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サーマルリサイクルとは?メリットや課題、持続可能な社会に向けて新たな取り組みを解説

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廃プラスチックのリサイクル方法として、日本で主流になっているのが「サーマルリサイクル」です。主に3つあるリサイクル方法のうち、サーマルリサイクルにはどのような特徴があるのでしょうか。サーマルリサイクルのメリットと課題について解説します。

廃プラスチックのリサイクル方法として、日本で主流になっているのが「サーマルリサイクル」です。サーマルリサイクルとほかのリサイクル方法との違いや、サーマルリサイクルのメリットについてご存じでしょうか。一見すると燃やしているだけのように捉えられがちですが、実はさまざまな面で環境に配慮されています。

そこで本記事では、サーマルリサイクルの概要やメリット、課題などを含めて解説します。

サーマルリサイクルとは

廃プラスチックのリサイクル方法は主に3つあり、そのうち最も普及しているのが「サーマルリサイクル」です。

サーマルリサイクルとは、ごみ焼却施設での発電・熱利用焼却、セメント原・燃料化、固形燃料化(RPFRDF)などのリサイクル方法です。いくつかの手法がありますが、廃プラスチックを焼却した際に出る熱や蒸気をエネルギーとして回収して利用する発電、いわゆる「ごみ発電」が最も多いです。

ほかの2つのリサイクル方法は、次のとおりです。

  • マテリアルリサイクル(メカニカルリサイクル)

物理的処理により、廃プラスチックをそのまま原料にして製品をつくるリサイクルのことです。このマテリアルリサイクルのなかにも、元の製品と同じ用途でリサイクルする「水平リサイクル」と、別の低位の用途にリサイクルする「カスケードリサイクル」があります。

  • ケミカルリサイクル

廃プラスチックを化学的に分解することで分解油や合成ガス、モノマーといった化学原料に戻し、再利用可能な物質にリサイクルする手法です。

マテリアルリサイクル並びに、そのなかに分類されるカスケードリサイクルについて、詳しくは次の記事をご覧ください。

マテリアルリサイクルとは?具体例や現状の課題、これからのリサイクルについて解説

カスケードリサイクルとは?水平リサイクルとの違いや課題を解説

また、ケミカルリサイクルについて、詳しくは「ケミカルリサイクルとは?メリットや課題について解説」をご覧ください。

サーマルリサイクルのメリット

日本における2021年の廃プラスチック総排出量は824万トンに達していますが、そのうち約62%が「サーマルリサイクル」で再利用されているというデータがあります(2021年のデータ)。廃プラスチックの処理において、サーマルリサイクルがそれだけ高い割合を占めているのには、次のようなメリットがあるからです。

参考: プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況(PDF)|一般社団法人 プラスチック循環利用協会

 

  • ごみの体積を減らし、スペースに限りのある埋立処分場の利用可能期間を延ばすことができる

2021年にサーマルリサイクルで再利用された廃プラスチック量は合計約511万トンです。現状、この部分を直ちに他のリサイクル方法に置き換えることは難しいため、もしサーマルリサイクルを行わないとすれば、これらの廃プラスチックは単純焼却か埋立処分するしかありません。

ただ、埋立処分場のキャパシティには限界があり、家庭から排出される大量のごみを埋め立て続けるのは現実的ではありません。サーマルリサイクルはエネルギー効率だけでなく、スペースに限りのある埋立処分場の利用可能期間を延ばすという側面でも有効なリサイクル方法になります。

参考:プラスチックリサイクルの基礎知識2023(PDF)|一般社団法人プラスチック循環利用協会

  • 廃プラスチックは高い発熱量を持っている(発電能力が高い)

次に、廃プラスチックが高い発熱量を持っていることが挙げられます。プラスチックは紙の23倍の発熱量を持ちます。特にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどは極めて高い発熱量を持ち、石炭、石油、LPGなどの燃料に肩を並べるほどです。家庭から出る生ごみなどを含む一般廃棄物は水分が多く、焼却させるにはエネルギーが必要になるので、焼却炉でそうした役割を担っているケースもあります。

  • 汚れたものや分別が困難なリサイクルしにくいプラスチックも利用できる

汚れがついていたり、分別が困難な廃プラスチックは、ほかのリサイクル方法には向きません。また、容器包装の高機能化によりフィルムを多層にしたラミネートフィルムも、現状では様々な種類のプラスチックが使用されているためマテリアルリサイクルに向きません。これらの廃プラスチックも、サーマルリサイクルなら有効利用可能です。

  • 既存の焼却施設を活用でき、初期費用が抑えられる

全国のごみ焼却施設のうち、約70%が何らかの形で余熱を利用しているといわれています。例えば、ボイラーで発生させた温水や蒸気を近隣の健康施設などに供給し、暖房、浴場、温水プールの熱資源として利用しているケースがあり、近年は発電施設としても注目されているのです。

