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使い捨てプラスチック指令(SUP指令)とは?規制対象と最新動向

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従来の大量消費型のビジネスモデルを見直し、持続可能な製品づくりへの転換を促す枠組みとして注目される「EUの使い捨てプラスチック指令(SUP指令)」。SUP指令とは、特定のプラスチック製品が環境(特に海洋環境)と人の健康に与える影響を防止・削減することを目的とした環境法令です。特定製品の販売禁止やリサイクル材の配合義務など、企業には制度の適切な把握と製品戦略の再構築が求められています。

今回の記事では、SUP指令の基本概要や対象品目、rPET配合率などの規制基準、2026年に採択されたマスバランス方式の最新動向まで、実務の流れに沿ってわかりやすく解説します。

監修

中村 晟一朗(なかむら せいいちろう)
フルハシ環境総合研究所 主任研究員
2021年フルハシEPO㈱入社、2022年より㈱フルハシ環境総合研究所でサーキュラーエコノミーやカーボンニュートラルを含めたサステナビリティ戦略策定および国内外法令、LCA、環境教育などに従事。10年以上の環境関連の経験あり。

 

EUの使い捨てプラスチック指令(SUP指令)とは?

EUの使い捨てプラスチック指令(SUP指令:Single Use Plastics Directive)とは、深刻化する海洋プラスチックごみ問題の解決を目的として制定された、EUにおける強力な環境法令です。

正式名称は「環境に対する特定のプラスチック製品の影響の低減に関する指令(EU 2019/904)」であり、2019年に採択され、2021年7月から各加盟国で段階的に施行されています。

この指令の最大の特徴は、すべてのプラスチック製品を一律に禁止するのではなく、製品の特性や代替品の有無に応じて柔軟かつ厳格な規制を組み合わせている点です。例えば、ストローのように代替品が容易に手に入る製品は市場での販売が禁止される一方で、ペットボトルのように生活に不可欠な製品には、リサイクル素材の配合義務や設計の改良が求められます。

企業にとっては、自社の製品がどのカテゴリに分類され、どのような規制措置が適用されるのかを正確に把握しておくことが、欧州市場でビジネスを続けていくうえで大切になってきます。

さらに、SUP指令は単なる加盟国向けのガイドラインではなく、各国の国内法に落とし込まれる法的拘束力を持っています。違反した場合には、市場からの製品排除や多額の罰金といったペナルティが科されるリスクがあります。

使い捨てプラスチック指令が制定された背景と欧州グリーン・ディールの狙い

使い捨てプラスチック指令が制定された背景にあるのが、海洋プラスチックごみ問題です。EUの調査では、ヨーロッパの海岸に漂着したごみのうち、約70%(個数ベース)が使い捨てプラスチック製品と漁具であることが確認されています。

EUが最優先政策に掲げる「欧州グリーン・ディール」(2019年12月発表)では、気候中立の実現とともに、資源を無駄なく循環させる「サーキュラーエコノミー」への移行を強力に推進しています。そのなかで、「2030年までにEU市場のすべてのプラスチック容器・包装をリユースまたはリサイクル可能にする」という目標が掲げられました。

つまり、SUP指令は単なる海岸の清掃やごみ削減のルールではありません。使い捨てというこれまでの大量消費型のビジネスモデルを根本から見直し、持続可能な素材への転換やリサイクルインフラの構築を産業界全体に促すための、戦略的な施策となっています。そして、企業はこれを契機に、製品設計のあり方から見直すことが求められています。

6つの規制措置と対象となるプラスチック製品

EUの使い捨てプラスチック指令では、対象となる製品に対して単一のルールを適用せず、「6つの規制措置」を設けています。製品ごとに最適なアプローチを適用し、経済活動への過度なダメージを避けつつ、環境負荷の低減を最大化する狙いがあります。具体的には、以下の6つの措置(第4条〜第9条)が規定されています。

  • 販売禁止:代替素材がある使い捨てプラスチック製品の市場投入を禁止

  • 製品改良:環境負荷を下げるための設計変更や素材配合の義務化

  • 拡大生産者責任(EPR):廃棄物の回収や清掃に加え、消費者への啓発活動などにかかる費用を生産者が負担

  • 消費削減:加盟国ごとに消費量を減らすための独自目標を設定

  • 表示義務:環境への影響や適切な廃棄方法をパッケージに明記

  • 分別回収:特定の製品に対する高い回収目標の設定

自社製品に対して適用される措置の把握は、法令遵守の第一歩であり、製品開発の方向性を明確にする上でも不可欠です。

1. 販売禁止と対象となる9つの製品

使い捨てプラスチック指令のなかでも、特に企業への影響が大きい措置として挙げられるのが、代替素材がある使い捨てプラスチック製品の市場投入禁止です。

紙や竹、木材などの環境負荷が低い代替素材がすでに市場に十分に存在しており、プラスチックを使用しなくとも生活者の生活を維持できると判断された以下「9つの製品」が対象となりました。

