- サステナブルな未来
- プラスチック規制
PFAS規制についてEU・米国・日本ごとの規制基準や企業の対応を解説

PFASは、優れた性能から幅広い産業で使用されてきた一方、環境中に残留しやすく人体への影響も懸念されることから、世界各国で規制強化が進んでいます。特にEUでは包括的なPFAS規制案の検討が進み、米国や日本でも法規制の整備が加速しています。今回の記事では、PFAS規制の国際的な動向や各国の最新規制、日本企業への影響、求められる対応を解説します。
|
監修 中村 晟一朗 (なかむら せいいちろう) |
PFAS規制の国際的な潮流と歴史的背景
PFAS(有機フッ素化合物:perfluoroalkyl substances and polyfluoroalkyl substances)は、1万種類以上の有機フッ素化合物の総称です。優れた撥水性・撥油性や耐熱性から幅広い産業で使用される一方、その安定性から自然環境中でほとんど分解されず、河川や地下水、人の血液からも検出されています。
こうした環境残留や人体への影響が懸念されることから、EUや米国を中心にPFAS規制の強化が進められています。
※PFASの概要については、「PFAS(有機フッ素化合物)とは?PFOS・PFOAとの違いや、種類・用途一覧」にて解説しています。
国際条約(POPs条約)による制限の歴史
POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)は、人の健康と環境を保護するため、特定の有害化学物質を国際的に規制する条約です。対象となるのは、長期間にわたって環境中に残留し、国境を越えて拡散する「残留性有機汚染物質(POPs:Persistent Organic Pollutants)」です。
POPs条約では、対象物質を「附属書A(廃絶)」、「附属書B(制限)」、「附属書C(意図的でない生成)」などに分類して管理しています。PFASも物質ごとの有害性評価に基づき、順次これらの附属書へ追加されてきた歴史があります。
<加盟国の主要な義務の内容(努力義務を含む)>
| 附属書A(廃絶) | 製造・使用、輸出入の原則禁止 |
| 附属書B(制限) | 製造・使用、輸出入の制限 |
| 附属書C(意図的でない生成) | 非意図的生成物(工業プロセスなどで意図せず生成・排出される有害物質)の排出の削減及び廃絶 |
2009年:PFOSが規制対象に(COP4)
2009年に開催されたCOP4において、PFASの一種である、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)およびその塩が附属書B(制限)へ追加されました。
2019年:PFOAが廃絶対象(COP9)
2019年のCOP9では、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)とその塩、および関連物質が附属書A(廃絶)に追加されました。
2022年:PFHxSも廃絶対象へ(COP10)
PFOSやPFOAの代替物質として使用が進んでいたPFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)も、有害性や環境残留性が確認されたことから、COP10において附属書A(廃絶)への追加が決定されました。
2025年以降:長鎖PFCAへ規制対象が拡大
2023年に開催された残留性有機汚染物質検討委員会(POPRC19)では、PFOAの代替物質として使用されてきた長鎖PFCAについて附属書A(廃絶)への追加が勧告され、2025年5月のCOP12で正式に附属書Aへの追加が決定されるなど、新たなPFAS規制に向けた議論が進められています。
【EU】REACH規則とPFAS規制強化の最新動向
REACH規則・POPs規則の関係性
EUでは、PFASによる環境・健康リスクへの対応として、世界でも先進的な規制を進めています。その中核を担うのが、ECHA(欧州化学品庁)が統制するREACH規則(Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicals)です。
REACH規則は、EU域内で年間1t以上製造・輸入される原則すべての化学物質を対象とする包括的な管理制度です。「No Data, No Market(データがなければ市場なし)」を原則とし、企業自らが化学物質の安全性を証明する責任があります。
REACH規則の全体像は、「登録(Registration)」、「評価(Evaluation)」、「認可(Authorisation)」、「制限(Restriction)」の4つのプロセスで構成されています。
