013トーチ STABiO® × Piezoelectric Line

CONCEPT

そっと握るだけで、透明な塊の中からやさしく緩やかに光を放つトーチ。透明かつ硬さを自由に調整できるスタビオ®の中に、わずかな変化を感じ取ることができる圧電ラインと、エレファンテック社のインクジェット回路基板を封じ込めました。触った人と明かりが呼応するように、指先のわずかな動きに反応してボワッと灯り、スーッと消えます。従来のようなスイッチON/OFFの動作ではなく、素材そのものがインターフェイスとして機能する―
誰もが簡単に操作できるようにアクセシビリティデザインの思考を盛り込んだ、新発想のトーチ。プロダクトデザインや製造プロセスの固定概念を覆す、まったく新しい製品を提案します。

P-Flex™は株式会社エレファンテックの登録商標です。

PROCESS of MIXOLOGY

プロトタイピングを繰り返しながら、素材の掛け合わせによる新たな表現の可能性を追求する試み。
素材単体のスペックの深堀りではなく、素材同士のシナジーを探求しながら、素材だけに向けられた”閉じた目線”ではなく、外部との共創によって価値や可能性を高めていく取り組みです。

素材名

スタビオ®(PDI®系ポリイソシアネート)

三井化学が世界で初めて開発した、植物由来のPDI®系ポリイソシアネート。従来のポリウレタン材料にはない高い反応性と耐薬品性、耐傷付き性、高光沢を活かして、塗料や接着剤製品として使用されている。ゲルにすると独特の柔らかさがあり、新しい質感を求める用途で開発が進んでいる。今回は、高透明、無黄変、低温重合の特徴を活かして、アクリルとは異なるクリアな筐体を実現した。

圧電ライン

高感度で温度変化の影響を受けない非焦電性を有する、フレキシブルな同軸線形状の圧電センサ。任意の長さに「切って・貼って・測る」ことができるため、配置が難しい凸凹を含む3次元形状や広い面積の「曲げ・接触。振動」を高感度に検出することができる。

素材の可能性

スタビオ®(PDI®系ポリイソシアネート)

  • ●ウレタンはその特筆すべき物性からさまざまな用途で使われているが、黄変しやすい性質から、透明性を前面に出したプロダクトは非常に少ない。
  • ●スタビオ®の低温重合性を活かして、耐熱性に課題があるPET基板によるインクジェット回路の埋め込みに加え、スタビオ®の透明性の美しさを高度な重合技術で表現することに成功。
  • ●ほかの透明素材では重合温度が高温になることや、時間とともに黄変してしまうという課題を克服。スタビオ®が持つ魅力を、最新のプリンテッドエレクトロニクスと組み合わせ、クリアな筐体で表現。
  • ●素材が持つ美しさや質感と、共感する外部パートナーとのMIXOLOGYによって、新たなものづくりの可能性を広げていく。

圧電ライン

  • ●人は常に数Hzとほんのわずかだが震えている(振戦)。そうした繊細な情報をも感知可能な高い感度を持つ圧電ラインを用いて、人が触れただけでスイッチのON/OFFを切り替える機能を提案。
  • ●物が触れることでは反応しない特性を活かして、人とモノとのユニバーサルなコミュニケーションにセンサが介在する可能性を提示。
  • ●握る力によって光の強弱を調節できるアナログ回路によって、圧電ラインの繊細さを表現。
  • ●アクセシビリティの概念を取り入れた製品開発に加え、生体情報(心拍・脈拍・呼吸)やインフラのモニタリングなど、次世代IoT社会の実現を素材の力によって導いていく。

クリエイティブパートナー

株式会社MTDO 代表取締役田子 學 MANABU TAGOアートディレクター/デザイナー

幅広い産業分野においてコンセプトメイキングからプロダクトアウトまでをトータルにデザインする「デザインマネジメント」で、社会に向けた新しい価値創造を実践している。

慶応義塾大学 大学院 SDM 特任教授
東京造形大学 デザイン学科 特任教授
東京藝術大学 デザイン科 非常勤講師
熊本大学大学院 自然科学研究科 客員教授

日本の化学会社は100年以上と歴史が長く、世界でも圧倒的なシェアを誇る商材も多く保有しています。しかしながら、そういった事実はなかなか世間に知られていないのが現状です。研究者が能動的に自らの可能性を広げ、もともと持っている高いポテンシャルを高次元に到達させること。それがMOLp®の狙いです。私は「暮らす」という視点でデザインを捉える際、素材そのものからデザインのアプローチを探りたいと常々思っていました。市場に縛られない創造的な開発は、未来を作り上げる事にきっと繋がることでしょう。