SOSO 素材の素材まで考える。

マテリアルリサイクルとは?具体例や現状の課題、これからのリサイクルについて解説

作成者: 三井化学|Nov 2, 2023 7:12:26 AM

原材料(マテリアル)の再利用(リサイクル)を意味するマテリアルリサイクル。地球環境への影響や資源枯渇などさまざまな課題を抱える現在、リサイクルは重要ではあるものの、では何をすべきかといった点については悩んでおられる方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、リサイクルのなかでもマテリアルリサイクルについて、その概要や具体例を挙げたうえで、現状の普及率や課題をお伝えします。

マテリアルリサイクル(メカニカルリサイクル)とは?

マテリアルリサイクルとはリサイクル方法のひとつで、廃棄されたものを新しい製品の原材料として再利用するものです。具体的には次の2つに分けられます。

水平リサイクル(レベルマテリアルリサイクル)

廃棄物を同じ製品の原材料として再利用するリサイクル方法です。例えば「使用済みのペットボトルを原料として再びペットボトルを製造する」「使用済みの化粧品や調味料などのプラスチックボトルの詰め替え容器を原料に再び詰め替え容器を製造する」などが挙げられます。水平リサイクルにより、原油から製造するのに比べて二酸化炭素排出量を削減することが可能です。

カスケードリサイクル(ダウンマテリアルリサイクル)

廃棄物をリサイクルする際、同じ製品の原材料とするには品質が劣ってしまうため、一段階品質レベルを下げた分野の製品の原材料として再利用するリサイクル方法です。水平リサイクルに比べ、リサイクルに手間がかからず容易に行えるメリットがあります。

なお、リサイクル方法としてはほかに、廃プラスチックを化学的に分解して化学製品の原料として再利用するケミカルリサイクル。廃プラスチックを固形燃料にする、もしくは焼却して熱エネルギーとして再利用するサーマルリサイクルなどがあります。

それぞれのリサイクル方法の概要については、「廃プラスチックのリサイクルはなぜ必要なのか?その理由やリサイクル方法、課題を解説」をご覧ください。

また、プラスチックの廃棄物リサイクルへの取り組みについて詳しくは、「廃プラとは?廃プラスチックが抱える課題と課題解決のための取り組みをわかりやすく解説」をご覧ください。

マテリアルリサイクルの具体例

マテリアルリサイクルは、廃棄されるものによってさまざまな種類があります。ここでは主な例を見てみましょう。

プラスチック

プラスチックのマテリアルリサイクルで、最もポピュラーなのはペットボトルです。廃棄されたペットボトルを新たなペットボトルに再利用する水平リサイクルのほか、衣類や食品用トレーなどに再利用するカスケードリサイクルも実施されています。

また、上述した食品トレーのほか、卵パックやラミネート包材、洗剤容器など、ペットボトル以外のプラスチックもマテリアルリサイクルとして再利用されます。

プラスチックをマテリアルリサイクルするには、まずは回収されたプラスチックを洗浄して異物を取り除くことが必要です。次いでそれを粉砕してフレーク状にし、再利用原料として新たな製品を製造します。

金属

廃棄される電気製品や自動車などから取り出されるさまざまな金属を分類し、マテリアルリサイクルを行います。取り出されて再利用されるものの代表的な例は、アルミや鉄などです。

特にビールやジュースなどに使われるアルミ缶は多くが再利用されており、いったん高温で溶かし、固めて再利用地金にしたうえで、新たなアルミ缶の製造や自動車部品に使われます。アルミ缶リサイクル協会の調査によると、2022年度のアルミ缶のリサイクル率は、93.9%を誇ります。2015年以降のリサイクル率は軒並み90%以上を維持しており、リサイクルが定着していると言っていいでしょう。

参照:アルミ缶リサイクル協会:リサイクル率|アルミ缶リサイクル協会

木くず

新築や改築の際の建設現場や家具の製造時、あるいはパルプ製造時などに生じた木くずのほか、輸入木材の木くず、おがくず、廃チップ、板切れなども再利用されます。細かく砕き、あらためて成形することで、建築資材や家具資材として利用されるのが一般的です。

マテリアルリサイクルの現状と課題

廃棄物の再利用方法として高い効果が期待されているマテリアルリサイクルですが、プラスチックの場合にはいくつかの課題もあります。具体的には次のとおりです。

  • マテリアルリサイクルに利用されるプラスチック量の少なさ

マテリアルリサイクルの量が少なく有効活用できていないことが、現状での大きな課題だと言えます。

一般社団法人プラスチック循環利用協会が発表した「2021年度プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況」によると、2021年の廃プラスチック総排出量は824万トンです。これに対し、リサイクルされた量は717万トン(全体の87%)。そのなかでマテリアルリサイクルとして再利用された量は、わずか177万トン(リサイクルされた量の21%)です。

参照:2021年度プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況|一般社団法人プラスチック循環利用協会

  • プラスチックのすべてがマテリアルリサイクルできるわけではない

例えばマテリアルリサイクルに不向きなものとしては、ドレッシングのように食用油やオイル成分など食用油脂を含むものや、ソースや焼き肉のたれのように香辛料による香りの強いものなどの容器類が該当します。洗浄や分別に大幅に手間がかかるため、思ったようにリサイクルが進まないケースも多く見られます。

  • リサイクルを繰り返すと品質の劣化が起きる

廃棄されたペットボトルを新たにペットボトルとして再利用する水平リサイクルは、何度も熱を加えられるためプラスチックの分子が切れてしまい、品質が劣化してしまいます。そうなれば、一段階品質レベルを下げるカスケードリサイクルにしか使えなくなってしまいます。

三井化学はサーキュラーエコノミー実現のためにケミカルリサイクルを進めています

廃棄物を、同じ製品の原材料として再利用するマテリアルリサイクルは、プラスチックごみ問題やライフサイクルで見たときの二酸化炭素の排出量削減に大きな効果が期待されています。ただ、課題もあります。

プラスチックのすべてがマテリアルリサイクルに使えるわけではない点、洗浄の手間がかかる点、そして繰り返しリサイクルをすることに限界がある点も大きな課題となっています。そのため、マテリアルリサイクルに代わるリサイクル方法が求められているのです。

そこで、三井化学ではサーキュラーエコノミー実現のため、「RePLAYERⓇ」というリサイクルを推進する取り組みのもと、マテリアルリサイクルの課題解決の手段として、「ケミカルリサイクル」を進めています。ケミカルリサイクルは、廃プラを化学的・熱的に分解することで一度原料油やモノマーに戻し、再度プラスチックの原料として利用する方法です。マテリアルリサイクルでは、異素材などが含まれている場合には処理の難易度が上がるためにリサイクルが難しいのですが、ケミカルリサイクルでは再度原料化することでプラスチックとして再資源化できるため、サーキュラーエコノミーの実現が期待されています。

脱炭素や循環型社会へ対応を検討している企業の担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

持続可能な社会に向けて行動する「RePLAYERⓇ」「BePLAYERⓇ」はこちら