2021年度の時点で、発電設備を持つごみ焼却施設は396カ所に及び、発電能力の合計は2,149 MW 。約250万世帯分の年間消費電力を賄えるとされています。

廃プラスチックや廃プラのリサイクルについて詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

廃プラとは?廃プラスチックが抱える課題と課題解決のための取り組みをわかりやすく解説

廃プラスチックのリサイクルはなぜ必要なのか?その理由やリサイクル方法、課題を解説

欧州におけるサーマルリサイクルの活用例 

欧州ではサーマルリサイクルを「エネルギーリカバリー」と呼び、これはリサイクルではないと見なす傾向がありますが、その欧州においてもマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルに適さない廃プラスチックは埋立処理するのではなく、サーマルリサイクルを活用するケースが増えています。

欧州のプラスチック産業団体であるプラスチックス・ヨーロッパの「Plastics – the Facts 2022」(欧州におけるプラスチックの需給やリサイクル状況をまとめた報告書)によると、2020年に欧州(EU加盟国、ノルウェー、スイス、イギリスの計30カ国)で回収された廃プラスチックの総量は2,950万トンに達し、その42%がサーマルリサイクル(エネルギーリカバリー)に活用されています。次いで35%がリサイクル(マテリアルリサイクルとケミカルリサイクル)、残りの23%が埋立処理されているのが現状です。特に、分別回収されていない廃プラスチックのサーマルリサイクル率は57%と過半数を占めています。

また、同報告書によると、欧州における廃プラスチックのサーマルリサイクル率は2006年時点では29%だったのに対し、その後は年平均4.2%の成長率で増加し続けており、2020年には廃プラスチック処理全体の42%に達しています。
欧州では、リサイクルの手法としてマテリアルリサイクルとケミカルリサイクルを推進していく方針に変わりはありませんが、この両手法で対応しきれない廃プラスチックに対しては、日本と同様にサーマルリサイクルを活用する傾向が見られています。

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欧州における廃プラスチックのリサイクル状況等について、詳しくはこちらの報告書をご覧ください。
Plastics - the Facts 2022 • Plastics Europe

サーマルリサイクルの課題

日本における廃プラスチックのリサイクルを担うサーマルリサイクルですが、問題点もあります。

  • 二酸化炭素(CO2)の排出があること

プラスチックは製造時、原料であるナフサを高温で分解する際にメタンガス等を燃料とするため、その燃焼時に二酸化炭素が発生します。さらに、プラスチックが役目を終えて廃プラスチックとなり、焼却処理・サーマルリサイクルされる際にも二酸化炭素が排出され、単純焼却も合わせると最終的に年間1,600万トンの二酸化炭素が排出されています(2018年のデータ)。

参考:カーボンニュートラルで環境にやさしいプラスチックを目指して|経済産業省 資源エネルギー庁

二酸化炭素は地球温暖化に影響を及ぼす温室効果ガスですので、持続可能な社会を実現する観点からも排出の抑制が望まれています。プラスチックのリサイクルとしてサーマルリサイクル技術のみに頼っていると、二酸化炭素の排出削減とのトレードオフが起きてしまうというジレンマがあるのです。

サーマルリサイクルの問題点について、詳しくは「「サーマルリサイクル」の現状と課題、そして「一つ先」の解決策とは?」をご覧ください。

三井化学は二酸化炭素排出を大きく抑えられるバイオマスプラスチックの普及に努めています

マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルに回せない廃プラスチックを焼却し、エネルギーとして再利用するサーマルリサイクルは、廃プラスチックの有効活用という観点からは極めて有効な手段です。一方で、地球温暖化に及ぼす影響が大きい二酸化炭素を排出してしまうというデメリットもあります。

しかし、プラスチックは私たちの日常生活に欠かせないものです。私たちの快適な暮らしとあらゆる産業に深く関わっており、現代社会から完全にプラスチックを排除することは現実的ではないと言えるでしょう。

そこで、三井化学では2021年12月より、プラスチック製造の原料となる石油由来ナフサの一部のバイオマスナフサへ切り替えを開始しました。

当社が導入しているバイオマスナフサは、食用油の廃棄油や残渣(ざんさ)油を原料に製造されたものです。バイオマスナフサを使用することにより、プラスチックのライフサイクルにおける二酸化炭素の排出量は、石油由来ナフサを原料としていたものと比べて大きく削減できます。

私たちが目指すのは、プラスチックを「使わない」のではなく「素材の素材から考え直すこと」、つまり、原子の由来を見直していくことです。これこそが、日本の化学素材の出発点を担う素材メーカーだからこそ実現できる持続可能な社会へのアイデアです。

持続可能な社会に向けて行動する「RePLAYER®」「BePLAYER®」はこちら

 

 


<公開資料:カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー関連>
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/soso/whitepaper/ 

 

参考資料
*1:カーボンニュートラルで環境にやさしいプラスチックを目指して(前編)|経済産業省 資源エネルギー庁:
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/plastics_01.html
*2:プラスチックリサイクルの基礎知識2022(PDF)|一般社団法人プラスチック循環利用協会:
https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf1.pdf
*3:プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況(PDF)|一般社団法人 プラスチック循環利用協会:
https://pwmi.or.jp/pdf/panf2.pdf

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