① 綿棒
② カトラリー製品(フォーク、ナイフ、スプーン、箸等)
③ プレート(皿)
④ ストロー
⑤ マドラー(撹拌棒)
⑥ 産業用途以外の風船に取り付けられているプラスチック製の取手棒
⑦ 以下用途で使用される発泡ポリスチレン製の食品容器(蓋を含む)
 (a) その場で、または持ち帰りで、すぐに消費されることを目的としているもの
   例:ヨーグルト、サンドイッチ、ナッツ類などを包装している袋もしくは容器
   (対象外の例:加熱調理や解凍が必要な冷凍食品・乾物などを包装する容器)
 (b) 通常、その容器から直接食べるもの、消費することが意図されているもの
   例:スーパーなどで販売されている蓋付のサラダ用容器
   (対象外の例:中身を皿などに移し替えて調理・盛り付けしてから食べることを
    前提とした容器)
 (c) 調理が完了済みですぐに食べられるもの
       例:ファストフードやカットフルーツ用の容器
     (対象外の例:家庭での調理を前提とした未調理の生鮮食品を入れる容器)
⑧ 発泡ポリスチレン製の飲料品用の容器(蓋、キャップを含む)
⑨ 発泡ポリスチレン製の飲料品用のカップ(蓋、キャップを含む)

(参考:農林水産省「概要レポート 第13回:EU の使い捨てプラスチック指令」p.2)

さらに重要な点として、製品の種類や用途を問わず、酸化型分解性(オキソ分解性)プラスチック製のすべての製品も市場流通が禁止になっています。これは、オキソ分解性プラスチックが自然環境下で細かく砕けるだけで、マイクロプラスチックとして長期間残留すると科学的に実証されたためです。

これらの製品をEU市場で展開する企業には、バイオマス素材や紙素材へのスムーズな切り替えが求められています。

2. 製品改良と分別回収

飲料ボトルに対する規制は厳格であり、企業に対して大幅な設計変更(製品改良)と高いリサイクル目標の達成を課しています。まず、2024年7月以降、容量が0〜3リットルのプラスチック製飲料ボトルは、キャップや蓋が本体に接続された状態(テザードキャップ)でなければ販売できなくなりました。これは、キャップ単体がごみとして自然界に流出するのを防ぐための措置です。

さらに、企業にとってハードルが高いのがリサイクル材(rPET)の配合義務です。2025年から各加盟国市場に流通する全PETボトルの平均値として、再生プラスチックを25%以上含有することが求められています。2030年からは、対象となるすべてのプラスチック飲料ボトルについて平均30%以上の再生プラスチック含有率とすることが求められます。

飲料ボトルの再生材利用率基準

出典:環境省「EUの政策概要」p.6

また、実務上注目すべき最新動向として、2026年6月30日に欧州委員会で採択された新たなルールがあります。この採択により、リサイクル材の含有率の計算対象が明確化されました。

リサイクル材の含有率の計算については、2023年の算定方法から引き続き、ボトル本体だけでなくキャップ・蓋・ラベル・スリーブを含めた製品全体での計算が正式に義務付けられました。

飲料ボトルの分別回収目標も2029年までに90%と高く設定されており、業界全体での効率的な回収スキームの構築が求められています。

3. 拡大生産者責任(EPR)の強化

使い捨てプラスチック指令では、製品が生活者の手を離れた後のライフサイクル全体に対する企業の責任を強く問う「拡大生産者責任(EPR:Extended Producer Responsibility)」の制度が大幅に強化されています。

この措置の対象となるのは、包装フィルム、柔軟な素材の食品容器、タバコのフィルター、ウェットティッシュ、軽量プラスチック製買物袋、風船などです。従来、街頭のごみ収集や海岸の清掃コスト、公共の場に設置されたごみ箱の維持管理費用は、主に自治体や納税者が負担していました。しかし、SUP指令の下では、これらの費用について、製品を製造・販売する企業(生産者)が負担する仕組みへと転換されました。

さらに、ごみのポイ捨てを防ぐための生活者への啓発活動にかかる費用なども、生産者が負担します。また、前述の高い分別回収目標を達成するための手段として、加盟国はデポジット制度(預かり金払戻し制度)などを導入できます。 EU市場でこれらの対象製品を販売する企業は、各加盟国が運営するEPR管理団体への登録や、販売量に応じた分担金の支払い手続きを確実に行う必要があります。実務においては、サプライチェーン全体でのコストの増加を見越し、製品の販売価格への転嫁や、よりリサイクルしやすい製品設計による分担金の削減努力が不可欠となります。

