社外取締役座談会

代表取締役 社長執行役員 CEO 橋本 修

VISION 2030を実現し、未来に貢献する
化学企業グループとなるために

写真左から

社外取締役(新任)

三村 孝仁

社外取締役(在任期間3年)

吉丸 由紀子

社外取締役(在任期間1年)

馬渕 晃

VISION 2030では社会課題を起点とした様々な変革を掲げています。
その策定プロセスにおける議論の中で社外取締役として行った提言や、
VISION 2030に対する評価、実現に向けた課題について語っていただきました。

社内浸透の推進と継続的なモニタリングにより、変革の実効性を高める

吉丸私がVISION 2030の策定で印象に残っているのは、2030年頃に中核として活躍が期待される若手・中堅社員を集めたワークショップを開催し、そこで出された課題意識や社風に対する思いについて、経営陣と社員が双方向で共有を図った上でスタートしたことです。策定の早い段階から未来を担う社員の参画を得たことは、視点の幅を広げると同時に実行フェーズの大きな力にもなります。私からは、絵にかいた餅にならないよう、より実効性を高めるために、非財務要素にもKPIを設定し取締役会で継続的なモニタリングを行う必要性を提言しました。

馬渕私が特に注目したのが事業ポートフォリオ変革です。私が社外取締役に就任した時には、すでにVISION 2030のひな型ができあがっている段階でしたが、当初、新たな事業セグメントが個別に成長していくイメージで、グループ全体としてどこに向かおうとしているのかが分かりづらい印象を持ちました。2030年はあくまで未来に向かう通過点ですから、長期的な視点で、自分たちの存在意義は何か、事業ポートフォリオ変革を通じてどのように強みを発揮し社会課題解決に貢献していこうとしているのか、当社グループ全体としての方向性をもっと明確に打ち出していく必要があると提言しました。

三村私は2022年度に就任したばかりですので、社会的な潮流という観点からお話しします。従来、企業は社会に対して業績の成果を示していればよかったのですが、昨今は、中長期視点で、事業活動を通じてどのように社会課題解決に貢献するかを示すことが求められています。VISION 2030は、当社グループが社会に対してこれまで以上の価値を提供するために、どのように変わろうとしているのかを示しており、非財務指標も含めて明確な定量目標を定めている点は高く評価できます。先ほどの事業ポートフォリオの変革についても、その意図をしっかりステークホルダーに説明していくと同時に、社内でも共通認識として浸透を図り、進捗をきちんと示していくことが重要です。そうすれば、VISION 2030は抽象的なビジョンではなく、確固とした道標として生きてくると思います。

吉丸私は、このVISION 2030に、役員から社員まで一丸となった「変革へのチャレンジ」という大変強い意志を感じています。当社グループには長い歴史の中で培ってきた実績と組織風土がありますから、その中で「変革」を「実行」していくのは、ゼロから作り上げるよりも大変なチャレンジと言えるのではないでしょうか。VISION 2030発表に際して、コロナ禍でもありオンラインを活用して、社長が社員と対話する機会を数十回設けたと聞きました。現場レベルまで共通認識を持ってスタートしていくことは、とても大切なことだと思います。

馬渕2021年度は過去最高益で業績が順調だったこともあり、「このままの延長で良い、変わる必要はない」という意識を潜在的に持ってしまいやすい。だからこそ、現場レベルまで変革の機運を浸透させることは重要ですね。

三村特にグローバルに展開する企業グループにとって、各国・地域の現場までしっかりと腹落ちさせるのは非常に難易度が高い。一つのビジョンを示して終わりではなく、それに向かって段階的にステップを踏んでいくと浸透しやすいのではないでしょうか。

馬渕私たち社外取締役としては、客観的な視点で継続的にモニタリングを行い、必要があれば軌道修正を提言することで、VISION 2030の着実な進捗に寄与していきたいと思います。

取締役会におけるM&A評価と長期視点での議論の強化

吉丸VISION 2030では新しいビジネス領域に進出するため、M&Aや他社との連携を積極的に検討していきますが、案件が増えれば増えるほど、リソース配分や優先順位などの判断が難しくなっていきます。私たち社外取締役の役目は、グループ全体での状況を確認し、リスクやPMI(Post Merger Integration)の進捗を問いかけ続けていくことだと考えています。

三村M&Aの目的は、自社が持ち得ていない「技術」、「スピード」、そして「新たな市場」の獲得です。この3つのいずれにも当てはまらないようなM&Aを繰り返しても、大きな成果は得られません。

馬渕私は、M&Aの最も重要な判断基準は、当社グループが目指す方向性と整合しているかだと思います。M&Aが単に数値目標を達成するための手段になっていないか、には注意が必要ですね。

吉丸それらを見極めるためにも、どのような成長シナリオを描き、M&Aをどのような機会と捉えているのか、私たちがしっかりと問いかけ、十分に議論していきたいと思います。

馬渕私は、取締役会の実効性という意味においては、取締役会は、M&A等の目の前の案件に加え、当社グループが進むべき方向性など、長期的な視点で議論する機会がもっと多くあってもいいのではないかと思っています。例えば、環境や人材といったテーマについて、取締役会の外で、社内外の役員が意見交換する場を設けることも一つの方法だと思います。

