- バイオマス・リサイクル素材
バイオマスプラスチック製の袋とは?メリットと活用事例を解説
地球温暖化やごみ問題など、私たちを取り巻く環境はさまざまな課題を抱えています。なかでも、温暖化対策については世界的な課題となっており、カーボンニュートラルに向けて持続可能な資源であるバイオマス(生物由来の有機性資源)が注目を集めています。カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーの実現に大きく貢献すると言われているバイオマスとは、どのようなものなのでしょう。
今回は、バイオマスを原料とする製品のなかでも、最近目にする機会も増えてきたバイオマスプラスチック製の袋について、利用するメリットや活用事例をお伝えします。
バイオマスとは?
バイオマスとは、動植物由来の有機性資源のうち化石資源を除いたもので、化石資源とは異なり再生可能な資源です。植物は大気中の二酸化炭素を吸収して固定化しており、大気中ではなく地中で炭素を固定化している化石資源とは異なります。そのため、バイオマスを焼却しても、排出される二酸化炭素は大気中に戻っただけであり、大気中の二酸化炭素は実質的には増加しないという特性があります。
バイオマス資源は、化石資源と異なり何度も短いサイクルで再生産が可能、かつ、カーボンニュートラルな資源として大きな注目を集めています。
バイオマスの種類
バイオマスは、「廃棄物系」「未利用」「資源作物」の大きく3種類に分けられますが、それぞれの概要は次のとおりです。
- 廃棄物系バイオマス
廃棄物として発生しているもので、代表的なものは、廃食用油(UCO: Used Cooking Oil)、生ごみ等の食品廃棄物、家畜の排せつ物、下水汚泥、農業残渣、建設発生木材等の木質系廃棄物、黒液(パルプ工場の廃液)などです。
- 未利用バイオマス
これまで資源として利用されていなかったもので、代表的なのは、農作物の非食用部(稲わらや麦わらなど)や林地残材などです。
- 資源作物
資源としての利用を目的に栽培されたもので、代表的なものは、サトウキビやてんさいなどの糖質資源、米や芋、とうもろこしといったでんぷん資源、大豆や落花生などの油脂資源です。
バイオマスプラスチック製の袋とは?
バイオマスプラスチック製の袋がなじみある製品となった理由のひとつとして、2020年7月1日から全国の小売店に義務づけられたプラスチック製レジ袋の有料化があります。
当時、多くのスーパーやコンビニなどで利用されていたのは石油由来であるプラスチック製のレジ袋で、そのようなレジ袋のポイ捨てによる海洋プラスチックごみ問題や、焼却廃棄による二酸化炭素の排出などが課題となっていました。そこで、レジ袋が本当に必要かを消費者に考えてもらうことにより過剰な利用を抑える、という目的で施行されたのがレジ袋有料化です。
使い捨てプラスチックの削減という観点では、有料化には一定の効果はありました。ただ、使用する量は減っても、石油由来であるプラスチック製の袋を使い続けている限りは、枯渇性資源を利用し、焼却時に二酸化炭素が排出されることには変わりありません。そこで、一部の企業では地球環境への負荷を軽減するため、石油由来のレジ袋の代替として、バイオマスプラスチック製のレジ袋の利用を開始したのです。また、バイオマスプラスチックが25%以上配合されたレジ袋は、レジ袋有料化対象から除外されたことも普及の後押しとなっています。
なお、バイオマス製の袋の素材となるバイオプラスチックについて、詳しくは「バイオマスプラスチックとは?仕組みやメリット、活用用途を解説」をご覧ください。
バイオマスプラスチック製の袋を活用するメリット
バイオマスプラスチック製の袋を活用することは、企業や小売店を営む事業者にとってどのようなメリットがあるのでしょう。主なものを挙げていきます。
- 地球環境に配慮した製品の提供が可能になる
バイオマスプラスチック製の袋は、従来の石油由来プラスチックと比較して二酸化炭素の排出量を削減できることで、カーボンニュートラルの実現に貢献します。また、バイオマスは従来のプラスチックの原料である石油や天然ガスなどの化石資源とは異なり、短いサイクルで再生産が可能なため、サーキュラーエコノミーにもつながります。
- 企業イメージの向上につながる
バイオマスプラスチック製の袋は環境に配慮した商品であるため、企業や小売店のブランド価値向上にも高い効果を発揮します。また、企業のCSR活動の一環として位置づけられることから、企業の社会的信頼性向上も期待できます。