4. 消費削減と表示義務

すべてのプラスチック製品を禁止するわけではないものの、段階的に利用量を減らすための「消費削減」の目標が加盟国ごとに設定されています。主な対象は、持ち帰り用の食品容器や飲料カップです。各国は独自の裁量で、飲食店での代替品の提供義務化、プラスチック容器の有償化、あるいは販売数の制限といった措置を導入し、プラスチックの総消費量を削減する施策を展開しています。

また、特定の製品には、生活者の行動変容を促すための「表示義務」が課されています。対象となるのは、生理用品、ウェットティッシュ、タバコ製品(フィルター付き)、使い捨ての飲料用カップなどです。これらの製品のパッケージには、「製品へのプラスチックの含有」および「不適切な廃棄(トイレに流す、ポイ捨てするなど)が環境に与える悪影響」を示す特定のマークを、目立つように表示(または印刷)する義務があります。

<特定のプラスチック製品におけるマーク例>
特定のプラスチック製品におけるマーク例

参考:EUR-Lex「Commission Implementing Regulation (EU) 2020/2151 of 17 December 2020 」を元に作成

この表示義務に対する規制は厳格であり、指定されたサイズ、色、言語でのマーク表示が漏れていた場合、市場からの製品回収や販売停止といった重いペナルティに直結します。企業は、EU各国の言語に対応したパッケージデザインの迅速な変更と、印刷プロセスの見直しを実務レベルで徹底する必要があります。

マスバランス方式によるケミカルリサイクルの導入

使い捨てプラスチック指令における最も注目すべき最新の動向が、2026年6月30日に欧州委員会で正式に採択されたリサイクル含有量の計算に関する新たな施行決定(Commission Implementing Decision (EU)2026/1425)です。この決定により、目標達成の手段として「マスバランス方式によるケミカルリサイクル」の導入が公式に認められました。

※マスバランス方式については「マスバランス方式とは? | 三井化学のバイオマス&リサイクルソリューション」にて詳しく解説しています。

これまでEUの規制下では、物理的に廃プラスチックを粉砕・洗浄して再利用する「メカニカルリサイクル(マテリアルリサイクル)」を前提とした算出方法しか定められておらず、ケミカルリサイクル由来の素材を公式なリサイクル材としてカウントするルールが存在していませんでした。しかし、今回の採択により、化学的処理によるリサイクル素材(ケミカルリサイクル由来の素材)も、合法的なリサイクル材としてカウントされるルートが確立されました。

これは、リサイクル材の供給不足に悩む企業にとって、再生材の調達や製品設計の選択肢が大きく広がる転換点です。

「ケミカルリサイクル」と「マスバランス方式」が必要な理由

従来のメカニカルリサイクルには、いくつかの技術的な課題が存在していました。廃プラスチックを物理的に粉砕して溶かす手法では、どうしても不純物の混入や物性の低下を完全に防ぐことができません。そのため、高い安全衛生基準が求められる食品・飲料などの分野では、そもそも製品に使用可能なリサイクル材を調達することが困難な状況にありました。

この課題解決の選択肢となるのが「ケミカルリサイクル」です。これは廃プラスチックを化学的・熱的に処理・分解して、分解油や合成ガスといった原料やモノマーに戻し、再度プラスチックや化学品としてリサイクルするアプローチです。廃プラスチックを熱分解などの化学的処理によって分子レベルまで分解するため、この手法であれば、従来の化石原料から作られるバージン材と全く同等の物性と品質を有するリサイクル材を製造することができます。

<メカニカルリサイクルとケミカルリサイクルの特徴比較>
メカニカルリサイクルとケミカルリサイクルの特徴比較

出典:農林水産省「包装及び包装廃棄物規則(PPWR)に関する調査」P.79

しかし、ケミカルリサイクルされた廃プラスチック由来の原料は、従来の石油由来の原料と物性が同等であるため、既存の化学プラントにてケミカルリサイクル由来原料と石油由来原料を混ぜ合わせ、プラスチックなどの化学素材を製造します。

また、ケミカルリサイクルでは廃プラスチックを分子レベルまで分解するため、物理的にどの分子がリサイクル由来であるかの特定は不可能です。

そこで、投入したリサイクル由来原料の“量”(インプット量)に応じて、できあがった製品の一部に「リサイクル特性」を割り当てる「マスバランス方式」(物質収支方式)によるトレーサビリティと信頼性の確保が不可欠です。使い捨てプラスチック指令(SUP指令)では、この「マスバランス方式によるケミカルリサイクル」の導入が正式に認められ、プラスチックのリサイクル率向上と、より幅広い領域でのリサイクル材の活用につながることが期待されます。

