新機能ドライバーズグラスDs’Assist、新登場。メガネスーパー104店舗で販売開始。
2021年6月末にメガネ小売チェーンのメガネスーパー104店舗で販売が開始された、三井化学のUV+420cut™技術搭載のドライバーズグラスDs’Assist(ディーズアシスト)。その商品企画から製品化、販売開始までを担ってきた、メガネスーパーを運営する(株)ビジョナリーホールディングスの吉野正夫氏と(一社)日本自動車車体補修協会(通称JARWA)の吉野一氏、それから三井化学で担当した奥野量巳氏に話を聞きました。
ドライバーの視覚をサポートする新しいアイウェア。
はじめにDs’Assistの商品概要についてお聞かせください。
吉野(正):本商品は光をコントロールする3つの機能を併せ持った世界初のメガネレンズにより実現した、自動車運転時の視覚をサポートする全天候型のドライバーズグラスです。三井化学さんとの共同企画により製品化し、「安心・安全なクルマ社会の実現」を目指すJARWAさんからの推奨認定を受け、6月よりメガネスーパーの104店舗で販売を開始しました。
ビジョナリーホールディングスと三井化学で共同企画。
どのような経緯で共同企画することになったのでしょうか。
吉野(正):はじめのアプローチは三井化学さんからでした。UV+420cut™を使った新しい商品を作りませんか、と。2020年の5月のことです。ただしそれ以前から、三井化学さんはUV+420cut™を工業用の安全メガネに使うことを考えていました。
奥野:この話、じつはビジョナリーホールディングスさんに企画を持っていく前にJARWAさんと進めていた別の企画がありましたので、JARWAさん企画という意味では第二弾となります。
2018年に工業用安全メガネの企画としてスタート。
JARWAは当初から本企画に参加していたということでしょうか。
吉野(一):JARWAは7年ほど前に自動車メーカー8社と国産の溶接機メーカー4社により設立された一般社団法人で、会員となった自動車整備工場に車体情報を提供して、安全を確保した補修を情報面でサポートしています。今回の企画は、もともと自動車修理工場の安全ソリューションとして進めた保護メガネの企画が元になっています。
自動車の運転ではなく、修理で使用する安全メガネですか。
吉野(一):はい、具体的に言いますと板金作業での使用です。自動車の軽量化が進み板金技術も大きく変わりましたが、現在は凹んだところにパテと呼ばれる資材を埋め込む手法がとられています。埋め込んだパテは紫外線を当てて硬化させますが、自動車ディーラー系の工場を中心に、UV照射器がここ数年でLED光源のものに変わり始めています。これは、水銀灯タイプのものが製造禁止になったためで、今後はすべてLEDタイプに代替されます。このLEDタイプの光の波長は405nm(ナノメートル)で、JISなどの安全規格で定められている紫外線の波長400nmよりやや長いので、規格上は問題になりません。しかし実際にはパテを硬化させる非常に強い光を照射するので無害とは言えません。こうした状況変化を問題視したJARWAは、LEDタイプのUV照射器が発する405nmの光をカットできる道具や材料を探した結果、UV+420cut™という材料を三井化学が持っていることを知りました。2018年のことです。
奥野:三井化学のUV+420cut™は、紫外線だけではなく波長400〜420nmのエネルギー量が高く有害と言われる可視光線をカットできる材料です。この特長がJARWAさんの目に止まり、UV+420cut™を使用した工業用の安全メガネの企画が始まりました。
吉野(一):しかし結果として、その時点ではコスト面でビジネスとして成立しないと断念しました。まだLEDタイプのUV照射器によるパテ硬化は普及途上であり、需要が伸びておらず、仮に生産しても商品単価が高額になることが予想されたからです。
2020年にドライバー向け商品として企画をリスタート。
しかし企画自体は断念しなかったということですね。
奥野:B to Bである工業用としての製品化は時期尚早と判断しましたが、B to Cでの可能性を探るという意味合いもあり、JARWAさんにビジョナリーホールディングスさんを紹介しました。そして話し合いを重ねる中で、車を運転される皆さんの声として、昼間運転用サングラスが夜間は使用できないとか、暗すぎてトンネルに入るとき怖い、いちいち外すのが面倒とか、夜間運転用のメガネが黄色すぎて困るとか、完全に満足できるものが世の中に存在しないという話をよく聞くにつれ、ドライバーの皆さんが満足されるドライバーズグラスの開発はどうだろうという話になりました。
