バイオポリオール Econykol®
雪ヶ谷化学工業様採用事例
雪ヶ谷化学工業株式会社は
従業員100名未満の少数精鋭経営で、
化粧スポンジにおいて
世界シェア7割を超え、
SDGsのトップランナーとして2023年に
ジャパンSDGsアワード SDGs推進
副本部長(内閣官房長官)賞を受賞。
三井化学について「同じハートを持ったパートナーとして共に世の中を変えていきたい」と語る同社は、三井化学のバイオポリオール、エコニコール®を使い、
化粧品業界で初めてバイオマス素材配合のウレタン製化粧スポンジを製品化しました。
語り手(敬称略、以下同)
坂本昇/雪ヶ谷化学工業株式会社 代表取締役
長谷川愛/同社開発部
野村みのり/同社営業部、SDGsプロジェクトリーダー、
(社)エシカル協会エシカルコンシェルジュ
坂本:弊社は化粧品メーカーなどにスポンジを納入しているB to B企業ですので、業界の方以外は名称を聞いたことがないと思いますが、以前からウレタンフォームのTERAという化粧スポンジをラインアップしておりまして、その原料をバイオポリオールに代替したものが、TERAにECOを加えたTECORAになります。
TECORAの前にバイオマス原料の天然ゴム100%のスポンジと石油由来原料に天然ゴム原料を10〜90%混合したハイブリッドの合成ゴムスポンジを化粧品業界では初めてリリースしており、それに続いてウレタンスポンジで同じことができないか考えていたときに三井化学さんから提案があり、ヒマシ油由来の原料を試してみたのがはじまりです。それまではバイオポリオールがあることを知りませんでした。採用に至ったのは開発現場で使いやすいとの判断があったからです。
長谷川:ウレタンの材料規制などの関係で、材料を一部変更する必要があり、それによって配合のバランスが変わってポリオールの種類の変更が必要になりました。従来使用していたポリオールではバランスが合わず苦労していたので、官能基数が高いポリオールを探していたときに出会ったのが三井化学さんのバイオポリオールでした。
それまでの石油由来のポリオール100%に対して、物性を変えることなく一部分をバイオポリオールに置き換えて今のかたちになっています。
品質的にも従来同等で、取引先からも同様の評価をいただいております。官能基数を高くした設計変更によって強度は上がっていて、アイブロー、アイシャドーなどに使うチップに使用するケースが多くなっています。
デメリットとしては、バイオポリオールは色が少しついているので、白いスポンジの配合には使いづらいことがあります。三井化学さんからは、色相改善品を開発中と聞いていますので期待しています。
野村:おかげさまで、メディアでご紹介いただいたり、SDGsに関する賞をいくつか受賞させていただいたりしています。SDGsの活動は「雪ヶ谷サステナブルチャレンジ2030」(2030年までに①CO2排出量を実質ゼロに ②再生可能原材料比50% ③廃棄物50%減 ④女性管理職50% ⑤日本の天然ゴムを100%フェアトレードに)という5つの大きな目標を立て、達成に向けて約20名のプロジェクトチームを中心にいろいろな取り組みをしています。
TECORAは①CO2排出量実質ゼロと②再生可能原材料比50%の二つの目標に貢献する製品ということになります。バイオポリオールを40%配合した場合、従来品と比べて製造〜廃棄時のCO2排出量を36.1%削減できます。JORAのバイオマスマーク(バイオマス度30%)を取得している製品もあります。
これまで化粧品業界にはウレタン原料にバイオマス素材を使った製品がなかったので、趣旨に賛同して採用してくれる得意先もいらっしゃいます。大手メーカーではスポンジにまでバイオの目を向けられていなかったというコメントを多くいただきます。逆に気づかせてくれて感謝しますとおっしゃってくださることもあります。
実際に使っていただいている消費者の方は、もともとの石油由来原料100%のTERAに対して、バイオポリオールを配合したTECORAの方がしっとりとした風合いになっており、その点ではよりいいものになったと感じてくださっているのではないでしょうか。エコであるだけではなく、製品の品質がよくなっていることは開発に感謝です。
長谷川:TERA製品はチップなどに使われることが多かったので、パフでも採用されるように手ざわりのよさや柔らかさをもっと出そうと考えて、配合の設計をした結果です。
坂本:弊社はバイオマス原料を使うに際しては、その生産や調達の過程で児童労働や強制労働などの人権問題や環境破壊などがないことが必須と考えています。天然ゴム原料を使う製品については、天然ゴムを扱うフェアトレードの認証団体がなかったので、自社で基準を定め、調査し、毎年確認をしています。
ヒマについてもインドの農家で生産していますので、同様に人権問題などに配慮する必要があると考えていました。そうした内容も含めて検討を進めていく中で、三井化学さんが2022年3月に環境と社会に配慮した持続可能なヒマ農業を推進するインドのNGOであるSCA(Sustainable Castor Association)に参加されました。弊社のバイオマス原料調達先としてポジティブなアクションだと理解しています。
長谷川:ウレタンのスポンジはポリオール選択からの設計になるので自由度が大きく、開発としてはやりがいがあります。化粧品以外の分野でも使用できるように、どんな用途にどんな需要があるのかをリサーチし、その需要に合わせた開発をしていきたいと考えています。その際にバイオポリオールのバリエーションがもっと増えると選択肢が増えて開発のヒントになりますので、いっしょにアイデアを考えながら、グレードをもっと増やしていただけるとありがたいです。バイオポリオール100%の配合ではまだ製品化ができるようなウレタンのスポンジはできませんでしたが、改良すれば可能性はあるかもしれません。そのあたりもいっしょに探っていきたいですね。
野村:メーカーの研究所に提案する機会などもあるので、そんなときに三井化学さんに一緒に行っていただき、専門的なサポートをしてくれたらうれしいですし、3社の掛け合わせから新しい製品が生まれるかもしれません。
また、現在4種類ある弊社のサステナブルスポンジシリーズはラインアップを増やしつつ、営業や広報にも力をいれ、三井化学さんの力も借りながら、サステナブルな製品を受け入れてくれるように市場を変えていきたいと考えています。
坂本:いくらいい製品をつくっても、消費者が受け入れてくれなければ、その製品は存在しないのと同じことです。弊社のような小さな会社でできることは限られているので、三井化学さんには、社会や消費者を変えることをがんばってほしいですし、弊社を刺激してほしいです。
根っこにある思いが三井化学さんと弊社は同じだと感じています。世の中がよい方向に変わっていく中で、ハートでつながっている三井化学さんと雪ヶ谷化学工業がともに発展していけたらうれしいです。
三井化学さんがグリーンケミカルを強力に推進していることに関しては非常に共感します。大義名分として世の中に求められていながら、多くの企業が尻込みしているところへ勇気をもって踏み出してくれていることは、とても心強いです。
時代の変化に合わせてさらにグリーンケミカルの取り組みを強化して、例えばバイオからリサイクルまで一貫した仕組みなども含めて共に考えていけたらいいですね。
記載内容は2024年11月30日現在のものです。