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カーボンニュートラルへのアプローチ ISCC認証を取得したマスバランス方式

三井化学は国内初のバイオマスナフサを原料としたプラスチックや化学品の製造に着手しました。今後、さまざまな用途で使われている汎用プラスチックの世界でもバイオマス化が実現し、バイオマスプラスチック製品が身の回りに登場することが期待されます。
ここではバイオマス原料から化学品を生み出す際に重要な考え方となるマスバランス方式、及びその認証制度について解説します。

SDGsの推進を後押しするさまざまな認定制度について

プラスチックは良質で安価な製品の製造に適していることから、市場に広く受け入れられ発展してきました。
近年、人間活動や産業活動によって排出される二酸化炭素、窒素酸化物などの温室効果ガス(GHG)の増加が地球温暖化の主要因であることが明確になってきており、温暖化は環境破壊や生態系に不可逆的な影響を与えるため、世界共通の深刻な課題になっています。

持続可能な社会の実現に向け達成すべき開発目標を定めたSDGsの17目標の中には、産業活動を担う製造業が貢献すべき多くの課題があります。

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しかしながら、企業活動はさまざまなサプライチェーンが地域をまたいで複雑につながっているため、その源流までたどって、企業活動が及ぼす影響を見える化することには難しい面があります。

そこで、そうした企業活動のトレーサビリティ(追跡可能性)を明らかにするため、第三者機関による認証を受けるケースが多く見られます。

第三者機関の認証によるトレーサビリティの保証により、顧客や消費者に信頼と安心感を与えるとともに、ステークホルダーからは企業価値として評価される時代になってきました。

例えば、紙の世界では森を守るマークとして知られている国際NGO森林管理協議会(FSC)による「FSC認証」があります。

また、チョコレートなどのカカオでは「国際フェアトレード認証」、洗剤などのパームオイルの「RSPO認証(持続可能なパーム油のための円卓会議)」などが該当します。近年、EU諸国の中には「RSPO認証」のパームオイルでなければ取り扱わないと宣言している企業も増加しています。

認証の取得に拍車がかかっているのは、それだけ社会課題に対する消費者からの厳しい目が向けられているということでしょう。

産業分野では、特にSDGsの目標12(つくる責任、つかう責任)、目標13(気候変動に具体的な対策を)への寄与が強く求められています。

そのため、再生可能資源である植物資源や、廃プラスチックの再使用などで、カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミー社会を目指すことは、企業の重要な役割となります。

顧客や消費者は企業が社会課題に対する取り組みを遵守しているかを確認できる透明性を求めており、第三者認証機関はそれを保証する役割を担っています。

例えば、バイオマスの代表的な認証として、ISCC(International Sustainability and Carbon Certification:国際持続可能性カーボン認証)があり、これには「ISCC EU認証」と「ISCC PLUS認証」などがあります。

この二つはいずれもバイオマスを対象とした持続可能な炭素認証を扱う認証システムです。

ISCC EU認証は、EU域内の燃料分野での運用に特化したものであり、ISCC PLUS認証は全世界のさまざまなバイオマス製品が対象です。食品、飼料、エネルギー、化学製品など広範囲な製品で監査・認証を得られるようになっており、国内でもいくつかの製品で認証され始めています。

ISCC PLUS認証を取得するまで

ISCC PLUS認証を取得するにはISCCメンバーになっている監査機関の監査に合格することが必要です。

監査の流れを公開されている監査報告書を参考に説明します。

まず、監査機関と契約を取り交わした後、監査機関は企業のESGレポートや統合報告書などを参考にした事前調査を行います。

その後、監査人を事務所、工場、倉庫など現地に派遣して従業員やマネジメントへのインタビューが行われます。現地では事前調査資料と証拠書類などとの照合および確認、各種記録のレビューなどを行い、ISCCが求める基準への適合性が評価されます。
(当社はコロナ禍での監査でしたのでオンラインで行われました。)

最後に監査会社からISCCへ監査報告書が提出され、監査人による監査報告書に基づき、基準が満たされているとISCCが判断すれば認証が発行されますが、不都合があるとされた場合、企業は是正措置を行い、改善が確認されるまで認証は発行されない仕組みになっています。また、認証は一定期間ごとに審査を受け、更新が必要です。

マスバランス方式とは

ISCC PLUS認証では「マスバランス方式」に基づいて製品のバイオマス認証を行います。

三井化学は、21年12月からナフサクラッカー(石油化学製品を製造する際、製品の出発原料となるエチレンやプロピレン、ベンゼンなどの基礎化学品をナフサの熱分解によって製造するプラント)にバイオマスナフサを石油由来ナフサとともに投入しており、このマスバランス方式に基づいて、各種化学品・プラスチックにISCC PLUSによるバイオマス認証を割り当てています。

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具体的にイメージしやすいように、例として原料ナフサを石油由来ナフサ:バイオマスナフサ=70:30と仮定し、製品として1,000トンのポリプロピレン(PP)を製造する場合を考えてみましょう。

ナフサクラッカーで生産されるエチレン、プロピレン、ベンゼンなどの基礎化学品は、原料割合と同様、それぞれバイオマス由来成分が30%含まれると考えられます。
(厳密にいえば、そうでは無いのですが、便宜上そのように説明させてください。)

同様にこのプロピレンを原料としてPPを1000トン製造すると、得られるPPはバイオマス由来成分が30%含まれます。

ここからがマスバランスの考え方なのですが、マスバランス方式では、生産された1000トンのPPのうちの300トンを100%バイオマス由来の認証ポリプロピレンとみなし、残りの700トンは実際にはバイオマス由来成分が30%含まれていると考えられますが石油由来の非認証ポリプロピレンとみなします。

マスバランスの名前の通り、「入りと出」を量などの単位でバランスさせることで正確性を担保させるしくみです。
(「量」だけでなく、炭素量や熱量でバランスさせる計算方法もあります。)

なぜこのような「みなし」が行われるのでしょうか。

それは個々の製品が実際に100%バイオマス由来であることよりも、カーボンニュートラルへの移行の過程では、いかに社会全体のバイオマス度を高めていくかが重要だからです。

現在、三井化学グループではエチレン、プロピレン、ベンゼン、フェノール、ポリプロピレンなどの認証を取得しており、今後も認証製品を拡大させていく予定です。

三井化学グループではバイオマスナフサの導入とマスバランス方式の採用によって、これまでさまざまな課題から困難とされていた素材のバイオマス化を可能にしています。

複雑な原料体系と誘導品、複雑なサプライチェーンを持つ化学業界がカーボンニュートラルの実現に貢献するためにもマスバランスは必須のアプローチであるため、今後マスバランス方式及びバイオマス等の認証制度は化学業界でも広がっていく見通しです。

 

 

三井化学では、「世界を素(もと)から変えていく」というスローガンのもと、バイオマスでカーボンニュートラルと目指す「BePLAYER®」、リサイクルでサーキュラーエコノミーを目指す「RePLAYER®」という取り組みを推進し、リジェネラティブ(再生的)な社会の実現を目指しています。カーボンニュートラルや循環型社会への対応を検討している企業の担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

「BePLAYER®」「RePLAYER®」https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/index.htm

<公開資料:カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー関連>https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/soso/whitepaper/ 

 

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