企業はまず化学物質の安全性データを提出し(登録)、その内容やリスクについて審査を受けます(評価)。その結果、特に懸念の高い物質は使用に個別許可が必要となり(認可)、人や環境へのリスクが認められる場合は製造・販売・使用が禁止または制限されます(制限)。
また、EUではREACH規則に加え、POPs規則(Regulation(EU)2019/1021)によってもPFASを管理しています。POPs規則は、POPs条約の決定をEU域内で実施する制度であり、対象物質の製造・使用を原則禁止します。
REACH規則とPOPs規則は相互に補完する関係にあります。例えばPFOAは、当初REACH規則による使用制限の対象でしたが、国際条約において附属書A(廃絶)に追加されたことに伴い、POPs規則の対象へ移行し、より厳しい規制が適用されました。
REACH規則改正(REACH 2.0)はいつから?検討状況と最新動向
REACH規則はEUの化学物質管理の基盤となる制度ですが、内容の検討も長らく議論されてきました。2020年に提案されたREACH規則の全面的な大改正(REACH 2.0)では、管理の強化や認可制度の検討、SVHC(高懸念物質)への規制強化などが検討されていました。
しかし、制度設計への懸念や産業界・加盟国からの反発を受け、2026年4月に正式な見送りが決定しています。
ただし、REACH 2.0の見送りは、EUが化学物質規制の強化方針を転換したことを意味するものではありません。これからは大規模な法改正を避け、既存制度の運用強化や部分改正を通じて対応を進める方針です。
例えば、SVHCの管理改善が進められているほか、2026年6月にはマイクロプラスチック制限の一部改正が実施されました。この改正では、医薬品や研究開発向けの適用免除を拡大して産業界に配慮しつつも、固体マトリックス(固形製品の母材)中の含有規定を厳格化し環境への流出を厳しく管理するなど、実態に即したルールの最適化が行われています。
PFAS規制強化の最新動向
また、個別物質ごとの規制には限界があることから、2023年にドイツ、オランダ、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーの5カ国は、REACH規則の枠組みのもと、1万種類以上のPFASを包括的に制限する「ユニバーサルPFAS規制案(UPFAS)」をECHAへ提案しました。
この規制案では、PFAS含有量に関する厳しい基準も提案されています。具体的には、非ポリマーPFASの個別物質は25ppb以下、総和は250ppb以下、さらにポリマーを含む総フッ素量は50ppm以下とする案が検討されています。
一方、半導体や医療機器などの代替が困難な用途では、代替技術の開発状況を踏まえ、5年から最長13.5年の猶予期間を設けることも議論されています。
本規制案はECHAの科学委員会による評価が進められており、2026年末までに最終的な科学的評価が完了する見込みです。その後、欧州委員会による正式な制限措置の検討へと進む予定となっています。
また、PFAS規制の動きは、包装分野にも広がっています。2025年2月に発効したPPWR(包装・包装廃棄物規則)では、第5条(有害物質の制限)において、食品に接触する包装に対するPFASの含有規制が新たに導入されました。食品接触材料中のPFASは人への曝露につながるリスクが高いため、優先的に厳しい規制の対象とされています。具体的には、2026年8月以降、基準値を超えるPFASを含む食品包装のEU域内への上市(販売)が全面的に禁止されるため、包装業界では早期の代替対応が急務となっています。
※PPWRについては、「PPWRとは?EUの新しい包装・包装廃棄物規則をわかりやすく解説」や専門家の解説記事「後編:「PPWR」包装の持続可能性要件やEU規制に関して日本企業に求められる対応」にて詳しく解説しています。
【米国】EPA(⽶国環境保護庁)によるTSCA(有害物質規制法)
TSCAの目的や規制内容
米国では、EPA(米国環境保護庁)が所管するTSCA(有害物質規制法:Toxic Substances Control Act)に基づき、化学物質の管理が行われています。
TSCAにおける化学物質管理の枠組み
TSCAでは、化学物質を「TSCAインベントリー」に基づき、「既存化学物質」と「新規化学物質」に分類して管理しています。
新規化学物質とはTSCAインベントリーに掲載されていない物質を指し、製造または輸入を行う事業者は、少なくとも90日前に製造前届出(PMN)をEPAへ提出し、審査を受ける必要があります。一方、既存化学物質は、用途や製造・加工方法が大きく変わる場合に「重要新規利用規則(SNUR)」の対象となり、その際には事前の届出が求められます。
