EUのエコデザイン規則(ESPR)とは?エコデザイン指令との違いを解説
2024年にEUでエコデザイン規則(ESPR)が施行されました。これは、2009年から始まったエコデザイン(ErP)指令を改正したものです。エコデザイン規則が導入された背景とともに、エコデザイン規則の概要やエコデザイン指令との違い、対象製品や日本企業への影響について解説します。
監修 鶴田 祥一郎(つるた しょういちろう) |
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2024年にEUでエコデザイン規則(ESPR)が施行されました。これは、2009年から始まったエコデザイン(ErP)指令を改正したものです。エコデザイン規則が導入された背景とともに、エコデザイン規則の概要やエコデザイン指令との違い、対象製品や日本企業への影響について解説します。
監修 鶴田 祥一郎(つるた しょういちろう) |
2024年7月18日にEUは「持続可能な製品のためのエコデザイン規則」(ESPR:Ecodesign for Sustainable Products Regulation)を施行しました。エコデザイン規則はEU域内で流通する製品の仕様における持続可能性要件の枠組みを定めたもので、2009年から運用されていたエコデザイン(ErP:Energy-related Products)指令を改正した内容となっています。
エコデザイン規則では、EU域内の市場に流通する製品のライフサイクル全体を考慮し、エネルギー性能のみならず、耐久性、信頼性、再利用性、更新可能性、修理可能性、リサイクル可能性、懸念すべき物質の有無、リサイクル材の含有量、炭素・環境フットプリントなど、持続可能性に関する要件を設定した枠組みです。
出典:日本貿易振興機構(ジェトロ)「EU循環型経済関連法の最新概要」p.4
その背景にあるのが、EUが2019年に発表した「欧州グリーン・ディール」です。これは、資源効率が良く競争力の高い経済に移行し、2050年のカーボンニュートラル達成を目指すという成長戦略です。欧州グリーン・ディールが目指す循環経済を実現するための取り組みの一つとして、エコデザイン規則が導入されました。
出典:日本バルブ工業会「EUのエコデザイン規則が施行〜従来のエコデザイン指令との違いは〜」
EUではエコデザイン規則に先立ち、2005年からエネルギーを使用製品の環境配慮設計を求めるエコデザイン(EuP:Energy-using Products)指令が施行されました。さらに、2009年には直接の使用製品のみならず、窓や断熱材など、すべてのエネルギー消費に影響を及ぼす製品へと拡張するエネルギー関連製品のエコデザイン(ErP:Energy-related Products)指令として改定され、順次施行されました。これは、EU加盟国においてエネルギー関連製品に共通のエコデザイン要件を導入することで、エネルギー効率、資源効率及び情報提供を通じて、エネルギー問題や地球温暖化などの環境問題に対応しようというもの。
エコデザイン指令の適用対象製品は順次拡大されてきましたが、家電製品や通信機器などを主として、電気や化石燃料などのエネルギーを使う製品及びエネルギーに関係する製品に限られていました。一方、エコデザイン規則はエコデザイン指令よりも適用範囲がさらに広く、EU域内の市場で流通するほぼすべての製品が対象となっています。ただし、食品や飼料、医薬品、生きた植物や動物、微生物、他の法令で規制されている自動車などは適用の対象外となっています。
また、開示情報にも違いがあります。エコデザイン指令では、エネルギー効率、資源効率、情報提供だけを要件としていましたが、エコデザイン規則では要件をサステナビリティ全体に広げており、さまざまな情報の開示が求められます。
また、エコデザイン指令は規制ではなく枠組み指令であり、EU加盟国がそれぞれ国内法を整備することを求めるものです。一方、エコデザイン規則はEUにおける統一ルールであり、より効力が強いと言えます。
出典:日本貿易振興機構(ジェトロ)「EU循環型経済関連法の最新概要」p.5
ライフサイクル全体でCO₂排出量や環境負荷を抑えたサステナブルな製品をEU域内の市場に流通させることを目指すエコデザイン規則。これまでのエコデザイン指令のエコデザイン要件はエネルギー効率、資源効率、情報提供のみでしたが、エコデザイン規則では耐久性や信頼性、修理可能性、リサイクル材の含有率など16項目に増えています。
エコデザイン規則では、エコデザイン要件に関する情報開示の仕組みとしてデジタルプロダクトパスポート(DPP)が導入されています。DPPに記録すべき情報には、製品固有識別番号をはじめ、エコデザイン規則やEU法で貼付が求められる情報などがあります。
製品の包装やラベルに記載されたバーコードやQRコード、RFIDタグなどにアクセスすると、その製品に関する必要な情報を見ることができます。消費者をはじめ、修理やリサイクルを担う事業者などが必要な情報にアクセスしやすくなることで、製品のトレーサビリティやサステナビリティの向上が期待されます。
エコデザイン規則で注意したいのは、売れ残り製品に関する規制が設けられている点です。売れ残った製品や在庫などの未使用製品を廃棄する際は、その廃棄量や理由などの情報を毎年開示することが求められます。これは第三者に廃棄を委託した場合も同様です。
エコデザイン規則の影響を直接的に受けると考えられる業界の一つが繊維・アパレル業界です。これまでアパレル業界では大量生産・大量消費・大量廃棄のビジネスモデルが主流となっていましたが、欧州ではこうした従来のビジネスモデルから脱却する動きがあります。そして、エコデザイン規則の施行開始から2年後の2026年からは、売れ残った衣料品・服飾雑貨・履物などの廃棄が禁止される見込みです。
小規模企業は廃棄禁止ルールの適用外となっていますが、迂回目的で大企業から供給を受けた未使用製品を破棄することは禁じられています。また、中規模企業については、施行から6年後の2040年から適用される見込みです。
出典:経済産業省「繊維産地におけるサプライチェーン強靱化に向けた対応について~産地の価値向上~」p.9
日本の繊維製品関連の輸出額(2023年)は生地の3,096億円が最も多く、2020年以降は衣料品などの輸出額も増えています。EU域内に生地や糸、衣料品などを輸出している事業者は需要予測や受注に基づいた適量生産・適量消費へ切り替えるなど、ビジネスモデルの変革が求められます。
なお、未使用製品の廃棄に関する禁止措置は、将来的には他の製品群にも拡大する可能性があるため、繊維・アパレル以外の業界でも引き続き、関連規制の動向を注意深く見守る必要がありそうです。
三井化学では、「世界を素(もと)から変えていく」というスローガンのもと、 <「BePLAYER®」「RePLAYER®」>https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/index.htm |
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