Financial Strategy
CFOメッセージ

取締役 専務執行役員 CFO 中島 一

規律と柔軟性を両立した財務戦略を通じて
VISION 2030戦略の推進を支えるとともに、
財務と非財務の統合による
企業価値の最大化を目指します。

取締役 専務執行役員 CFO

中島 一

※本メッセージ内で言及している項目です。

三井化学グループの企業価値向上
三井化学グループの企業価値向上 図

※図の全体像については、CEOメッセージをご覧ください。

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2021年度は過去最高益を達成、三井化学グループの強みを
活かし飛躍的成長のステージへ。

2021年度は、長引く新型コロナウイルス感染症の拡大や、原材料価格の高騰といった影響を受けながらも、コア営業利益は1,618億円、親会社の所有者に帰属する当期利益も1,100億円と過去最高益を更新しました。市況の高騰により上乗せされた利益は400億円程度と見積もっていますが、それを除いても2020年度を大きく上回る約1,200億円のコア営業利益を出せたことは、大きな成果であると思います。

この10年を振り返ると、バブル崩壊後から粘り強く事業再構築に取り組み、2014年頃からは本格的に成長領域への資本投下も再開しました。その成果が現れ始めた2019から2020年度にかけては、新型コロナウイルス感染症の影響等により利益が伸び悩み、業績はやや足踏みの感がありました。しかし、今回2021年度の業績によって、ようやく当社グループは飛躍的成長を遂げるステージに移行したと感じています。

当社グループは、化学製品製造においてナフサクラッカーから始まる一連のモノと技術のチェーンを持っていることが特徴でもあり、これを活かしてお客様のご要望に柔軟にお応えできるという強みを、今後も積極的にアピールしていく必要があります。

三井化学グループの企業価値向上
三井化学グループの企業価値向上 図

※図の全体像については、CEOメッセージをご覧ください。

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キャッシュ・フローマネジメント
キャッシュ・フローマネジメント 図

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キャッシュ・フロー・Net D/Eレシオ推移
キャッシュ・フロー・Net D/Eレシオ推移 図

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健全な財務体質の維持と採算性のモニタリングを通じてVISION 2030戦略を遂行する。

当社グループでは、VISION 2030の実現に向けて、成長投資枠1.8兆円を設けると同時に、財務規律の指標としての格付け維持の観点も勘案したNet D/E 0.8以下、そして採算性を測る指標としてROIC 8.0%以上を定めています。ただし、VISION 2030戦略の遂行に必要となる資本投下・資金調達については、柔軟に実施していく方針です。例えば、社会課題を意識したソリューション型ビジネスへの変革を図るためには、優れた知見を持つ他社との提携やM&Aといった選択肢も必要になります。その際には、キャッシュ・フローおよび手元流動性資金の中で賄っていくことを前提としながらも、十分な回収が見込まれる案件であれば、一時的にNet D/E 0.8を超えても前向きに資本投下を検討していきます。また、資金調達面では、グリーンボンド等のサステナビリティファイナンスも有望な手段であるとの認識から、その調達の前提となる全社のサステナビリティ推進状況とキャッシュ・フローマネジメントのモニタリング体制を強化していきます。

ROICについても、単年度目標として管理するのではなく、長期戦略に基づく中期戦略のローリングを通じて、必要となる戦略の遂行と資源投下を行ったのちに達成する、中長期的目標として定めています。

特にライフ&ヘルスケア・ソリューションは積極的に投資を⾏っていき、さらにリソースが足りない部分はM&Aやアライアンスにて補っていきます。また、モビリティソリューションについては、2016年から積極的かつ継続的に行ってきた投資の回収をしっかりと行い、高機能へのシフトやソリューションの実行を通じてさらに収益性を高めていきます。ICTソリューションについては、2025年度までに積極的に投資を行うため、一時的にROICは下がりますが2030年に向け収益性を戻していく計画としています。

セグメント別ROIC推移 図

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2022-2024年度大型投融資案件 図

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一方で、このROIC目標を達成するための単年度のマイルストーンとしては、利益項目だけでなくCCC(Cash Conversion Cycle)等のROIC構成要素を、各部門の単年度業績目標まで落とし込み、常に社員一人ひとりに投資採算の考えをもって業務に取り組んでもらうという仕組みを作っています。また、VISION 2030の基本戦略である事業ポートフォリオ変革の追求においても、ROICおよびコア営業利益成長性の2軸でモニタリングしており、基準に満たない事業については、構造改革および撤退を迅速に行うという方針で進めています。

