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地球温暖化による海面上昇とは?なぜ起こるのか原因や影響について解説

氷河の融解とホッキョクグマ

近年、地球温暖化が進行する中で、海面上昇が深刻な問題となっています。この現象は単なる環境の変化にとどまらず、生態系に影響を及ぼしつつあることや、沿岸都市や島国の生活基盤を脅かすことも懸念されており、人類共通の社会課題として認識されるようになりました。本記事では、海面上昇の原因とその進行状況について解説し、私たちの生活にどのような影響を及ぼすのか、また今後の予測と対策についてもお伝えします。海面上昇が地球温暖化との密接な関係であることを理解し、行動を促す一助となることを目指しています。

地球温暖化と海面上昇とは?

海面上昇とは?海面上昇の実態

海面上昇

引用:【国際】海面上昇速度、過去30年間で3倍に加速。日本近海も高リスク。WMO報告

海面上昇とは、地球温暖化の影響によって、海水温の上昇や氷河・氷床の融解などが原因で、地球全体の平均海面が上昇する現象です。世界気象機関(WMO)の最新の報告によると、海面上昇の速度は過去30年間で約3倍に加速しているとの発表がありました。1993年から2002年までは年間約2.1mmだった上昇速度が、2014年から2023年には年間約4.8mmにまで増加しています。そして、長期的なスパンでは、世界平均海面水位は1900年から現在までにすでに20cm程度上昇しています。地域別では、南西太平洋、日本近海、北米東海岸での海面上昇が特に顕著となっています。この海面上昇は、沿岸地域や低地の島国を生活基盤とする人類の生活に深刻な影響を及ぼしています。

地球温暖化については、「地球温暖化とは?原因から影響、対策までわかりやすく解説も併せてご覧ください。

地球温暖化との関連性と将来予測

海面上昇は、地球温暖化と密接に関連しています。気温の上昇に伴う氷河や氷床の融解に加え、海水温の上昇で海水が膨張することにより、世界の海面が上昇しています。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書によると、今世紀末まで、このまま地球温暖化が急速に進行することで、最悪のシナリオとなった場合、海面が1m上昇することを予測しています。さらに、南極の氷床が不安定化して崩壊が始まると、1.5m以上海面が上昇することもあるとも伝えています。

なお、日本では、1m海面が上昇すると、日本全国の砂浜の9割以上が失われると予測されています。40cmの上昇で、沖に出ている120m分の干潟が消滅し、そこをすみかにしている生物の産卵や子育て、またそこを餌場にしている渡り鳥にも影響がでると言われています。

海面上昇の原因は?なぜ起こる?

地球温暖化による氷河・氷床の融解

海氷

地球温暖化によって、気温が上昇すると、氷河や氷床が融解し、海水量が増加します。特に、グリーンランドや南極、そして山岳地域の氷河や氷床が急速に融解していることが、地球全体の海面上昇に大きな影響を与えています。グリーンランドの氷床は、毎年約2000億トンの氷が融解しており、その量は世界全体の海面上昇の約1/3を占めています。また、南極氷床は地球上の淡水の約90%を含んでおり、仮に南極の氷床が全て融解すれば海水準は61.1m上昇すると予測されています。南極の氷床も、近年、融解が加速しており、その影響は今後さらに大きくなると予想されています。

海水の温度上昇による海水の膨張

地球温暖化による海面上昇のもう一つの原因は、海水の膨張です。地球の温度が上昇すると、水分子の運動エネルギーが増加し活発化することにより、分子間の平均距離が広がり、同じ質量の水でもより大きな体積を占めるようになります。
海水の場合、1上昇すると約0.025%の体積増加が起こります。一見小さな変化に思えますが、地球の表面積の約70%を占める広大な海洋全体では、この小さな変化は地球環境に大きな影響を及ぼすことになります。例えば、海面から500mまでの海水温が2上昇すると、海面水位は約25cm上昇すると予測されています。また、海洋は大気よりも熱容量が大きいため、地球温暖化による熱を多く吸収しています。この熱吸収が海水温の上昇を引き起こし、結果として海水の膨張につながります。

そして、IPCCの報告によると、1971年から2018年までの期間における海面上昇は、約50%が海洋の熱膨張であり、22%は氷河からの氷の減少、20%は氷床からの氷の減少、8%は陸域の貯水量の変化が原因とされています。氷河・氷床の減少による海面上昇が注目されがちですが、実は海面上昇の原因のおおよそ半分は、海水の温度上昇による海水の膨張なのです。

