二酸化炭素排出量削減がなぜ必要なのか
温室効果ガスにはメタン、一酸化窒素、代替フロンなど、複数の化学物質があり、排出量の多くを占めるのが二酸化炭素です。2018年における内訳をみると二酸化炭素が91.7%、次いでハイドルフルオロカーボンが3.8%、メタンが2.4%、一酸化二窒素が1.6%、パーフルオロカーボンが0.3%、六フッ化硫黄が0.2%となっています。
一方、上記のガスには温暖化を促進する影響度(寄与度)が異なります。メタンは二酸化炭素の25倍の温室効果寄与度があるとされています。一酸化二窒素(亜酸化窒素)やフロンガスはさらにその寄与度が高くなります。
しかし温暖化は温室効果と濃度増加の掛け算で決まるため、温暖化に対して最大の寄与度を示す二酸化炭素の削減が急務となっています。
二酸化炭素の排出状況は「ストップ地球温暖化!二酸化炭素や温室効果ガスの排出状況」で詳しく解説しています。
太陽光発電へのエネルギー転換
IEAが公開した2023年の最新報告書によれば、太陽光発電の新規導入容量は全世界で2010年17GWから2022年240GWへと、12年間で14倍以上に成長し、累積導入量は1,185GWに達しました。設備導入だけでなく、実際の供給量でも電力需要の6.2%、そのうち再エネルギー発電電力の50%を太陽光発電が賄っていると推計しています。IEAは「太陽光発電は電力セクターでの二酸化炭素排出量の削減に重要な役割を果たし、年間二酸化炭素排出削減量は2021年から30%増となる約13.99億tであった」と、太陽光発電による二酸化炭素排出量削減への貢献を高く評価しています。
太陽光発電の課題
いまや発電用電源として重要な地位を占めるに至った太陽光発電ですが、その影響力が高まったことで、晴れた日中に発電が集中し電力需要を超えて発電してしまう系統接続の問題や、逆に夜間や荒天時など発電ができない時のバックアップ電源の確保、原子力発電所の100倍もの広大な土地を占有する必要があり、設置好適地が不足しつつあること、用地開発による自然環境への影響、耐用年数を迎えた太陽電池パネル廃棄物の処分方法など、様々な課題が認識されるようになってきました。
太陽光発電の好適地であり、設備容量も大きい九州電力管内では、2023年12月から太陽光発電の系統電力への接続制限を中小規模の設備に拡大するなど大規模な対策に踏み切っており、系統接続の問題は深刻になってきています。また好適地の不足から人口密度の低い地域に拡大することで、発電設備と系統を結ぶ接続線の容量不足も顕在化しています。
太陽光発電のこうした課題を克服するためには、太陽光発電に依存しすぎず、それぞれの発電方式の特徴を生かした、バランスの取れた電源構成が必須となります。日本では2030年度の電源構成として、太陽光14~16%、水力11%、風力5%、バイオマス5%など、再エネルギー発電を36~38%程度とし、原子力、LNG、石油・石炭など従来の電源を60~64%とする方針を打ち出しています。
風力発電へのエネルギー転換
世界風力会議(GWEC)が2023年に公表した報告書によれば、2022年の風力発電の累積導入量は906.2GW、太陽光発電の累積導入量の76%に達しました。風力発電は、日射のない夜間でも発電が可能で、太陽光発電とは異なるピーク管理が可能であることから、水力、太陽光に続く第3の再エネルギー発電方式として期待が集まっています。
風力発電の課題
日本の場合、風力発電の好適地、すなわち常時風が強い広大な丘陵地、または遠浅の海岸線が少ないため、風力発電の開発は中国や欧州の北海沿岸などと比較して活発とは言えません。2022年の世界での新規導入量では、49 %が中国、25%が欧州、11%が米国で、日本は世界の0.3%と、小規模にとどまっています。
また土地利用の問題は風力発電にも共通した課題です。風力発電の場合は設置のために必要な土地面積がさらに広大となり、原子力発電所の350倍の面積が必要とされます。
東北6県よりも広大な管轄地を管理する北海道電力では、再エネルギー発電用の接続線容量が慢性的に不足しており、宗谷地方など風力発電の好適地にから札幌市、旭川市などの大需要地への接続線容量が確保できない事態が発生しています。
日本独自のアンモニア燃焼技術
世界で日本がオリジナルで取り組んでいるゼロエミッション燃料技術として、アンモニア燃焼技術があります。アンモニア(分子式NH4)は窒素と水素だけで構成されており、燃やしても二酸化炭素を排出しないことから、発電の燃料として現在使われている石炭や天然ガスと置き換えることで、大幅な二酸化炭素の排出削減が期待されています。火力発電の二酸化炭素排出量は、日本国内の総排出量の約40%を占めていることから、これをアンモニアに置き換えることによって、二酸化炭素排出量を直接削減することができ、その電力を利用するバリューチェーン全体の排出削減にも貢献することができます。
世界初のアンモニア燃料発電は、2014 年8月、産業技術総合研究所の試験設備において、最大出力50 kWのガスタービン発電装置を用いて実験が行われました。この時は灯油70 %、アンモニア30 %の混焼で21kWの安定した発電出力に成功しました。2015年にはアンモニア100%の発電にも成功し、2018年には2MWへと、発電装置の大型化にも成功しています。またアンモニア燃焼炉の基本技術は、ナフサ分解炉など発電以外の工業炉への応用も容易なため、技術開発と実証研究の進展に期待が集まっています。
アンモニアは世界中で肥料や化学原料として広く使われ、船舶による大量輸送が確立されているため、海外からエネルギー源として輸入することも可能です。またアンモニア燃料を船舶の動力源として利用する技術も研究が進められています。
アンモニア供給の課題
2022年には100万kWの商用発電所における実証試験も始まり、技術開発が進んでいるアンモニア発電ですが、日本国内の主要な石炭火力発電所をすべてアンモニア混焼化すると年間4000万トンという、世界のアンモニア貿易取引量2000万トンの2倍にあたる膨大な量が必要とされます。大規模供給に向けたサプライチェーンを構築するなど、長期的な戦略によって、供給面の課題をクリアしていくことが必要です。
また英国、ドイツなど石炭火力発電からの脱却を戦略としている国からは、石炭火力の温存につながるとして反発も根強く、根気強く対応していくことも必要です。
三井化学は二酸化炭素排出実質ゼロの社会を目指します
化学プロセスの二酸化炭素排出量では、クラッカーでの熱分解プロセスが最も多い排出源になります。三井化学では、クラッカーの熱分解をこれまでのメタンガスなど化石由来燃料から、プロセスから二酸化炭素を排出しないアンモニアの活用検討を開始しています。これにより化学品・プラスチック製造における低炭素化を目指しています。
また、社会の低炭素化に向けてScope3削減に貢献する原料のバイオマス化も進めるべく、カーボンニュートラルの実現を目指したソリューションブランド「BePLAYER®」を立ち上げました。
我々だけではなく、お客さま、その先のお客さまを含めたバリューチェーン全体での低炭素化、そして地球環境の保全に貢献し、リジェネラティブな世界の実現に向けて、具体的な取り組みを進めています。
脱炭素や循環型社会への対応を検討している企業の担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。持続可能な社会に向けて行動する「RePLAYER®」「BePLAYER®」はこちら。