- バイオマス・リサイクル素材
- リサイクル
プラスチックストロー廃止の理由とは?国内外のごみ問題対策も解説
なぜ、プラスチックストローが飲食店等で廃止され始めているのでしょう。その背景にあるのは、海洋プラスチックごみの問題です。ごみ問題への対応として日本国内の取り組みに加え、世界のプラスチックストロー規制の状況や、代替品についても解説します。
プラスチックごみの不法投棄によって、プラスチックごみが海洋まで流出してしまう「海洋プラスチックごみ問題」が世界的な課題となっています。ウミガメの鼻にストローが刺さっているという衝撃的な映像をきっかけに、プラごみ問題は世界が真剣に取り組まなければならない課題としての認識が広がりました。この課題への取り組みとして、脱プラスチックやプラスチック製品を持続可能な素材に切り替えようとする動きが広がりつつあります。
なかでも、国内外を問わず活発化しているのが、プラスチックストローなど使い捨てプラ製品の廃止や素材代替に向けた動きです。そこで本記事では、なぜプラスチックストローの廃止が進められているのか背景を紹介したうえで、国内外の取り組みについて解説します。
プラスチックストローを廃止する理由
なぜ、プラスチックストローを廃止する動きが加速しているのか。その背景には、海洋プラスチックごみ問題が大きく関わっています。
環境省がまとめた「令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」によると、プラスチックごみは年々増加しており、1950年以降に生産されたプラスチック類は83億トン超で、63億トンがごみとして廃棄されたとの報告もあると記されています。
また、毎年約800万トンのプラスチックごみが海洋に流出しているという試算や、2050年には海洋中のプラスチックごみの重量が魚の重量を超えるという試算もあり、プラごみ問題と共に海洋プラスチックごみ問題は全世界的な課題となっているのです。
日本では、2022年4月1日から「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環促進法/プラスチック新法)」が施行されました。この新法では「特定プラスチック使用製品の使用の合理化」として、消費者に無償で提供されるプラスチック製の12製品を指定。その利用を合理化することが求められています。なお、プラスチックストローもこの12製品に含まれています。
※プラスチックストロー廃止の動きについて詳しくは「廃プラとは?廃プラスチックが抱える課題と課題解決のための取り組みをわかりやすく解説」をご覧ください。
世界のプラごみ問題に対する取り組み
海洋プラスチックごみ問題が地球規模で大きな関心を呼び、課題になっている昨今。では、世界各国ではどのようなプラスチックごみ対策に取り組んでいるのでしょうか。世界で行われているごみ問題に対する取り組みを解説します。
アメリカ
アメリカでは、メーン州、オレゴン州、コロラド州、カリフォルニア州などでプラスチック汚染を削減するための法案が成立。また、世界的コーヒーチェーンが本社を置く米国ワシントン州シアトル市でも、飲食店や食料品店等でプラスチック製の使い捨てストロー等の提供を禁じる条例が施行されています。
さらに、2021年11月には米国環境保護庁(EPA)が、2030年に向けたリサイクル率50%達成を目指す「国家リサイクル戦略」を発表。国全体としてリサイクル可能な商品の増加や、リサイクル過程での環境負荷の軽減を目指すとしています。
EU(欧州連合)
EUでは2019年、使い捨てプラスチック製品の流通を2021年までに禁止する法案を採択。EU加盟国は法令に基づき、国内法を整備することになりました。2021年7月からカトラリー(スプーン・フォークなど)、ストロー、コップ、発泡スチロール製食品容器などを対象に流通禁止措置が取られています。
欧州の環境大国として知られるドイツでは、2021年からプラスチックストローやカトラリー、カップ、綿棒などが禁止されました。フランスでは2020年から「プラスチック製使い捨て容器や食器を禁止する法律(循環経済法)」を施行するなど、EU加盟国は対応を迫られています。
台湾
台湾では2019年7月から政府機関(食堂、売店などを含む)、学校、百貨店やショッピングセンター、チェーン展開するファストフード店など約8,000事業者を対象に、店内飲食時にプラスチックストローの提供を禁止しました。
2020年には対象を拡大し、飲食店店内での飲食時には、プラスチックストローの提供を禁じました。2025年にはさらに対象を拡大させ、2030年には全面的にプラスチックストローの使用を禁止する予定としています。
国内でのプラスチックストローに対する取り組み
国内で行われているごみ問題に対する取り組みを解説します。
プラスチックストロー廃止の動き
日本国内でも、プラスチックストロー廃止への取り組みが広がりつつあります。