海面上昇がもたらす影響

生物や環境に与える影響

生物や生態系、そして地球環境全体に広範な影響を及ぼしています。まず、沿岸部の生態系に深刻な影響を与えています。
例えば、マングローブや湿地などの沿岸生態系も、海面上昇により浸水し、消失の危機に直面します。マングローブや湿地は、多様な生物の生息地であるだけでなく、炭素の吸収源としても重要な役割を果たしています。
さらに、海面上昇は、淡水資源にも影響を及ぼします。沿岸部では海水の浸入により地下水が塩水化し、飲料や農業用などの生活用水の確保が困難になります。また、河川や用水への海水の逆流により、農地や生態系にも悪影響を与えます。

経済や社会に与える影響

海面が上昇している都市

海面上昇は、経済や社会にも深刻な影響を及ぼすことになります。低地で沿岸部の都市では、浸水や高潮のリスクが高まり、インフラや住宅への被害が増加します。これにより、不動産価値の下落や損害保険コストの上昇が起こり、地域経済にも大きな打撃を与えることになります。
海洋環境の変化により、漁業だけではなく、沿岸部の農業も塩水の浸入により生産性が低下し、食料の安定供給の側面からも大きな影響を及ぼしています。また、観光業もビーチの消失やリゾート施設の被害により、多くの観光地で収入が減少しています。こうした中で、今後、沿岸部からの大規模な移住が進む可能性があり、特に島国では、国家の存続そのものが脅かされています。
さらに、海面上昇に対する適応策や防災インフラの整備に莫大な費用がかかり、今後は、国や自治体の財政を圧迫することも懸念されます。これらの影響は、特に新興国において深刻で、社会・経済の両側面の格差を拡大させる恐れがあります。

海面上昇を抑えるための対策

再生可能エネルギーの普及などの緩和策

海面上昇を抑えるためには、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出量を削減することが重要です。
そのためには、再生可能エネルギーの普及など、エネルギーに関するさまざまな対策を講じる必要があります。再生可能エネルギーは、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどの自然エネルギーを利用して電力を生産します。これらは化石燃料と異なり、発電時の二酸化炭素排出量を抑えることができるため、地球温暖化の抑制に大きく貢献します。
また、エネルギー効率の改善、電気自動車の普及、建築物の省エネ化、あらゆる商品でのバイオマス素材の活用なども重要な緩和策となります。これらの取り組みを総合的に推進することで、温室効果ガスの排出を削減し、海面上昇の進行を抑制することが期待されています。

治水対策などの適応策

海面上昇は、すでに進行しており、その影響は避けられません。そのため、海面上昇に適応するための対策も必要です。適応策には、堤防の強化や嵩上げ、河道の掘削、遊水地の整備などのさまざまな対策があります。堤防の強化は、海面上昇による洪水や浸水を防ぐ効果があります。排水設備の整備は、浸水した水を排水し、被害を軽減する効果があります。また、ハザードマップの整備や避難計画の見直しなど、ソフト面の対策も重要です。これらの対策を総合的に実施することで、海面上昇による水害リスクに備えることが求められます。

海面上昇を防ぐために私たちにできること

個人でできることを考え行動しよう

海面上昇は、地球規模で深刻な問題であり、私たち一人ひとりが意識し、行動することが重要です。日常生活の中で、省エネを心掛けたり、公共交通機関を利用したり、環境に配慮した商品を選んだりすることで、温室効果ガスの排出量削減に貢献できます。その点については、「地球温暖化を防ぐために「私たちができること」とは?具体的な対策も紹介」で紹介していますので、こちらも併せてご覧ください。

三井化学では、「世界を素(もと)から変えていく」というスローガンのもと、
バイオマスでカーボンニュートラルと目指す「BePLAYER®」、リサイクルでサーキュラーエコノミーを目指す「RePLAYER®」という取り組みを推進し、リジェネラティブ(再生的)な社会の実現を目指しています。カーボンニュートラルや循環型社会への対応を検討している企業の担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

「BePLAYER®」「RePLAYER®」https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/index.htm

<公開資料:カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー関連>https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/soso/whitepaper/

 
参考資料
*1:環境省:地球温暖化の日本への影響2001 概要:
https://www.env.go.jp/council/content/i_05/900424936.pdf
*2:データのじかん:地球上の淡水の90%を占める「氷」が溶けるとどうなる?地球温暖化の影響をデータで見る:
https://data.wingarc.com/global-warming-and-ice-29112
*3:Sustainable Japan:【国際】海面上昇速度、過去30年間で3倍に加速。日本近海も高リスク。WMO報告:
https://sustainablejapan.jp/2024/08/28/sea-level-rise/105301

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