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サステナビリティ活動は、企業価値につながる?サステナブルブランド ランキングに見る生活者視点の企業評価の潮流

SBランキング

近年、企業のサステナビリティへの取り組みが、投資家や生活者が企業価値を評価する重要な指標となっています。
サステナブル・ブランド国際会議でアカデミックプロデューサーを務める駒澤大学の青木茂樹教授に、生活者によるサステナビリティ評価ランキング「JSBIJapan Sustainable Brands Index)」を軸に、企業評価の新たな潮流と、サステナビリティ活動をブランド価値に繋げるための戦略について伺いました。

青木 茂樹(あおき しげき)
駒澤大学 経営学部 市場戦略学科 教授 サステナブル・ブランド国際会議 アカデミックプロデューサー
2008年より駒澤大学経営学部 市場戦略学科教授。山梨県産業振興ビジョン策定委員会委員、山梨県新しい都市づくり委員会委員、NPO やまなしサイクルプロジェクト理事長などを歴任。日本マーケティング学会サステナブル・マーケティング研究会リーダーを務める。2022年度・2023年度は、デンマークのAalborg大学で客員研究員として在籍。

 

サステナブル・ブランドジャパンとランキングの背景

Sustainable Brands About

出典:Sustainable Brands「About Sustainable Brands」

SB(Sustainable Brands)とは?

SBとはどのような組織ですか?

青木教授 SBとは、2006年に米国で生まれた、グローバルコミュニティです。「サステナビリティ」をビジネスに取り入れ、企業の競争力とブランド価値を高める活動を推進しています。

青木教授のSBとの関係性を教えてください。

青木教授 私は2011年、米国カリフォルニア州モントレーで開催されたSBの会議に参加しました。当時、日本におけるサステナビリティに関する取り組みは、セミナーや講演会中心であったのに対し、米国でのSBの会議は参加者同士のグループワークや交流、コミュニティ形成を重視しており、その熱意に強い感銘を受けました。そこでは、サステナビリティで市場を席巻し「デ・ファクト・スタンダード(事実上の標準化)」を取ろうという意欲を強く感じました。

この経験から、日本でもSBの取り組みを行わなければならない、という強い思いを抱き、SBの創設者であるコーアン・スカジニア氏に直接交渉し、日本でも実施する運びとなりました。

私は現在、サステナブル・ブランド国際会議のアカデミックプロデューサーとして、SB Japanが実施するメディア事業やイベントなどに関わらせていただいています。

SB Japanと企業ランキングを実施している背景・目的

SB Japanの活動とJSBIを実施する背景、その目的について教えてください。

青木教授 SB Japanは、国際会議や地域イベントなどの「イベント事業」、記事配信を行う「メディア事業」、企業や若者などのフォーラム会員による「コミュニティ形成」、そしてJSBIのような「サービス事業」(ブランド構築ワークショップなど)の4つの柱でサステナビリティ推進に取り組んでいます。

そして、SB Japanの活動の一環として、企業がサステナビリティへの取り組みを可視化し、消費者からの評価を得るための基準としてJSBIランキングを実施しています。

※SB国際会議については、「リジェネラティブな社会を目指して、サステナブル・ブランド国際会議2025に出展」にて詳しく解説しています。

「可視化」される企業のサステナビリティ

ビジネス・サステナビリティ

企業を評価するうえで、ランキングの役割や意義をどのようにお考えですか?

青木教授 近年、企業におけるサステナビリティへの関心はますます高まっており、これに伴い、企業のサステナビリティへの取り組みを評価する新たな指標の必要性が増しています。

もちろんISSB(International Sustainability Standards Board)などの「デ・ジュール・スタンダード(法的な標準化)」があり、これらは欧州がルール・メーカーとなって進めています。また、これまでも日本企業のCSR活動に関するレポートやブランド調査は存在しましたが、これらは主に専門家による評価や企業認知度に基づくものであり、生活者の視点から企業がサステナビリティにどのように取り組んでいるかを評価する明確な基準はありませんでした。そこで、生活者の視点を組み込んだ、JSBI(サステナブル・ブランドジャパン・インデックス)が2020年に生まれました。

JSBIは、企業の環境・社会に与える影響に対して生活者の意識が高まる中で、企業評価の重要な指標となります。また、企業にとっては、自社のサステナビリティ活動が生活者にどのように認識されているかを知るためのKPIとしても活用できます。

JSBIのような評価軸が提供されることは、企業が自社の取り組みを客観的に把握し、改善していく上で大きな意義を持つでしょう。

2023年から上位ランクインした三井化学の事例

JSBIにおける企業の選定基準

JSBIではどのような選定基準で企業を評価していますか? 

