バイオポリオール Econykol®
GX (グリーントランスフォーメーション)を
推進する上で
強力なエンジンになる
バイオマスプラスチック。
エコニコール®は、ひまし油として
知られるヒマの実から得られる油を
原材料としたポリウレタン用の
バイオポリオールです。
三井化学はヒマの世界最大産地である
インドに現地企業との
共同出資による
会社を設立し、生産を行なっています。
さらに環境や社会に配慮した
持続可能なヒマ農業を推進する
NGOへの加入を通じて、
現地農家の支援に貢献しています。
語り手(敬称略、以下同)
金山 学/三井化学株式会社 ベーシック&
グリーンマテリアルズ事業本部ポリウレタン事業部
紀國 崇/三井化学株式会社
(Vithal Castor Polyols Pvt. Ltd. 出向)
小幡 雅司/三井化学株式会社
(Vithal Castor Polyols Pvt. Ltd. 出向)
金山:ひまし油と呼ばれるバイオマス素材を原料としたポリウレタン用のポリオールです。原材料植物であるヒマ(トウゴマ)が生育段階に光合成によってCO2を吸収しますので従来の石油系のポリオールと比較して、CO2排出量の削減効果があり、カーボンニュートラルに貢献できます。
LCA(Life Cycle Assessment*)で比較すると、CO2排出量はおよそ55%減になります。
また有限資源の石油とちがい、再生可能なバイオマス由来ですから将来的な資源枯渇のリスクがありません。
他のメリットとして、消費者であるお客様に対する、新しい環境対応の原料を使っていることのPR効果も挙げられます。
金山:バイオマス素材には大豆由来のものやパーム油などさまざまありますが、エコニコール®に関してはひまし油の化学組成がポリウレタン原料に適していることと、もともとエンジンオイルなど広く工業用途に使われてきており、非可食なので食糧問題と競合しないといった面でも当社の原料にふさわしいと考えています。
小幡:原料のヒマ生産地であるインドに、現地にある世界最大のひまし油メーカーJayant Agro-Organics(JAO社)と共同出資(JAO社50%、三井化学 40%、伊藤製油 10%)してVithal Castor Polyols社(VCP社)を設立し、エコニコール®を専門に製造、グローバルに供給しています。
まさにB×Bビジネスですが、インドと日本では文化の違いがあり、そこを擦り合わせて理解し合うのが苦労するところです。ただ、一旦信頼関係ができると、インドの人は日本人に対する尊敬の気持ちもあり、細かい仕事にも感謝してくれるし、お互いにわかりあえたときの満足感は他では得られないものがあります。
現在、VCP社では年間8000トンのエコニコール®を生産する能力を有していますが、インドにいても、今後エコニコール®が世界中に広まり、さらにたくさんの供給が必要とされる日がすぐ近くまできていることを実感しています。三井化学、VCPが一丸となって、生産・品質の安定、改善に取り組んでまいります。
将来的には、さまざまな環境に貢献できる新しい素材をインドに限らずグローバルスケールで手がけていきたいとも考えています。
紀國:環境と社会に配慮した持続可能なヒマ農業を推進するインドのNGOであるSCA(Sustainable Castor Association)に2022年3月から参加しています。SCAではヒマ農家さんにおける生産性の向上や、安全確保、人権問題への対応といったさまざまな内容を通じて、エコニコール®の原料であるひまし油の持続可能性をより一層高める取り組みを推進しています。
インドは人口のおよそ7割が農業従事者で、世帯収入が十分でないという課題があります。機械化はまだまだ道半ばであり、家族総出での人海戦術による農作業が行われている印象です。こうした中、SCAは、「Sustainable Castor Code」(=持続可能なヒマ生産のためのガイドライン)に基づき、ヒマの収率を高める一方で、安全を確保するための作業手順を広める活動を推進しています。なかでも収率の改善活動には、畑に水を撒く量やタイミング、また農薬や肥料の最適な使い方といった内容が含まれます。さらに、地域におけるリーダー育成を通じて、地域全体として自立したサステナブルな農場運営ができるような取り組みも推進しています。
当社にとっては品質の安定した原料を一定量確実に調達できることになり、農家にとっても当社にとってもメリットの高い取り組みだと感じています。
金山:バイオマス由来の原料をサプライチェーンを通して石油由来のものと分離して保管・管理し、使用するのがセグリゲーション方式です。
もうひとつ、当社でもラインアップがあるマスバランス方式は、バイオマス由来の原料と石油由来の原料が製造工程において混合して生産された場合、「入りと出」を量の単位でバランスさせることにより正確性を担保させる仕組み(物質収支方式)で、投入したバイオマス由来の原料の量に応じて、できあがった製品の一部を「任意の割合でバイオマス由来」と見なすことができる仕組みです。
どちらもバイオマスプラスチックの普及に欠かせない方式ですが、セグリゲーション方式のエコニコール®はもともとのひまし油が持っている化学構造を利用して、そのままポリウレタン原料としてご提供いたしますので、お使いいただくお客様にとっても非常に理解しやすくなっています。
エコニコール®から作られたポリウレタン製品は、JBPA*のバイオマスプラマークの取得が可能です。当社製品(EBT-500)でもバイオマスプラマークを取得しており、すでに多くのお客様もJBPA会員としてマークを取得されています。
*JBPA(日本バイオプラスチック協会)はバイオプラスチックの普及と技術的な問題の解決を目的として設立された民間団体であり、当社はJBPAの会員としてバイオマスプラスチックの普及促進に取り組んでいます。
エコニコール®の使用量は、用途分野にもよりますが、重量見合いで40%までの添加量であれば、従来品と概ね同等レベルの性能を得ることができます。
金山:エコニコール®は自動車のクッションや家具・寝具、化粧パフなど汎用品から高いスペックが要求されるハイエンド製品まで幅広い分野でご使用いただけます。現在は、やはり環境意識の高い企業に率先して採用いただいています。今後は採用の裾野が広がって、国内のバイオマスプラスチック比率拡大のお役に立てるよう、対応製品を増やしてまいります。
金山:石油由来ポリオールの代替品として幅広く使用していただけますが、現状では軟質系のポリウレタンフォームに多くご採用いただいています。軟質のポリウレタンフォーム用途については、一般的な従来の石油系ポリオールに準ずるものから反発率を高めることができるグレードをはじめ目的に応じたグレードラインナップを取り揃えています。CASE用途(コーティング・接着剤・シーラント・エラストマー)については、現在開発を進めており、順次お客様の評価をいただき、近々に量産化が可能になる予定です。
さらにお客様とのB×Bの関係性の中で、新しいラインアップを共同開発していきたいと考えています。
記載内容は2024年11月30日現在のものです。
お問い合わせ:ポリウレタン事業部
Mail:pupu@mitsuichemicals.com
TEL:03-6880-7432 FAX:03-6880-7586
エコニコール®の一部の用途に関しては
三井化学のBlue Value®認定がされています。
三井化学グループが掲げる「環境と調和した循環型社会」を目指す中で、ライフサイクル全体を通じた環境影響を評価し、その価値を可視化できるよう設計したのがBlue Value®です。
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バイオポリオール Econykol®
ポリウレタン事業部金山 学