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事業の新展開と差別化製品の開発

1980年〜1996年

1980年代に入ると大牟田工場は、肥料事業・合成染料事業の分離などの構造改革とともに、「ファインケミカルを主体とする活気ある工場」を目指し再建の道を模索していた。
一方で、収益基盤強化のために大幅な人員削減を余儀なくされ、関連会社派遣、海外派遣、他社応援などにより、1981(昭和56)年からの2年間で人員はおよそ半数以下となった。

工場存亡の危機感が高まる中、研究部門では主力のウレタン技術を全く分野の異なるメガネレンズ材料に応用する特異技術が誕生していた。
この技術は、一旦は実用化が困難とされ開発を中断していた。しかし研究者たちは従来の技術ではメガネレンズ材料分野で先行する他社に勝る材料が生まれないことが判ると、この特異技術に自らの将来を賭けた。
再開した研究開発は困難を極めたが、実用化で協働が欠かせないレンズメーカーをも巻き込み開発を進め、1987(昭和62)年ついにはポリチオウレタン系高屈折率メガネレンズ材料を誕生させ企業化の道を拓いた。
その後の事業展開では、製造・研究・営業がそれぞれにレンズメーカー、顧客と一体となった努力を続け、1990年代には高屈折率メガネレンズ材料としての世界的地位を確立した。

写真 MRシリーズ

また時を同じくして、農薬研究では環境への配慮など、将来を見据えた全く新しいタイプの製品開発に着手していた。多種類の害虫に強力に作用し即効性がある一方で、人畜魚介類には極めて低毒性という新農薬の開発である。
新規の有機合成化学製品を工業化するには、新しいプロセス開発が重要となる。初期の研究から製造プロセス開発、工業化までの全工程を同じ敷地内でできる大牟田工場はその特徴を最大限に発揮し、従来の概念を打ち破る新農薬「エトフェンプロックス(商品名:トレボン®)」を誕生させた。
その後も大牟田工場は研究開発・製造・エンジニアリングが一体となった開発体制でメガネレンズ材料や農業化学品を拡充するとともに、医薬原料「アミノ酸(セリン類)」、エンジニアリングプラスチック「オーラム®」、医薬品「タウリン」など多彩な新製品を世に送り出していった。

写真 エトフェンプロックスプラント

エトフェンプロックスプラント/1987(昭和62)年

写真 トレボン
写真 オーラム®

超耐熱・熱可塑性ポリイミド樹脂「オーラム®」が使用された自動車部品等

写真 タウリンプラント

大正製薬(株)と合弁で設置したタウリンプラント /
1995(平成7)年

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