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【セミナー開催レポート】「環境への取組みは商品の価値を向上させる~先進企業と欧州事例に学ぶマーケティング~」

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環境への取組みは商品の価値を向上させる~先進企業と欧州事例に学ぶマーケティング~」と題したセミナーを、三井化学株式会社・株式会社メンバーズ・ハーチ株式会社の3社で共催しました。

本セミナーでは、環境に配慮した商品やサービスがどのように開発され、どのような価値やストーリーを生活者に伝えることでブランド構築やビジネス成果が生まれたのかについて、飲料メーカーのサントリーや欧州の先進企業のケーススタディーなどを紹介しました。また、環境配慮型商品のマーケティングのあるべき姿について、多様な業界・属性の登壇者と意見を交わしました。以下、開催したセミナーの内容の開催レポートとしてご紹介します。

消費者を「啓発する」コミュニケーションに投資

最初のパートでは、サントリーホールディングス サステナビリティ経営推進本部 副本部長である北村氏より「サステナビリティをマーケティングに生かす」と題し、サントリーのマーケティング活動を、サステナ推進部門の立場から考察されました。

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サントリーの掲げる「人と自然と響きあい、豊かな生活文化を創造し、『人間と生命の輝き』をめざす」というパーパスには、まさにサステナビリティ経営の考え方が盛り込まれており、「サステナビリティ経営=企業理念の実践・実現」と捉えています。

そしてサステナビリティ経営においては、気候変動対策・サーキュラーエコノミー・生物多様性に関わるイシューに重点を置いており、「GHG(温室効果ガス)」、「プラスチック(容器・包装)」、「水」について、それぞれ2030年の達成目標を定めています。実際に再生可能エネルギーで製造した水素(グリーン水素)を活用する施設を建設中であり、その他にもリサイクルアルミを100%使用した缶容器の採用や自社工場における水源涵養も推進しています。

サントリーの活動の中で特徴的なのが、消費者への働きかけです。リサイクルのループは「お客様(消費者)がリサイクルの必要性に気付き、適切な分別を行うことから始まる」と捉えて、商品そのものではなく飲んだ後のペットボトルの分別にフォーカスを当てたCMの制作を通して、消費者への啓発活動に力を入れています。また、サントリーの商品に欠かせない水についても、パッケージやCMで「100年先も、ずっとずっと水と生きてゆけますように」といったメッセージを訴求しています。

具体的な取り組みを紹介した上で、北村氏は「経営理念などの上位概念に則ってサステナビリティ経営の方針・活動があり、そうしたサステナビリティの取り組みの先に、商品やサービスが位置付けられることが望ましい」と一貫性の大切さを強調。企業が事業を通じてサステナビリティ経営を実践することで、資源循環やCO2削減といった環境への好影響に繋がり、市民は企業の理念や事業・商品に共感してサステナビリティに対する意識・行動変容に結び付くような循環が形成されていくことが理想と伝えました。

過程を含めて正直に見せていく、透明性の高い情報開示と消費者とのコミュニケーション

続いて、「欧州の先進企業のケーススタディー」と題して、ハーチ欧州のパリ在住 富山氏より、欧州企業の特徴的なマーケティング事例について紹介がありました。

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サステナビリティの観点からユニークなキャンペーンを生み出した例として挙げられたのは、創業時からCO2排出削減に取り組んできたフランスのシャンパーニュブランド「テルモン」の事例です。もともとリサイクルガラスを使用してボトルを製造していたものの、色にばらつきが出てしまうため規格外のものは破棄していたテルモンですが、「完璧なワインボトルの提供をやめる」と宣言し、「色の違いは個性」だというメッセージングに転換したところ、消費者から大きな支持を得ているというものです。

また、消費者とのコミュニケーションに長けた例として紹介されたのが、フランスのスニーカーブランドの「VEJA」です。VEJAは、リサイクルペットボトルやリサイクルポリエステルを原料にした素材をスニーカーに取り入れていますが、自社のHPでは「〇〇の染色はまだナチュラルなものに変えることができていません」といった、できていない取り組みについても一つひとつ丁寧に開示されています。こうした正直なコミュニケーションが消費者から好感を呼んでいるといいます。

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7つの先進的な事例を挙げた上で、企業としては消費者に「サステナブルな商品やサービスだから」という理由で選ばれるのを待つのではなく、お得感やデザインの良さなど別の価値を打ち出して、消費者が自然とサステナブルな商品やサービスやライフスタイルを「欲しい」と思い、購買をするような流れをつくる必要性があると伝えました。