日本の大手外食チェーンA社は、2020年までに全店舗でプラスチックストローを原則廃止することを発表しました。利用を減らすと共に、自然分解するプラスチック素材等を使用した代替ストローの導入を検討するとしています。
このように、日本国内においても多くの外食チェーンがプラスチックストローの使用中止や削減・代替を打ち出しており、代替素材としては紙や木、金属製などが検討されています。
プラスチック回帰の動き
しかし、生活から完全にプラスチックを廃することは難しいことも事実です。そのため、環境にやさしいプラスチックを使用することで対応する動きも注目されています。
例えば、紙素材のストローは複数の飲食店で導入されていましたが、においや飲み心地などの問題により消費者からの評判は決して良いものではありませんでした。そのため、バイオマスプラスチックに切り替えるという取り組みが始まっています。
実際、紙ストローとプラスチックストローの環境影響をライフサイクルアセスメント(LCA)という手法で評価した場合、温室効果ガスの排出量を比較すると、紙ストローはプラスチックストローの4.6倍という調査結果も出ています。
万が一、不法投棄された場合を考えると、紙ストローは自然分解するので、長期的に見ると海洋ごみにはなりませんが、そもそも不法投棄をなくすことが重要です。一方で、紙ストローが店舗内でごみとして廃棄されることを考えると、生産時から使用後までの「ライフサイクル」という観点で温室効果ガスの排出量削減を検討する必要があります。
また、リサイクルの観点から見ても、紙ストローは燃えるごみとして廃棄されるため、リサイクルされません。一方、プラスチックストローはプラごみとして回収され、リサイクルループに乗ることになります。
プラスチックストローに回帰した企業はこのように総合的に判断し、紙ストローよりもバイオマスプラスチックストローの方が、より環境負荷が少ないと判断したのでしょう。
バイオマスプラスチックの場合、CO2の排出量を抑えつつも従来のプラスチックと同等の使いやすさで利用できるため、環境問題への取り組みと、利用者の利便性を両立させる案として注目を集めています。実際に紙ストローでもプラスチックストローでもなく、バイオマスストローを導入している外食チェーンも登場しています。
リサイクルへの動き
また、ごみ問題解決のために、廃プラを資源として再利用するリサイクルへの取り組みが進んでいます。三井化学では、「RePLAYERⓇ」というリサイクルを推進する取り組みのもと、さまざまなリサイクルに取り組んでいます。
一例を挙げると、「ケミカルリサイクル」によるアプローチです。「ケミカルリサイクル」とは、プラスチックごみを化学的・熱的に分解し、一度原料レベルまでリサイクルします。そこから再度プラスチックを製造するため、バージンのプラスチックと同等の品質でリサイクルできるという手法です。ごみを単にごみとして廃棄するのではなく、再度資源として利用しようという動きを推進しているのです。
三井化学はリサイクルでサーキュラーエコノミー実現を目指しています
石油由来のプラスチックストローを廃止する動きは、今後も世界的に高まっていくでしょう。とはいえ、いまや人々の生活にとって不可欠なプラスチック製品を完全に排除するのは、非常に難しい取り組みであるとも言えます。
時代に足並みをそろえつつ、地球環境に配慮した企業活動を継続するには、ただプラスチックを廃止するだけでなく、バイオマスプラスチックを積極的に利用することや、プラスチック廃棄物を再び資源として利用し、リサイクルすることが求められます。
三井化学では、カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーの実現に向けて、「BePLAYERⓇ」「RePLAYERⓇ」を立ち上げ、持続可能な社会に向けて行動しています。
「BePLAYERⓇ」では、社会のバイオマス化を進めて地球温暖化の解決に向けて取り組み、「RePLAYERⓇ」では、廃プラを資源として再利用する取り組みです。
プラスチック製品の見直し等の取り組みを進めたいという企業担当の方は、ぜひお気軽にご相談ください。持続可能な社会に向けて行動する「BePLAYERⓇ」「RePLAYERⓇ」はこちら。
|
- 参考資料
- *1:プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律|環境省:
https://plastic-circulation.env.go.jp/about - *2:令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 状況第1部第3章第1節 プラスチックを取り巻く国内外の状況と国際動向|環境省:
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r01/html/hj19010301.html