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生活に身近なプラスチックの現状

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2020年7月のレジ袋有料化からプラスチック環境問題は日本全体の関心事となりました。生活に欠かすことができない重要な素材のひとつでもあるプラスチックですが、その種類は多く、何にどのような形で使われているのか、またプラスチックの性質を活かすことで解決した課題があるなど、実情はあまり知られていないといえます。

日本ではどういったプラスチックを取り扱っており、それが何に使われそしてどう処理されているのかを詳しくみていきましょう。

軽くて丈夫、加工がしやすいプラスチックは生活必需物資

img_learn14_01http://www.jpif.gr.jp/00plastics/conts/iroirona_plastics.pdf(日本プラスチック工業連盟)

軽くて丈夫、加工しやすく手に入りやすいプラスチックは図のように、私達の生活の隅々に使われています。一般に「ビニール袋」と呼ばれるレジ袋の素材はポリエチレンという素材で、最も生産量が多く、消費量も多いプラスチックです。このポリエチレンと、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、PET樹脂が代表的な汎用プラスチックです。いずれも大規模なプラントで生産され、容器包装、家電製品、上下水道管などに加え、自動車にも使われる汎用性の高い素材です。

汎用プラスチックと区別されるのが機能性プラスチックです。機能性プラスチックの代表格にはエンジニアリングプラスチックがあり、強度、耐熱性、光学特性、摩擦特性など様々な機能を特化させたプラスチックです。

代表的な機能性プラスチックにはガラス並みの透明性と耐衝撃性を兼ね備えたポリカーボネート樹脂があります。窓材、アーケードの屋根材や、液晶テレビ、ゲーム機、ノートパソコン、自動車のヘッドランプなどに使われています。機能性プラスチックはこのほか、ナイロン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート、フッ素樹脂などがあります。

プリント配線基板、自動車シート、浴槽など幅広く使われる熱硬化性樹脂

プラスチックには、もう1つの分類があります。プラスチックを加工する時の熱にどう反応するかで種類が違ってきます。これまで例をあげて説明してきたプラスチックは全て熱可塑性樹脂と呼ばれるもので、加熱すると可塑性を持つことから成形可能となり、冷却すると固化します。加熱、冷却は繰り返しても、プラスチックは可塑化、固化します。

一方、加熱や化学的重合で、反応が完了すると、不溶性の固体となり、加熱しても再加工ができないという樹脂が熱硬化性プラスチックです。代表的な熱硬化性プラスチックの1つがフェノール樹脂でプリント配線基板などに使われています。昔懐かしい黒電話もフェノール樹脂製です。熱硬化性樹脂にはこのほか、クッションや自動車シートなど広い用途を持つポリウレタンや、浴槽・漁船・自動車外板などに使われる不飽和ポリエステル樹脂などがあります。

http://www.jpif.gr.jp/00plastics/conts/iroirona_plastics.pdf

自動車の燃費向上と軽量化にはプラスチックが不可欠

img_learn14_02石油化学工業協会刊「石油化学ガイドブック」改訂7版
http://www.jpca.or.jp/

それではプラスチックが私達の生活にいかに不可欠な素材であるか、自動車を例にとって説明します。上の図は自動車のどの部品に、どういうプラスチックが使われているか図解しています。外から見てみるとタイヤ、バンパー、ランプなどに使われています。タイヤコードには、耐熱性の高さが特徴のナイロン66が使用されます。衝撃を吸収するバンパーにはポリプロピレンが、ランプにはポリカーボネートやアクリル系樹脂が使われます。

ボンネットを開けると、燃料タンクにはポリエチレンが使われています。ポリエチレンは車載電池のセパレーターやワイヤーハーネスにも用いられます。

車の中に入ると、まずハンドルはポリウレタン、インパネやドアトリムにはポリプロピレン、シートやシートベルトにはポリウレタンや、ポリエステルが使われています。

かつてのクルマのパーツは、鋼材やガラス製でしたが、1970年代におきた石油危機をきっかけに、燃費の向上が大きな課題となり、このための軽量化が重要になりました。この軽量化・燃費向上という課題を解決してきたのがプラスチックです。現在、自動車は電動化が進んでいますが、それは重量の増加を意味します。機能性の高いプラスチックにより軽量化を図る必要性は高くなる一方です。

プラスチックが守る食品寿命・衛生・おいしさ

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img_learn14_04商品画像提供:マルコメ株式会社
日本プラスチック工業連盟「食品用プラスチック容器包装の利点」
http://www.jpif.gr.jp/00plastics/conts/riten.pdf

プラスチックと食品は実は切っても切れない関係なんです。プラスチックがなければ、今、私達が食べたり飲んだりしている食品、飲料は作っている場所にいかなければ味わうことができません。食卓やお店などどこでも好きな時に食事を摂れるのは、プラスチックがあればこそなんですね。

お味噌にその例を見てみましょう。味噌は生き物といわれるように発酵食品の代表格です。空気に触れると黒ずんだり(褐変)、カビが発生したりして、味が落ちます。また発酵が進むと炭酸ガスが発生して膨張したり、離水(食品に含まれる水分が外に出てきてしまうこと)・汁漏れを起こしたりします。こうした様々な不具合を防止するのがプラスチックです。味噌の酸化の原因となる酸素をバリアする機能を持った包装材はその1つ。そのほかにも味噌の容器に求められる機能は、落下、振動、突き刺し、圧力から守るということがあり、これらの機能を満たすには耐衝撃性と剛性を持つプラスチックが使われます。味噌の容器に「賞味期限6か月(常温)」と保証することができるのは、プラスチックによりこうした様々な機能を容器に持たせ味噌の風味を守っているからなんです。

