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ELV規則案の概要と背景|ELV指令との違いや今後の展望を解説

自動車とリサイクルマーク

ELV指令は、使用済み自動車(ELV:End-of-Life Vehicles)の廃棄やリサイクルに関するEUの指令であり、資源の有効活用と環境負荷の低減を目的に2000年に制定されました。さらに欧州委員会では、現行の「ELV指令」と「型式認証の再使用、再利用、再生の可能性に関する指令(3R指令)」を1つにまとめ規則化する、ELV規則案を2023年7月に発表。欧州委員会が発表したELV規則案では、自動車の車両設計から生産、廃車までの過程における循環性の向上に向け、ELV指令が強化され、再生材の使用促進や廃棄時の環境負荷低減が求められるようになっています。
ELV規則案の概要やELV指令との違いに加え、規則が採択されるまでのプロセスを解説します。

※2025年3月27日以降のELV規則案の最新動向につきましては、以下の記事をご参照ください。
【ELV規則案の最新動向】欧州委員会、EU理事会、欧州議会の方針出揃う。その相違点やポイントを解説

監修

鶴田 祥一郎(つるた しょういちろう)
一般社団法人サステナブル経営推進機構 本部長
2007年、社団法人産業環境管理協会に入社。エコリーフ(現:SuMPO EPD)およびカーボンフットプリント(CFP)制度の構築・運用に携わり、LCAコンサルティング業務に従事。2015年より2年間、環境省地球温暖化対策課へ出向し、技術開発実証業務に従事。2019年、一般社団法人サステナブル経営推進機構の設立に伴い転籍。
2023年、株式会社LCAエキスパートセンターを共同設立し、取締役を兼任。現職では、LCAをはじめとする各種コンサルティング業務やSuMPO EPDプログラムの運営に携わる。2025年4月より現職。

 

ELV指令からELV規則へ:概要や目的

ELV指令の目的

EUでは、使用済み自動車(ELV:End-of-Life Vehicles)の適切な廃棄とリサイクル促進を目的に、2000年にELV指令を制定。この指令は、自動車が廃車となった際の環境負荷を低減し、リサイクル率を向上させることがねらいです。特に、ELVのリサイクル率の目標値を設定し、資源の再利用と廃棄物の削減を強化することが求められています。

EUでは、ELV指令に基づき、自動車メーカーに対して車両の設計段階からリサイクルしやすい構造を採用するよう義務付け、廃車時に発生する有害物質の削減や、適切な処理プロセスを確立することが求められるようになりました。また、自動車の再利用・リサイクル率の具体的な数値目標も設定されており、ELV指令の第7条に基づき、車両重量の85%以上をリサイクル・再利用することが義務付けられています。

環境規制の強化を受け、欧州委員会は現行の「ELV指令」と「型式認証の再使用、再利用、再生の可能性に関する指令(3R指令)」を1つにまとめ、規則化する「ELV規則案」を2023年7月に発表(2025年2月にELV規則案の修正案が公表)。現行のELV指令に新たな要件が加わりました。

この規則案は、EUのサーキュラーエコノミー(循環経済)政策の一環として進められており、従来の「大量生産・大量消費・大量廃棄」型経済(リニアエコノミー)から、資源を最大限に活用する循環型の経済モデルへと移行するための重要なステップと位置づけられています。

ELV規則案の対象となる車両と企業

<ELV規則案の対象車両>
ELV規則案の対象車両

参考:欧州委員会、欧州議会、EU理事会案を元に作成

ELV規則案では、新たに自動車に利用されるヴァージンプラスチックと複合材料の素材が規制対象となります。対象車両については継続して議論中ですが、EU理事会および欧州議会の修正案では、欧州委員会案の対象車両を踏襲しつつ拡大されています。

・欧州委員会案(23年7月)
乗用車、バン

・EU理事会案(25年6月)
乗用車、バン、二輪車、乗客輸送車両、貨物輸送車両、トレーラー、消防車、救急車などの特殊車両を追加

・欧州議会案(25年9月)
委員会案に、二輪車、乗客輸送車両、貨物輸送車両、トレーラーを追加
特殊車両等は適用除外

よって、ELV規則案は、自動車メーカーや部品・素材メーカーなどに影響を及ぼすことが予想されます。例えば、自動車メーカーには、循環性要件を組み込んだ設計やそれに伴う情報開示が求められ、部品・素材メーカーには、有害物質の制限やリサイクル材の利用が義務付けられます。

日本の自動車メーカーにとっても本規則案は影響を及ぼします。特に、欧州に輸出する車両はELV規則案の基準を満たす必要があり、日本の自動車メーカー各社は本規則案への対応が必要となります。

また、日本のリサイクル法と欧州ELV規則案の整合性を図るための政策調整が進められており、今後の規制強化に向けた議論も活発化しています。このように、欧州のELV規則案により日本の自動車業界も、より環境に配慮した自動車設計やリサイクル技術の発展が促されています。

なぜELV規則が必要なのか?