吉野(一):JARWAの立場としては、一般消費者向けのドライバーズグラスで生産数が増えれば、その延長線上で当初の目的であるB to Bの工業用グラスを低コストで普及させられると踏んでいましたし、ドライバーズグラス自体が安全運転に貢献するものですから、継続して商品企画に参加しました。
3つの光コントロール機能を持つDs’Assistが誕生。
企画はそのままドラスバーズグラスの開発に転用できたのでしょうか。
吉野(正):ドライバーズグラスは、サングラスのような明確なカテゴリーとして確立されていたわけでありませんでした。ですから必要な機能は何かというところから、商品のあり方を検討しました。
吉野(一):さまざまなドライビングシーンを考えても、UV+420cut™だけではドライバーズグラスの機能としては満足されないでしょう。ですから運転する条件や環境などを検証しながら、必要となる機能を洗い出しました。例えば日中の日差しの眩しさを緩和できないか、夜間運転時に対向車のLEDヘッドライトの眩しさを軽減できないか、といったように。
奥野:そこで、眩しさの原因となる特定波長をカットして視界をくっきりさせるNeoContrast™を採用し、また、夜間運転時、ドライバーの皆さんがお困りの対向車のヘッドライトに関し、最近、随分と多くなってきている白色LEDの特定波長を選択的にカットするLEDライトカットの機能も持たせることにし、その実現を目指しました。
吉野(一):NeoContrast™ とUV+420cut™、LEDライトカット、この3つの機能をひとつのレンズに持たせたドライバーズグラスは、おそらく世界初のソリューションではないでしょうか。
JARWAもまた共同企画の一員であったということですね。
吉野(一):企画の立ち上げから参加したことは事実ですが、最終的にリスクを負って製造・販売するのはビジョナリーホールディングスさんですし、レンズ材料の品質を担うのは三井化学さんです。組織としてのJARWAの役割は安全認証として推奨マークを付与することですので、新製品開発をする組織としての立場をとっていません。
メガネスーパー104店舗で限定発売。
パートナーとしてなぜメガネスーパーが選ばれたのでしょうか。
奥野:現状、視力検査の質の向上に力を入れられていることが大きなポイントでした。検眼器具なども日本に数台しかないような機材を揃えられていますし、人それぞれ、千差万別の目に対して、最も合うレンズを提供できる技術をお持ちです。また、シニアの方々から大変支持されているということも理由の一つです。
吉野(正):メガネスーパーは10年ほど前にリブランディングを行い「アイケア」をひとつのテーマに掲げました。もともと強みとしていた視力検査に力を入れ、現在大きな差別点としています。通常メガネの度数を決めるための検査は5分くらいで行いますが、メガネスーパーでは最大60の検査項目に約1時間かけています。距離で度合わせをするだけでなく、明るさに応じた視力検査もしています。昼間の視力と夜の視力は大きく変化しますから。
シニアドライバーをターゲットとしているのでしょうか。
奥野:年齢層をあえて絞ることは考えませんでした。ただDs’Assistは視機能が低下しはじめた高齢者の方が、色や明るさの違いを実感しやすいとは思います。
吉野(正):NeoContrast™のレンズはシニア層に人気がありますから、Ds’Assistもシニア層を中心にアピールしていくことになると思いますが、やはりデザインも含めシニア色を強く打ち出したものではありません。ドライバーズグラス市場が確立しているとは言えない状況では、ターゲット訴求よりもあくまでも機能アピールにより、必要とする方にお届けしていきたいと考えています。
販売体制についてお聞かせください。
吉野(正):結果としてDs’Assistはレンズに度数を入れないオーバーグラスとして商品化しました。メガネの上からかけていただくタイプです。メガネスーパーは現在350店舗ほどのチェーン展開ですが、販売現場では度が入らないと売りにくいという声もあり、店舗側の要望を聞いて104店舗での販売スタートとなりました。新カテゴリー商品ですので、今後も販売現場のヒアリングを徹底して、お客さまのニーズに柔軟に対応していこうと考えています。
本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。