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プラスチックごみ問題

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プラスチックはモビリティ、ICT、食品、日用品、ヘルスケアなど多岐に渡る分野で使用されており、私たちの生活に欠かせない素材です。ただ、使用後に適切に処理しなければ、ごみとして滞留し、環境を汚染する要因になってしまいます。そこで今回は、プラスチックごみ問題とその対応策について解説します。

使用済みプラスチックを取り巻く問題

プラスチックは成形性(自由に形を成形できる)、軽量性、耐久性をはじめとした機能性に優れ、自動車、家庭用品、電化製品、医療用品など様々な製品に使用されています。その一方で、従来の石油由来のプラスチック製品がその役目を終えた時に、燃焼・分解すると大気中の二酸化炭素が増加します。また適切に回収されずに海洋に流れてしまうと海洋プラスチックごみとなり、自然界への影響を与えてしまいます。

燃焼・分解による大気中の二酸化炭素の増加に対しては、バイオマス化によりカーボンニュートラルにしていくアプローチが進められていますが、今回はプラスチックごみ問題に焦点を当てて解説していきます。

※プラスチックのバイオマス化(バイオマスプラスチック)については、「バイオマスプラスチックとは?メリットや活用用途を解説」を併せてご覧ください。

米国など広大な国土を持つ国では、埋立がプラスチックごみの処理方法として有効になることもありますが、国土の狭い日本などでは、ごみを埋め立てるための十分な土地がなく、資源循環という側面からも最善策とは言えません。また、自然分解を促す方法として、生分解性プラスチックの開発も進んでいますが、分解させるにはコンポストなど一定の条件下におく必要があることや、既存のリサイクルシステムにマイナス影響を与える(非生分解性プラスチックに混ざるとリサイクル品の品質低下につながる)ため、現時点ではプラスチックごみ問題の根本的な解決にはつながっていません。そのため、プラスチックごみ問題については、リサイクルを通じていかに廃プラスチックを再生可能な資源にしていけるかが焦点になります。

 

世界の廃プラスチック処理状況

世界のプラスチックごみの処理状況を見ると、米国をはじめとした多くの国や地域では埋立が多く、中国やインドを含め、OECD非加盟国では不法投棄が多いという厳しい現状が見えてきます。

          世界のプラスチック廃棄物処理状況(2019年)
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出展:OECD Global Plastics Outlook Database およびプラスチック循環利用協会 プラスチックのマテリアルフロー図(2019)から作成
*日本のデータはマテリアルフロー図から追加。焼却はエネルギー回収(60.4%)と単純焼却(8.2%)を合計、リサイクルはマチリアルリサイクル(21.9%)とケミカルリサイクル(3.2%)の合計。不法投棄は統計情報がないが、1%未満と推計される。

*欧州のOECD加盟国で、EU加盟国はドイツ、フランス、スペイン、イタリアなど19カ国、EU非加盟国は英国、スイス、ノルウェーなど7カ国。

上記の図で明白ですが、世界全体のプラスチックごみのリサイクル率は9%に留まっているのが現状です。つまり、世界全体でリサイクル率を向上させ、サーキュラーエコノミー社会を構築していくことが共通の社会課題といえます。プラスチックごみの処理に関しては、日本やEUではエネルギーリカバリー(サーマルリサイクル)、米国では埋立が占める比率が最も高く、廃棄物処理・管理のインフラ整備が十分ではないOECD非加盟国では、埋立や不法投棄が一般的な手段となっています。そのため、各種インフラ整備を含め、全世界的にサーキュラーエコノミー社会への転換に向けた施策を講じていくことが重要になっています。

※リサイクルについては、ホワイトペーパー「プラスチック・リサイクルデータ集」に各種データを掲載しております。併せてご覧ください。

 

日本におけるプラスチックの資源循環

日本のプラスチックの消費量は910万トン(2022年実績)で、そのうち包装・容器が49%を占めています。一方、プラスチックの総排出量823万トン(2022年実績)のうち、家庭ごみを自治体が収集する「一般廃棄物」が424万トン(52%)、工場や小売店、飲食店から産業廃棄物処理業者が回収する「産業廃棄物」が399万トン(48%)排出されています。

また、排出される廃プラスチック823万トンのうち、717万トン(87%)が有効利用されており、この数値は決して低くありません。ただ、有効利用の手法としては、廃プラスチックを焼却処理した際に発生する熱エネルギーを回収して利用するエネルギーリカバリー(サーマルリサイクル)が62%と過半を占めており、資源循環という側面で見ると、マテリアルリサイクル(メカニカルリサイクル)やケミカルリサイクルをさらに推進する必要があります。

