- カーボンニュートラル
- SDGS
カーボンニュートラルとSDGsの関係!意味についても簡単解説
気候変動の抑制と、そのための温室効果ガスの排出量削減という社会課題に対し、様々な目標やアプローチが打ち出されていますが、その中で今回はSDGsとカーボンニュートラルの関係を整理し、解説していきます。
「人間活動が主に温室効果ガスの排出を通して地球温暖化を引き起こしてきたことには疑う余地がなく、1850〜1900年を基準とした世界平均気温は2011〜 2020年に1.1℃の温暖化に達した」(引用:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書)
IPCC第6次報告書に記載されているように、温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)の排出量増加は、世界の平均気温を上昇させる一つの要因とされています。さらに、こうした人間活動に由来する気候変動は、熱波、大雨、干ばつ、熱帯低気圧のような極端現象の発生にも影響を及ぼす可能性が高く、そのリスク低減に向けた対応が世界的に求められています。
こうした中で、人間活動による温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラル社会の実現に向け、産官学の全ての領域で様々な取り組みが行われています。また、気候変動に関しては、2015年9月国連で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)でも「13.気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」という目標が掲げられています。
気候変動の抑制、そのための温室効果ガスの排出量削減という社会課題に対し、様々な目標やアプローチが打ち出されていますが、その中で今回はSDGsとカーボンニュートラルの関係を整理し、解説していきます。
SDGSとは
SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、2015年9月の国連サミットにおいて採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された国際目標です。「地球上の誰一人取り残さない」ことを理念とし、人類、地球およびそれらの繁栄のために設定された行動計画でもあります。2030年を達成年限とし、「貧困をなくす」「飢餓をゼロに」「質の高い教育をみんなに」「ジェンダー平等の実現」など17の目標を中核とし、それぞれの目標達成に必要な具体的行動を定めた169のターゲットと、その進捗状況を測るための約230の指標で構成されています。つまり、SDGsは国際的な社会課題への取り組みの集大成であり、世界共通目標と言えます。
<SDGs 17の目標>
あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる
2:(飢餓をゼロに)
飢餓を終わらせ、食糧安全保障および栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する
3:(すべての人に健康と福祉を)
あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
4:(質の高い教育をみんなに)
すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し生涯学習の機会を促進する
5:(ジェンダー平等を実現しよう)
ジェンダー平等を達成し、すべての女性および女児の能力強化を行う
6:(安全な水とトイレを世界中に)
すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
7:(エネルギーをみんなに。そしてクリーンに)
すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する
8:(働きがいも経済成長も)
包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的雇用と働きがいのある人間
らしい雇用を促進する
9:(産業と技術革新の基盤を作ろう)
レジリエントなインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進
を図る
10:(人や国の不平等をなくそう)
各国内および各国間の不平等を是正する
11:(住み続けられるまちづくりを)
包摂的で安全かつレジリエントで持続可能な都市および人間居住を実現する
12:(つくる責任、つかう責任)
持続可能な生産消費形態を確保する
13:(気候変動に具体的な対策を)
気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる
14:(海の豊かさを守ろう)
持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
15:(陸の豊かさも守ろう)
陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、
並びに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
16:(平和と公正をすべての人に)
持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提
供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する
17:(パートナーシップで目標を達成しよう)
持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する
カーボンニュートラルとは
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを意味します。2020年10月、日本政府は2050年までに「温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しています。
「排出を全体としてゼロ」というのは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、植林、森林管理などによる「吸収量」を差し引き、その合計を実質的にゼロにすることを意味しています。
