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まずできることから始める。G-SHOCKにバイオマス素材を採用したカシオが考える“ブランド価値”

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日本を代表する電子機器メーカーのカシオ計算機株式会社。多岐にわたる製品の中でも特に人気を博しているのが、耐衝撃性に優れた時計の代名詞にもなっている「G-SHOCKシリーズ」です。そんなG-SHOCKシリーズでは、環境負荷低減に寄与する素材であるバイオマスプラスチックを積極的に採用しています。今回は、G-SHOCKの製品企画やブランディングを担う、時計BU製品企画部 部長 チーフプロデューサーである齊藤さんにインタビューし、G-SHOCKにバイオマスプラスチックを採用した背景や、ブランドとして環境問題に取り組む理由などを伺いました。

話し手

齊藤 慎司(さいとう しんじ)
カシオ計算機株式会社 時計BU商品企画部
大学時代は精密機械工学を専攻。1998年、カシオ計算機に入社。
企画部門に配属され、新入社員時代からBABY-Gの企画を担当。
その後、モータースポーツをコンセプトにしたEDIFICEブランドの担当を経て、2007年からG-SHOCKの商品企画を担当する。
現在は商品企画部の部長として、G-SHOCKをメインにカシオの全時計ブランドを束ねる。

 

いつかやるなら「今やる」。環境問題に挑むことを価値にするブランドへ

G-SHOCKにバイオマスプラスチックを採用した背景を教えてください。

一番は、社会全体で環境問題について考えられるようになり、当社としても環境問題にどう向き合うかがミッションになったことですね。とはいえ、環境に配慮したからといって必ずしも製品が売れるわけではありません。むしろ「環境に配慮するためのコストをどうコントロールするか」といった問題が生じます。また、時計という小さな製品の素材をバイオマスに変更しても、直接的な環境貢献は決して大きくありません。

しかし、環境問題に真剣に向き合う姿勢が世界的に求められる中、企業は一時的な利益のために環境に配慮した取り組みをやらないのか?この問いに対する私たちの答えは〝NO〟です。いつかやらなければならないなら、〝今やる〟のがG-SHOCKのブランドです。そこで、まずはトレッキング用として認知されているPRO TREK(プロトレック)からスタートし、本丸のG-SHOCKへと展開してきました。早期から環境問題に挑むことがブランド価値の向上にも繋がると考え、「今やる」以外の選択はありませんでした。

バイオマス由来プラスチックの腕時計                    
                              出典:カシオ計算機 Webサイトより



できるところから、少しずつ素材転換とコスト削減

環境に配慮した製品を提供したくてもなかなか取り組めない企業は多いと思います。貴社ではどのような考えで取り組みましたか?

我々も「今日から製品で使う素材を全てバイオマスに変えます」と言いたいところですが、それは現実的に叶いません。そのため、「できるところから少しずつ変えていこう」という精神で、導入しやすい新規モデルから徐々にバイオマス素材を採用しています。

また、バイオマスプラスチックと石油由来のプラスチックは物性(物質の物理的性質)として全く同じではないため、「素材を置き換えても問題ないか」といった判断も含めて、開発に時間が必要です。

今実現できないことも、技術が進み徐々にできるようになっていくでしょう。大事なことは、目標を持ちながら、できるところから少しずつでもはじめ、継続させることだと思っています。

マスバランス方式のバイオマスプラスチックであれば、石油由来のプラスチックと全く同じ物性のものが実現できています。

環境へ配慮すると価格が高くなるという課題にはどのように対応していますか?

環境に配慮したものを作ろうとすると、製品の小売価格が高くなってしまうことに、多くの企業担当者は頭を悩ませているかもしれません。これは弊社においても悩みの種ではありますが、コスト管理こそ、企業努力ではないでしょうか。

すぐに取り組めることは、可能な限り余分なコストをカットすることです。例えば、無駄な梱包の削減や物流の効率化により、環境負荷を減らしながらコストを削減することもできます。もちろん、見栄えの良い梱包に惹かれる人もいますが、梱包にも気を使うことで「この製品は環境意識のあるブランドなんだな」と思ってもらえますし、こうした環境配慮に価値を感じてもらいたいですね。どのようにお客さんに伝えるか、伝わるかも含めて、ブランディングとコミュニケーションだと思います。

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                                           加えて、製品のコストは素材単体ではなく、トータルでコントロールするものだと考えています。価格の同じ製品が2つあったとして、それぞれの製品を構成するコストは異なります。素材の組み込み方次第でコストは変わりますし、仕入れる素材の価格だって日々変わります。ですので、製品の価値は製品グループで調整するものです。

バイオマスプラスチックも同様で、これまでの素材より高くなりますが、ほかの部分で調整すれば、素材として利用することは不可能ではありません。そもそもバイオマスプラスチックの採用はブランディングにおいて必要な投資だと考えています。