ELV指令が長年運用されてきたにもかかわらず、なぜ今回、より厳格なELV規則へと改正する必要が生じたのでしょうか。その背景には、リサイクル率の課題、不適切な廃棄の問題、そして環境負荷のさらなる低減という、複合的な要因があります。

使用済自動車のリサイクルの流れ

出典:公益社団法人 自動車リサイクル促進センター「使用済自動車のリサイクルの流れ」

リサイクルの適用範囲と再生材の活用における課題

既存のELV指令では、自動車のリサイクル率は85%(重量ベース)に設定されており、2017年にはほぼ全ての加盟国が目標値を超えるリサイクル率と再利用率を達成していました。しかし、リサイクルの定義を厳格に設定していないため、埋め戻し(Backfilling )もリサイクルとして許容されていました。今回のELV規則案では、リサイクルの適用範囲から除外されています。

また、ELV指令では、サーマルリサイクルによる処理も認められていましたが、今回のELV規則案では、リサイクルの定義がより厳格化されました。それに伴い、本規則案では、バージン材(新規資源)の使用を削減し、水平リサイクル(自動車を自動車へ)を促進することで、自動車産業における資源循環の強化を目的として再生プラスチックの使用義務化が盛り込まれています。

なお、本規則案の審議の過程で、目標値や適用時期については、欧州議会案やEU理事会案で異なる修正案が提案されており、最終的な目標値や適用時期は在進行中の三者協議(トリローグ)で決定される見込みです(2025年10月時点)。

不適切な廃棄と行方不明車両への対処

EU内では毎年600万台以上の自動車が廃車になっていますが、そのうち約300万台が適切なELV管理システムに登録されず、行方不明になっていると欧州委員会が報告しています。これらの行方不明車両は、不法な解体・廃棄により、廃油や有害物質が環境中に放出され、環境汚染を引き起こす原因となっています。

ELV規則案ではこの問題に対処するため、ELVの収集や登録制度の強化、不法輸出の管理措置が提案されています。これにより、すべての廃車が正規のルートで回収・処理される仕組みを構築し、環境負荷の低減とリサイクル目標の確実な達成を目指しています。

ELV規則案の審議状況と今後の展望

前述したとおり、ELV規則案は、2023年7月に欧州委員会から提案されて以降、欧州議会とEU理事会においてそれぞれ修正案が採択され、最終交渉(三者協議)に進みます。(2025年10月時点)。具体的なプロセスは下記のとおりです。

<EUの立法プロセス>
EUの立法プロセス

出典:農林水産省「概要レポート第15回:EUの立法手続とEU法」p.2を元に作成

1. 欧州委員会による原案の発表:2023年7月

欧州委員会はEUの執行および政策決定機関で、各加盟国から1名ずつ任命された「閣僚」に相当する27名の欧州委員で構成(任期5年)。省庁に相当する各分野の総局が設置されており、法案の提案、諸規則の適用、適用の監督等の役割を担います。この欧州委員会により、2023年7月に、ELV規則案が発表されました。

2. 審議

提案された原案は、欧州議会とEU理事会の2つの機関に送られ、それぞれで審議されます。

なお、欧州議会はEUの決定機関で、特定分野の立法におけるEU理事会との共同決定権、EU予算の承認権、新任欧州委員の承認権等を有しています。欧州議会は、EU市民の直接選挙で選ばれた議員で構成されているため、ここでの議論は「欧州市民の声」が反映されます。

また、EU理事会は、加盟国の分野別閣僚(担当大臣)によって構成された決定機関です。立法機能及び予算権限を欧州議会と共有し、共通外交及び安全保障政策と経済政策調整で中核的な役割を担っています。ここでの議論は「加盟国政府の声」が反映されています。

なお、2025年6月にEU理事会で採択された「一般アプローチ」と、同年9月に欧州議会で採択された修正規則案は、この立法プロセスにおける重要なマイルストーンとなります。ただ、両者の方針は「再生材含有量の設定」や「再生材の定義」などにおいて、異なる内容になっています。

※審議における欧州委員会、EU理事会、欧州議会それぞれの修正案の内容や方針については「【ELV規則案の最新動向】欧州委員会、EU理事会、欧州議会の方針出揃う。その相違点やポイントを解説」にて詳しく解説しています。

3. 三者協議(トリローグ)

欧州委員会・欧州議会・EU理事会の三者による交渉が行われ、最終的な法案の文言について妥協点を探ります。

4. 最終合意と採択

三者協議で合意に至った内容が、再度EU理事会と欧州議会で正式に承認され、法律として公布、2029年に施行開始予定です(施行開始時期はまだ議論中です)。

ELV規則案としての進化は、自動車産業の環境負荷低減と資源循環をさらに推進する重要な一歩です。今後、日本でも欧州の動向を踏まえながら、より持続可能な自動車設計やリサイクル技術の発展が求められていくでしょう。

三井化学では、「世界を素(もと)から変えていく」というスローガンのもと、
バイオマスでカーボンニュートラルを目指す「BePLAYER®」、リサイクルでサーキュラーエコノミーを目指す「RePLAYER®」という取り組みを推進し、リジェネラティブ(再生的)な社会の実現を目指しています。カーボンニュートラルや循環型社会への対応を検討している企業の担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

「BePLAYER®」「RePLAYER®」https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/index.htm

<公開資料:カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー関連>https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/soso/whitepaper/

 
参考資料
*1:UR-Lex2023年のELV指令改正案(End-of-Life Vehicles Regulation Proposal)の原文:
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=COM%3A2023%3A451%3AFIN&qid=1689318552193
*2:欧州委員会プレスリリース:
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_23_3819
*3:経済産業省「使用済み自動車(ELV)リサイクルシステム EU指令」:
https://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/data/oversea/pdf/09.pdf
*4:農林水産省「概要レポート 第15回:EUの立法手続とEU法」:
https://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokkyo/attach/pdf/platform-257.pdf

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