社長メッセージ
三井化学グループは、「地球環境との調和の中で、材料・物質の革新と創出を通して高品質の製品とサービスを顧客に提供し、もって広く社会に貢献する」ことを企業グループ理念として掲げ、経済軸、環境軸、社会軸から成る3軸経営を実践し、事業活動を通じた社会課題解決への取り組みを進めています。
2016年に長期経営計画「VISION
2025」を策定してから5年、「事業ポートフォリオの変革」を最重要課題として、「モビリティ」「ヘルスケア」「フード&パッケージング」の成長3領域の拡大、「基盤素材」事業の再構築と競争力強化、新事業・新製品創出による「次世代事業」の拡大に取り組んでまいりました。その間、財務基盤の強化等の一定の成果はありましたが、計画達成への実行力をさらに高めていかなければならないと考えています。
一方、外部環境としては、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展やESGの潮流拡大と企業経営との密接な結びつき、環境問題への社会的意識の高まり、新型コロナウィルス感染症拡大によるビジネス環境の変化や働き方の多様化、貿易摩擦や競争環境の激化など、企業を取り巻く環境が大きくしかもかなりのスピードで変化しています。
こうした様々な環境変化の中で、2025年以降も当社グループが成長を続けていくために、その指針となる「VISION 2030」を策定するに至りました。
「目指すべき企業グループ像」を再定義
長期経営計画「VISION
2030」を策定するにあたり、改めて当社グループの存在意義に立ち返って議論を行い、15〜20年先に当社が目指すべき企業グループ像を「化学の力で社会課題を解決し、多様な価値の創造を通して持続的に成長し続ける企業グループ」と再定義致しました。
当社グループに対してステークホルダーから寄せられる最も大きな期待とは、社会課題解決につながるソリューションの提供だと考えています。これを実現するうえで、「化学」には非常に大きなチャンスがあります。また、50年後の将来を見据えて、環境変化への対応を図りながら、化学が持つポテンシャルを最大限に活かして社会課題解決に向けた新たなビジネスモデルを生み出し、いかに私たちが持続的成長を続けられるかが重要となります。このような中長期的視点で、「目指すべき企業グループ像」を再定義しました。そして、そこから導き出される「2030年のありたい姿」には、世の中が目まぐるしく変わっていく中、あらゆる変化に俊敏に対応し、多様なソリューションを生み出してサステナブルな未来に貢献していきたいという強い想いを込めました。
目指す方向性の再定義と併せて、私たちが実現を目指す未来社会を「環境と調和した循環型社会」「多様な価値を生み出す包摂社会」「健康・安心にくらせる快適社会」と再設定しました。また、これらの社会像からバックキャストする形でマテリアリティの改定も行いました。
企業グループ理念は変わることのない存在意義であり、当社グループの事業活動の根幹にあります。経済軸、環境軸、社会軸の3軸経営という考え方を引き続き実践し、理念の実現を目指していきます。
「ありたい姿」の実現へ
「VISION
2030」の5つの基本戦略の中でもポイントとなるのが、「ビジネスモデル転換」と「ポートフォリオ変革」です。ビジネスモデル転換では、従来の素材提供型ビジネスから、社会課題視点のビジネスへの転換を強力に進めていきます。
これまではBtoBのビジネスを中心とし、お客様から求められる素材に技術サービスを加えた事業を展開してきましたが、世の中が急速に変化する中で現状のやり方を続けていても、付加価値を生み出し続けることが困難になっています。
この状況を打破するうえで重要なのが「社会課題視点」です。
お客様の先にいる消費者のニーズや社会全体が解決すべき課題に視点を拡げ、新たなソリューションを生み出す「ソリューション型ビジネスモデル」、あるいはサーキュラーエコノミーへの貢献やカーボンニュートラル社会の実現に向け、環境負荷低減につながる製品のデザインや、リサイクルの仕組みをセットで提案するといった「サーキュラーエコノミー型ビジネスモデル」の構築を通じて、社会とともに当社グループも持続的成長を目指します。
また、こうした取り組みを進めていくには、世の中のニーズをつかみ、社内外のリソースを組み合わせていち早くソリューションを生み出せるかがカギとなります。そのドライバーとなるのがDXです。DXを活用し、このようなビジネスモデル転換のツールにとどまらず、各部門での業務のやり方を変え、組織の在り方を変え、最終的に会社全体が変わるCX(コーポレート