実際、イオン株式会社では、2008年にイオン温暖化防止宣言を公表し、2013年4月にはCO2削減をテーマに世界で初めてプラスチック製買物袋にバイオPE(ポリエチレン)を導入しました。消費者に対しては、プラスチック製買物袋へのマーク表示や店内表示などで植物由来であることを示し、訴求をしています。
また、レジ袋有料化後も、マイバッグを持ち合わせていない消費者に販売したレジ袋の販売収益金は、自治体・団体等に寄付し、地域の環境保全活動に活用してもらうなどCSR活動と組み合わせた独自の取り組みが進んでいます。
- 顧客満足度の向上も可能になる
近年、SDGsという言葉の認知度が上昇していることもあり、顧客の環境に対する意識が向上しています。そのため、環境に配慮したバイオマスプラスチック製の袋を提供することは、顧客満足度の向上にも寄与するでしょう。
例えば、セブン&アイ・ホールディングスでは、2019年にグループとして環境宣言を行い、食品の包装材へのバイオマスプラスチックの導入を開始しました。そして、オリジナル商品の容器包装への環境配慮型素材の採用を、2030年に50%、2050年には100%とすることを目標として掲げています。『環境配慮型素材への素材代替には、バイオマス素材・リサイクル素材・紙という選択肢があるが、技術・生産量・価格の面から、現時点ではバイオマスプラスチックが最も取り組みやすい』とのことです。
また、環境宣言以降、多くの商品に「Green Challenge 2050」という表記をし、消費者に対する訴求を実施しているほか、「植物由来の原料を使用」「間伐材を使用」等の文言をパッケージに記載しています。
これにより、消費者は「自身が購入した商品は環境への悪影響を及ぼしていない」と安心感を感じられるようになり、それが顧客満足度向上にもつながると考えられます。
なお、バイオマスプラスチック製の袋は、バイオマス素材の配合率が25%以上で、その表示をしているものであれば有料化の対象外です。そのため、バイオマスプラスチック製の袋を導入し、レジ袋の無料配布を継続することで、顧客満足度を向上させることも可能と考えられます。
三井化学は環境改善のためバイオマスプラスチックの普及を進めています
バイオマスは、二酸化炭素の排出を抑えることができるうえに再生可能でもあるため、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーの実現に大きく貢献する素材です。
現在でもレジ袋や食品、日用品の容器などバイオマスプラスチックの利用が進んできていますが、近年は石油由来プラスチックと同等の物性を持つマスバランス方式のバイオマスプラスチックが登場したことで、これまで以上に様々なプラスチックや化学品のバイオマス化が可能になっており、今後さらに普及していくと予測されます。
*マスバランス方式については「「脱プラ」から「改プラ」へ。バイオマスナフサが拓く未来への一歩」をご覧ください。
多くの製品に利用されているプラスチックは、その機能の高さにより私たちの衛生的で豊かな生活に貢献しており、完全になくすことはできません。そこで重要になるのは「脱プラ」ではなく、素材の素材から見直すアプローチである「改プラ」である、と三井化学は考えています。
三井化学ではカーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーの実現に向けて、プラスチックの構成原子である炭素や水素をバイオマス・リサイクル由来とする「改プラ」の取り組みを始めています。お使いのプラスチック製品の環境対応をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。最適なソリューションをご提案致します。
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- 参考資料
- *1:バイオマスとは?|九州農政局:
https://www.maff.go.jp/kyusyu/kikaku/baiomasu/teigitou.html - *2:バイオプラスチックのメリット | プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラ新法)の普及啓発ページ :
https://plastic-circulation.env.go.jp/shien/bio/merit - *3:プラスチック製買物袋有料化 2020年7月1日スタート|経済産業省:
https://www.meti.go.jp/policy/recycle/plasticbag/plasticbag_top.html - *4:バイオプラスチック導入事例集|環境省:
https://www.env.go.jp/content/900534517.pdf