- サーキュラーエコノミー
- バイオマス・リサイクル素材
- プラスチック
プラスチックの原料「ナフサ」とは?用途や製造方法、バイオマスナフサを解説
プラスチックはレジ袋や文房具、自動車、家電、パッケージ、衛生用品など、幅広い製品に利用されており、いまや人々の生活に欠かせない素材となっています。
では、プラスチックは何でできているのでしょうか。その主な原料は、原油を精製した際に得られる「ナフサ」と呼ばれる成分ですが、化石資源に由来しており環境問題などの課題も内包しています。
今回の記事では、プラスチックの原料としてのナフサの概要をはじめ、プラスチックの製造方法や、環境負荷低減に向けた重要な取り組みとして注目される「ナフサのバイオマス化」についても解説します。
プラスチックの原料:ナフサとは
多くのプラスチックでは、主原料にナフサと呼ばれる石油製品の一種が用いられています。ナフサとは、どんなものなのでしょうか?その性質や用途、製造方法について説明します。
ナフサとは?性質と用途
ナフサとは、原油を蒸留・分離した際に得られる石油製品の一つで、さらに熱分解を進めることでさまざまな基礎化学品を取り出すことができます。ナフサはガソリンに似た透明な液体であり、石油製品の中では比較的軽い油です。常温で蒸発しやすいことが一つの特徴です。
「粗製ガソリン」とも呼ばれ、文字通りガソリンを取る際に出てくる副産物のようなものですが、キャンプ好きにはホワイトガソリンの愛称で知られ、ランタンやバーナーなどで使用するため、なじみのあるものです。
主な成分は炭素と水素からなる炭化水素化合物で、混合物のため単一の化学式では表せません。プラスチックの原料や合成繊維・合成ゴムなど、さまざまな化学製品の原材料として広く利用されています。
ナフサの製造方法
ナフサを含む石油製品は、主に原油の精製過程で製造されます。生成されたナフサはプラスチックの原料として石油化学工場に送られ、基礎化学品の生産に利用されます。
なお、日本ではナフサの状態で海外から輸入するケースもあれば、原油を海外から輸入して、国内製油所でナフサを作るケースもあります。
プラスチックの製造方法
プラスチックは何でできているのでしょうか?ナフサを材料としてプラスチック製品が作られるまでの仕組みを、流れに沿って解説します。
1.原油を精製する
まずは、油田から採取された原油を、石油精製工場の蒸留塔で熱します。その際、沸点の違いを利用して、ガソリン、ナフサ、軽油、灯油、ジェット燃料、重油、アスファルトなどの石油製品に分離します。例えば、ナフサの沸点は30~180℃、重油・アスファルトの沸点は350℃以上です。
資源エネルギー庁の「令和5年度2023年度 エネルギー需給実績(確報)」によると、2021年度の石油製品生産量に対するナフサの割合は7.8%となっています。ちなみに、同年度の石油製品生産量のうち、最も割合が高いのはガソリンの26.7%になります。
2.ナフサからプラスチック原料を作る

次に、ナフサクラッカーという設備で、ナフサを約850℃で熱分解し、気体にします。その気体の蒸留を繰り返すことで、成分の重さごとに分類して、エチレンやプロピレン、ブタジエンなどの基礎化学品を取り出します。
続いて、石油化学誘導品工場にて、基礎化学品を原料として、さまざまな化学品やプラスチックを作っていきます。例えば、エチレンやプロピレンを原料として、重合と呼ばれる分子結合を行うことで、ポリエチレンやポリプロピレンというプラスチックが作られていきます。ポリエチレンはレジ袋や包装材、シャンプーや洗剤の容器などに、ポリプロピレンは自動車部品や家電製品、包装用のフィルムなどに、使用されます。
3.プラスチック原料から製品を作る(熱可塑性プラスチックの場合)
ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)などに代表される、より汎用性の高い熱可塑性プラスチックの場合、一般的に原料は、運搬・保管・加工を行いやすいように、約3~5mmの粒状(ペレット)になっています。成形機にそのペレットを入れ、熱して溶かし、金型に流し込み、冷却すれば金型通りの形のプラスチック製品が完成します。
※プラスチックの種類については、「(仮)プラスチックの種類を徹底解説!特徴や識別マークの見方、用途まで」にて詳しく解説しています。
プラスチック原料と環境問題
石油から得られるナフサは、多くのプラスチック製品に欠かせない原料です。ただし、化石資源であることや、ライフサイクルにおいて二酸化炭素を排出することなど、いくつかの環境課題もあります。
ここからは、化石資源である石油由来のナフサを原料とするプラスチックが抱えている環境に対する課題と、その解決策について見ていきましょう。
環境への影響