投資については、成長戦略に沿った既存の能力増強案件等に加え、M&Aも選択肢の一つです。過去のM&A案件では、その効果を発揮するまでに時間を要したという反省から、投資判断の段階からPMI(Post Merger Integration)を重点的に検証しています。具体的には、通常投資の際に行う社内検討プロセスに加え、M&A審査会議を設置し、早期の効果発揮に向けた方策を議論しています。

また、サーキュラーエコノミーへの対応強化に向けた取り組みを確実に実行するために、本年度よりICP(Internal carbon pricing)を組み込んだIRR指標(c-IRR)を導入し、金額換算したGHG排出量の増減を加味することで、従来の利益概念に偏重しない総合的な投資判断を行っています。

株主還元については、最適資本構成に基づいた健全な資本確保を前提とした上で、DOE3.0%以上、総還元性向30%以上を指標に掲げており、引き続き継続的かつ安定的な配当を重視していきます。VISION 2030戦略の推進に必要な成長投資および維持投資とのバランスを見極めつつ、適時適切な自社株買いと、企業価値の拡大に沿った増配を図っていく所存です。

主な投資先の状況
主な投資先の状況 図

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株主還元推移
株主還元推移 図

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世の中の変化に先駆けた非財務への取り組みが、企業価値向上につながる。

VISION 2030において設定している成長投資枠1.8兆円のうち、サーキュラーエコノミーへの対応強化に向けたカーボンニュートラル戦略の投資枠として1,400億円規模を想定しています。非財務分野への投資は、今後、世の中の価値観が変化していく中で、長期的には財務的価値にシフトしていくと考えています。

将来的な財務・非財務の価値転換を見越し、現在、経営における財務と非財務の統合を進めていますが、当社グループの企業価値向上という成果として目に見える形で現れるまでには、一定程度の時間を要するでしょう。Blue Value®・Rose Value®製品・サービスの拡大も、非財務価値の提供を財務価値につなげていく取り組みと言えますが、2011年の構想開始からこれまで約10年を要しています。こうした取り組みを加速するため、VISION 2030において、それぞれの連結売上収益比率40%以上という拡大目標を掲げています。目標実現を目指し、ブランディングも強化し、当社グループがお客様と社会に提供する価値を市場にアピールしていきます。また、価値の表現方法や利益拡大との結びつきについては、より分かりやすい形で管理・開示していくことも検討しています。

現在、ベーシック&グリーン・マテリアルズ事業本部において進めている、バイオマスナフサ導入やケミカルリサイクル技術の社会実装といったグリーンケミカルの事業化推進も、社会課題解決への貢献を通じて将来的な企業価値向上を目指す取り組みです。これは当社グループがナフサクラッカーを有しているからこそチャレンジできる試みですが、一方で、このクラッカーを所有するベーシック&グリーン・マテリアルズ事業の位置づけについては、CO2排出量の観点、あるいは事業特性としてのボラティリティの観点等から、投資家の皆様を中心に様々なご意見があることも認識しています。しかし、現在進めているベーシック&グリーン・マテリアルズ事業の再構築にスピード感を持って取り組むことと並行して、他社に先駆けてグリーンケミカルの取り組みに資本を投下することにより、世の中の価値観が大きく変化するタイミングで、当社グループの化学製品バリューチェーンが一体として大きな付加価値を発揮し、企業価値の向上に大きくつながってくると期待しています。さらに私個人の考えを付け加えるならば、国内の化学製品製造の基盤ともいえるベーシック&グリーン・マテリアルズ事業の収益改善とそれを通じて得た利益を、グリーンケミカルの実現や環境対応といった取り組みにしっかりと還元していくことが、将来の持続可能な化学産業の実現のためにも必要不可欠と考えています。

また、今後さらにグローバルに事業活動を展開していく上では、各国・地域の税制を遵守することが企業の果たすべき重要な役割の一つです。当社グループは、この役割を十分に果たすために税務方針*を策定し、公正で適正な税務プランニングに基づく税務戦略を推進します。

私はCFOとして、キャッシュ・フローマネジメントの強化および健全な財務体質の維持の観点を踏まえるとともに、非財務の価値も十分に勘案した上で、将来を見据えた経営判断を行い、CEO、CSOとともにVISION 2030で目指す変革の実現と企業価値の向上を図っていきます。そして、当社グループのビジョンと戦略を深く理解していただけるよう、財務・非財務情報の開示や説明会の機会等を通して、ステークホルダーの皆様との対話をさらに充実させていきます。