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PFAS(有機フッ素化合物)とは?PFOS・PFOAとの違いや、種類・用途一覧

PFAS とは
環境中での残留性や健康影響への懸念から度々取り上げられる「PFAS(有機フッ素化合物)」。PFASとは、主に炭素とフッ素から構成される化学物質群です。今回の記事では、PFASの定義からPFOS・PFOA・PFHxSとの違い、特性と主な用途、人体や環境への影響まで、PFASに関する基礎知識を整理します。

PFAS(有機フッ素化合物)とは?

PFASとは?定義や意味

PFASとは-1

出典:環境省「PFASハンドブック」p.10

PFASとは、有機フッ素化合物のうち、「ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物(※)」という化学物質の総称です。英語の「Per-and Polyfluoroalkyl Substances」の頭文字を取った略称であり、一般的に「ピーファス」と読まれます。

※ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物:
・「アルキル」:炭素と水素が結びついたもの
・「ペルフルオロ」:アルキル基に結合した水素がすべてフッ素で置き換わったもの
・「ポリフルオロ」:アルキル基に結合した水素の一部がフッ素で置き換わったもの

PFASに分類される化学物質は1万種類以上存在するとされています。中でも、環境への残留性や有害性が指摘され、国際的に規制されているのは「PFOS」や「PFOA」などの一部の物質です。その他の多くの物質には、現時点で同様の有害性は確認されていませんが、国内外の公的機関において調査や知見の収集が継続して進められています。

化学的な特徴と構造式:「永遠の化学物質」と呼ばれる理由

PFASが持つ最大の化学的な特徴は、炭素(C)とフッ素(F)が強固に結びついた構造を持つ点にあります。

PFASは、炭素(C)が連なった骨格をフッ素(F)が隙間なく取り囲む強固な構造により、非常に安定した性質を持ちます。例えば、光や水、微生物など自然界の力ではもちろん、生物の体内でもほとんど分解されません(難分解性)。そのため、環境中に蓄積されやすく(高蓄積性) 、また風や水に乗って長距離を移動する性質(長距離移動性)も併せ持っています。

それらの特徴が生む、自然環境への永続的な残留リスクが、PFASが「永遠の化学物質(Forever Chemicals)」と呼ばれる所以です。

PFASの種類と代表物質(PFOS・PFOA・PFHxS)

PFOS・PFOA・PFHxSの特徴と違い

1万種類以上存在するPFASの中でも、環境への影響が示唆されている代表的な物質が「PFOS」、「PFOA」、「PFHxS」です。

フッ素が結合した炭素の数と、末端の官能基の構造に以下のような違いがあります。

<PFOS・PFOA・PFHxSの特徴>
  • PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸):
    炭素数8の物質で、かつては半導体の反射防止剤や金属メッキ処理剤、泡消火薬剤などに広く使用されていた。
  • PFOA(ペルフルオロオクタン酸):
    炭素数が8のアルキル鎖にカルボン酸基が結合した構造。フッ素ポリマーの加工助剤や界面活性剤として使用されてきた。
  • PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸):
    炭素数が6のアルキル鎖にスルホン酸基が結合した構造。PFOSの代替品として使用されてきたが、のちに同様のリスクが確認され規制対象となった。

PFOS・PFOAとは

出典:環境省「PFASハンドブック」p.11

PFASの性質を理解するうえで、炭素が連なる鎖が長い「長鎖PFAS」かどうかの分類が重要になります。一般的に炭素鎖が長いほど生物蓄積性が高くなる傾向がありますが、長鎖の基準は基の種類で異なります。カルボン酸類(PFOAなど)は炭素数「8以上」、スルホン酸類(PFOS、PFHxSなど)は炭素数「6以上」が長鎖PFASと定義されます。そのため、炭素数が6とやや少ないPFHxSも、スルホン酸基を持つためPFOSやPFOAと同じく、すべて「長鎖PFAS」に分類されます。

この構造的な分類により、短鎖PFASとは異なり、PFOS、PFOA、PFHxSはいずれも高い環境残留性や生体内蓄積性を示すことが知られています。PFHxSはPFOSより炭素数の少ないスルホン酸系PFASであり、当時はPFOSよりもリスクの低い代替候補として使用されていました。しかし、その後の研究により、PFHxSもスルホン酸系PFASでは長鎖PFSA(炭素数6以上)に分類され、高い生物蓄積性やヒト体内残留性を示すことが明らかになりました。実際に複数の研究では、PFHxSのヒト血中半減期はPFOSよりも長いことが報告されています。

