マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルの両輪で事業を展開
会社の沿革や事業概要について教えてください。
株式会社CFPの設立は2003年で、当初はプラスチック原料の売買から事業を開始しました。2006年頃に工場を開設して、成型不良などの事業系(工程ロス)プラスチックを有価で買取り、原料として再生する事業を進めています。現在は4か所のプラスチック加工工場を保有しています。
2010年からはグループ会社の株式会社リサイクルエナジーを設立して、油化装置の特許も取得し、研究所も開設して油化装置の販売やケミカルリサイクルにも取り組んでいます。しかし、当時はサーキュラーエコノミーの考え方がまだ浸透しておらず、油化した後の油の売り先が見つからず困っていたため、リサイクルエナジーで油化発電の事業も始めました。
その後、日本と比べ、油に課せられている税金や規制が厳しくなく、電気供給が不安定だった東南アジアで再生油のニーズがあると知り、マレーシアの顧客に油化装置を導入し発電機や重機の燃料として利用しています。また、ヨーロッパへプラスチック原料用の油としての販売も始まっています。
再生油の保管タンク(CFP 岡山ケミカルリサイクル工場)
マテリアルリサイクルの事業を進め、ケミカルリサイクルにも事業を拡大しています。その経緯を教えてください。
もっとも大きな要因は、2008年のリーマン・ショックです。リーマン・ショックによって原油価格がぐんと下がってしまい、化学メーカーで作られるバージン材料の価格も下落してしまいました。すると、新品のバージン材が安くなったことで、もともと安かったリサイクル品の価格競争力がなくなり、リサイクル品が売れなくなってしまいました。
私たちはもともと、食品のフィルムやシート、容器を作る会社様から出たロス品を有効に活用しようと、プラスチックを買取り加工してリサイクル品にして販売する事業を行っていました。
そうした会社様の商品は、日常使いされているものであり、景気に左右されません。だからこそ、当社が買取ることができなくなると、今まで有価物だったものが、ただの産業廃棄物になってしまいます。そうした状況にもどかしさを感じて、他の方法は無いかと考えていた中で見つけたのが、油化によるケミカルリサイクルでした。
ケミカルリサイクルの対象拡大も視野に
マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルに関する貴社の事業に関して、改めて教えていただけますか。
当社は基本的に、PIR(ポストインダストリアルリサイクル)と呼ばれる、製造過程で発生した廃棄物を再生した樹脂、いわゆるマテリアルリサイクル材料を扱っています。仕入先からPIRの廃プラを購入して、それを種類別にきっちり分けて再生ペレットにして、もう一度使用可能な原料の状態に加工するというものです。
以前は、PIRの原材料仕入先と再生ペレットの販売先は異なるケースがほとんどでしたが、今では大手企業様を中心にリサイクルやサーキュラーエコノミーの考えが根付いてきているため、再生ペレットを仕入先にお返しする「リターン」の形態も増えています。
一方でケミカルリサイクルについては、一言で言うと「マテリアルリサイクルに適していないものや、マテリアルリサイクルから溢れたもの」を対象にしています。マテリアルリサイクルでは、廃プラスチックを溶かしてペレット状に加工しますが、廃プラの種類によっては、強度や性能を改善するために架橋されていて溶けにくくなっているもの、粉砕が難しいものなどがあり、ペレットにできないものもあるんです。今まではペレットにできないものはサーマルリサイクルの対象としていましたが、今ではケミカルリサイクルの対象としています。
そのため、ペレットにできるものやペレットにして価値が高いものはマテリアルリサイクルの対象として、ペレットにできないものやペレットにしても付加価値をつけることが難しいものはケミカルリサイクルの対象としています。
「価値の高いペレット」とは、どのようなものですか。
もっとも価値の高いペレットは、素性が分かっており、1種類の樹脂などで構成されていて、印刷も全く入っていないピュアなものです。私たちが対象としているPIRは、比較的ここに当てはまるものが大半を占めています。
一方で、PCR(ポストコンシューマーリサイクル)は、消費者の使用済みの製品を回収、再資源化することです。PCRのプラスチックは、様々なプラスチック種が混ざっており、一見1枚のフィルムに見えても単層ではなく、複数の素材で多層に構成されているものが多いため、洗浄や仕分けの工程が複雑で、ケミカルリサイクルの原材料にするハードルも高まります。当社も、PIR材のケミカルリサイクルには取り組めている一方で、PCR材のケミカルリサイクルについては道半ばです。
多層のPCR材をケミカルリサイクルとして活用するハードルの高さをもう少し詳しく教えてください。
油化装置は万能ではありません。PETを使ったフィルムなどが、油化装置の中に入ってしまうと、昇華物が油化装置内に付着し、配管の閉塞などに繋がる恐れがあります。これは、再生油の品質を悪化させるだけでなく、事故の原因にもなり得ます。また、食品フィルムなどの印刷インクに塩素系のものが使われていると、油化装置で生成した油に基準値を超える塩素が含まれてしまうという恐れがあります。
対策としてどのようなことが考えられますか?