青木教授 JSBIでは、企業がサステナビリティ領域における生活者の評価を上げるヒントを探るため、一般的なブランド調査や企業報告書に基づく評価とは異なり、生活者の視点からの評価基準の提供を目指しています。

選定基準の概要は以下の通りです。

  • 「企業のサステナブルイメージ」
    当該企業を知っている生活者に対して、その企業がサステナビリティにどれだけ貢献しているかについて、100点満点で評価してもらう「イメージ得点」で算出しています。一企業につき約300人が評価に参加しています。
  • SDGs評価得点」
    SDGs17
    の目標を30項目に変換し、以下の2つの軸で評価します。
    • サステナビリティのアクションの「重要度」:特定の各アクションが、当該企業にとってどれだけ重要だと生活者が考えているか(全企業共通)。
    • 企業評価」:当該企業がそのアクションをどれだけ実行していると生活者が認識しているか。

この「重要度」と「企業評価」を掛け合わせることで、SDGs評価得点」を算出します。この評価構造により、「知名度が高い企業が必ずしも上位にランクインするわけではなく、生活者が求めるサステナビリティに対応できている企業がランクインする」という特徴が生まれています。

2023年と2024年の順位傾向

JSBI 2024 Ranking TOP100

出典:JSBI「JSBI 2024 Report(速報版)」p.12

2023年から2024年にかけて、大きく順位を上げた企業にはどのような特徴がありますか?

青木教授 2024年のJSBIランキング上位企業は、サステナブルな活動を消費者に効果的に届けることで、プレゼンスと信頼性を高めている特徴が見られます。

三井化学株式会社の事例

例えば、BtoB企業である三井化学は2022年は調査対象外でしたが、2023年に10位、2024年に12位にランクインしました。通常はBtoCの製造業や小売業が上位を占める傾向にある中、化学メーカーというBtoB企業が上位に入るのは異例です。トップ20にランクインしたことは、従来のマス広告ではなく、業界セミナーやオウンドメディアなどを通じた特定の層への深く濃いコミュニケーションが奏功した結果だと推察しています。

多くの化学メーカーが自社メディアでのリーチに苦戦する中、三井化学では「BePLAYER®/RePLAYER®」といったコミュニケーションブランドの展開で高いエンゲージメントを獲得している印象です。知っている人は限られるものの、知っている人からは非常に高い評価を得るという、ニッチながらも強力なブランディングを築いています。広く浅い認知ではなく特定のターゲット層に対する深い理解と共感を呼ぶコミュニケーションがうまく作用している例と言えるでしょう。

参考)
BePLAYER®/RePLAYER®ブランドサイト
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/index.htm
オウンドメディア「素素」
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/soso/
RE:CLIMATE」地球再生バラエティ(4本の動画で三井化学協賛)
https://www.youtube.com/@RECLIMATE

王子ネピア株式会社の事例

また、2023年の8位から2024年に2位へと大きく躍進した王子ネピアは、製品の根源的なアイデンティティとサステナビリティをうまく結びつけたコミュニケーションを行った結果、消費者の共感を呼ぶことができた事例だと考えています。

紙・パルプ業界は、1970年代から排水・匂い・ヘドロなどの問題に取り組み、古くから新聞やちり紙交換といった社会システムとしてのリサイクルを構築してきました。歴史的にサステナビリティへの取り組みが根付いていることが、消費者に「紙がどこから来てどこへ行くのか」というストーリーとして伝わり、高い評価につながっています。

化学業界も以前から公害問題に取り組み、経団連の「低炭素社会実行計画」の下、紙・パルプ業界と同時期にカーボンニュートラル宣言を行っていますが、素材転換や資源循環による「サステナブルな素材の価値」が生活者にうまく伝わっていない側面があります。そういった意味では、個社だけではなく業界として「素材」のストーリーの発信を強化していくことも重要だと思います。

2023年と2024年の結果を比較して見えた特徴とは

2024年の結果から、注目したテーマや時代の変化を感じさせる評価傾向があれば教えてください。

青木教授 先ほど申し上げたように、生活者に密接なBtoCの製造業や小売業がランキングの上位に入る傾向がある中、2023年と比較した際、2024年のランキングの上位には、住友林業やクボタといった企業がランキング上位に入っている点は非常に興味深かったですね。

今回、このようなBtoB色の強い企業が上位に位置した背景には、生物多様性への消費者関心の高まりが影響しているのではないかと考えています。

例えば、海外ではペプシコーラでお馴染みの米ペプシコ社が、ポテトチップス用のジャガイモ生産においてリジェネラティブ農業に取り組んだ事例が話題となりました。

また、2025年の大阪万博の「いのち輝く未来社会のデザイン」においてもグリーンや水、農業や食、さらに藻といった要素が重視されるなど、自然の力や生態系の「再生」の価値観が求められるようになってきたと感じます。そして、消費者がSDGsの特定の領域(資源、エネルギー、海洋問題など)を重視しているため、その貢献度がランキングで評価されています。

サステナブルな活動を、ブランド価値につなげる。

企業に対する消費者の期待と評価のギャップ

JSBI 2024 Report_生活者が企業に期待する「SDGs17目標」とそれに対する評価

出典:JSBI「JSBI 2024 Report(速報版)」p.31

JSBIから見えた、企業のコミュニケーションのあり方に対する課題はありますか?

