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ISOにおけるCoC(chain of custody)とは?5モデルと最新規格を解説

ISOにおけるCoC

再生材やバイオマス原材料、環境価値や認証原材料などの活用拡大に伴い、それらの特性をサプライチェーン全体で適切に管理・伝達するための仕組みとして「Chain of Custody(CoC)」が注目されています。CoCに関する国際規格としては、2020年にISO22095が発行され、IPモデルやセグリゲートモデル、マスバランスモデルなど5つの管理モデルが定義されました。さらに2026年には、マスバランスモデルの詳細要求事項を定めるISO22095-2:2026およびブックアンドクレームモデルの詳細要求事項を定めるISO22095-3:2026が発行された他、一部用語等の補正としてISO22095:2020/Amd 1:2026が発行され、ISO22095シリーズとして国際的なルール整備が進んでいます。

今回の記事では、ISO22095シリーズが規定するCoCの概要や各モデルの違いについて紹介します。また、それらを製品やサービスのLCA/CFP算定に適用する新規格ISO14077の策定動向や企業への影響についてわかりやすく解説します。

監修

鶴田 祥一郎(つるた しょういちろう)
一般社団法人サステナブル経営推進機構 事業本部 本部長
株式会社SuMPO NEXT 取締役事業本部長
2007年、社団法人産業環境管理協会に入社。エコリーフ(現:SuMPO EPD)およびカーボンフットプリント(CFP)制度の構築・運用に携わり、LCAコンサルティング業務に従事。2015年より2年間、環境省地球温暖化対策課へ出向し、技術開発実証業務に従事。2019年、一般社団法人サステナブル経営推進機構の設立に伴い転籍。
2023年、株式会社LCAエキスパートセンターを共同設立し、取締役を兼任。同社はその後、2026年に株式会社SuMPO NEXTへ名称変更。現在は、LCAをはじめとする各種コンサルティング業務やSuMPO EPDプログラムの運営に携わる。2026年8月より現職。

 

ISO22095が規定するCoC(Chain of Custody)とは?

ISO22095とは、サプライチェーンにおける加工流通過程の管理(CoC:Chain of Custody)に関する国際規格です。

同規格では、CoCを「インプットおよびアウトプットとその関連情報が、関連するサプライチェーンの各段階を移動する際に、それらが移転、監視、管理されるプロセス」と定義しています。

つまり、材料・製品のインプットとアウトプットおよびその関連情報を、サプライチェーンの各段階で定められたルールに従って、移転、監視、管理する仕組みです。物理的に分離して追跡するモデルだけではなく、混合後に特性を管理するマスバランスモデルや、物理的な流れと管理情報が必ずしも一致しないブックアンドクレームモデルも含まれます。ISO22095では、このようにCoCによって管理・追跡する対象となる特性を「規定特性」と呼びます。

ISO22095では、CoCの管理モデルとして、IPモデル、セグリゲートモデル、コントロールブレンディングモデル、マスバランスモデル、ブックアンドクレームモデルの5つの管理モデルを規定しています。

<CoCの5つの管理モデル>
CoCの5つの管理モデル

参考:環境省「マスバランス方式に関する国内外の状況等」p.6を元に作成

サプライチェーンを繋ぐ「CoC」の重要性

サプライチェーンの管理において、CoCが重視される背景には、世界的に急増するグリーンウォッシュへの対策と法規制の強化があります。

実態が伴わないにもかかわらず、あたかも環境に配慮しているように見せる「グリーンウォッシュ」は、合理的選択を妨げ、真に努力する企業の価値を毀損するものとして国際的な批判が高まっています。

これらに対応するべく、EUでは、根拠のない曖昧な環境表示や、オフセット(相殺)に依存したカーボンニュートラル表示などを禁止する「グリーン移行のための消費者エンパワーメント指令」が2024年に公布され、加盟国では2026年9月から新たなルールの適用が始まっています。米国でも企業の環境配慮に関する虚偽・誇大広告を防ぐための指針グリーンガイド(Green Guides)の改訂による見直しが進められています。

日本でも、環境省が環境表示ガイドラインを改訂して適切な環境情報の開示を推進しているほか、景品表示法(優良誤認)として措置命令の対象となる可能性があります。
環境価値に関する主張の信頼性を支える仕組みとして、ISO22095シリーズに基づくCoC管理が重要になっています。

