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ISCC認証とは?原料の持続可能性とトレーサビリティを証明する国際認証

カーボンニュートラルや資源循環に向けた取り組みが広がるなか、バイオマスやリサイクル原料の持続可能性や環境価値を客観的に証明することが重要になっています。こうした環境価値を第三者機関によって認証する仕組みの1つが、ISCC認証です。
本記事では、ISCC認証の種類や特徴をはじめ、ISCC PLUS認証とは何か、認証の取得方法、マスバランス方式の仕組みについてもわかりやすく解説します。
ISCC PLUS認証の歴史やマスバランス方式の重要性については、第三者認証機関であるSGSジャパンの山中さんにインタビューし、専門家の視点から解説していただいた内容をまとめています。
※「前編:複雑なサプライチェーンをつなぐ持続可能性カーボン認証「ISCC PLUS認証」の全体像」
ISCC認証とは?カーボンニュートラル社会に向けた国際認証
ISCC(国際持続可能性カーボン認証)の概要
ISCC(International Sustainability and Carbon Certification:国際持続可能性カーボン認証)とは、グローバルなサプライチェーンで使用されるさまざまな原材料の持続可能性とトレーサビリティを保証する国際的な持続可能性認証※のひとつで、ドイツに拠点を置くISCC System GmbHが運営しています。
※持続可能性認証:
原料や製品の特定の特性が、実際にサプライチェーンから出力され、その特性が製品に保持されていることを認証するもの。
2026年10月時点で、世界134カ国、16,100を超えるISCC認証が有効になっており、グローバルなサプライチェーンで活用されています※。
※直近のISCC認証の有効数等につきましては、下記のISCC公式HPをご参照ください。
https://iscc-system.org/
ISCC認証には、主に「ISCC PLUS」、「ISCC EU」、「ISCC CORSIA」の3種類があります。それぞれ対象となる製品や適用される法規制が異なり、各認証の要件に基づいて、原料や製品の持続可能性を証明します。
<ISCC認証の主な種類>
| 認証名 | 主な対象製品・分野 | 規制の性質 | 概要 |
| ISCC EU | バイオ燃料など、EU域内の再生可能燃料市場 | EU規制への対応に必要 | EUの再生可能エネルギー指令(RED)に基づく持続可能性基準への適合を証明 |
| ISCC PLUS | プラスチック、包装資材、化学品、繊維、食品など一般産業全般 | 任意(2026年10月時点) | 顧客から求められる環境・調達要件への対応や、企業のサステナビリティへの取り組みを示す手段として活用 |
| ISCC CORSIA | 国際線で使われるSAF(持続可能な航空燃料)など | CORSIAへの対応に必要 | CORSIAの要件に適合するSAFなどの持続可能性やGHG排出量削減効果を証明 |
参考:ISCC System GmbH 「ISCC PLUS(Version 3.4.2)」p.5を元に作成
※SAF(持続可能な航空燃料)やCORSIAについては、以下の記事で詳しく解説しています。
「SAF(持続可能な航空燃料)とは?製造方法・原料・価格からメリットまでわかりやすく解説」、「CORSIA(コルシア)とは?ICAOのCO₂削減制度とSAFの役割」
ISCC認証では、主に「持続可能性」、「トレーサビリティ(追跡可能性)」、「GHG排出量削減効果」の3つの観点から、原料や製品の環境価値を確認します。
①持続可能性(環境的・社会的持続可能性基準の遵守)
原料の生産現場において、生物多様性や環境の保全、人権・労働環境など、ISCCが定める持続可能性基準を満たしていることを保証します。なお、生物多様性の保全や土地利用などの持続可能性基準は、主に農林業のバイオマス原料に適用されます。廃プラスチックや使用済み食用油などの廃棄物・残渣由来の原料では、発生地点で「廃棄物であること」や由来を確認するのが中心となります。
②トレーサビリティ
原料の生産・発生地点から最終製品まで、サプライチェーンを通じて原料の由来や環境価値を追跡・管理します。マスバランス方式などのCoC(管理の連鎖:Chain of Custody)によって、環境価値の透明性を確保します。
③GHG削減効果
原料の生産から加工、輸送などのライフサイクル全体を対象にGHG排出量を算定し、削減効果を確認します。なお、GHG削減の証明が必須かどうかは、ISCC EU、ISCC PLUS、ISCC CORSIAなど、適用するスキームによって異なります。