進化する樹脂と長寿命設計で実現する、G-SHOCKのサステナブルデザイン

環境配慮とG-SHOCKの関係性について教えてください。

当初は「低価格」や「利便性」を重視していたため、安価で大量に使用できるプラスチックを活用していました。そうした中、我々は次第に「素材としての価値」を追求するようになり、樹脂でありながら金属にはない特性を持つ強化樹脂なども採用してきました。

また、G-SHOCKの特徴として、ロングライフバッテリーや耐久性があります。長く使い続けられることを前提に設計し、評価しています。このように、環境への配慮はG-SHOCKのブランドが受け継いできたDNAの延長線上にあると考えています。

常に新しい価値を模索し、コミュニケーションに取り込む

ブランド形成のために意識していることや、取り組んでいることは何ですか?

G-SHOCKのブランド立ち上げ当初から「長く続くブランドであってほしい」との想いが弊社にはありました。その想いを実現するには、単に優れた製品を作り続けるだけでは不十分です。G-SHOCKの時計を購入してくださった方は、先ほどお伝えしたような「ロングライフ」や「耐久性」といった特長を実感できるため、ブランド価値も理解していただけるでしょう。一方で、G-SHOCKに触れたことも見たこともない層に対して、どのように製品の価値を伝え、届けられるかが、ブランドとしての永遠の課題です。そこで私たちは、時代によって変化する価値観に適応していくために、若い人たちの価値観を常に把握するよう意識するようにしています。

ほかにも、NPOや企業とのタイアップ、新しい素材の導入などに積極的に挑戦しています。こうした取り組みの中で学びやインスピレーションを得ることができ、「新たな価値」が生み出されます。有形か無形か、直接的な利益を生むか否かにかかわらず、積極的に新たな価値を生んでいく。このような姿勢が、より共感されるブランドを形成していくと思っています。

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                             出典:

カシオ計算機 Webサイトより



環境に配慮した製品をどのように伝えるか?意識していることは何ですか?

バイオマス素材を使用しても、消費者が製品を見てその素材がバイオマスであると認識するわけではありません。そのため、積極的にアピールし、消費者に気づいてもらうことが重要です。企業として環境への取り組みをテーマ化し、効果的にプロモーションを行うことが必要です。製品開発とプロモーションをセットで行うことが、企業の環境活動におけるコミュニケーションのあり方だと考えます。

また、環境に配慮した製品を作ったからといって、消費者の購買動機が大きく変わるわけではなく、「環境に配慮した製品を作ったので買ってください」と消費者に求めるものでもありません。環境への配慮は、ブランドの価値に加わる一要素に過ぎません。G-SHOCKで重要なのは、環境への配慮を含めてしよう“かっこいい”と思ってもらえることです。

曲げてはいけない機能の筋は曲げませんが、変えてもいいもの、変えなくちゃいけないものは、時代に合わせて変えていく。それがいつの時代にも共感してもらえる姿勢なのだと思います。

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                             出典:カシオ計算機 Webサイトより

こうした活動に取り組む中で、個人として変化はありましたか?

仕事としてこのような活動に取り組むことで、私自身のマインドも自然と変わっていきました。環境への配慮が「自分ごと化」し、プライベートで海にペットボトルが落ちているのを見かけたら、拾いたくなる気持ちが自然と芽生えましたね。

そして環境に配慮した業務を行うことで、環境問題に取り組む企業の方々と話す機会が増えました。さまざまな企業の方と対話する中で、自社よりもはるかに先進的な取り組みを知ることができ、我々ももっとやらなくてはいけないと感じますね。実際に対話することで、担当者の意識も向上し、良いサイクルが生まれると思います。

すべての製品を環境に優しい素材へ

G-SHOCKブランドの今後について教えてください。

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現時点では、バイオマス素材への切り替えはG-SHOCKの新製品でも半分ほどですが、最終的にはすべての素材を環境に配慮したものに切り替えたいと考えています。これはカシオだけでなく、他の企業様も含めて、社会全体が目指すべき姿だと思います。ある企業が環境に配慮した素材を開発し、それをメーカーが採用し、またさらに環境に良い素材を開発する。こういった好循環が生まれていくことが、より良い社会を実現するために重要なのではないでしょうか。

 

三井化学では、「世界を素(もと)から変えていく」というスローガンのもと、バイオマスでカーボンニュートラルと目指す「BePLAYER®」、リサイクルでサーキュラーエコノミーを目指す「RePLAYER®」という取り組みを推進し、リジェネラティブ(再生的)な社会の実現を目指しています。カーボンニュートラルや循環型社会への対応を検討している企業の担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

「BePLAYER®」「RePLAYER®」
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/index.htm

<公開資料:カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー関連>
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/soso/whitepaper/ 

 


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