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カーボンニュートラルへの企業の取り組み:日本や海外の事例を紹介

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カーボンニュートラルは今や世界各国における国家戦略です。概念は理解されつつあっても具体的な姿はイメージしにくい面もあるカーボンニュートラルの定義と、企業が取るべき方向性を事例を挙げて説明します。

私たちの生活の中でもカーボンニュートラルという言葉を耳にする機会が増えています。カーボンニュートラルは今や世界各国で国家戦略に掲げられ、日本も2050年にカーボンニュートラルを実現することを国際約束としています。

ただ、言葉としては知っていても、実際にカーボンニュートラルな社会とはどのようなものか、明確にイメージしにくい側面もあります。そこで今回はカーボンニュートラルとは何か、そしてその実現に向けて企業が取り組むべき方向性について事例を交えて解説します。

カーボンニュートラルとは

国連(国際連合)のアントニオ・グテーレス事務総長が2023年7月27日の記者会見で発言した「地球沸騰」という言葉は2023年の流行語大賞でトップ10入りしました。グテーレス事務総長は今年7月の世界の月間平均気温が過去最高を更新する見通しとなったことを受けて「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰の時代が到来した」と警告しました。そして先進国は2040年にネットゼロを実現すべきと呼びかけました。

参考:国連のグテーレス事務総長「地球沸騰化」発言の全文|alterna

カーボンニュートラルはこのネットゼロという表現と同義語です。このほかにも欧州では一般化している気候中立(Climate Neutral)やゼロエミッションなども広義では同意語です。ゼロエミッションは経済活動から排出されるあらゆる廃棄物に関する考え方でしたが、現在は主に脱炭素やカーボンニュートラルの文脈において使用されています。


第21回気候変動枠組条約締約国会議 (COP21)が開催されたフランス・パリにて2015年12月12日に採択された、気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定(通称:パリ協定)によると、カーボンニュートラルとは「人為的な温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)の排出と、植物などの吸収源による除去の均衡(ニュートラル)の達成」と定義されています。温室効果ガスには、二酸化炭素のほか、メタンガス、亜酸化窒素など複数のガスがありますが、代表的なものが二酸化炭素であり、この二酸化炭素の発生と除去量を均衡させることがカーボンニュートラルです。

パリ協定

温室効果ガスによる気候変動問題の解決に向けて、米国・中国・EUなど主要国の批准を経て2016年に発効した国際的な協定がパリ協定です。日本も同年11月に批准しました。

パリ協定では「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求する」いわゆる「2℃目標」が設定され、同時に「今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること」という「カーボンニュートラル」の原則が示されました。

日本のカーボンニュートラル政策

日本では菅義偉内閣において2020年10月に「2050年カーボンニュートラル宣言」を発表し、2050年までに温室効果ガスの排出を実質(ネット)ゼロにする方針を打ち出しました。

また、実現の方策として経済産業省が中心となり「2050年カーボンニュートラルにともなうグリーン成長戦略」を策定。産業政策・エネルギー政策の両面から、成長が期待される14の重要分野について実行計画を策定し、国として目標を掲げ、目標の実現を目指す企業の前向きな挑戦を後押しする政策を推し進めています。img_main

引用:2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略|経済産業省

世界の動向

カーボンニュートラルは気候変動問題の解決に向けた対策という側面に加え、経済的側面も重要です。EUでは温室効果ガスの排出権取引や炭素税*の導入が進んでいます。欧州諸国の二酸化炭素の排出量1トンあたりの炭素税額はスウェーデン137ドル、スイス101ドル、フランス52ドル、英国25ドルとなっています。

さらに2021年7月にはEUが国境炭素税の導入などを盛り込んだ炭素国境調整メカニズム施行法案を発表。2023年10月から事業者に対する炭素排出量の報告が義務化され、2026年から排出量に応じて実際に課税を行う準備が進められています。この炭素国境調整措置(CBAM)は、鉄鋼、アルミニウム、肥料、水素、セラミック、ガラス、セメント分野の炭素集約型製品に適用される見通しで、これらをEUに輸出している国、産業には大きな影響が及ぶことが確実視されています。

なお、日本でも炭素税に類似した「地球温暖化対策のための税(温対策税)」を2012年から導入し、石油・天然ガス・石炭といったすべての化石燃料の利用に対して二酸化炭素排出量に応じた課税がされています。具体的には、二酸化炭素排出量1トン当たり289円になるよう、それぞれの化石燃料の二酸化炭素排出原単位を用いて税率が設定されていますが、前述の国々の炭素税と比較すると極めて低い税率になっています。

*化石燃料の炭素含有量に応じて国などが企業などに課す税金。1980年にフィンランドで導入され、世界に広がっている。

「カーボンニュートラルとは」について、詳しくは「カーボンニュートラルとは?意味や目的、取り組みを分かりやすく解説」をご覧ください。

カーボンニュートラルは企業が取り組むべき必須課題

企業は原材料の購入、加工、製品化、流通、消費、廃棄に至るバリューチェーン全体でカーボンニュートラルの視点を今後ますます重視する必要があります。特に海外展開を行っている国際企業、東証プライム上場企業と取引関係のある国内の企業は、近い将来、温室効果ガス排出量の算定結果の開示が求められるようになっていきます。
さらにESG(環境・社会・コーポレートガバナンス)に考慮した投資活動や企業経営が浸透するなかで、環境問題の主要テーマの一つであるカーボンニュートラルへの取り組みは企業にとって必須課題といえます。

