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海洋プラスチック問題とは?現状や原因、影響について解説

海洋プラスチックごみ

近年、地球規模の課題として注目を集めている海洋プラスチック問題。世界では2022年に開催された第5回国連環境総会再開セッション(UNEA5.2)において、プラスチック汚染対策に関する法的拘束力のある国際文書(条約)について議論するための政府間交渉委員会(INC)が立ち上げられ、活発な議論が行われています。

また、日本でもプラスチックのライフサイクル全体における資源循環の取り組みを促進する「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(プラスチック資源循環法)の施行をはじめ、国をあげた取り組みが進められています。

今回の記事では、世界共通の社会課題である海洋プラスチック問題の現状に加え、その課題解決に向けた具体的なアクションについて解説します。

海洋プラスチック問題の現状とは

プラスチック生産量の現状と将来予測

さまざまなプラスチック製品

私たちの暮らしに欠かせないプラスチック。その国内生産量は年間951万トン(2022年)にのぼります。最も多いのがポリエチレンの224万トン、その次がポリプロピレン212万トン。この2つのプラスチックが全生産量の45%強を占めています。そして塩化ビニル樹脂が154万トン、ポリスチレン類が103万トンと続きます。

また、日本におけるプラスチックの廃棄量は年間823万トン(2022年)で、この廃プラの49.1%を占めるのが「包装・容器等/コンテナ類」で、総排出量は404万トンです。次に多いのが「電気・電子機器/電線・ケーブル/機械等」の143万トンですが、廃棄されるのは実際に世の中で使用されるものだけではありません。生産・加工ロスにより排出される廃プラが64万トンあり、これが廃プラ総排出量の7.8%を占めています。

排出される廃プラスチック823万トンのうち、717万トン(87%)が有効利用されており、この数値は決して低くありません。ただ、有効利用の手法としては、廃プラスチックを焼却処理した際に発生する熱エネルギーを回収して利用するエネルギーリカバリー(サーマルリサイクル)が62%と過半を占めており、資源循環という側面で見ると、マテリアルリサイクル(メカニカルリサイクル)やケミカルリサイクルをさらに推進する必要があります。
 
また、OECD(経済協力開発機構)によると、世界のプラスチック廃棄物は2019年の3億5300万トンに対し、2060年には約3倍の10億1400万トンにまで拡大することが予想されています。このように大量に排出される廃プラスチックをいかに効率的かつ効果的に回収・リサイクルし、海洋に流出させず資源循環させていくかが、世界共通の大きな課題になっています。

海洋プラスチックごみが魚の量を超える?深刻化する環境問題

1950年以降に世界で生産されたプラスチックの量は83億トン。そのうち、ごみとして廃棄されたプラスチックの量は63億トンにのぼると言われています。現状のペースでは、2050年までに250億トンのプラスチック廃棄物が発生し、120億トン以上のプラスチックが埋立・自然投棄されると予測されています(環境省『令和2年版 環境白書』)。

プラスチック廃棄物発生量の推計

出典:環境省 令和2年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 状況第1部第1章第3節 海洋プラスチックごみ汚染・生物多様性の損失(env.go.jp)

海洋プラスチックごみは海岸だけに流れ着くものだけではありません。海底に沈んでしまうものや、潮流や海流に乗って人の手の届かない場所に流されていくものもあり、その回収は容易ではありません。

2016年に開催された世界経済フォーラム(ダボス会議)では、ショッキングな予測が示されました。それは、「このまま何もしなければ、2050年までに海洋中の魚の重量よりも、プラスチックごみの量が上回ってしまう」というものです。こうした中で、地球環境や生態系を守るためにも、プラスチックごみへの対策が急務となっています。

海洋プラスチック問題の原因

世界規模で問題となっている海洋プラスチック問題。日本からは約2〜6万トンの海洋プラスチックごみが流出していると見られています。

では、海洋プラスチックごみはどこからやってくるのでしょうか。そのルートは大きく2つあると考えられています。

一つは陸からの流出です。これは、国民生活や事業活動に伴い陸域で発生したプラスチックごみの一部が、廃棄物処理制度により回収されず、意図的・非意図的に環境中に排出された後、雨や風に流され、河川などを経由して海域に流出するケースです。

もう一つは、漁業やマリンレジャーなど、海域で使用されるプラスチック製品が直接海域に流出するケースです。

プラスチックによる海洋汚染

出典:かながわ気候変動「プラスチックによる海洋汚染」

こうした流出経路を踏まえると、海洋プラスチックごみ問題は、海岸地域だけでなく内陸部も含めたすべての地域での共通の課題であるといえます。

また、プラスチックの生産量と海への流出量を国別でみると、廃棄物回収の仕組みが整備されている国々では、生産量が多くても海への流出量は少ない状況にあります。つまり、海洋プラスチック問題を解決する上では、廃プラスチックをしっかり回収し、リサイクルなどを通じて適切な処理を行い、海洋流出を防いでいくことが重要になります。

プラスチックの生産と流出

出典:環境省 「平成29年度漂着ごみ対策総合検討業務」p.22

海洋プラスチック問題の影響

海洋プラスチックごみが海の生き物に与える影響

海洋に流出したプラスチックごみは、生き物や地球環境にさまざまな影響を与えます。
海洋には魚や甲殻類、クジラなどの哺乳類が暮らすほか、魚を食べに鳥もやってきます。こうした海の生き物が、漁業に使われる網や釣りに使われるテグスが絡まって死んでしまうことがあります。

