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廃プラスチックのリサイクルはなぜ必要なのか?その理由やリサイクル方法、課題を解説

一般社団法人 プラスチック循環利用協会によると、2021年に廃棄されたプラスチックの量は824万トンで、そのうち有効利用された量は717万トンです。今回は廃プラスチックの概要や種類を見たうえで、リサイクルが必要な理由、具体的なリサイクル方法、課題などについてお伝えします。

一般社団法人 プラスチック循環利用協会によると、2021年に廃棄されたプラスチックの量は824万トンで、そのうち有効利用された量が717万トンです。2015年以降、総排出量にそれほど大きな変化はありませんが、有効利用率は少しずつ増加しています。ここからさらに有効利用率を向上させるには、技術の向上や新たなアイデアが必要です。今回は、廃プラスチックの概要や種類を見たうえで、リサイクルが必要な理由、具体的なリサイクル方法、課題などについてお伝えします。

参照:2021年プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況|一般社団法人 プラスチック循環利用協会

廃プラスチックとは?

廃プラスチックとは、使用後に廃棄されたプラスチックを指します。廃プラスチックには大きく2種類あり、1つは私たちが生活のなかで使用して廃棄する一般廃プラスチック(ペットボトル、レジ袋、カップラーメンや弁当の容器など)。そしてもう1つが、製造・加工・流通などの事業活動の過程で発生する産業廃プラスチックです。

冒頭でも触れたように、廃プラスチックの量は以前と比べて減少はしておらず、近年は年間で800万トン以上が排出されており、その処理方法・有効利用が大きな課題となっています。

廃プラスチックについて詳しくは、「廃プラとは?廃プラスチックが抱える課題と課題解決のための取り組みをわかりやすく解説」をご覧ください。

廃プラスチックのリサイクルが必要な理由

廃プラスチックのリサイクルが必要である主な理由として挙げられるのは、次の点です。

  1. 廃プラスチック有効利用のため

リサイクルにより廃プラスチックを資源として有効活用することで、埋め立てや単純焼却される未利用廃プラスチックの量を減らすことができます。日本では廃プラスチックの埋立処理は5%程度、単純焼却も8%程度と高い比率ではありませんが、限りある土地の利用を考慮すると、埋め立ては可能な限りゼロに近づけることが理想です。

また単純焼却はもちろん、廃プラスチックのリサイクルの62%を占めるサーマルリサイクルも二酸化炭素の排出につながるため、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルによって焼却を減らせば、二酸化炭素排出量の削減が可能です。

さらに、リサイクルにより枯渇性資源である石油の新たな採掘・使用量の節約にもつながります。限りある天然資源を節約するためにも、重要な考え方です。

参照:2021年プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況|一般社団法人プラスチック循環利用協会

  1. 国内での処理が必要になっているため

従来、廃プラスチックは、中国や台湾、東南アジアへと輸出されていましたが、各国が輸入禁止や規制を始めたことで、国内での処理が必要になりました。そのため、国内のサーマルリサイクルや単純焼却の設備の能力を超える量を処理しなければならなくなったのです。そこで、国内の廃プラスチックのリサイクル割合をサーマルリサイクルに頼るのではなく、マテリアルやケミカルリサイクルを優先させることで、資源を有効利用し環境負荷を下げながら処理していくことが求められています。

また、20224月より新たに「プラスチック資源循環法」が施行され、企業は基本方針として次の4つの行動が求められるようになりました。

  1. プラスチック使用製品設計指針に則してプラスチック使用製品を設計する
  2. 特定プラスチック使用製品の使用を合理化するために業種や業態の実態に応じて有効な取り組みを選び、その取り組みを行うことにより廃棄物の排出を抑制する
  3. 自ら製造・販売したプラスチック使用製品の自主回収・再資源化を率先して行う
  4. 排出事業者としてプラスチック使用製品産業廃棄物などの排出抑制・再資源化を実施する

3つめの「自ら製造・販売したプラスチック使用製品の自主回収・再資源化を率先して行う」で示されているように、製造・販売企業が自ら積極的にリサイクルを推進するための仕組みや技術を投入していくことが重要になっています。

参照:プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律 | e-Gov法令検索

廃プラスチックの具体的なリサイクル方法と特徴

廃プラスチックの具体的なリサイクル方法は、大きく3つに分けられます。それぞれの概要や具体的な例は以下のとおりです。

マテリアルリサイクル(メカニカルリサイクル)