このように、ISCC認証は原材料の持続可能性、サプライチェーンにおけるトレーサビリティ、GHG排出量削減効果を含め、原料や製品の環境価値を総合的に評価・保証する仕組みです。
企業にISCC認証が求められる背景と役割
ISCC認証が企業に求められる背景には、サプライチェーンの複雑化に伴い、原料や製品の環境価値を客観的に証明する必要性が高まっていることがあります。
例えば、プラスチックは加工しやすく比較的安価であることから、さまざまな製品に利用されています。一方で、企業活動を支えるサプライチェーンは国や地域をまたいで複雑化しており、原料の調達から製造、流通、リサイクルまで、環境への影響を源流までさかのぼって把握・可視化することは容易ではありません。
また、企業が環境への取り組みを実態以上に良く見せる「グリーンウォッシュ」への懸念が高まるなか、環境価値を企業自身の主張だけでなく、第三者による客観的な認証によって裏付けることの重要性も増しています。
こうした背景から、サプライチェーンにおける原料や製品のトレーサビリティを確保し、その持続可能性や環境価値を客観的に証明する手段として、第三者機関による認証が活用されています。
こうした第三者認証は、さまざまな分野で活用されています。例えば、紙や木材では森林の適切な管理を証明する「FSC認証」、カカオなどの農産物では「国際フェアトレード認証ラベル」、パーム油では「RSPO認証(持続可能なパーム油のための円卓会議)」などが代表的です。
また、EUではEUDR(森林破壊防止規則)により、木材、カカオ、パーム油などの対象7品目について、森林破壊への関与がないことやサプライチェーンのトレーサビリティ確保が求められています。要件を満たさない製品は、EU域内での販売や輸出入が認められません。
こうした規制や市場からの要求の高まりを背景に、原料の由来や持続可能性を第三者によって証明する認証制度の重要性は、さらに高まっています。
ISCC PLUS認証が対象とする原材料とREDcert 2との違い
こうした第三者認証のなかでも、バイオマス由来原料やリサイクル由来原料などを対象とし、幅広い産業分野で活用されているのがISCC PLUS認証です。
一方、同様に持続可能な原料の利用を対象とする認証制度として「REDcert 2」があり、両者には対象となる原料や認証の仕組みに違いがあります。
ここでは、まずISCC PLUSが対象とする原材料の種類を整理したうえで、REDcert 2との違いについて見ていきます。
ISCC PLUS認証が対象とする3つの原材料カテゴリー
ISCC PLUS認証では、原料の由来によって、持続可能性の確認基準やGHG排出量の算定方法が異なるため、持続可能な炭素を、その出発原料の由来に応じて「バイオ原料」、「サーキュラー原料」、「再生可能エネルギー由来」の3つに区分して管理しています。
- バイオ原料
植物や生物などの一次資源に由来する原料です。農場で収穫された作物から作られたエタノールや、適切に管理された森林から切り出された木材などが該当します。 - サーキュラー原料
- バイオサーキュラー
生物(バイオ)由来ではあるものの、一度利用された後の廃棄物や残渣(ざんさ)に由来する原料です。家庭やレストランから回収された使用済みの植物油や、農作物の残渣(わら、パームを絞った後の残りかすなど)が該当します。 - サーキュラー
化石由来のプラスチックなど、利用済みの資源をケミカルリサイクルなどによって再資源化した原料です。回収した廃プラスチックを油化・ガス化し、化学品の原料として再利用したものなどが該当します。
- バイオサーキュラー
- 再生可能エネルギー由来
風力や太陽光などの再生可能電力をベースとしたプロセスによって、化石資源に直接依存することなく合成された非生物由来の原料です。工場などから回収されたCO₂を反応させて作られた合成メタノール、e-fuelなどがこれに該当します。
これら3つのカテゴリーは、1つの認証のなかで取り扱うことができますが、それぞれマスバランス上の特性(クレジット)が異なるため、帳簿上では種類ごとに区別して管理・計算する必要があります。
なお、サーキュラーの概念はISCC PLUSの特徴の1つです。EU向けの燃料を対象とするISCC EUや航空燃料向けのISCC CORSIAでは、サーキュラー原料は原則として認められていません。
REDcert 2との違い
REDcert 2も、化学品やバイオマス、リサイクル原料などを対象とし、マスバランス方式にも対応した認証です。ISCC PLUSと同様の目的で活用されていますが、両者には運営主体や普及状況などに違いがあります。