青木教授 多くの企業が気候変動対策としてカーボンニュートラルに取り組んでいるにもかかわらず、SBの調査では、企業の具体的な取り組みがまだ十分に認知されていないという「ギャップ」が見られます。生活者は気候変動やプラスチックごみといった課題を身近に感じている一方で、企業の取り組みが自身の生活とどうつながるのかがイメージしづらく、行動に結びついていない現状が読み取れます。例えば、地球温暖化が進行する課題対し、手持ち扇風機や首掛け保冷剤を買うという“適応”のための対策はしても、温室効果ガス排出量の削減につながるバイオマス素材を使用した環境配慮型製品を選択するなど、地球温暖化を解決するための根本的な“改善”の行動まで想像が至っていない状況にあると言えます。

そのため、企業が生活者のサステナビリティ評価を向上させるには、「実直な取り組み」だけでは不十分であり、生活者の肌感覚に響く「具体的なストーリーと対話型コミュニケーション」、そしてそれらを支える「一貫した実行力」が必要です。これこそが、生活者の共感と信頼を獲得し、今後の企業価値を決定づける鍵となるでしょう。

広報活動を超えたインタラクティブなコミュニケーション

上位にランクインした企業に共通する、コミュニケーションのあり方について教えてください。

青木教授 先ほどもお伝えした通り、企業がサステナブルな活動をブランド価値につなげるには、単なる広報活動にとどまらず、具体的な実行力、一貫した取り組み、そして消費者とのインタラクティブなコミュニケーションが不可欠です。

JSBIの過去5年間のデータ分析からは、継続的な努力やコミュニケーションによって評価を向上させている企業がいる一方、不祥事などが起きた際にコミュニケーション対応が不十分な企業は評価が急落することが明らかになっています。

これは、企業が常に誠実で一貫した姿勢を示し、危機管理におけるコミュニケーション能力を高めることの重要性を示しています。デンマークの海運・物流企業であるマースク、欧米の化学企業であるBASFやダウケミカルなどの海外企業はSNSを巧みに活用し、広範なステークホルダーとのインタラクティブなコミュニケーションを行っているのに対し、日本企業はまだそうした取り組みをあまり目にしません。日本企業も真面目にサステナビリティに取り組んでいますので、いかに生活者へのコミュニケーションの量や質を上げるかが鍵となりそうです。

企業評価の潮流と今後のブランディング戦略

青木教授

最後に、サステナビリティに関する活動をブランド価値につなげようと取り組む企業へ、エールや示唆をいただけますか?

青木教授 日本の企業は、サステナビリティへの取り組みにおいて、「デ・スプリタス・スタンダード(精神的標準)」に基づいた非常に実直で真面目な姿勢を持っています。例えば、もったいないやおかげさまの精神、ミニマリストや整えるなど、これらは素晴らしい考え方です。しかしながら、その真摯な取り組みを社会へ効果的に伝え、ブランド価値に転換するためには、さらなる工夫が必要です。

例えば、一方通行のレポートやマスメディアに留まらず、SNSなどを活用したインタラクティブなコミュニケーションを強化することは、その工夫の1つでしょう。また、社会課題の解決は一企業だけで成し得るものではなく、組織や機関を越えた柔軟な連携や、NGO/NPOなどとの協働が不可欠であり、コミュニケーションに取り入れることも可能です。例えば、アディダスが海洋ごみを拾うNGOとコラボレーションし、回収した魚網からシューズをつくった事例は、非常に多くの注目を集めた好事例でしょう。社会善に取り組む団体を支援することで自社ブランドの評価へと繋げていったのです。

日本企業の取り組みの真面目さとは裏腹に、組織や機関の硬さが、柔軟性や新たな挑戦の機会を失わせている可能性も指摘されています。しかし、日本企業が持つ「デ・スプリタス・スタンダード」という良い心構えを基盤に、「何をするか」だけでなく、「誰に、どう伝えるか」という視点、そして時代の変化を捉え、自社の強みをサステナビリティと結びつけて効果的に伝える戦略が、今後の企業評価とブランド価値向上において不可欠となるでしょう。

三井化学では、「世界を素(もと)から変えていく」というスローガンのもと、
バイオマスでカーボンニュートラルを目指す「BePLAYER®」、リサイクルでサーキュラーエコノミーを目指す「RePLAYER®」という取り組みを推進し、リジェネラティブ(再生的)な社会の実現を目指しています。カーボンニュートラルや循環型社会への対応を検討している企業の担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

「BePLAYER®」「RePLAYER®」
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/index.htm

<公開資料:カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー関連>https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/soso/whitepaper/

 

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