「もったいない」を
「始末」します

マテリアルリサイクルソリューション
コスモネート®M-200W

京ことばで「始末する」は、
ものをなるべく捨てずに工夫を
凝らしてとことん使い切ること。
京都府にあるエースジャパン(株)さんは、
三井化学の木質バインダーシステムを使い、
それまでは廃棄物処理をするか放置しておくしかなかった
間伐材や折木を原材料に物流用のパレットを生産しています。
そんな、化学のちからで森の恵みを
「始末する」取り組みを紹介します。

語り手(敬称略、以下同)
合志啓隆/三井化学株式会社 ベーシック&グリーン
マテリアルズ事業本部ポリウレタン事業部
判藤慶太/エースジャパン株式会社 代表取締役

BxBから生まれた
マテリアル
リサイクルソリューション

ビジネスのきっかけについて

合志:三井化学は今、従来の素材提供型ビジネスから、社会課題視点のビジネスへの転換を強力に進めています。社会全体が解決すべき課題に視野を拡げ、サーキュラーエコノミーへの貢献やカーボンニュートラル社会の実現に向け、環境負荷低減につながる製品の開発といった「サーキュラーエコノミー型ビジネスモデル」の構築を目指しており、エースジャパンさんとの取り組みはまさにその優れた一例といえます。
具体的にはこれまで使われていなかった枝葉や樹皮などの未利用間伐材を材料にして製品をつくることで持続可能な社会に貢献する、という思いを共有し、濃密なコミュニケーションと膨大な試行錯誤の末に社会課題解決型のソリューションがかたちになりました。

写真左:判藤慶太さん/エースジャパン株式会社、
右:合志啓隆/ポリウレタン事業部
手前の枝葉や樹皮を含む間伐材をリサイクル利用して
物流用パレットを生産

枝葉や流木など含水量の多い間伐材を使えるのが最大の特長

木質バインダーシステムとは

合志:木質のチップを接着剤で固める(バインドする)ためのシステムです。システムというのは、お客様の要望に合わせて原料を組み合わせて独自にカスタマイズ化した処方として提供することです。
従来のコスモネート®M-200という製品が疎水性だったのに対し、京パレットに使用するM-200Wは枝葉や樹皮、流木など含水量の多い木質素材にも使用できるよう親水性などを付与したところが最大の特長です。エースジャパンさんで成型している材料以外にもWEB ボックスの床材や籾殻からつくったコースターなど多くの事例があります。

原料の木質チップとコスモネート®M-200W

「もったいない」間伐材や未利用材を「始末」して、
マテリアルリサイクル、カーボンニュートラル、森林保全

京パレットが生まれたきっかけは

判藤:物流のパレットは木材で作ったものが多いのですが、海外の輸送用パレットに建築廃材を使っているものがあったんですね。ただし形状があまりよくなく、最終廃棄は日本ですることになるので、これらの欠点をぜんぶ利点にしてやれと思ったんです。
また当時、プラスチック製の物流パレットが増えてきつつあったもののまだ主流は木製で、ほぼ使い捨てでした。釘を使っているので積み荷を傷めたり作業員が怪我をしたりする危険があり、廃棄の手間もかかります。そこで「釘を使わず、メイドインジャパンでゴミにならない」をコンセプトに開発をはじめました。

判藤慶太さん/エースジャパン株式会社

当社の創業の地である関西文化学術研究都市のけいはんなプラザには豊富な人材がいて、いまほど環境問題が言われていなかった時代に、CO2排出量削減に関心を持つ人が多かったんですね。また、ベンチャー企業を真剣に育ててくれようとする組織体でした。そんな人たちと話す中で出てきたのが京都の森に放置されている間伐材を利用するアイデアでした。プラスチックと比べれば圧倒的にCO2の発生量を少なくできますし、森林を良好な状態に戻していくこともできる。しかも材料費を抑えることもできます。
ただし、誰もつくったことのないものですから、機械もノウハウもなく、当初は無理だといわれました。それでも環境問題に貢献するという目標のもとにたくさんの人の協力を得られ、京パレットを世に出すことができました。

