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「サーマルリサイクル」の現状と課題、そして「ひとつ先」の解決策とは?

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プラスチックのリサイクルで重要な役割を担っている「サーマルリサイクル」。しかし、CO2の排出など、クリアすべき問題もあります。本記事では、サーマルリサイクルのメリットと課題、さらには代替策となり得るバイオマスプラスチックについて解説します。

持続可能な社会を目指すうえで、人々の日常生活で排出される廃棄物を効率的に処理・再利用することは必要不可欠になっており、「プラスチックのリサイクル」も無視できない大きなテーマのひとつです。

一般社団法人 プラスチック循環利用協会の2021年のデータによると、日本における廃プラスチックの総排出量は824万トンで、その約62%の511万トンが「サーマルリサイクル」で再利用されています。

現在の廃プラスチック処理において大半を占める「サーマルリサイクル」とはどういったものなのか。その課題や問題点はどこにあるのか。そして、その解決策について解説します。

サーマルリサイクルとは

サーマルリサイクルは、エネルギー回収、エネルギーリカバリーとも言われ、収集した廃プラスチックを焼却した際に発生した熱を回収し、エネルギーとして再利用することです。

サーマルリサイクルには、ごみ焼却施設での発電・熱利用、セメント原・燃料化、固形燃料化(RPFRDF)など複数の手法がありますが、なかでも廃プラスチックを焼却した際に出る熱や蒸気を利用して発電する「発電焼却」が最も多く行われています。

廃プラスチックのリサイクル手法は大きく3つに分類されます。まずは、上述の「サーマルリサイクル」が1つ目です。2つ目が、物理的処理により廃プラスチックをそのまま再生原料にして新しい製品を生み出す「マテリアルリサイクル(メカニカルリサイクル)」です。

そして3つ目は、廃プラスチックを化学的に分解することで、分解油や合成ガス、モノマーといった化学原料に戻して再利用する「ケミカルリサイクル」です。

サーマルリサイクルについて、詳しくは「サーマルリサイクルとは?メリットや課題、持続可能な社会に向けて新たな取り組みを解説」をご覧ください。

サーマルリサイクルの現状

先に述べたように、サーマルリサイクルの手法には、ごみ焼却施設での発電・熱利用焼却、セメント原・燃料化、固形燃料化(RPFRDF)などがありますが、なかでも「発電焼却」が近年注目を集めています。

環境省では2005年、廃棄物処理法の基本方針として「廃プラスチックについては、まず発生を抑制し、再使用、再生利用を推進する」とし、さらに残るものについては「直接埋立は行わず、一定以上の熱回収率を確保しつつ熱回収を行うことが適当である」と告示しました。

発電焼却では、ごみを焼却することで発生する熱エネルギーにより、ボイラーで蒸気を作り出し、発電します。また、その際の余熱についても焼却施設内の暖房や給湯などに利用可能です。さらに、ボイラーで発生させた温水や蒸気を近隣の健康施設に供給することもでき、熱エネルギーを最大限に有効利用しています。

一般社団法人 プラスチック循環利用協会の「プラスチックリサイクルの基礎知識 2023」によると、2021年度時点で発電設備を持つごみ焼却施設は全ごみ焼却施設の39%を占めており、発電能力の合計は2,149MWです。これは、約250万世帯分の電力を賄える量に相当します。

ただし同資料によると、発電効率は必ずしも良好とは言えないようです。例えば、発電設備のあるごみ焼却施設は396カ所ですが、そのうち発電効率20%以上の施設は58か所です。また、発電能力が5,000kW未満の小規模施設が255か所となっています。

なお、都市ごみを焼却炉で燃やすことで、汚染物質を含んだ排ガスが発生するとお考えの方もいるかもしれません。しかし日本の焼却炉は厳しい基準が設けられており、設備更新、新技術の導入などによって排出抑制が進んでいます。その結果、現在、汚染物質の排出は規制基準を大きく下回るようになっています。

参考:プラスチックリサイクルの基礎知識2023(PDF)|一般社団法人プラスチック循環利用協会

廃プラスチックの課題や課題解決につながるリサイクルについて、詳しくは「廃プラとは?廃プラスチックが抱える課題と課題解決のための取り組みをわかりやすく解説」「廃プラスチックのリサイクルはなぜ必要なのか?その理由やリサイクル方法、課題を解説」もご覧ください。

