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海洋プラスチック問題の対策と企業・個人の取り組みについて解説

プラスチックごみリサイクル

近年、注目を集めている海洋プラスチック問題。これは海洋にプラスチックごみが流出することで生じる問題であり、私たちが解決すべき「ごみ問題」のひとつでもあります。プラスチック資源循環に関する政府の取り組みに連動して、リサイクルなどの促進によりプラスチックごみを海洋などに流出させず、資源として循環させる取り組みも強化されつつあります。こうした中で、企業の廃プラスチックの資源循環の取り組みとともに、個人ができるエコアクションなど、海洋プラスチック問題をはじめとしたプラスチックごみ問題の対策や解決策についてご紹介しましょう。

海洋プラスチック問題と自然環境への影響

海洋に漂うプラスチックごみ軽量で丈夫、さらに成形しやすいプラスチックはあらゆる場面、あらゆる商品に使われています。その機能性や使い勝手の良さなどから、全世界のプラスチックの使用量は現在も新興国を中心に増加傾向にあります。それに伴い、世界のプラスチック廃棄物も2019年の3億5300万トンに対し、2060年には約3倍の10億1400万トンにまで拡大することが予想されています。(出典:OECD報告書

ASEAN諸国やインド、中国などでは、経済発展によってプラスチックの使用量が増加していますが、日本や欧米先進国のような廃棄物の公共回収システムを整備しきれておらず、家庭ごみの河川への投棄や、野積みされた廃棄物の河川流出などにより、海洋プラスチックごみ問題が発生しています。また、廃棄物の回収システムが発達した先進諸国でも、ストローやプラスチックカップなど使い捨てプラスチックのポイ捨てに加え、コンタクトレンズ、綿棒、化粧品(に含まれるマイクロビーズ)などがトイレや洗面台に流され、これらが下水を経由して海に流出することで海洋プラスチックごみが発生しています。

海洋プラスチックごみの中には海底に沈むものや、潮流や海流に乗って人の手が届かない場所へ流れていくものもあり、すべてを回収するのは容易ではありません。また、多くのプラスチックは自然分解されないため、長く滞留してしまいます。このように、海洋プラスチックごみの問題は、生態系を含む海洋環境にも影響を与えることから、その対策が求められています。

海洋プラスチック問題の現状については、詳しくは「海洋プラスチック問題とは?現状や原因、影響について解説」をご覧ください。

社会全体の海洋プラスチック問題の対策や取り組み

世界の動きと日本政府の政策

海洋プラスチックごみ問題に関する国際動向引用:経済産業省 レジ袋有料化検討ワーキンググループ 参考資料 p.3

このまま何もしなければ、2050年までに海洋プラスチックごみの重量が、魚の重量を超える──。そんなショッキングな予測が世界経済フォーラム(ダボス会議)の報告書で示されたのは、2016年のことでした。こうした中で、世界的にプラスチックごみ問題への対策が強化されています。

日本では2018年6月に「海岸漂着物処理推進法」を改正し、同法においてもプラスチックごみの排出抑制が盛り込まれました。また、翌2019年5月には「プラスチック資源循環戦略」を策定。リデュース(ごみの削減)・リユース(繰り返し使用)・リサイクル(再利用)の3RにRenewable(リニューアブル・再生可能な資源の活用)を加えた「3R+Renewable」を基本原則とし、海洋プラスチックごみ問題のみならず、資源制約、廃棄物問題、地球温暖化問題などの課題の解決に向けた取り組みを加速させています。

さらに2019年6月に開催されたG20大阪サミットにおいて、日本政府は「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を提案。これは、2050年までに海洋プラスチックごみによる新たな海洋汚染ゼロを目指すというもので、このビジョンが各国の首脳に共有されました。

その後、2022年2〜3月には第5回国連環境総会再開セッション(UEN5.2)が開かれ、海洋環境等におけるプラスチック汚染対策に関する法的拘束力のある国際文書の策定に向けた政府間交渉委員会(INC)の立ち上げが決議され、世界的な議論もさらに活発化しています。

企業の対策と取り組み

2019年に策定された「プラスチック資源循環戦略」の中で、政府は目指すべき方向として、「3R+Renewable」の促進と6つのマイルストーンを設定しています。「3R+Renewable」とはリデュース(ごみの削減)・リユース(繰り返し使用)・リサイクル(再利用)の3Rにリニューアブル(再生可能な資源の活用)を加えたもの。6つのマイルストーンは以下の通りです。