このように、炭素数や基の種類には違いがあるものの、結合している基の性質上、いずれも体や環境に溜まりやすい「長鎖PFAS」の基準を満たしているという構造的な背景があります。結果として、3物質すべてが極めて高い残留リスクを持つことが科学的に確認され、国内外の規制において廃絶や制限の対象となっています。

PTFE(フッ素樹脂)

PFASに関する議論でよく混同されるのが、フッ素樹脂の代表的な素材「PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)」です。調理器具や工業部品に施される「テフロン加工」として身近な素材ですが、前節で解説したPFOSやPFOAのような低分子PFASとは、生体内での挙動やリスク評価が異なります。

PFOSやPFOAは、分子量が数百程度の「非ポリマー(低分子)」であり、水に溶けやすく細胞膜を通過して体内に蓄積しやすい課題があります。一方、PTFEは数百万の分子量を持つ巨大な「ポリマー(高分子)」です。極めて安定した固体で水にも溶けず、万が一体内に入っても吸収されずに通過するため、人体への毒性リスクは低いと報告されています。

<PFOS / PFOAとPTFEの違い>PFOS  PFOAとPTFEの違い

出典:内閣府 食品安全委員会「パーフルオロ化合物(概要)」p.4「フッ素樹脂(概要)」p.1

過去にはPTFE製造時の重合助剤としてPFOAが使用されていましたが、現在は製造時の使用は全廃されています。そのため、現在の最終製品にPFOAが問題となるレベルで残留することは通常ありません。

このように、PFASのなかで安全性が高いPTFEですが、欧州化学物質庁(ECHA)が進める「REACH規則」の包括的なPFAS制限案では、フッ素樹脂も規制対象案に含まれました。施行された場合、一部の用途を除いて原則的に製造・使用・販売が禁止される可能性があり、産業界は安全な代替物質への切り替え対応を迫られています。

※PFAS規制に対応した新たな代替用途の開発については、「PFAS規制とPTFE代替材┃UHMW-PE(超高分子量ポリエチレン)の加工性を革新」にて紹介しています。

このように、ひとくちにPFASといっても、物質の構造や性質によって規制対象となるかどうかが大きく異なります。

PFASの特性と主な用途・含有製品例

PFASが持つ優れた特性(撥水・撥油・耐熱性)

PFASが産業界や日常生活の幅広い分野で普及した背景には、以下のような優れた特性があります。

<PFASの主な特性>
  • 撥水・撥油性:水や油を弾くため、汚れがつきづらい。
  • 耐熱性:高温下でも分解・変質しにくい。
  • 化学的安定性:強酸・強アルカリなどの腐食性物質に触れても性質が変化しにくい。
  • 電気絶縁性:電気を通しにくく、電子性能の維持に寄与する。

代表的な用途:工業製品からプラスチックまで

PFASは、身近にある製品からBtoBの工業用途まで、多岐にわたる分野で使用されてきました。代表的な用途は以下の通りです。

<PFASの代表的な用途>
  • 日用品・プラスチック製品:フライパンのコーティング、衣類や靴の防水スプレー、食品包装紙の耐油加工など
  • 半導体:回路の微細加工に必要なフォトレジストや反射防止剤など
    (高度な化学的安定性が求められるため、現時点では代替が難しい用途の一つとされている)
  • 自動車・エネルギー:リチウムイオンバッテリーや燃料電池の部品、耐熱性が必要なエンジン周辺のパッキンなど

このように、PFASは現代の高度な技術を支え、さまざまな製品のなかに含有されています。

PFASの問題:人体・環境へのリスク

人体への影響や毒性、発がん性(がん)への影響

PFASを取り巻く懸念の1つが、人体に侵入した際の健康被害や毒性のリスクです。食事や飲料水などを通じてPFASが体内に取り込まれると、徐々に体外へ排出されるものの、新たな摂取がない場合に人の体内の濃度が半分になるまでの時間(半減期)は数年単位(PFOSで平均5年、PFOAで約3〜4年など)と長く、体内に蓄積しやすい性質を持っています。

PFOSやPFOAの長期的な蓄積による健康被害への懸念について、具体的に指摘・報告されている影響は以下の通りです。

  • 動物試験による報告:肝機能の低下、仔動物の体重減少(出生児への影響)など
  • 人体での報告:血中コレステロール値の上昇、免疫系への悪影響、発がん性との関連