運営面では、国際認証機関「ISCC」が主導するISCC PLUSに対し、REDcert 2はドイツの認証機関である「REDcert」が運営を担っています。
また、普及状況にも違いがあります。REDcert 2は、欧州、特にドイツの大手化学メーカーなどを中心に活用されており、ドイツの化学産業では高い認知度を持っています。一方、ISCC PLUSは欧州だけでなく、日本を含む世界各国で幅広く採用されています。そのため、グローバルなサプライチェーンにおける認知度や普及範囲では、ISCC PLUSの方が広く利用されている認証制度といえます。
認証を取得する際には、自社のサプライチェーンや取引先がどの認証制度を求めているかを踏まえて選択することが重要です。
ISCC PLUS認証の取得方法
ISCC PLUS認証の取得には、認証対象となる拠点を決め、審査機関による監査を受ける必要があります。主な流れは以下のとおりです。
1.認証を取得する拠点を決める
まず、ISCC PLUS認証を取得する工場や事業所などの拠点を決定します。認証製品を製造・加工する拠点だけでなく、認証原料や製品の取引・管理に関わる拠点も対象となるため、自社のサプライチェーンを整理し、どの拠点で認証が必要になるかを確認します。
2.審査機関を選定し、「ISCC HUB」に登録する
次に、ISCCが認定する第三者審査機関を選定し、監査契約を締結します。
ISCC認証では、ISCCが直接企業を審査するのではなく、国際規格(ISO/IEC 17065など)の認定を受け、ISCCと公式に提携した「独立した第三者認証機関(Certification Body:CB)」が審査を行います。
その後、ISCCの公式オンラインシステムである「ISCC HUB」に認証対象となる拠点や審査機関などの情報を登録し、監査に向けた準備を進めます。
3.社内の管理体制を整え、初回監査を受ける
監査に向けて、認証原料の受け入れや管理、製品の出荷、マスバランスの管理など、ISCC PLUSの基準に沿った社内体制を整備します。
準備が整ったら、監査人が事務所や工場、倉庫などを確認します。従業員やマネジメントへのインタビュー、帳簿や証拠書類との照合、各種記録の確認などを通じて、ISCC PLUSの基準への適合性が評価されます。
監査で不適合が確認された場合は、企業側で是正措置を行い、改善が確認される必要があります。
4.認証書の発行・更新
監査機関からISCCへ監査報告書が提出され、その内容に基づいて基準を満たしていると判断されると、ISCC PLUS認証書(Certificate)が発行されます。認証の有効性は、ISCCの公開データベースから確認できます。
ISCC PLUS認証の有効期限は1年間です。そのため、翌年以降も認証を維持するには、認証取得後の実際の稼働実績をもとに、毎年更新審査を受ける必要があります。
ISCC PLUS認証における「マスバランス方式」の位置付け
ISCC PLUS認証では「マスバランス方式」に基づいて製品のバイオマス認証を行います。
マスバランス方式とは、「原料から製品への加工・流通工程において、ある特性を持った原料(例:バイオマス由来原料やリサイクル原料)がそうでない原料(例:石油由来原料)と混合される場合に、その特性を持った原料の投入量に応じて、製品の一部に対してその特性の割り当てを行う手法」(出典:バイオプラスチック導入ロードマップ)です。
マスバランス方式は、その名称の通り、ある特性を持った原料の「入りと出」(“原料としてのインプット”と“その原料からできる製品としてのアウトプット”)を量の単位でバランスさせることにより正確性を担保する仕組み(物質収支方式)です。
特に生産工程が複雑かつ、さまざまな由来の原料を同時に混ぜて使用せざるを得ない場合、「マスバランス方式(物質収支方式)」は効果的なトレーサビリティの管理手法となります。そのため、マスバランス方式はISCC PLUS認証だけでなく、紙の「FSC認証」、カカオ豆の「国際フェアトレード認証ラベル」、パーム油の「RSPO認証」などでも幅広く活用されています。
※マスバランス方式については、「マスバランス方式とは」のページで詳しく説明しています。
マスバランス方式の仕組み
ここでは、具体例をもとに、マスバランス方式の仕組みと「みなし」の考え方を見ていきます。
<マスバランス方式の仕組み>
上記の図は、特定の規定特性(例:バイオマス由来)を持つ原料と、そうでない一般原料(例:石油由来ナフサ)を製造プロセス内で混合し、投入した規定特性を持つ原料の量に応じて、製造された製品の一部にその特性を「マスバランス方式」で割り当てる管理モデルを示しています。
