SOSO 素材の素材まで考える。

バイオプラスチックってなに?

作成者: 三井化学|Aug 8, 2022 3:00:00 AM

バイオマスプラスチックと生分解性プラスチック

バイオプラスチックは2種類に分かれます。1つは植物由来の原料で作られたバイオマスプラスチックです。もう1つは土や海中で微生物によって、最終的には水と二酸化炭素に分解される生分解性プラスチックです。
スーパーマーケットなどで買い物をして、お店から提供されるレジ袋に「この袋は廃糖蜜(サトウキビから砂糖を取った後に残る糖蜜)から作った植物性プラスチックが25%以上使用されています。またインキの一部に植物由来の原料を使用した環境配慮インキが配合されています。これにより石油資源の節約とCO2削減が期待できます」という記述があるのを見かけるようになりました。このなかで書かれている25%以上使用されている植物性プラスチック、これがバイオマスプラスチックです。
プラスチックは金属、ガラス、紙、木材などの材料に代替したり、その機能ならではの新たな用途が出てきたりして、20世紀後半から目覚ましい伸びを示しました。1964年には世界で1500万トンの生産量を記録するまでになり、その後も経済成長とともに、2015年には3億8000万トンの生産量に拡大しました。自動車、家電製品、家具などの耐久消費財から、包装・容器、雑貨など生活の隅々まで使われています。いかにプラスチックが使い易く、便利な素材であるかが分かります。
しかしながら、その便利さの反面で、環境への負荷というプラスチックの持つ側面が社会問題になっています。化石資源を原料として作られるプラスチックは燃えるとCO2など、地球温暖化を引き起こし気候変動の要因となるGHGを排出します。これに対して、植物などを由来としたバイオマスプラスチックは燃焼時に排出するCO2がゼロとカウントされます。植物は成長の過程で光合成によってCO2を吸収するからです。つまり吸収したCO2が燃焼時に排出されるため、実質のCO2の排出量は差し引きゼロとなるわけです。これをカーボンニュートラルといいます。
またバイオマスプラスチックは再生が可能な植物由来原料を使うので、有限資源である化石資源の消費量削減にも貢献します。化石資源とは原油、石炭、天然ガスなどの総称です。

図1 バオマスプラスチックはカーボンニュートラルな素材

出典:日本バイオプラスチック協会
http://www.jbpaweb.net/bp/

CO2削減に貢献するバイオマスプラスチック

「植物性プラスチックが25%使用されたレジ袋」という表示の25%という数字は、燃やした時のCO2排出がゼロで化石燃料の消費量削減にも貢献するバイオマスプラスチックが25%使われたレジ袋という意味です。日本におけるプラスチック廃棄物の処理に伴うCO2排出量は、2020年で3,100万トン*1、同年の国内総排出量11億5,000万トンの2.7%にあたりますが、すべてのプラスチック製品がバイオマス化されると、これをゼロにすることができます。「バイオマスプラスチックが25%使用された」レジ袋のように、バイオマスプラスチックがさまざまなプラスチック製品に置き換わり、世界のプラスチックがバイオマスプラスチックになれば、地球のカーボンニュートラルに大きく貢献できます。

生分解性プラスチックとは

生分解性プラスチックは土中に埋めたり、きちんと分別・回収したりしてコンポストで適切に処理すれば、最終的には水と二酸化炭素に分解されます。こうした機能を持っていることを生分解性といいます。つまり生分解性プラスチックとは、生分解性の機能を持って、プラスチックとしての使命を終え、廃棄される時にコンポストなどできちんと処理することで土に還ることを目的に製造される素材です。
土中に還るというと、ポイ捨てしても、大丈夫と思われる方もいるかもしれませんが、そうではありません。きちんとした廃棄システムが必要になります。生分解性プラスチックがその機能を発揮するためには、使用から処理までのライフサイクルで、非生分解性のプラスチックや金属などの他の素材と混ざらないようにする必要があります。またコンポストをインフラとして大規模に整備することが必要になります。
こうしたきちんとした管理ができれば、生分解性プラスチックで作られた容器・包装は、食品廃棄物などの有機物とともに処理することが可能であるため、コンポストで堆肥にして農業で利用することができます。

作る目的が違うバイオマスプラスチックと生分解性プラスチック

バイオマスプラスチックが植物を原料にすることでCO2の排出量削減や化石資源の消費量削減に貢献することを目的とした素材であることに対して、生分解性プラスチックは土中に還るという機能を持つことで、プラスチックゴミの発生を少なくするということを目的に製造された素材であることが分かると思います。また生分解性プラスチックには化石資源を原料にしたものも少なくありません。
生分解性プラスチックは従来のプラスチックのような耐久性を求めることができないため、用途が限られてしまいます。このため、耐久性がそれほど求められない食品残渣収集袋や育苗ポット、使い捨てのカトラリーなどへの利用には適しています。また農業用のマルチフィルムなどに利用すれば、使い終われば、耕運機でそのまま土に漉き込んでしまえるため、回収や廃棄の手間を省くこともできます。農家の高齢化が進む日本では、こうした農業用への生分解性プラスチックの活用が進んでいます。

バイオマスプラスチックの種類と用途

生分解性プラスチックが耐久性を要求されない用途に限られる一方、バイオマスプラスチックは耐久性や強靭性などが要求される分野を含み幅広い用途に使うことが可能です。
プラスチックには自動車部品、家電製品などの耐久消費財からレジ袋、日用雑貨など幅広い用途に、ポリエチレンやポリプロピレン、PETなど汎用プラスチックと呼ばれるプラスチックとともに、より高い耐久性や耐熱性などの要求を満たすことができるエンジニアリングプラスチックがありますが、今ではその多くをバイオマスプラスチックに変えていくことが可能です。自動車のシートクッションや断熱材として使われるウレタンなどもバイオマス化が可能です。
そしてこうした幅広い用途のなかでも自動車や電気製品など輸出比率の高い工業材料分野でバイオマスプラスチックは大いに力を発揮しそうです。2019年12月、欧州連合(EU)は温室効果ガス排出ゼロのカーボンニュートラルを実現するため、EUより規制の緩い地域に炭素税を課す方針で合意したことが大きく報じられました。炭素税を課す対象の製品はエネルギー集約産業からスタートするとみられており、将来的にはプラスチックもその対象になる可能性があります。バイオマスプラスチックを使ってカーボンニュートラルに貢献する製品であれば、炭素税の対象外となることも考えられ、多くの企業でバイオマスプラスチックを使った製品設計への見直しが進みつつあります。

図2 バイオマスプラスチックと生分解性プラスチック

出典:日本バイオプラスチック協会
http://www.jbpaweb.net/bp/