プラスチックのライフサイクルにおいては、石油の採掘・運搬からナフサの精製、ナフサからプラスチックを製造する過程でエネルギーが必要となるため、二酸化炭素が発生します。また、炭化水素を主成分とする原油は、地中で炭素を固定化していたものです。よって、原油を新たに掘り起こして製造された石油製品であるプラスチックを燃やすことで、プラスチックに含まれる炭素分が酸素と結合して二酸化炭素となり、大気中の二酸化炭素が増えることになります。二酸化炭素などの温室効果ガス(GHG)排出による地球温暖化への影響は、世界的に深刻な課題となっています。
さらに、プラスチック廃棄物による環境汚染も課題です。多くのプラスチックは自然分解されないため、ライフサイクルを終え、ごみとして廃棄されたプラスチックは環境の中に長く滞留してしまいます。家庭ごみの河川への投棄や、野積みされた廃棄物の河川流出などにより、海へと放出されたプラスチックごみは、生態系を含む海洋環境にもマイナスの影響を与えるため、対策が急がれています。
※海に放出されたプラスチックごみの影響については、「海洋プラスチック問題の対策と企業・個人の取り組みについて解説」にて詳しく解説しています。
持続可能な原料とは
プラスチックが抱える環境課題の解決策として、注目されている素材の一つがバイオマスプラスチックです。
バイオマスプラスチックとは、生物(植物や動物)由来の再生可能な有機資源(バイオマス)を原料とするプラスチックです。バイオマス資源は、従来のプラスチックの原料である化石資源と比べて、短いサイクルで再生産できる、つまり、再生可能で持続的に使えるという特徴があります。バイオマスプラスチックに含まれる炭素分は、原料となるバイオマスがその成長過程において大気中の二酸化炭素を固定したものです。そのため、焼却した場合に排出される二酸化炭素は大気中に戻っただけであり、大気中の二酸化炭素は増減しない「ニュートラル」な状態と捉えられます。
バイオマス資源を原料とするプラスチックは、通常のプラスチックに比べて二酸化炭素の排出量を抑えられるため、カーボンニュートラルの達成に貢献します。また、限りある化石資源の使用量削減につながるのです。
プラスチック原料の未来「バイオマスナフサ」
地球温暖化や海洋プラスチックなどの環境問題、そして資源枯渇のリスク。バイオマスプラスチックは、その両方を解決する方策の一つです。日本もその可能性に注目し、2019年5月に策定されたプラスチック資源循環戦略の中で、2030年までに「バイオマスプラスチックを約200万t導入」という目標が設定されました。

バイオマスプラスチックの製造において重要な原料の一つがバイオマスナフサ、つまり、バイオマス由来の炭化水素です。いわば、石油の代替として使える、環境配慮型の原料です。
三井化学では2021年12月に、使用済みの植物油などの廃食油から作られたバイオマスナフサを原料とした、プラスチック素材の生産を開始しました。プラスチックのバイオマス化を通して、カーボンニュートラルな社会の実現を目指しています。
https://www.youtube.com/watch?v=nq8G6Cg9TOg
|
三井化学では、「世界を素(もと)から変えていく」というスローガンのもと、バイオマスでカーボンニュートラルを目指す「BePLAYER®」、リサイクルでサーキュラーエコノミーを目指す「RePLAYER®」という取り組みを推進し、リジェネラティブ(再生的)な社会の実現を目指しています。カーボンニュートラルや循環型社会への対応を検討している企業の担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。 <「BePLAYER®」「RePLAYER®」>https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/index.htm |
- 参考資料
- *1:経済産業省 資源エネルギー庁「カーボンニュートラルで環境にやさしいプラスチックを目指して(前編)」:
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/plastics_01.html - *2:石油連盟「製品関連 | ナフサとは」:
https://www.paj.gr.jp/statis/faq/74 - *3:一般社団法人プラスチック循環利用協会 プラスチックのはてな「プラスチックの原料『ナフサ』ってなに?わかりやすく解説します!」:
https://www.pwmi.jp/library/library-1511/ - *4:資源エネルギー庁の「令和5年度(2023年度)エネルギー需給実績(確報)」:
https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/total_energy/pdf/gaiyou2023fykaku.pdf - *5:環境省「バイオプラスチック導入ロードマップ」:
https://www.env.go.jp/recycle/plastic/bio/roadmap.html