクルを行うことで、プラスチックを再資源化できれば、サーキュラーエコノミー社会の実現も近づきます。

そこで三井化学ではサーキュラーエコノミー実現に向け、廃プラスチックを資源としてリサイクルしていく「RePLAYER®」という取り組みを進めています。廃プラスチックの有効利用や循環型社会に向けた取り組みを検討される方は、ぜひご相談ください。

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