また、欧州の広告業界では「サステナブルではないブランドとの取引はしない」という動きが広がっていると紹介した上で、事業活動の真ん中にサステナブルを置く必要性や、透明性の高い情報開示を行いつつ消費者とコミュニケーションを行う姿勢が求められると見解を示しました。

消費者に「自分事化」してもらうための機会を提供することも企業の使命


続いて、三井化学 グリーンケミカル事業推進室のビジネス・ディベロップメントグループリーダーである松永氏より「BePLAYER®RePLAYER®の取り組み」と題し、三井化学の取り組みが紹介されました。

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「脱プラ」という言葉が注目されるなかで、消費行動自体に罪悪感を抱いている消費者も一定数いることが調査でわかっています。こうした中で、三井化学は「大元の原料転換によって『改プラ』が実現できれば、そうした消費者の罪悪感を払拭しつつ、リジェネラティブなライフスタイルを実現することに貢献できるのでは」と考えます。

そこで、「世界を素(もと)から変えていく」をコンセプトに、バイオマスでカーボンニュートラルの実現につなげる「BePLAYER®(ビープレイヤー)」と、リサイクルでサーキュラーエコノミー社会を目指す「RePLAYER®(リプレイヤー)」といった2つのコミュニケーションブランドを立ち上げました。BePLAYER®は温暖化問題の解決のために社会のバイオマス化を進める取り組みで、RePLAYER®は廃プラ等の廃棄物を資源と捉え、再利用して、サーキュラーエコノミー社会の実現を目指すものです。

サーキュラーエコノミー、カーボンニュートラル社会を実現するには、一人ひとりが行動者「PLAYER」となって、動き出すことが大切です。このBePLAYER®、RePLAYER®といったコミュニケーションブランドには、バリューチェーンを構成するパートナー企業、顧客や生活者の皆さまとともに、変化を楽しみながら(PLAY)、みんなで未来を作るPLAYERになっていこう、という想いを込められています。

また、具体的な取り組みとしては、バイオマスナフサを原料にしたバイオマスプラスチックの製造を開始。これは「素材の素材」から変えることで、そこから生産されるありとあらゆる化学品をバイオマス由来にしていく取り組みです。また、ケミカルリサイクルという手法を活用し、廃プラスチックを熱分解油というリサイクル由来の炭化水素にまで戻し、バイオマスナフサと同様に様々な化学素材の原料として再利用する取り組みも推進しています。

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ただ、現在の日本市場では、“環境配慮型製品が受け入れられない” “そもそも生活者の関心事になっていない” “「買う」素地がないので「売る」ためのコミュニケーションをしても効果ががない”といった声も少なからずあり、社会実装していく上での課題があることも事実です。こうした中で、松永氏は「脱炭素のリテラシー向上とソリューションの理解促進、そして“買い手”のためのコミュニケーションを重視していく必要性があるのではないかと考えている」と語る。

三井化学ではオウンドメディアや環境問題の理解促進に役立つバラエティ要素を含んだ動画の配信などを通じて、まずは情報に「触れ」て「学ぶ」機会を消費者に提供しています。企業は商品販促に多額の費用を掛けていますが、これらの一部を消費者への啓発や教育に繋がるコミュニケーションに配分することで、消費者に自分事化してもらうきっかけを提供することの重要性も伝えました。

サステナブルに「+α」の要素を組み込み、どう消費者の目を惹くかが大切

続いて、駒澤大学 経営学部で教授を務める青木氏より「今求められるサステナブル・マーケティング」と題し、今後のマーケティングの在り方について示唆が提示されました。

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消費者が何かを買う際には、心地よさなど自分(Me)にとっての利便性を軸とした「情緒的価値」、デザインや「『いい服着てるね』と言われたい」というように、周り(Us)からの評価も意識した「情緒的価値」、そしてすべての生態系(All Beings)にとって良いものを選ぶという「サステナビリティ価値」のいずれかでブランドや商品が選択されます。こうした中で、サステナビリティ価値を起点とした消費行動を喚起するためには、どのようなマーケティングが必要かということに事例を通して触れました。

たとえば動物愛護の観点から始まったフェイクファーは、デザイナーと協働して、従来の動物の毛皮ではできない奇抜なデザインを実現することで新しい付加価値を持たせ、「デザインが素敵だから選ぶ」という情緒的価値にも訴えかけています。また、デンマークでは、廃棄物発電所に屋上スキー場やクライミングウォールを組み合わせた「コペンヒル」という施設を建設して、環境教育などもこの施設で行っており、人気スポットに仕立て上げています。