このように、一度取り込まれると血液中のタンパク質と結びついて容易に排出されない性質があるため、長期的な曝露による健康への悪影響が懸念されています。

こうした懸念を背景に、世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)は、2023年にPFASの発がん性分類を引き上げました。具体的には、PFOAを「グループ2B(ヒトに対して発がん性がある可能性がある)」から最もリスクが高い「グループ1(ヒトに対して発がん性がある)」へ引き上げ、PFOSを「グループ2B(ヒトに対して発がん性がある可能性がある)」に分類しています。ただし、IARCの分類は、物質が持つ発がん性の可能性(ハザード)を評価するものであり、日常生活における実際の発がんリスクの大きさを示すものではありません。

一方で、内閣府の食品安全委員会が2024年に公表した「PFOS及びPFOAの食品健康影響評価」では、発がん性に関する証拠は限定的または不十分であると評価されました。その上で、現時点で得られている科学的知見を総合的に検討し、PFOS/PFOAについて耐容一日摂取量(TDI)を設定しています。

※耐容一日摂取量(TDI:Tolerable Daily Intake):人が一生涯にわたり摂取しても健康に対する有害な影響が現れないと推定される体重1kg当たりの1日当たり摂取量。

このように、PFASのリスク評価については国内外の機関で捉え方に違いがあり、人体への影響メカニズムや長期的な疫学データなど、未解明な部分も多く残されています。そのため日本では現在、環境省が健康・疫学調査を進め、農林水産省が食品を通じた摂取・移行実態を調査するなど、各府省庁が連携して多角的な検証を進めています。今後、これらの継続的な調査によって十分な科学的知見が集積され次第、食品安全委員会において改めてリスクの再評価が行われる方針です。

自然界での蓄積と生態系へのリスク

人体への直接的な影響に加えて、自然環境への残留も深刻な問題です。

PFASは自然環境のなかで分解されにくいため、工場からの排出や過去の泡消火剤の使用などにより土壌や河川に放出されると、長期間にわたって自然界に残り続けます。そして環境中に残留したPFASは、水や土壌を通じて動植物の体内に取り込まれ、食物連鎖の過程で濃度が高まっていく「生物濃縮」を引き起こします。

この生態系への影響を重く受け止め、米国の大手化学メーカーである3M社が2025年末でPFASの製造・使用から撤退するなど、産業界全体でも大きな動きが起きています。環境中への排出を防ぎ、生態系へのリスクを食い止めるためにも、環境モニタリングの強化や代替物質への転換が世界的な急務となっているのです。

PFASの現状とこれから

PFASは、水や油をはじき、熱や薬品に強いという優れた性質を持ち、半導体や自動車部品など、現代社会に不可欠な製品を支える素材として活躍しています。

しかし、その「壊れにくさ」ゆえに環境中に蓄積しやすく、「永遠の化学物質」として人体や生態系へのリスクが懸念されています。PFOSやPFOAなどの代表的な物質はすでに国際的な規制対象となっており、今後はPFAS規制に応える代替素材への転換が世界的な課題となっています。

自社の製品やサプライチェーンでPFASを扱う場合は、最新の規制動向を正しく把握し、適切な対策を進める必要があります。

三井化学グループでは、世界的に強化されるPFAS規制に対応するため、環境負荷低減と高性能の両立につながるPFASフリーソリューションを追求しています。耐熱性・耐薬品性・摺動性など、従来のフッ素系材料に匹敵する機能を備えた代替素材を開発し、半導体、モビリティ、医療、食品包装など幅広い分野で新たな価値を提供していますので、ぜひお気軽にご相談ください。

<PFAS代替材料・技術に関するお問い合わせ>
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/special/pfas/contact/
PFASフリーソリューション(明)

三井化学では、「世界を素(もと)から変えていく」というスローガンのもと、バイオマスでカーボンニュートラルを目指す「BePLAYER®」、リサイクルでサーキュラーエコノミーを目指す「RePLAYER®」という取り組みを推進し、リジェネラティブ(再生的)な社会の実現を目指しています。カーボンニュートラルや循環型社会への対応を検討している企業の担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

参考資料
*1:環境省「よくある質問」:
https://www.env.go.jp/water/pfas.html
*2:環境省 ecojin「PFAS 」:
https://www.env.go.jp/guide/info/ecojin/eye/20260121.html
*3:農林水産省「食品中のPFASに関するQ&A」:
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/PFAS/pfas_qa.html
*4:食品安全委員会「有機フッ素化合物(PFAS)」評価書に関するQ&A」:
https://www.fsc.go.jp/foodsafetyinfo_map/pfas_faq.html
*5:環境省「PFAS ハンドブック」:
https://www.env.go.jp/content/000305650.pdf
*6:国土交通省「水道事業者等によるPFOS及びPFOA対応マニュアル」:
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001991668.pdf
*7:環境省「PFOS、PFOA に関するQ&A集」:
https://www.env.go.jp/content/000242834.pdf

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