        日本のプラスチックマテリアルフロー概要(2022年)
furo-キャプチャ
出展:プラスチック循環利用協会 プラスチックのマテリアルフロー図より作成

日本のPETボトルのリサイクル率は「世界一」

こうした中で、日本のPETボトルのリサイクル率は2021年度実績で86.0%と群を抜いて高く、環境意識の高い欧州の同年実績42.7%の約2倍の水準に達しています。

日本では1997年から「容器包装リサイクル法」が施行され、消費者には分別排出を、市町村には分別収集を求め、PETボトル製造業者はリサイクルを行うことが義務付けられています。飲料メーカー、ボトルメーカー、自治体、消費者が協力して20年以上の歳月をかけて作り上げた回収システムが世界一の秘訣といえます。

他のプラスチック製品についても、分別・回収するための仕組みづくりや、製品開発の時点でリサイクルすることを前提としたエコデザインを推進することができれば、廃プラスチックを資源としてさらに活用できる可能性は十分にあります。

          日米欧のPETボトルリサイクル率の推移
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出展:PETボトルリサイクル推進協議会

エネルギーリカバリーも有効だが、資源循環の余地はまだある

日本における廃プラスチック処理については、エネルギーリカバリー(サーマルリサイクル)の比率が62%と最も高くなっています。

エネルギーリカバリーとは、ごみ焼却施設での発電・熱利用焼却、セメント原・燃料化、固形燃料化(RPFRDF)などによる廃プラスチックの再利用方法です。これにはいくつかの手法がありますが、廃プラスチックを焼却した際に出る熱や蒸気をエネルギーとして回収して利用する発電、いわゆる「ごみ発電」として活用されているケースが多く、埋立による土地利用の抑制にも貢献しています。

また、プラスチックは紙の23倍の発熱量を有し、特にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどは石炭、石油、LPGなどの燃料に肩を並べるほど高い発熱量があります。そのため、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルすることができない廃プラスチックについては、エネルギーリカバリーでの活用が合理的なアプローチだと言えます。
ただ、前述したように、PETボトルのような分別・回収の仕組み等を整備すれば、まだリサイクルして製品に活用できる余地があり、化石資源の利用量も減らすことができます。

また、石油由来の廃プラスチックをエネルギーリカバリーで焼却させると、大気中の二酸化炭素が増えることになります。廃棄物分野(埋立、生物処理、焼却、原燃料利用、排水処理、その他)の温室効果ガス排出量(二酸化炭素換算)は、日本の総排出量の3%程度に過ぎず、地球温暖化の寄与度はそれほど大きくないものの、一定量の二酸化炭素を排出するため、カーボンニュートラル戦略でも「バイオマスプラスチック」の活用による温室効果ガスの排出抑制を重視しています。

こうした側面を踏まえると、分別できない廃プラスチックや、汚れのはげしい廃ブラスチックについてエネルギーリカバリーを上手く使いながら、可能な限りマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルの比率を高めていくことが重要テーマになっていると言えます。

三井化学はバイオ&サーキュラーで資源循環と温室効果ガス排出量削減の実現に挑戦しています

三井化学は、サーキュラーエコノミー実現に向けた「RePLAYER®」という取り組みのなかで、マテリアルリサイクルだけでなく、ケミカルリサイクルの展開も強化しています。さらに、リサイクルだけではカバーしきれない地球温暖化問題の解決に向け、社会のバイオマス化を推進する「BePLAYER®」という取り組みも展開しています。

最初の製品製造においては温室効果ガスの削減効果が高いバイオマスプラスチックを活用し、使用後の廃プラスチックはリサイクルして資源を循環させる。このようなバイオサーキュラーな世界にしていくことが、サステナブル(持続可能性)を超えたリジェネラティブ(再生的)な社会の実現につながると三井化学は考え、その実現に向けた挑戦を進めています。

バイオ&サーキュラー

サーキュラーエコノミーやカーボンニュートラルへの対応を検討している企業の担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

リジェネラティブな社会に向けて行動する「RePLAYER®」「BePLAYER®」はこちら

 

参考資料
*1:プラスチックごみのなにが問題なの?|独立行政法人国民生活センター:
https://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-202102_07.pdf
*2:ペットボトルのリサイクル率は88.5% いったい何になる?|ELEMINIST:
https://eleminist.com/article/1873
*3:廃棄物分野の温室効果ガスに関して|環境省:
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/chikyu_kankyo/ondanka_wg/pdf/004_04_04.pdf

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