2023年にはTSCA第8条に基づき、PFASの製造・輸入・用途などに関する情報報告義務が最終化されました。これは通常のデータ報告とは異なり、製造量の閾値がなく2011年にまで遡って報告を求める特例的に厳しいルールとなっています。なお、米国EPAは当初、この情報報告の提出受付を2026年4月13日開始と定めていましたが、2026年4月に延期を最終決定しました。現在、開始日は今後の規則改正の発効から60日後(または2027年1月31日のいずれか早い方)とされ、終了期限は未確定です。あわせて2025年11月には、濃度0.1%以下の混合物・製品、輸入アーティクル、研究開発用途などを報告対象から除外する改正案が提示されており、対象範囲が縮小される可能性があります。
EPAによる飲料水基準(MCL)の強化
EPAは、PFASに対するNPDWR(PFASの第一種飲料水規則)に基づく最大許容濃度(MCLs)も設定しています。
2024年4月には、PFOSおよびPFOAについて、最大許容濃度(MCLs)をそれぞれ「4 ng/L(4ppt)」にするという極めて厳しい基準値が設定されました。同時に、そのほかのPFAS(PFHxS、PFNA、HFPO-DA(GenX)など)も基準値が設定されています。ただし、2025年には、EPAがPFOS・PFOA以外のPFAS(PFHxS、PFNA、HFPO-DA(GenX)など)について規制を撤回(rescind)し、規制判断を改めて検討する方針を示しています。
その後、2026年には制度運用の見直しが行われ、水道事業者の対応可能性を踏まえ、PFOAおよびPFOSの基準値自体は維持しつつ、適合期限については一律の延長ではなく、水道システムが連邦免除(federal exemption)を申請した場合に、2029年から2031年へ2年間延長できる枠組みを設ける方針が示されています。
TSCAの日本企業への影響
日本企業が米国へ化学品や製品を輸出する際は、TSCA第8条(a)(7)項に基づいて実施するPFASデータ報告規則への対応が求められます。
この規則では、2011年1月1日以降のいずれかの時点でPFASまたはPFASを含むアーティクル(※)を製造・輸入した事業者に対し、用途や数量、健康・環境影響などの情報報告を義務付けています。今の状況だけでなく過去10年以上に遡ってデータを収集する必要があります。
※アーティクル(成形品):
生産時に与えられる特定の形状、表面又はデザインが、その化学組成よりも大きく機能を決定する物体のことを指します。
また、この規則では輸入アーティクル(成形品)も報告対象に含まれるほか、一般的な化学物質管理で見られる「0.1%未満は免除」といった濃度閾値の除外規定(デミニマス)が原則として適用されません。自動車や電子機器など、微量のPFASを含有する部品を扱う幅広い製造業において、過去に遡った徹底的な調査と法令リスクへの早期対応が必須となっています。
加えて、日本企業が見落としやすいのが、州レベルで独自のPFAS規制が導入されている点です。アメリカでは連邦規制とは別に、カリフォルニア州やニューヨーク州などがPFASを含む製品に対する規制を進めており、規制開始時期や対象製品などは州ごとに異なります。
そのため、日本企業は自社製品が流通する州ごとの要件も把握することが重要です。
【日本】化審法と水質規制
化審法の「第一種特定化学物質」指定状況
日本では、PFAS規制が複数の法制度によって進められています。PFASの製造・輸入を規制する化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)を中心に、飲料水の安全確保を目的とした「水道法」やミネラルウォーター類の規格基準を定める「食品衛生法関連」、河川や地下水などの環境中の汚染を監視する「水質汚濁防止法」などが連携し、多層的な規制体系が構築されています。
化審法では、環境中で分解されにくく、生物への蓄積性や長期毒性が懸念される物質を「第一種特定化学物質」に指定し、原則として製造・輸入を禁止しています。
化審法に基づく指定は、国際的な化学物質規制であるPOPs条約と連動して進められています。
【PFOSとその塩】
・2009年:POPs条約で附属書B(制限)に追加
・2010年4月:化審法の第一種特定化学物質に指定
【PFOAとその塩】
・2019年:POPs条約で附属書A(廃絶)に追加
・2021年10月:化審法の第一種特定化学物質に指定
・2025年1月:PFOA関連物質も第一種特定化学物質に追加指定
【PFHxSとその塩】
・2022年:POPs条約で附属書A(廃絶)に追加
・2024年2月:化審法の第一種特定化学物質に指定