このように海底などの水中に放置・放出された漁具が、人の管理を離れて長期間水生生物を捕獲することをゴースト・フィッシング(幽霊漁業)と呼び、海洋環境の汚染だけでなく、漁業者に経済的なダメージを与え、航海の安全も脅かすなど、さまざまなところに影響を与えています。

マイクロプラスチックとその影響

マイクロプラスチックとは

出典:環境省 一般向けマイクロプラスチック発生抑制・流出抑制対策リーフレット

海洋プラスチック問題に関連して、注目されているのがマイクロプラスチックです。マイクロプラスチックとは、化粧品や洗顔料に使われるマイクロビーズ、紫外線や風波で劣化・微細化した5mm以下のプラスチックごみの総称です。衣服を洗濯した際に出る合成繊維のくず、車のタイヤなどのカス、靴底、人工芝なども、マイクロプラスチックの発生源となっています。

マイクロプラスチックにはPCBなど油性の有害物質を吸着する働きがあることから、沿岸の有害物質を遠くの離島へ拡散する作用があると言われ、将来的な環境への影響が懸念されています。

マイクロプラスチックそのものは生物に対して害がなく、捕食されても消化されずにそのまま排出されるだけですが、実験室において濃度を高めて行われた実験では、一部のプラスチックに含まれる可塑剤などの成分が生物濃縮を起こす可能性も指摘されています。

一方でマイクロプラスチックの濃度は日本近海でも海水1立方メートルあたり数粒に過ぎず、自然界における生物濃縮のリスクは低いとする研究者も多く、その影響については科学的なデータの収集と分析が待たれます。

海洋プラスチック問題の対策

3R+Renewable

海洋プラスチック問題を解決するには、プラスチックごみをしっかり回収し、海洋への流出を防ぎながら、資源として循環させていくことが重要です。そこで日本では2022年4月1日から「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(プラスチック資源循環法)が施行されました。

これは、3R(Reduce、Reuse、Recycle)にリニューアブル(再生可能な資源の活用)を加えた3R+Renewableを促進するものです。

日本国内では、年間823万トン(2022年)のプラスチックが廃棄されていますが、その廃プラの約63%をサーマルリサイクル(ごみ焼却で出る熱をエネルギーとして回収・利用)が、22%をマテリアルリサイクル(廃プラスチックを物理的処理によりそのまま再生原料にして新しい製品を生み出す方法)、3%をケミカルリサイクル(廃プラスチックを化学的に分解することで分解油や合成ガス、モノマーといった化学原料に戻し、再利用可能な物質にリサイクルする手法)で活用しています。廃プラの有効利用率は87%に達していますが、まだサーマルリサイクルに頼っている側面が強く、物質として再利用するマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルのさらなる普及拡大が期待されています。

また、各企業では「ワンウェイプラスチックの削減」「再生可能なバイオマスプラスチックへの切り替え」「使用済み製品の自主回収」などの取り組みを強化する動きも見られています。

また、持続可能な消費やサステナブルな社会のために消費者が実践できるエコアクションとして、外出時もポイ捨てなどせず、ごみは所定の場所で処理し、海洋への流出を防ぐことに加え、非意図的に流出してしまったごみを回収する地道な清掃活動も重要です。

海洋プラスチック問題の対策や取り組みについては、 詳しくは「海洋プラスチック問題の対策と企業・個人の取り組みについて解説」をご覧ください。

三井化学では、「世界を素(もと)から変えていく」というスローガンのもと、
バイオマスでカーボンニュートラルと目指す「BePLAYER®」、リサイクルでサーキュラーエコノミーを目指す「RePLAYER®」という取り組みを推進し、リジェネラティブ(再生的)な社会の実現を目指しています。カーボンニュートラルや循環型社会への対応を検討している企業の担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

「BePLAYER®」「RePLAYER®」

https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/index.htm

<公開資料:カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー関連>https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/soso/whitepaper/

 
参考資料
*1:一般社団法人 プラスチック循環利用協会「2022年プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況」:
https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf2.pdf
*2:環境省 令和2年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 状況第1部第1章第3節 海洋プラスチックごみ汚染・生物多様性の損失 (env.go.jp):
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r02/html/hj20010103.html
*3:環境省 <第3回資料集>プラスチックをめぐる国内外の状況 :
https://www.env.go.jp/council/03recycle/y0312-03/y031203-s1r.pdf
*4:かながわ気候変動「プラスチックによる海洋汚染」:
https://www.pref.kanagawa.jp/osirase/0323/climate_change/contents2/page2-8.html
*5:環境省 海洋プラスチックごみ対策アクションプラン:
https://www.env.go.jp/water/Marine%20plastic%20litter%20countermeasure%20action%20plan.pdf
*6:環境省 一般向けマイクロプラスチック発生抑制・流出抑制対策リーフレット:
https://www.env.go.jp/page_00357.html
*7:環境省  プラスチック資源循環法関連:
https://www.env.go.jp/recycle/plastic/circulation.html

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