また、気候変動問題への国際社会の対応としては、1992年に採択された「国連気候変動枠組条約」に基づき、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)が1995年から毎年開催され,世界での温室効果ガス排出量削減に向けて議論を行っています。
その中で、2015年にフランス・パリで開催されたCOP21では、気候変動対策の国際枠組みである「パリ協定」が採択され、世界共通の長期目標として「世界的な平均気温上昇を工業化以前に比べて2℃より十分低く保つとともに(2℃目標)、1.5℃に抑える努力を追求すること(1.5℃目標)」、「今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること」等に合意。
この実現に向け、世界120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げています。
カーボンニュートラルとSDGsの関わり
現在、SDGsと連動させた様々な取り組みが社会のあらゆる分野で進められています。SDGsの17の目標のうち、「目標7:エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」、「目標13:気候変動に具体的な対策を」が二酸化炭素など温室効果ガスの排出実質ゼロを目標とするカーボンニュートラルとダイレクトにつながります。
またカーボンニュートラルが実現された社会という側面では、「目標11:住み続けられるまちづくりを」、「目標12:つくる責任、つかう責任」、「目標14:海の豊かさを守ろう」、「目標15:陸の豊かさを守ろう」にもつながっています。
カーボンニュートラルに取り組むことは、これらのSDGsの目標達成に必要不可欠になっています。
産業部門におけるカーボンニュートラルの取り組み
産業部門からのエネルギー起源の二酸化炭素排出量を業種別に見ると、鉄鋼業からの排出が最も多く、全体の4割弱を占めています。次いで、化学工業、機械製造業が続いており、この3業種で全体の排出量の65%を占めています。
引用:2021年度(令和3年度)温室効果ガス排出量(確報値)について|環境省
鉄鋼業のカーボンニュートラル対策
鉄鋼分野では、製造時の二酸化炭素排出量を従来の鉄鋼より大幅に削減した、「グリーンスチール」が拡大すると見込まれており、IEA(国際エネルギー機関)によれば、2030年までに世界で1億トン、世界粗鋼生産の約5%まで成長する可能性があります。各国の大手鉄鋼メーカーは、グリーンスチールについて、「マスバランス方式」の採用や二酸化炭素を低減する製造方法の採用など、さまざまな形で取り組みを始めています。
化学工業のカーボンニュートラル対策
プラスチックやゴム、セメント、薬品などを製造する化学産業でも、カーボンニュートラルに向けた様々な取り組みが進められています。化学産業は製造時の二酸化炭素排出に加え、使用済みプラスチックの処分段階の二酸化炭素排出も課題となっています。また、化学産業では二酸化炭素そのものを資源として利用すべく、二酸化炭素を原料のひとつにして有機化合物を生成するCCU(Carbon Capture & Utilization)の技術開発も盛んに進められています。
製品としての取り組みでは、バイオマスナフサ*に代表されるバイオマス原料を用いた「バイオマスプラスチック」の製造が進められています。「バイオマスプラスチック」は再生可能資源(植物由来等)から生まれたプラスチックであるため、そこに含まれる炭素分は元々植物の光合成により大気中から吸収・固定化された由来のものです。そのため、プラスチックを焼却または分解しても大気中のCO₂は増加しない、カーボンニュートラルな素材だと言えます。なお、バイオマスナフサから製造した「バイオマスプラスチック」は、鉄鋼業におけるグリーンスチールと同様に、「マスバランス方式」で提供されています。
さらに、リサイクル手法の一つであるケミカルリサイクルにより、廃プラスチックを熱分解油というリサイクル由来の炭化水素にまで戻し、バイオマスナフサと同様に様々な化学素材の原料として再利用する取り組みも各国で進められています。
カーボンニュートラルと企業の取り組みについては「カーボンニュートラルへの企業の取り組み!国内や海外の事例を紹介」で詳しく解説しています。
バイオマスナフサ*:再生可能なバイオマス(植物など生物由来の有機性資源)から生成された炭化水素混合物。バイオディーゼルやSAF(バイオジェット燃料)をつくるときの副産物として得られ、そこから得られるバイオマスプラスチックの物性は石油ナフサ由来のプラスチックと同等。
三井化学はバイオ&サーキュラーの推進により、リジェネラティブ(再生的)な世界の実現を目指しています
三井化学グループでは、サステナブル(持続可能性)を超えたリジェネラティブ(再生的)な社会の実現に向け、「素材の素材まで考える」をキーワードに掲げた取り組みを進めています。これは、原子の由来を見直し、プラスチックの素(原料)である炭化水素そのものを、従来の石油由来からの転換を図り、カーボンニュートラルに貢献するバイオマス由来の炭化水素や、サーキュラーエコノミー社会につながるリサイクル由来の炭化水素に変えていくことで、そこから造られるプラスチックをバイオ&サーキュラーにしていくアプローチです。
つまり、最初の製品製造はGHG削減効果の高いバイオマスプラスチックを採用し、使用後の廃プラスチックはリサイクルして資源を循環させる。そのようなバイオ&サーキュラーな世界にしていくことが、リジェネラティブな社会の実現につながると三井化学は考えています。
今後、製品のバイオマス化や、リサイクルソリューションを検討される際は、ぜひお気軽にご相談ください。リジェネラティブな社会に向けて行動する「RePLAYER®」「BePLAYER®」はこちら。
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- 参考資料
- *1:持続可能な開発目標 | 国連広報センター :
https://www.unic.or.jp/ - *2:鉄鋼業の脱炭素化に向けた世界の取り組み(前編)~「グリーンスチール」とは何か?|経済産業省資源エネルギー庁:
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/green_steel_01.html