【物理的隔離】IPモデルとセグリケートモデル

CoCの管理モデルにおいて、実物(物理的な製品の流れ)と情報の規定特性が一致するのが、IPモデルとセグリケートモデルです。そのため、認証原材料が非認証原材料と混在しないよう、「物理的隔離」によって管理される点が特徴です。

IPモデル(Identity Preserved Model)
材料や製品が単一のソース(特定の原産地やサプライヤー)に由来し、そのサステナブルな規定特性がサプライチェーン全体を通じて、ほかの材料とも一切混合されずに維持されるCoCモデルです。

そのため、同様の特性を有する原料であっても、農場や調達先などソースが違う場合には、製造工程で混合して取り扱うことは認められません。

ISO22095が規定する5つの管理モデルを比較した際、IPモデルは最も高い物理的トレーサビリティを確保できるモデルです。一方で、コストが高くなる傾向があります。

ほかの原産地や生産者の原材料と混ざることなく管理されるため、最終製品まで一貫して追跡・特定でき、サプライチェーン上で最も高いレベルのトレーサビリティと信頼性を確保できます。

しかし、この1対1の管理体制を維持するためには、専用の保管設備や生産ライン、輸送管理、詳細な記録管理などが必要になります。こうした物理的な分別管理に伴う設備投資や運用負荷が大きいため、IPモデルは5つのモデルの中でも最も高コストになりやすいモデルです。

セグリゲートモデル(Segregated Model)
材料や製品の規定特性が、最初のインプットから最終アウトプットまで物理的に維持されるCoCモデルです。

IPモデルとは異なり、同じ規定特性やグレードを持つものであれば、異なる複数のソースから調達した原材料同士を製造・流通プロセスで混合することが認められています。

例えば、「山林AのFSC認証木材」と「山林BのFSC認証木材」は、どちらも共通のFSC認証という価値を持っているため、工場内で物理的に混ぜて一緒に加工してもセグリゲートモデルでは問題ありません。

一方で、その特性を持たない、あるいは異なる特性を持つ原材料とは厳しく分別管理され、混合することは禁止されています。

【物理的混合】コントロールブレンディングモデルとマスバランスモデル

物理的隔離を採用するIPモデルやセグリゲートモデルとは異なり、コントロールブレンディングモデルやマスバランスモデルでは、特性を持つ原料と、特性を持たない一般原料が、物理的に混合されます。そのため、最終アウトプットでは、定められたルールに基づいて規定特性の割合が管理されるモデルです。

コントロールブレンディングモデル(Controlled Blending Model)
一連の規定特性を有する材料と、その特性を有しない材料を、一定の基準に従って物理的に混合するモデルです。

コントロールブレンディングモデルでは、異なる特性を持つ原料を混合し、原材料に占める特性の割合をすべての製品に一律に反映させます。

例えば、規定特性を持つ原材料の5分の2がバイオマス素材や再生素材である場合、最終製品にも一律5分の2の割合でそれらの素材が含まれます。そのため、製品に実際に含まれる特性と、製品ラベルや環境主張で示される情報が一致する点が特徴です。

マスバランスモデル(Mass Balance Model)
規定特性を持つ原料と通常原料を混合して製造する場合に適用されるCoCモデルです。特性を有する材料と、その特性を有しない材料を、一定の基準に従って物理的に混合する点はコントロールブレンディングと同様です。しかし、割り当てのアプローチが根本的に異なります。

<マスバランス方式の仕組み>
マスバランス方式の仕組み-1

マスバランスモデルとは、特定の規定特性(例:バイオマス由来)を持つ原料と、そうでない一般原料(例:石油由来ナフサ)を製造プロセス内で混合し、投入した規定特性を持つ原料の量に応じて、製造された製品の一部にその特性を割り当てる管理モデルです。

物理的な製造工程上の情報を組み合わせた方法で、物理的には混ざり合っていますが、定められた計算方法に従い、規定特性を特定の製品に割り当てられる点が特徴です。

これまで、マスバランスモデルは各組織、認証制度(ISCC PLUSやREDcert²など)ごとに、適用方法やシステム境界、調整・バランシングの定義が異なっており、標準化が課題となっていました。

この課題を解消し、国際的な信頼性と透明性を高めるため、2026年1月にマスバランス方式に特化した初の詳細な国際要求事項を定めた国際規格「ISO 22095-2:2026(Chain of custody Part 2: Requirements and guidelines for mass balance)」が正式に発行されました。