物理的にはバイオマス由来原料と石油由来原料が混ざり合っていますが、定められた計算方法に従い、規定特性を特定の製品に割り当てられる点が特徴です。
このマスバランス方式が実務上の有力な選択肢となっている背景には、複雑な製造工程を有する産業における「原料の物理的な分離の難しさ」があります。
その事例としては、化学産業の起点となる「ナフサクラッカー(ナフサ分解装置)」のような巨大プラントが挙げられます。こうした設備では、バイオマスナフサ(バイオマス由来の炭化水素)、熱分解油(廃プラ由来の炭化水素)、そして従来のナフサ(石油由来の炭化水素)といったように、異なる由来の原料を物理的に混ぜて一括で処理せざるを得ないのが実情です。
これらを物理的に混ざらないように完全に分けて管理(セグリゲーション)しようとすれば、専用の貯蔵タンクやパイプライン、さらに新たなナフサクラッカーなどを大型投資によって新設しなければなりません。しかし、持続可能な社会を目指すプロセスにおいて、莫大な資金を投じて重複する設備を建設することは、設備建設に伴うCO₂排出などの環境負荷を増やすだけでなく、経済合理性の面においても大きな負荷となってしまいます。(出典記事:前編:複雑なサプライチェーンをつなぐ持続可能性カーボン認証「ISCC PLUS認証」の全体像)
そこで、マスバランス方式のアプローチにより、バイオマス由来原料やリサイクル由来原料を活用できる領域を広げ、社会全体をより持続可能なものにし、さらにリジェネラティブ(再生的)にしていく取り組みが進んでいます。
三井化学グループでも、約50製品でISCC PLUS認証を取得し、マスバランス方式によるバイオマス/リサイクル製品を供給できる体制を整備しています。
※ISCC PLUS認証が利用可能な製品(マスバランス方式によるバイオマス/リサイクル製品)の一覧はこちらからご覧いただけます。
ISCC認証を通じて環境価値をサプライチェーンにつなぐ
ISCC PLUS認証は、こうした持続可能な原料の活用をサプライチェーン全体で管理し、その環境価値を客観的に示すための仕組みです。カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの実現に向けた対応を進めるうえで、原料や製品の環境価値を客観的に証明するISCC認証の重要性は、さらに高まることが予想されます。
※ISCCと公式に提携している独立した第三者認証機関であるSGSジャパンに、ISCC PLUS認証の最新動向をお伺いしたインタビュー記事『前編:複雑なサプライチェーンをつなぐ持続可能性カーボン認証「ISCC PLUS認証」の全体像』、『後編:ISCC PLUS認証の最新動向(スタンドアローン化)と審査のポイント』もあわせてご覧ください。
三井化学では、「世界を素(もと)から変えていく」というスローガンのもと、バイオマスでカーボンニュートラルを目指す「BePLAYER®」、リサイクルでサーキュラーエコノミーを目指す「RePLAYER®」という取り組みを推進し、リジェネラティブ(再生的)な社会の実現を目指しています。カーボンニュートラルや循環型社会への対応を検討している企業の担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。
- 参考資料
- *1:ISCC System GmbH 「ISCC PLUS (Version 3.4.2)」:
https://iscc-system.org/wp-content/uploads/dlm_uploads/2026/03/ISCC-PLUS.pdf - *2:ISCC System GmbH 「ISCC EU 203-02 Mass Balance Guidance (Version 1.2)」:
https://iscc-system.org/wp-content/uploads/2025/12/ISCC-EU-Mass-Balance-Guidance-Document_Version-1.2_Final_22122025.pdf - *3:ISCC System GmbH 「List of materials eligible for ISCC PLUS certification AUGUST 2026」:
https://iscc-system.org/wp-content/uploads/2026/08/ISCC_PLUS_material_list_Aug_26-2.pdf - *4:農林水産省「EUの森林減少防止に関する規則への対応について」:
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/EUDR.html