京パレットの
CO2排出量削減効果

ずば抜けた探究心と
あきらめない姿勢

三井化学をパートナーに選んだ理由は

判藤:技術的に優れているというのはもちろんあるのですが、製品を生み出すための探究心とあきらめない姿勢が三井化学さんは技術者を筆頭に営業の方も含め、みなさん、ずば抜けていました。イソシアネートが活用可能なことはわかってはいたのですが、市場で調達できる汎用タイプの製品だとそのまま使用することができませんでした。それを三井化学さんが6年7年かけて本用途に適した製品を開発してくれて、今があるわけです。国内で他にイソシアネートを使って同様のことをやっているところは聞いたことがないですね。

環境配慮型製品でありながら
優れた経済性

独自の製法から生まれた京パレットの特長は

判藤:大きな特長は、耐候・耐水性、耐熱性、リサイクル性です。

京パレットの特長

それと価格を抑えられることですね。材料はこれまで使い道のなかった枝葉、樹皮で森にそれこそ無尽蔵にあり、毎年出てきますから、材料費を抑えられます。環境配慮型の製品は高価格になりがちですが、京パレットは経済性を両立しています。

フォークリフト手前に装着されているのが京パレット。
仕様は国際規格で決まっているので、世界中で使用可能。

もうひとつ、海外輸出するときに木質のパレットと違って、病害虫などによる被害を予防するための燻蒸処理が不要ということがあります。パレットは消耗品ですので、世界レベルで考えると膨大な量が消費されています。そのうちの何%かが京パレットになるだけでも、大きなCO2削減効果になると考え、積極的に生産しています。

ミャクミャクの目玉に
座ってみてください

大阪万博のベンチをつくっています

判藤:採択事業に応募して、デザインやコンセプトの審査によって選ばれました。
座面はシンボルキャラクターのミャクミャクの目玉をイメージしているのですが、よく見るとわかるように1枚のパネルから座面と脚の部分をいっぺんに切り出して構成した、無駄のないデザインになっているんです。そんなところや京パレットと同じ、マテリアルリサイクル、カーボンニュートラル、森林保全のコンセプトが評価されたのだと思います。
他にもいくつかの企業がベンチを納入する予定ですが、多くが数十脚なのに対して、当社は2000脚。プレス成型でつくれることのメリットです。大阪万博にお越しの際にはぜひ座ってみてください。

三井化学さんといっしょに森を守り、
温暖化抑制に貢献していきたい

今後について

判藤:おかげさまで日本各地に呼ばれることも多くなっています。環境というのは悪化するのは早いのですが、立て直しには時間がかかります。ですからこつこつと成果を積み上げていくしかありません。その輪を広げるために仲間を募って全国に増やしていきたいと考えています。当社のノウハウを活用してもらい、ご当地でつくってご当地で供給するようなお手伝いもしていきたいですね。地方の活性化と環境保全が同時に実現できますから。
京パレットについては、最終的には土に還せる製品を目指してこれからも三井化学さんといっしょに開発を進めていきます。
また、この事業を地球規模まで引き上げる事が目標です。弊社と三井化学さんの技術はきっと全世界に役立つと確信しています。

合志さんにとってPAINT IN GREEN とは

合志:モノがたくさんあることが豊かで幸せな時代、は既に過ぎ去っています。「地球環境との調和の中で」という前提が絶対に必要です。その中で豊かな暮らしの礎になる地球環境を良好な方向に向かわせつつ、これまでの便利さを享受するために必要なのがグリーンケミカルだと考えています。バイオマス化とリサイクルを両輪で回していくことが必要ですが、ふたつを組み合わせることができればより面白いし、視野が広がっていくと思います。

合志啓隆/ポリウレタン事業部

わたしにとってのPAINT IN GREENは、
白い壁に緑色のペンキを一気にかけるのではなく、
わたしたちの子や孫世代のために
刷毛で少しずつ塗り込んでいくことの繰り返し
ですね。

記載内容は2024年11月30日現在のものです。

トップページへ戻る

PAINT IT GREEN