EU域外(日本など)からの輸入リサイクル材に対する規制強化

ケミカルリサイクルの導入が進む一方で、EU域外でリサイクルされた材料については、SUP指令上の再生プラスチック含有率に算入するための要件が明確化されています。特に日本企業が押さえておきたいのが、2027年11月21日を境に、第三国由来のリサイクル材の扱いが変わる点です。

2027年11月21日までは、EU域外でリサイクルされた材料は、原則としてSUP指令における再生プラスチック含有率の算定対象には含まれません。ただし、これはリサイクル材そのものの輸入を禁止するものではありません。

2027年11月21日以降は、日本を含むOECD決定が適用される第三国でリサイクルされた材料についても、原則として算定対象に含められるようになります。ただし、欧州委員会による評価・決定の結果、プラスチック廃棄物の環境上適正な管理に関する要件を満たしていないと判断された場合は、対象外となります。

一方、OECD決定が適用されない第三国でリサイクルされた材料については、EUとの協定や取り決めにより、EUと同等の人の健康・環境保護に関する基準に沿って処理されていることなどが条件となります。

そのため、EU向けに製品を展開する企業は、使用するリサイクル材の由来やリサイクル工程を把握し、制度上の算入要件を満たしているか確認できる体制を整えておくことが重要です。

使い捨てプラスチック指令の最新動向を把握し、サステナブルな製品戦略を

EUの使い捨てプラスチック指令(SUP指令)は、「プラスチックごみの削減」にとどまらず、素材の高度なリサイクルを通じた「資源の循環」を見据えた内容になっています。2026年6月の欧州委員会による採択で、「マスバランス方式によるケミカルリサイクル」が正式に導入されたことは、その象徴的な動きと言えます。

キャップの接続義務やrPET配合率25%といった基準への対応は、法令順守にとどまらず、持続可能な製品・事業のあり方を検討する取り組みにもなっています。たとえば、第三者認証によってマスバランス方式の透明性を確保し、新しいリサイクル素材を製品に採用していくことが挙げられます。こうした姿勢は、環境への意識が高い欧州市場において、自社製品のサステナビリティを証明する1つの手段になります。

また、今後の欧州ビジネスにおいては、SUP指令だけでなく、2026年8月から適用開始となった「包装・包装廃棄物規則(PPWR)」などの広範な環境規制との関連も予想されます。

素材の選定から、EPR制度を通じたコスト管理、製品のライフサイクル全体を見据えた再設計までを統合的に進めていくことが重要です。こうしたサステナブルな製品戦略を構築していくことは、変化する環境規制への対応だけでなく、中長期的な競争力の向上にもつながると考えられます。

三井化学では、「世界を素(もと)から変えていく」というスローガンのもと、バイオマスでカーボンニュートラルを目指す「BePLAYER®」、リサイクルでサーキュラーエコノミーを目指す「RePLAYER®」という取り組みを推進し、リジェネラティブ(再生的)な社会の実現を目指しています。カーボンニュートラルや循環型社会への対応を検討している企業の担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

参考資料
*1:環境省「EUの政策概要」:
https://www.env.go.jp/water/var/www/html/_iq_import/water/marine_litter/Policy_Brief_EU.pdf
*2:環境省「プラスチックを取り巻く国内外の状況」:
https://www.env.go.jp/council/03recycle/y0312-04/y031204-s1.pdf
*3:環境省「令和5年度バイオプラスチック及び再生材利用の促進に向けた調査・検討委託業務報告書」:
https://www.env.go.jp/content/000249043.pdf
*4:農林水産省「概要レポート 第 13 回:EU の使い捨てプラスチック指令」:
https://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokkyo/attach/pdf/platform-251.pdf
*5:農林水産省「包装及び包装廃棄物規則(PPWR)に関する調査」:
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/e_process/attach/pdf/k_packaging-43.pdf
*6:欧州連合日本政府代表部「EUの食品包装プラスチック規制の概要」:
https://www.eu.emb-japan.go.jp/files/100738009.pdf
*7:JETRO「欧州委、使い捨てプラスチック製品の流通禁止を前に指針発表」:
https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/06/88299a30b5475ed7.html
*8:EUR-Lex「Commission Implementing Regulation (EU) 2020/2151 of 17 December 2020 」:
https://eur-lex.europa.eu/eli/reg_impl/2020/2151

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