サーマルリサイクルの課題と今後必要な取り組み

冒頭でもお伝えしたように、日本におけるプラスチックのリサイクルは半分以上が「サーマルリサイクル」です。排熱利用はもちろん、発電にも応用されるなど、有効な技術にも見えるサーマルリサイクルですが、課題もあります。

大きな課題のひとつがCO2の排出です。サーマルリサイクルでは、廃プラスチックを焼却する際にCO2を排出します。単純焼却と合算すると、年間約1,600万トンものCO2を排出しているというデータもあります。

このような課題を解決するべく、現在別の角度からの取り組みが注目されています。
具体的には、温暖化問題の解決に向け、社会のバイオマス化を図る動きです。例えば、動植物に由来する再生可能な有機資源(バイオマス)を原料として製造される「バイオマスプラスチック」への切り替えが進み始めています。これにより、廃棄され焼却された際にもカーボンニュートラルとなります。
今後はリサイクルとともに、こうしたバイオマス素材への切り替えを推進していくことも重要な施策となるでしょう。

バイオマスプラスチックについて、詳しくは「バイオマスプラスチックとは?メリットや活用用途を解説」をご覧ください。

 

三井化学はカーボンニュートラルに向けバイオマスプラスチックの利用を進めています

持続可能な社会を目指していくうえで、廃プラスチックの処理は避けて通れない課題です。一方、現在の日本で主流になっているサーマルリサイクルでは、CO2の排出という別の課題と直面することになります。

そこで今後重要となるのが、プラスチックのバイオマス化です。三井化学ではプラスチックの〝素材の素材〟から見直していく取り組みを進めており、202112月からプラスチックの原料となる石油由来のナフサの代替品として「バイオマスナフサ」の利用を進めています。バイオマスナフサとは、植物など生物由来の「有機性資源=バイオマスから生成された炭化水素(炭素原子と水素原子からなる化合物)」です。

バイオマスナフサを活用したバイオマスプラスチックは、石油由来の製品と同等の品質を持つと同時に、ライフサイクルにおけるCO2排出量を、石油由来ナフサ使用時と比較して削減することになります。

なぜなら、バイオマスに含まれる炭素分は、原料となるバイオマスがその成長過程において大気中のCO2を固定化したものであるため、バイオマスを再生産する限りにおいては、バイオマスを焼却しても大気中のCO2は増加しないという特性があるためです。

また、カーボンニュートラルに向けて社会全体のバイオマス度を向上させるためには、「マスバランス方式(物質収支方式)」というアプローチが重要になります。これは「原料から製品への加工・流通工程において、ある特性を持った原料(例:バイオマス由来原料)がそうでない原料(例:石油由来原料)と混合される場合に、その特性を持った原料の投入量に応じて、製品の一部に対してその特性の割り当てを行う手法」(環境省バイオプラスチック導入ロードマップ)のことです。

マスバランス方式では、ナフサクラッカーで製造される製品とその誘導品を一斉にバイオマス化することができるため、これまでさまざまな課題からバイオマス化が難しかった製品でもバイオマス化することが可能になります。

三井化学グループでは、既に約30を超える製品群でマスバランス方式によるバイオマス化を実現(20238月現在)しており、今後もさらにラインアップを拡充させ、カーボンニュートラル社会の実現につなげていきたいと考えています。

私たち三井化学が目指すのは、これからの社会に向け〝素材の素材〟まで考え、「世界を素から変えていく」ことにより、リジェネラティブなライフスタイルを実現することです。日本の化学素材の出発点を担う三井化学だからこそ実現できる持続可能な社会へのアイデアです。

持続可能な社会に向けて行動する「RePLAYER®」「BePLAYER®」はこちら

 

 


<公開資料:カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー関連>
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/soso/whitepaper/ 

 

参考資料
*1:カーボンニュートラルで環境にやさしいプラスチックを目指して(前編)|経済産業省 資源エネルギー庁:
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/plastics_01.html
*2:プラスチックリサイクルの基礎知識2023(PDF)|一般社団法人プラスチック循環利用協会:
https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf1.pdf
*3:プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況(PDF)|一般社団法人 プラスチック循環利用協会:
https://pwmi.or.jp/pdf/panf2.pdf
*4:サーマル・リサイクルとは|大阪広域環境施設組合:
https://www.osaka-env-paa.jp/shokyaku/energy/thermal.html

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