・2026年6月:PFHxS関連物質についても第一種特定化学物質に正式追加(該当する製品の輸入も一部禁止)
日本のPFAS水質基準:暫定目標値(50 ng/L)と要検討項目の最新進捗
水質管理の面でもPFAS規制は強化されています。水道水におけるPFOSおよびPFOAは、これまで暫定目標として合算値「50 ng/L(50ppt)」が設定されていましたが、2026年4月から水道法上の正式な「水質基準」に位置づけられました。これにより、定期検査が義務付けられる法的拘束力のある基準へと移行します。また、公共用水域や地下水も、PFOS・PFOAの合算値50 ng/Lが暫定扱いから正式な「指針値」に見直されました。
さらに、水道水中で検出の可能性がある物質として、2021年にはPFHxSが「要検討項目」に追加されたほか、2025年にはPFBA、PFPeA、PFBS、PFHxA、PFHpA、PFNA、HFPO-DAの7物質が新たに追加されました。
PFASフリー化へのアプローチ
EU、米国、日本でPFAS規制が強化されるなか、企業にはサプライチェーン全体でのPFAS含有状況の把握・管理がこれまで以上に求められています。自社製品だけでなく、原材料や部品に含まれるPFASの有無を確認し、調達先との情報共有やトレーサビリティを確保するとともに、各国・各州で異なる規制要件や施行スケジュールを継続的に注視することが不可欠です。
また将来、「PFASフリー」を前提とした製品設計への転換が重要になると考えられます。規制対象となったPFASを別のPFASで代替する従来の対応では、包括的なPFAS規制に十分対応できない可能性があるためです。
そのため、企業には代替素材の開発・採用や、リサイクルしやすい製品・包装設計への見直しなど、PFASへの依存を減らす取り組みが求められています。
こうしたなかで、三井化学グループでは、世界的に強化されるPFAS規制に対応するため、環境負荷低減と高性能の両立につながるPFASフリーソリューションを追求しています。耐熱性・耐薬品性・摺動性など、従来のフッ素系材料に匹敵する機能を備えた代替素材を開発し、半導体、モビリティ、医療、食品包装など幅広い分野で新たな価値を提供していますので、ぜひお気軽にご相談ください。
<PFAS代替材料・技術に関するお問い合わせ>
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/special/pfas/contact/
三井化学では、「世界を素(もと)から変えていく」というスローガンのもと、バイオマスでカーボンニュートラルを目指す「BePLAYER®」、リサイクルでサーキュラーエコノミーを目指す「RePLAYER®」という取り組みを推進し、リジェネラティブ(再生的)な社会の実現を目指しています。カーボンニュートラルや循環型社会への対応を検討している企業の担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。
- 参考資料
- *1:環境省「有機フッ素化合物(PFAS)について」:
https://www.env.go.jp/water/pfas.html - *2:環境省「PFASハンドブック令和7年12月」:
https://www.env.go.jp/content/000368188.pdf - *3:EPA「有害物質規制法(TSCA)に基づく、PFAS(ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)の報告および記録保持の要件」:
https://www.epa.gov/assessing-and-managing-chemicals-under-tsca/tsca-section-8a7-reporting-and-recordkeeping - *4:独立行政法人日本貿易振興機構「化学品の現地輸入規則および留意点:米国向け輸出」:
https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-010115.html - *5:厚生労働省「欧州REACHについて」:
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002bjtw-att/2r9852000002bjyl.pdf - *6:厚生労働省「米国TSCAについて」:
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002bjtw-att/2r9852000002bjys.pdf - *7:環境省「PFASに関する今後の対応の方向性」:
https://www.env.go.jp/content/000150418.pdf