ISO22095-2の確立により、マスバランスを管理・運用するうえで重要な「地理的および時間的なシステム境界の定義」、「変換係数の算出」、「ローリングアベレージパーセンテージ法やクレジット方式などの計算ルール」、「透明性のあるコミュニケーション(環境主張/クレーム)の要件」が国際的に整理されました。

【物理的リンクなし】ブックアンドクレームモデル

CoCモデルの中でも、ブックアンドクレームモデルは、物理的な製品の流れと情報の紐付きを維持する隔離モデル(IP、セグリゲート)や、製造工程内で原料を混合しながら物質収支に基づいて管理する混合モデル(コントロールブレンディング、マスバランス)とは違う特徴を持ちます。

ブックアンドクレームモデル(Book & Claim Model)
ブックアンドクレームモデルとは、環境配慮製品などの「モノ自体」の流通とは切り離して、その「環境価値(クレジット・証書)」だけをデータ上で取引する仕組みです。

そのため、購入者は物理的な製品に環境配慮型原料が含まれていない場合でも、対応するクレジットを調達・償却することで、その生産活動を支援していることを示す環境主張を行うことができます。

ブックアンドクレームモデルは、多様な民間制度に採用されてきましたが、その算出ルールや帰属の手法が標準化されていない点が課題視されていました。

そこで、2026年1月、ブックアンドクレームモデルの具体的な要求事項と指針を定めた国際規格「ISO22095-3:2026(Chain of custody Part 3: Requirements and guidelines for book and claim)」が正式に発行されました。

これにより、ブックアンドクレームモデルにおけるクレジットの発行・移転・使用に関するルールが国際的に明確化されました。さらに、環境価値を適切に伝達する考え方が示され、グリーンウォッシュを防止し、信頼性のある環境主張を行うための基盤となっています。

策定中の「ISO14077」によるマスバランス方式の新規定化とLCA・CFPへの影響

現在策定中のISO14077は、ISO22095で定義されるCoCモデルや、それによって管理される規定特性を、LCAやカーボンフットプリント(CFP)の算定にどのように反映するかを整理する要求事項およびガイドラインとして、策定が進められている規格です。ISO14077は2026年8月段階では、委員会原案(Committee Draft)段階であり、今後内容が変更される可能性があります。

なぜLCA・CFPにおいてマスバランス方式の新規定(ISO14077)が必要なのか

新規格ISO14077が必要とされる背景には、従来のLCAやCFPの考え方と、マスバランス方式などに基づくサプライチェーン管理との間に、規格上のギャップが存在するからです。

ISO14040およびISO14044に基づく従来のLCAでは、原材料調達から製造、使用、廃棄までの物理的な流れに沿って環境負荷を算定します。一方、マスバランスモデルやブックアンドクレームモデルでは、環境属性を帳簿上のルールに基づいて製品へ配分します。

つまり、LCAは「物理的な流れ」、マスバランス方式は「帳簿上の配分」を基本とする考え方であり、両者をどのように整合させてCFPやLCAを算定するかについては、従来のISO規格では明確に定められていませんでした。

そこでISO14077では、通常のLCAとは区別した新たな算定の枠組みとして「CoC-LCA」の策定が進められています。CoC-LCAは、CoCアプローチを製品のLCAやCFPの算定に適用する手法であり、マスバランス方式を用いた環境属性の配分をLCAの中でどのように扱うかを整理することを目的としています。

マスバランス製品のGHG排出量(Scope3)割当における新規定の争点

マスバランス製品のGHG排出量の割当や、バリューチェーン下流への低炭素価値の引き継ぎをめぐっては、2026年9月現在、ISO14077やGHGプロトコル、SBTi(Science Based Targets initiative)において、国際的な共通ルールの整備に向けた議論が進められています。

サプライチェーン全体でデータの一貫性と透明性を保ちつつ、グリーンウォッシュを防ぐために、現在どのような技術的・国際的な争点が深掘りされているのか、3つの主要テーマに沿って整理します。

1.インプットの排出量の配分ルール
混合プロセスに投入されたバイオマスや再生材などの環境属性を、出力製品へどのように配分するかは、LCA・CFP算定における最大の論点の1つです。

投入された環境属性を製品へ一律に配分するのか、特定の製品へ集中的に割り当てるのかによって、算定結果や環境主張の内容が大きく変わります。そのため、以下のような配分方法の扱いが議論されています。