  1. 2030年までにワンウェイプラスチックを累積25%排出抑制
  2. 2025年までにリユース・リサイクル可能なデザインに
  3. 2030年までに容器包装の6割にリユース・リサイクル
  4. 2035年までに使用済みプラスチックを100%リユース・リサイクル等により有効利用
  5. 2030年までに再生利用を倍増
  6. 2030年までにバイオマスプラスチックを約200万トン導入

 

さらに、2022年4月には「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環法)」が施行されました。この法律ではプラスチックという素材に着目し、製品の設計からプラスチック廃棄物の処理に至るまでの各段階において、あらゆる主体におけるプラスチックの資源循環等の取り組み(3R+Renewable)を促進するための措置を講じるべく制定。

こうした国の方針もあり、企業でもプラスチックの資源循環の取り組みを強化し、リサイクル材の活用も広がりつつあります。また、「Renewable」の部分では、バイオマスプラスチックを採用する動きも活発化。
カシオ計算機ではアウトドアウォッチ・PRO TREKやG-SHOKにバイオマスプラスチックを活用。また、アステラス製薬では2021年に世界で初めてバイオマスプラスチックを医薬品の一次包装であるPTP(Press Through Pack)シートに採用するなど、様々な分野で「Renewable」の取り組みも広がりはじめています。

個人ができる海洋プラスチックごみ問題の対策や取り組み

日常生活でのエコアクションやライフスタイルの改善策

プラスチックは、えらんで、減らして、リサイクル、引用:環境省 プラスチック資源循環

海洋プラスチックごみを減らすためには、陸上のプラスチックごみを海洋に流出させないよう、しっかり廃棄・回収を行いながら資源循環を促進することが大切です。プラスチックの資源循環の取り組みは、個人でできるものもあります。

では、具体的にはどんなことが挙げられるのでしょうか。
1つめは、ごみをポイ捨てなどせず、ごみ箱やごみ収集所など、所定の場所に廃棄することです。海洋プラスチックごみを減らすには、海洋への流出を防ぐことが最も重要になるため、特に外出時のごみの処理方法に注意を払うことは、この問題に対して個人が取り組める大きな対策にもなります。

2つめは、プラスチックごみを減らすこと。外食の際、ワンウェイプラスチック(使い捨てプラスチック)のストローやスプーン、飲料カップなどを避け、繰り返し使える素材や環境負荷の低い素材のものを使うという方法もあります。

3つめは、リサイクルです。2022年に施行されたプラスチック資源循環法では、プラスチック使用製品の製造・販売業者が、積極的に使用済みになった自社製品を回収、リサイクルが図れるようにする「自主回収・再資源化事業計画認定」の制度も設けられています。

この制度はプラスチック使用製品の製造・販売事業者が「自主回収・再資源化事業計画」を作成し、国の認定を受けることで、廃棄物処理法に基づく業の許可が不要になるものです。これにより、複数の自治体の区域にまたがって自主回収・再資源化事業を行うような場合であっても、自治体ごとに許可を受けることなく、使用済みプラスチック製品の自主回収・再資源化が可能になります。

こうした中で、私たち生活者も分別などをしっかり行い、企業が展開している製品回収の取り組みに加わっていくことも、資源循環を促進することにつながります。

海洋プラスチックごみを減らすことは、資源循環を促進させることでもあります。プラスチックごみも再利用できる資源として捉え、しっかり分別・回収・リサイクルしながら、海洋へのごみ流出を防ぐこと。それが、美しい海を未来に残すことにつながります。



三井化学では、「世界を素(もと)から変えていく」というスローガンのもと、
バイオマスでカーボンニュートラルと目指す「BePLAYER®」、リサイクルでサーキュラーエコノミーを目指す「RePLAYER®」という取り組みを推進し、リジェネラティブ(再生的)な社会の実現を目指しています。カーボンニュートラルや循環型社会への対応を検討している企業の担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

「BePLAYER®」「RePLAYER®」https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/index.htm

<公開資料:カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー関連>https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/soso/whitepaper/

 
 
参考資料
*1:OECD「OECDによると、世界のプラスチック廃棄物は2060年までにほぼ3倍になる見込み」:
https://www.oecd.org/en/about/news/press-releases/2022/06/global-plastic-waste-set-to-almost-triple-by-2060.html
*2:経済産業省 レジ袋有料化検討ワーキンググループ 参考資料 p.3:
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/haikibutsu_recycle/reji_yuryo_wg/pdf/002_s02_00.pdf
*3:環境省 プラスチック資源循環戦略について:
https://plastic-circulation.env.go.jp/about/senryaku
*4:環境省 プラスチック資源循環:
https://plastic-circulation.env.go.jp/

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