塩素や窒素など、リサイクルの妨げになりやすい素材をあまり使わないようにするといった動きやモノマテリアル化が今後は広がるのではないかと思っています。そうなればリサイクルはしやすくなります。
一方で、私たちもそうした状況が訪れることを待っているわけにはいきません。最近立ち上がった油化装置の2号機では、PVC(塩化ビニル樹脂)由来の塩素の大半と窒素の一部を除去できる機能を実装しました。400ppmや1000ppmの塩素量であっても、20ppm~40ppmくらいまで落とすことが可能です。2号機の稼働によって、ケミカルリサイクル対象の範囲を広げていきたいと考えています。
油化装置(CFP 岡山ケミカルリサイクル工場)
2号機の導入によってその対象も広がりそうです。他にリサイクルの対象としたいものはありますか。
電線を覆っている被覆と農業用ビニールです。電線被覆は外側にPVC(塩化ビニル樹脂)が使われていて、内側には架橋ポリエチレンが使われています。これを、リサイクル会社が剥いて銅を取り出し、PVCとポリエチレンに分けているのですが、どうしても完全に分けることは難しく、混ざり合った状態で納入されるため、ケミカルリサイクルにしにくい状態でした。しかし、今後は少量であれば2号機で塩素を除去できるため、リサイクルが可能になります。
農業用ビニールも電線被覆も一部にPVCが含まれてしまうものですが、2号機によってケミカルリサイクルが実現しやすくなります。ただし、産業廃棄物関連の法律では、県を超えてきた土の処理は厳しく管理されます。農業用ビニールをリサイクルするには、ビニールに付着した土を各農家さんや地元の回収業者の方に綺麗に落としていただく必要があります。
ステークホルダーと協働してリサイクルを推進し、カーボンニュートラルの実現を
今後さらに日本でリサイクルの取り組みを加速するためには、どのようなことが必要だと思いますか。
ケミカルリサイクルによる再生油の販売先である化学メーカーさんの受け口がもっと広がってほしいと思います。日系企業が品質管理に厳格であるところは長所であると思いますが、一方で新しいものを試してみるときの間口が非常に狭く、実際に基準値を比べても、ヨーロッパの企業と一桁も違うほど基準が厳しいのが現状です。
韓国では、政府の補助金援助によってケミカルリサイクルが推進され、ケミカルリサイクル業者が増えているようです。もし日本で同じ動きが起こったとしても、結局「油化装置から出てきた油をどこに売るか」となったときに売り先が無いのでは、ケミカルリサイクルは広がらないと思うのです。今、私たちは日本企業の基準を満たせず、売ることができない油を、海外に販売していますが、日本国内で資源を循環させたいという強い想いがあります。サプライチェーン全体での基準の緩和などによりケミカルリサイクルの受け皿が広がればと思います。
最後に、将来のカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの実現に向けて、メッセージをお願いいたします。
リサイクルには、当然ながらコストや手間が掛かります。それでも、地球環境のためにリサイクルを推進していかなければという使命感を持って、ステークホルダー全体でリサイクルを推進しています。
私たちもケミカルリサイクルの対象をPCR材にまで広げられるよう研究開発領域の拡大を進めていますし、今までリサイクルされていなかったものやリサイクルできなかったものを、いかにリサイクルのルートに乗せていくかということを、あらゆる業界やメーカーの方と一緒に考えることは、とても楽しい取組みです。一歩ずつでも着実に、当社のパーパスである「ステークホルダーと共にカーボンニュートラルな明日をつくる」という世界観の実現を目指しています。