マスバランスにおける特性の配分方法

出典:環境省「マスバランス方式に関する国内外の状況等」p.39

・比例配分方式(Proportional):物理的な流れとの整合性を重視し、投入割合に応じて全ての製品へ均等に配分する方法。
・非比例配分方式(Free Attribution):環境属性を特定の製品へ集中的に配分する方法。

また、燃料利用される副産物を環境属性の配分対象から除外するかどうかも、非比例配分方式などでダブルカウント防止の観点から議論されています。

2.サイト間における特性移動
複数の製造拠点を持つ企業では、あるサイト(工場や事業所など)で投入した環境属性を、物理的な材料の移動を伴わずに別のサイトで製造された製品へ移転できる範囲が重要な論点となっています。

GHGは地球規模の影響である一方、環境影響には地域性があるため、サイト間移転によるLCA評価の科学的整合性が課題です。また、自由な移転を認めるとブックアンドクレーム方式との境界が曖昧になるため、移転可能な地理的範囲や条件について議論されています。

3.バリューチェーン(Scope3)における市場ベース算定の可否
マスバランス方式によって割り当てられた低炭素価値を、購入者が自社のScope3排出量の削減として反映できるかどうかも、大きな論点となっています。

この点については、低炭素製品の普及促進と、算定の信頼性確保という観点から、さまざまな議論が行われています。推進派は、低炭素製品の需要拡大を通じてサプライチェーン全体の温室効果ガス(GHG)排出量の削減を促進できると主張しています。一方、慎重派は、帳簿上の環境価値をScope3削減として認めることが、二重計上やグリーンウォッシュにつながる可能性があると懸念しています。

そのため、従来のScope3インベントリとは分けて、環境属性に基づく削減効果を報告する新たな枠組みも検討されています。

国際規格(ISO)に準拠したCoC(Chain of Custody)管理で企業の信頼性を高める

ISO22095シリーズは、持続可能な原料や再生材等の特性をサプライチェーン全体で適切に管理・算定・公開する共通基盤を構築するための規格です。

また現在は、ISO14077において、これらのCoCモデルをLCAやCFPへどのように反映するかについて国際的な検討が進められており、マスバランスやブックアンドクレームの活用範囲は今後さらに広がる可能性があります。

環境情報の開示要求やサプライチェーン全体でのカーボンニュートラルに向けた対応が強まるなか、単に低炭素原料を調達するだけではなく、その環境価値をどのようなルールに基づいて管理し、第三者へ説明できるかが企業の信頼性を左右する重要な要素となります。

ISO規格に準拠したCoC管理体制を早期に構築することは、グリーンウォッシュリスクを低減するとともに、将来的な国際規制や顧客要求への対応力を高め、環境価値を適切に市場へ伝えるための競争力につながります。

三井化学では、「世界を素(もと)から変えていく」というスローガンのもと、バイオマスでカーボンニュートラルを目指す「BePLAYER®」、リサイクルでサーキュラーエコノミーを目指す「RePLAYER®」という取り組みを推進し、リジェネラティブ(再生的)な社会の実現を目指しています。カーボンニュートラルや循環型社会への対応を検討している企業の担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

参考資料
*1:UACJ(UACJ Technical Reports, Vol.10, 2023)「マスバランスモデルの概要と工業材料への適用における課題」:
https://www.uacj.co.jp/development/rd/review/vol10no1/pdf/vol10no1_10.pdf
*2:日本規格協会(JSA GROUP)「ISO/TC 308(加工・流通過程の管理)」:
https://webdesk.jsa.or.jp/common/W10K0500/index/dev/isopc_308/?dev/isopc_308
*3:廃棄物資源循環学会誌(Vol. 37, No. 2, pp. 119-126, 2026)「サプライチェーン認証のモデルと各種認証制度におけるマスバランスモデルの適用方法」:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mcwmr/37/2/37_119/_pdf/-char/ja
*4:WWFジャパン(環境省「カーボンフットプリント(CFP)表示ガイドライン検討会」等向けの提出資料)「CFP表示ガイドの作成に向けて 国際的なグリーンウォッシュ規制の動向」:
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/CFP_siryou_20241025_4.pdf
*5:環境省「マスバランス方式に関する国内外の状況等」:
https://www.env.go.jp/content/000143869.pdf
*6:経済産業省「第3回研究会 事務局説明資料」:
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/green_steel/pdf/003_03_00.pdf

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