プラスチックの課題

日本のプラスチックの生産量は約1,000万トン/年。軽くて、丈夫、色々な形に加工できるという機能が、需要と生産量の拡大をもたらしました。一方で、丈夫(分解しにくい)であるがゆえに、放置され海洋ゴミになったりします。石油資源を原料としているため、焼却するとCO2を発生するなどの問題もあります。

プラスチックの代替は一筋縄ではいかない

こうした負の側面から、プラスチック以外の材料で、代替する動きも広がっていますが、プラスチックの持つ機能を完全に代替できる材料の開発は簡単ではありません。牛乳パックに例を見てみます。牛乳パックは紙製ですが、牛乳が浸みださないよう、内面にポリエチレンがコーティングされています。これにより、牛乳製造工場からスーパーマーケット、そして食卓まで、問題なく流通できるのです。

プラスチック以外の素材への代替化の動きのなかで、牛乳パックの内側のコーティング素材であるポリエチレンをガラスに替えようという技術開発が進んでいます。牛乳パックの内側をガラスコーティングに替えれば、飲料容器に大きな材料革命をもたらします。このため、大規模な研究陣容を組んで、浸漬法と呼ばれるガラスコーティング技術の開発に取り組む企業もありますが実用化への問題点も複数指摘されています。

また、スプレー方式による新しい技術によりガラスを紙容器に均一に吹き付ける技術も開発されています。開発したのはツバサ真空理研というスタートアップですが、同社はガラスの原料からなる薬液をスプレー化して基板上でガラス化することで、薬液劣化がなく自由な立体形状に連続的にコーティングすることに成功しました。しかしながら、同社の石川道夫社長によれば、既存のガラスコーティング技術より実用化に近づいたとみられているこの技術でも「(容器コストを度外視できる)高級な弁当の箱の内側にコーティングするくらいしかできず、牛乳の浸みだしを完全に抑えることは現状では全く不可能」と言い切ります。ポリエチレンによるコーティング機能をガラスに持たせるのは「大変な時間と研究開発費用を要する」と言っています。

仮に完全に代替できる技術のメドがたったとしても、牛乳パックの製造企業は、これまでのポリエチレンによるコーティングから、スプレー式のガラスコーティングに替えるための設備投資を行わなくてはならなくなります。現在、ツバサ真空理研はこのスプレー式のガラスコーティング技術の実証設備の設置を計画していますが、実証設備規模でも多額の投資を必要としています。 工業化規模で牛乳パックのガラスコーティングを実現するためには多額の投資負担がかかるのです。

既に生活の一部となっているプラスチックに代わる材料への転換には技術的な課題と共に多大なコストと時間を要するため、なかなか一筋縄ではいかないのですね。

問題解決の選択肢 改プラスチック

プラスチックの便利さを失うことなく、現在プラスチックが直面している地球環境問題を解決する。現実性を失うことなく理想に近づく選択肢が、三井化学が提案する改プラスチックです。同社では大阪工場でバイオマスナフサを原料に使い地球環境負荷の少ないバイオマスプラスチックを生産することに取り組んでいます。

ナフサはプラスチックなど高分子材料の出発原料です。これまで説明してきた自動車の内外装部品や味噌の包装材料は全てこのナフサから作られます。牛乳パックのコーティング素材であるポリエチレンもその1つです。

ナフサは化石資源を使いますが、代わって使用済みの食用油などから精製され作られるバイオマスナフサを使うことで地球環境に優しいバイオマスプラスチック素材を生み出そうというのが改プラスチックの1つのテーマです。

同社では、バイオマスナフサを使った化学品・プラスチックの生産に関してISCC PLUS認証を取得しています。ICSS PLUS認証とはバイオマスやリサイクル原材料の持続可能性認証プログラムで、グローバルなサプライチェーンを通して管理・担保する認証制度として広く認知されています。複雑な生産工程を持つ化学産業のサプライチェーンのバイオマス化を推進するマスバランス(質量収支方式)の有効な認証制度として機能しています。バイオマスナフサを原料として作られる化学品・プラスチックにバイオマス原料使用分を割り当てることで、さまざまな素材をバイオマス化することが可能となりました。プラスチック製の容器・包装材料がその使命を終え焼却される時に、CO2の排出がゼロとなるプラスチックを供給することができます。

最大の特徴はこれまで説明してきたプラスチックの用途全てで、新しい設備の投資を必要とせず、ユーザーが必要とするバイオマス度を製品表示するための化学品・プラスチックの供給が可能となることです。今後さまざまな用途でバイオマスプラスチックが利用され、日々の生活でも目にする機会が増えてくることが期待されています。

 

三井化学では、「世界を素(もと)から変えていく」というスローガンのもと、バイオマスでカーボンニュートラルと目指す「BePLAYER®」、リサイクルでサーキュラーエコノミーを目指す「RePLAYER®」という取り組みを推進し、リジェネラティブ(再生的)な社会の実現を目指しています。カーボンニュートラルや循環型社会への対応を検討している企業の担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

「BePLAYER®」「RePLAYER®」https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/index.htm

<公開資料:カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー関連>https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/soso/whitepaper/ 

 

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