マテリアルリサイクルとは、廃プラスチックを物理的処理によりプラスチック製品の原料として再利用する方法です。プラスチックの種類によってリサイクルできるかどうかは異なりますが、リサイクル前の製品と同一のものにリサイクルする「水平(レベル)マテリアルリサイクル」と、リサイクル前の製品から品質を下げたものにリサイクルする「ダウンマテリアルリサイクル(カスケードリサイクル)」の大きく2つに分けられます。

この方法には、CO2の排出量削減や天然資源の消費抑制といったメリットがありますが、プラスチックに含まれる汚れや不純物を除去する手間がかかる点と、マテリアルリサイクルを繰り返すことでプラスチックの品質が低下する可能性がある点などに注意が必要です。

マテリアルリサイクルについて詳しくは、「マテリアルリサイクルとは_具体例や現状の課題_これからのリサイクルについて解説」をご覧ください。

ケミカルリサイクル

ケミカルリサイクルとは、廃プラスチックを化学的に分解して化学製品の原料として再利用する方法です。マテリアルリサイクルと同様に、プラスチックの種類によってリサイクルできるかどうかが異なります。ケミカルリサイクルの方法は、油化、ガス化、高炉原料化、原料・モノマー化などがあります。

ケミカルリサイクルのメリットは、原料レベルまで戻すため、そこから再びプラスチックを製造しても従来と同等の品質を保つことができる点(品質の低下が生じない点)です。また、油化プロセスで炭化水素にまで戻すと、様々な種類のプラスチックを製造することができます。ただ、化学的な分解に高度な処理を要するため、物理的処理によるマテリアルリサイクルと比較しても、ケミカルリサイクルの方がコスト高になります。

サーマルリサイクル

サーマルリサイクルとは、廃プラスチックを固形燃料にする、もしくは焼却して熱エネルギーとして再利用するもので、日本では最も普及しているリサイクル方法です。

メリットは、分離や選別の手間が容易なため、異なる種類のプラスチックが混在している場合でもリサイクルが可能な点ですが、注意点としては、二酸化炭素などの温室効果ガスが発生する可能性があることです。

廃プラスチックのリサイクル取り組み事例

現在、さまざまな企業で廃プラスチックのリサイクルが進んでいますが、ここでは3つの企業が取り組んでいる事例について紹介します。

大手食品メーカーの取り組み事例

ある大手食品メーカーでは、マテリアルリサイクルの一環として、従来であれば廃棄していたプラスチックフィルムから再生材を生成しています。同メーカーでは、その再生材をイベント用のオリジナルエコバッグの原料として活用しています。

三井化学の取り組み事例

三井化学では、マテリアルリサイクルだけでなく、ケミカルリサイクルも展開し、廃プラスチックを資源として再利用する取り組みを実施しています。ケミカルリサイクルでは、廃プラスチックを熱分解して炭化水素の状態にまで戻し、原料として活用しています。

ごみ焼却施設の取り組み事例

あるごみ焼却施設では、サーマルリサイクルとして、発生した蒸気を工場内の暖房や給湯に利用したり、蒸気タービン発電機により発電し、工場の運転に利用したりするなどしています。

また、近隣施設への蒸気供給や電気事業者への電気の売却など、自社内での活用以外に新たな事業につながる可能性も生まれています。

三井化学はサーキュラーエコノミー実現のためにリサイクルを推進しています

近年、廃プラスチックの有効利用率は上昇しているものの、いまだに廃プラスチックの排出が多く、地球環境問題としても大きな課題となっています。そこで、廃プラスチック削減のため、さまざまな企業が「マテリアルリサイクル」「ケミカルリサイクル」「サーマルリサイクル」の3つのリサイクルに取り組んでいます。

三井化学では、サーキュラーエコノミー実現のために「RePLAYERⓇ」という取り組みのもと、リサイクル推進に取り組んでおり、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルを駆使し、廃プラスチック削減に向けて行動しています。

廃プラスチック削減や循環型社会への対応を検討している企業の担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

持続可能な社会に向けて行動する「BePLAYERⓇ」「RePLAYERⓇ」はこちら

参考資料
*1:やめよう、プラスチック汚染 | 国連広報センター:
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/beat_plastic_pollution/
*2:カーボンニュートラルで環境にやさしいプラスチックを目指して(前編)|資源エネルギー庁:
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/plastics_01.html
*3:三井化学 廃プラ分解油によるケミカルリサイクル製品の製造開始、日本初のバイオ&サーキュラークラッカーを実現(動画):
https://www.youtube.com/watch?v=_kcO15pjqGQ&t=2s

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