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また、フランスを代表する百貨店「プランタン」の7階には、サステナブルをテーマにしたヨーロッパ最大のフロアが誕生。ステンドグラスから光が注ぐプランタンの象徴的なフロアで販売されているのはリユース商品ばかりだといいます。このように、消費者の消費行動をけん引してきた百貨店も、今やサステナビリティ価値を主軸に置いているのです。こうした「サステナブルの追い風」が吹く中では、企業がどのようにブランドストーリーを届けていくかが鍵になり、SNSを活用してサステナビリティへの考えや取り組みの進捗を消費者に伝えることが必要だと説きました。

「サステナブル活動」に取り組む目的や意義をステークホルダー間で共有を

セミナーの終盤には、株式会社メンバーズ 執行役員 原氏がファシリテーターを務め、これまでの登壇者にトークセッションを実施しました。

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まず消費者の意識の変化について、学生と接点の多い大学教授の青木氏が「『サステナブルな商品=価格が高くなる』場合、学生は買いづらいかもしれない。ただ、これからの社会を担う彼らはサステナブルなブランドや商品への関心は高い。だからこそ、SNSを通じた若年層へのコミュニケーションに力を入れるべき」と見解を示しました。一方、パリ在住の富山氏は「欧州の消費者も、決して環境意識が高い層ばかりではない。ただ日本と比べて規制や認証、そして企業側の情報開示は進んでいる。たとえば各商品のサステナビリティ度合いをすぐに確認できるアプリなどもある」と紹介しました。

それら海外の現状を踏まえて松永氏は、お客様と一緒にバイオマスの素材を活用した商品開発を行った事例を紹介しつつ、「欧州の小売店では『フェアトレード専用棚』などがあるが、日本には無く、小売店で棚取りが難しい状況もある。そのため、環境配慮型製品を展開していく上では、サプライチェーン全体でパーパスを共有する必要性も感じている」という経験談を話しました。

こうした利益の追求とサステナビリティ経営の共存について、北村氏は「コストをどう捉えるか」だとコメント。サントリーは良質な地下水を育むために森林や生物多様性の保全活動を行っていますが「当然費用は掛かるが、事業継続に必要であり、地域との共有財産を永続的に維持するための投資という側面もある。安いから、あるいは競合が取り組んでいるからという理由で行うのではなく、『なぜこの活動をするのか』というWhyを突き詰め、社内や、ステークホルダー間で共有することが大切」だと説明。消費者のサステナビリティ意識は高まっており、何に価値を感じて商品やブランドを選ぶかも変化しているからこそ、サステナブルな活動に掛かるコストへの捉え方を変えていく必要があることを示しました。

また、当日の参加者からは30問近くの質問が寄せられ、質疑応答パートも盛り上がりを見せました。「リサイクルプラスチックを採用すると、従来よりも原料のコスト増になるのではないか」といった質問に対して、青木氏は「果たして原料のコスト増だけが問題なのでしょうか。CMなどのプロモーション費用は掛かるし、売れなかったときには在庫を値引きすることもある。大切なのは、商品やサービスにサステナブルな付加価値を付けて、市場価格以上の価値を提供すること」と見解を示しました。

また「BtoB企業にとっては今どのようなマーケティング活動が必要なのか」という問いに対しては、松永氏が「サプライチェーンで協力し合って、一緒に仕掛けていくことが重要ではないか。三井化学としては、取引先が店頭やSNSでマーケティングを行う際に、素材メーカーとして説得力のあるデータやロジックを提供することで、消費者の意識変容や行動変容に繋がるようなコミュニケーションの後押しをしていきたい」と答えました。

 最後に(アーカイブ動画のご紹介)

今回のセミナーは、約500名もの方々にお申込みをいただき、多くの企業が「環境に配慮した商品やサービスをどうマーケティングすべきか」の関心の高さと、国内外の先進事例に興味を持たれていることを実感したセミナーとなりました。

セミナーの内容は、動画コンテンツとしても提供しています(一部編集しております)。
ぜひ、こちらからご視聴ください。


また、セミナーでも一部内容を紹介した事例集「環境への取り組みが製品・ブランドの価値を高める 事例11選」はこちらからダウンロード可能です。併せてご覧ください。

9.20セミナーレポート10
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/soso/whitepaper/

これからもリジェネラティブ(再生的)な社会の構築に向け、さまざまな情報を発信します。私たちの取り組みにご期待ください。

 
参考資料
*1:リジェネラティブな社会に向けて行動する「RePLAYER®」「BePLAYER®」:
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/index.htm
*2:IDEAS FOR GOOD:
https://ideasforgood.jp/
*3:メンバーズ:
https://www.members.co.jp/

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