トランスフォーメーション)実現を目指していきます。
VISION 2030の実現に向けて、基本戦略の着実な実行のため事業ポートフォリオを改定します。各ポートフォリオの個別戦略については、今年11月以降に発表する予定です。
いずれも大きな挑戦、転換となりますが、世の中が大きく変化している今、私たちも従来の考え方を変える必要があります。着実にそしてスピード感をもって変革を進め、「2030年のありたい姿」の実現に向けて邁進してまいります。
全体概要
VISION 2030の位置づけ
大きな環境変化を取り込み、
2030年に向けた新たな成長戦略を描く
VISION 2025の進捗と内外の様々な環境変化を踏まえ、2030年をターゲットに新たな長期経営計画を策定しました。
VISION 2030では、15~20年先の「目指すべき企業グループ像」を改定し、それに向けた「2030年のありたい姿」を定義、三井化学グループが目指す方向性を示しています。
⽬指す未来社会とマテリアリティ
2030年のありたい姿
未来が変わる。化学が変える。
Chemistry for Sustainable World
変化をリードし、サステナブルな未来に貢献する
グローバル・ソリューション・パートナー
VISION 2030 全社基本戦略
経営課題を克服し、2030年のありたい姿、そして、その先の目指す企業グループ像を実現するために、5つの基本戦略を掲げ、全社を挙げて実行を推進します。
5つの基本戦略
VISION 2030 基本戦略
事業ポートフォリオ変革の追求
● 社会課題視点の全事業への展開
● 事業領域の拡大・深耕による成長
● 既存事業の構造改革加速、グリーンマテリアルによる事業転換
ソリューション型ビジネスモデルの構築
● 事業デザイン力強化による新事業の創出
● 社内横串連携、社外パートナーとの連携強化
サーキュラーエコノミーへの対応強化
● 全事業を対象としたCE型ビジネスモデルの構築
● 原燃料転換に基づくCE対応製品の展開
● カーボンニュートラルに資する環境基盤技術の開発・獲得
DXを通じた企業変革
● DXの全社・全領域への展開
● 製販研・SC全体の変革を通じた価値の創出
経営基盤・事業基盤の変革加速
● コミットメント・チャレンジ意識の浸透
● エンゲージメント向上による組織能力向上、企業文化変革
● グローバル全拠点での安全・安定運転と競争力強化の両立
● サステナブルなSCの構築
ビジネスモデル転換による「ポートフォリオ変革」
「社会や消費者がどのような課題を抱えているか」に遡って発想し、価値を創出する社会課題視点のビジネスへの転換を図る。同時にDXを全事業に展開し、新たなビジネスモデルへの進化のスピードを加速。
お客様の先の課題を探索し、
社内外連携で価値を生み出す
お客様のニーズに合った製品やサービスの提供を行う「顧客第一主義」から視野を広げ、より大きな社会課題に目を向けてビジネスのあり方を考えることで、三井化学グループならではの価値の高い提案を目指していきます。社内連携に加え、オープンイノベーションや外部との提携など、社内外の技術や知見を多様に組み合わせ、事業機会を拡大していきます。
「つくって売る」から「事業をデザインする」へ
「素材」を提供する従来型のビジネスを深化させ、社会課題の解決につながるソリューションの創出に挑戦します。「モノをつくって売る」という思考ではなく、「事業を自らデザインし、モノにとどまらない新たなソリューションを生み出す」という観点で、あらゆる業態とのコラボレーションも視野に入れ、価値創出につながるビジネスモデルを構築します。
循環型のサプライチェーンを構築する
大量生産・大量消費からサブスクリプションやシェアリングなど循環型サービスへと世の中の流れが変わっていることを背景に、「つくる→売る」という一方通行のビジネスモデルから、「使う→再利用する」までのサイクルを考えた製品設計や事業創出に取り組み、サーキュラーエコノミー(CE)への対応を全社で進めていきます。
DXの加速で会社の変革「CX」を目指す
DXは変革を進めるうえで欠かせないツール。全社員がDXの基礎知識を身に着けるとともに、各部門に高い専門性を持つDXチャンピオンを配置することでいち早くノウハウを浸透させ、全社のDXを加速します。業務のやり方を変え、ビジネスモデルを変え、最終的に会社全体が変わるCX(コーポレートトランスフォーメーション)実現を目指します。
事業ポートフォリオ
経営目標・投資計画
VISION 2030 経営目標
*非財務指標の一部です。その他の項目については非財務指標をご覧ください。
VISION 2030 投資資源配分