企業におけるカーボンニュートラルには共通の最適解はなく、業態ごとに様々な特徴が見られます。

日本の取り組み事例:国内最大の火力発電会社JERA

日本最大の火力発電会社JERAが火力燃料を現在の石炭や重油から「クリーンアンモニア*」に転換する計画を進めているように、エネルギー供給企業であれば、原料のカーボンニュートラル化が、主テーマとなります。建設業であれば建築する建物のゼロエミッション化(ZEB=ゼロ・エネルギー・ビル)のための設計、手法が重要な課題となります。
また輸送業では、阪急電鉄が国内で初めてカーボンニュートラルを導入した「カーボンニュートラルステーション」を実現しています。輸送活動で排出される二酸化炭素の約50%を太陽光発電やLED照明の導入により削減し、残る50%はグリーン電力証書*などの環境価値(クレジット)を購入することで相殺し、カーボンニュートラルを実現しました。

海外の取り組み事例:食品企業のダノン

海外企業では食品企業のダノンの例もあります。同社はミネラルウオーターブランドの「エビアン」の生産工程をカーボンニュートラル化するための新工場を建設しました。エビアンの容器となるペットボトルには再生素材の比率を高め、工場敷地内には企業所有の鉄道駅を設けトラック輸送で発生する二酸化炭素の排出を大幅に削減しました。さらに同工場は再生可能エネルギーで運営し、廃棄物の92%はリサイクルへ、残りの8%はエネルギーとして回収することで廃棄物ゼロを実現しています。

*水の電気分解で得られる水素を原料にしたアンモニア(グリーンアンモニア)や、天然ガスなどを原料として開発・製造段階で生じる二酸化炭素を回収したアンモニア(ブルーアンモニア)の総称。アンモニアは炭素を含まない化合物であるため燃焼しても二酸化炭素を発生しない。
*風力や太陽光、バイオマスなどの再生可能エネルギーで作ったグリーンな電気が持つ環境価値を証書化して取引する。再生可能エネルギーの普及・拡大を促進する仕組みの1つ。

プラスチック産業におけるカーボンニュートラル

業態に応じて様々な取り組みがあることを見てきましたが、プラスチック産業におけるカーボンニュートラル推進の課題は、製造プロセスにおけるカーボンニュートラルと、ユーザーへ供給する製品のカーボンニュートラル化の2つに大きく分けられます。

中でも、製造プロセスでは燃料の転換が大きな鍵を握っています。プラスチックの原料となるのは原油の精製プロセスで産出するナフサ(粗製ガソリン)です。ナフサは800℃程度の高温で分解すると、オレフィンと呼ばれる留分に分かれます。代表的なオレフィンがエチレンで、それを重合したポリエチレンはレジ袋から自動車の燃料タンクまで様々な用途に使われます。

こうした私たちの生活に欠かせないプラスチックを製造する際の二酸化炭素排出量を削減すべく、ナフサを分解するための燃料転換に向けた取り組みも加速しています。
ナフサを熱分解する際、現在は製造設備で副産されるメタンガス(CH4)を燃料として使用していますが、これは炭素を含んでいるため、燃焼すると二酸化炭素(CO2)が発生します。そこで、炭素を含まず燃やしても二酸化炭素を発生しないアンモニア(NH3)を燃料として使用するための技術開発が進められています。

三井化学はカーボンニュートラル宣言を行って取り組みをスタート

菅内閣が2050年カーボンニュートラルを宣言した翌月、2020年11月に、三井化学は業界に先駆けて、企業としてのカーボンニュートラル宣言を行い、カーボンニュートラルを企業戦略として推進していくことを発表しました。

サプライチェーンを通した貢献になる製品のカーボンニュートラルでは、石油由来のナフサではなく、廃食油等を原料にしたバイオマスナフサを原料としたプラスチックや化学品の生産を開始しています。すでにバイオマスナフサを使ったポリプロピレンやフェノールに加えて、ポリカーボネート樹脂の原料なども出荷しています。バイオマスナフサを原料としたマスバランス方式のバイオマスプラスチックは石油由来のプラスチックと物性は全く変わらず、加工段階でも既存設備をフル活用でき、石油由来のプラスチックと比較して二酸化炭素排出量を削減できるというメリットがあり、カーボンニュートラル実現に貢献する素材です。

三井化学グループでは、カーボンニュートラル実現に向けた「BePLAYER®」の取り組みのもと、バイオマスプラスチックの展開を強化しています。

脱炭素や循環型社会への対応を検討している企業の担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。持続可能な社会に向けて行動する「RePLAYER®」「BePLAYER®」はこちら

 


<公開資料:カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー関連>
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/soso/whitepaper/ 

 

参考資料
*1:国連のグテーレス事務総長「地球沸騰化」発言の全文|alterna:
https://www.alterna.co.jp/91171/
*2:2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略|経済産業省:
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/ggs/index.html

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