三村決議事項とは別に、まとまった時間を設けて人材戦略やESGといったテーマを議論するのは良いですね。今回のVISION 2030策定プロセスのように、様々な案件で、社外取締役の意見をなるべく早い段階から積極的に取り入れてほしいと思います。

多様な人材プールを活かし、次世代リーダー育成に注力していく

吉丸VISION 2030の戦略のもとで、M&Aや提携、スタートアップとのオープンイノベーションなどを積極的に行い、事業領域もますます広がっていきます。海外の売上収益比率が約50%に達する中で外国籍社員も増加し、異なるカルチャーをバックグラウンドに持つ人材の多様性も一気に高まっていくでしょう。2022年度には現地採用社員1名が当社の執行役員に就任しました。こういった人材の多様な価値観が相互に刺激しあい、イノベーションが起こりやすい土壌が育っていくことを期待しています。

三村私は、経営者に重要な資質は「人望」だと思います。いくら優秀な人材であっても、人がついてこないことには経営戦略は実行できません。もちろん、将来像を描くための「知力」、そして経営トップとしての覚悟・精神力にあたる「胆力」も必要不可欠ですね。

馬渕変化の激しい外部環境の中、正しい方向感を持って進むことができなければ、大きな成長は実現できません。当社グループのように大規模な設備投資を伴う化学企業においては、長期的な展望をしっかりと描けることも重要だと思います。

吉丸現在、多様な人材プールを作り、次期経営者候補となる人材を育成するプランが進んでいます。また、従来の役員人事・報酬に関する委員会を「人事指名委員会」「役員報酬委員会」に改訂し、選解任・評価基準等の討議事項を明確化することで実効性を高めるとともに、委員会のサブコミッティとして社外取締役のみで構成するエグゼクティブセッションを開催し、現状の課題や中長期的な人材プールのあり方について協議しています。こうしたテーマは当社グループの中長期成長の要となりますので、その進捗について注視していきたいと思います。

社外取締役座談会 イメージ

客観的な視点を活かして三井化学グループの成長に寄与

吉丸現在進めているグリーンケミカルの取り組みは、化学産業の基盤ともいえるナフサクラッカーを持っているからこそ、バイオマス製品をはじめ社会課題の解決に大きく貢献するチャンスが見えてきています。保有する素材の強みを活かしたソリューション提供による社会貢献を通じて、成長が期待できる領域はもっと広がると信じています。一般株主をはじめとするステークホルダー目線からの意見や思いなども議論に加えていくことで、今後の持続的成長に寄与したいと思います。

馬渕私は、会社にとって大切なのは、本業でしっかり業績を上げていくことと、広い意味でのガバナンスが利いている、いわゆる「いい会社」であることだと思います。この2つが両輪となって機能している会社が、持続的な成長を遂げられると思っています。
VISION 2030では様々な変革を掲げていますが、これまでの話にもあったように、会社の風土を変える取り組みは容易ではありません。外から多様かつ客観的な視点を取り入れ、自ら変わっていこうとする、それが会社の成長につながるあるべき姿だと思います。私の社外取締役としての存在意義も、そこにあると考えています。

三村当社グループは、社会インフラに欠かせない化学会社であり、卓越した技術をたくさん持っています。だからこそ、従来のB to Bの素材提供にとどまらず、その先の最終消費者にまで目を向けることで、もっと世の中の期待に応えられる企業になっていくと思います。私も社外取締役として、客観的な立場を活かした課題の指摘・アドバイスを行うことで、当社グループが大きく成長していくことを期待しています。

役員人事・報酬に関する委員会の実効性向上に向けて

当社グループは、2021年度において、VISION 2030の策定およびコーポレートガバナンス・コード改訂等の内外の環境変化を踏まえ、人事諮問委員会および役員報酬諮問委員会の運営について、さらなる改善に取り組んできました。特に、社長/CEOの後継者計画に必要なポジション要件(役割・行動特性・資質・経験)や選解任・評価基準、モニタリングプロセス等、委員会においてより実効性のある議論を行うべく、委員会で討議する事項を明確化し、委員会の名称も「人事諮問委員会」「役員報酬諮問委員会」から「人事指名委員会」「役員報酬委員会」へと改訂しました。

2022年度上期は、人事指名委員会のサブコミッティとして、人事指名委員会委員のうち社外取締役のみで構成するエグゼクティブセッションを開催し、現状の課題や中長期的なタレントプールのあり方に関する事項等を協議しました。エグゼクティブセッションでは、「ポジション要件について、2030年に引っ張られ過ぎると、長期的普遍性がなくなってしまう」、「最高経営責任者のコンピテンシーにおいて、トップチームの構築もさることながら、トップ自らが、人材育成を率先することがより重要になってくるのではないか」等、後継者計画を議論する過程において、活発に議論を重ねています。さらに、役員報酬委員会においても、VISION 2030に掲げる非財務指標の役員報酬制度への組み込み等、役員報酬制度のあるべき姿を再考し、制度改定に向けた議論を行っています。

2021年度開催状況
  • 人事諮問委員会:2回
  • 役員報酬諮問委員会:3回
2022年度上期開催状況
  • 人事指名委員会:2回
    ーエグゼクティブセッション:4回
  • 役員報酬委員会:3回