- サステナブルな未来
リジェネラティブな社会を目指して、サステナブル・ブランド国際会議2025に出展
2025年3月18日・19日に、東京国際フォーラムで開催された「サステナブル・ブランド国際会議2025」に、三井化学が参加しました。本イベントでは、毎年、サステナビリティをけん引する企業・団体などが集い、ベストプラクティスの共有や取り組みのシェアなどが行われます。当日はどのような展示やディスカッションが行われたのでしょうか。三井化学をはじめ、個別ブースを出展する企業様へ取材しましたので、その様子をお届けします。
執筆:株式会社メンバーズ
サステナブル・ブランド国際会議とは
グローバルに活躍するサステナビリティのリーダーが集い、持続可能性を議論しネットワークを広げる場として、世界10か国で開催されている「サステナブル・ブランド国際会議」。CSR/サステナビリティ部門だけでなく、マーケティングやブランド戦略、事業開発、サプライチェーン・調達、人事管理など多彩な部門からの参加者が集い、企業、国を超えて、共通のテーマでディスカッションできる場となっています。
日本では2017年3月に初開催され、日本開催9回目となる今回は「Breakthrough in REGENERATION」をテーマに、2025年3月18日・19日の2日間にかけて東京国際フォーラム・明治安田ヴィレッジ 丸の内で開催されました。
グローバル化する社会課題に対し、自然との調和の中でビジネスと社会が繁栄できるよう、ローカルレベルでの継続的な取り組みに、さらなる革新が求められています。その中で、リジェネラティブ(再生的)な社会の実現に向け、サステナビリティに関与する企業や団体などが集い、活発な議論や交流が行われました。
サステナブル・ブランド国際会議のプロデューサーである青木茂樹氏に、開催の狙いを伺いました。
青木教授 サステナブルな社会へ向けて、国際的なルールや基準によって方向づけする道もあれば、パーパスを掲げて推進する企業や、ビジネスチャンスとして市場参入する企業もあります。
サステナブル・ブランド国際会議では、サステナブルな社会の実現に向けて、いかに生活者を巻き込んで企業が行動すべきかを議論しています。企業が市場創造し、生活者がこれに共感することで、本当に社会のエンジンは動き出すのではないでしょうか。
本会議では毎年の世界共通テーマが掲げられますが、今年は「Breakthrough in REGENERATION」とし、「再生」という言葉の意味やビジネスでの展開可能性を議論しました。なお、来年は「Adapt and Acceleration」の予定です。
※SB Japanの生活者によるサステナビリティ評価ランキングについては、「サステナビリティ活動は、企業価値につながる?SBランキングに見る生活者視点の企業評価の潮流」にて詳しく解説しています。
「世界を素から変えていく」を伝える三井化学のブース展示とは
昨年に続き2回目の出展となった三井化学。
材料・物質の革新と創出を通じ、豊かで快適な暮らしを100年以上にわたり支えてきた素材メーカーですが、さらに次の100年に向け、さまざまな社会や地球の課題に正面から対峙し、豊かで快適な暮らし、環境と調和した暮らしを支え続けるため、脱プラならぬ“改プラ”を進めています。
また、「素材の素材まで考える」「世界を素(もと)から変えていく」をキーメッセージに、バイオマスでカーボンニュートラルを目指す「BePLAYER®」、リサイクルでサーキュラーエコノミーを目指す「RePLAYER®」という2つのコミュニケーションブランドを展開し、あらゆる人を“プレイヤー(PLAYER)”として巻き込みながら、リジェネラティブ(再生的)な社会の実現を目指しています。
今回の展示に関して、三井化学 グリーンケミカル事業推進室の油井さんと藤本さんに、出展背景や展示内容に関してお伺いしました。
三井化学 グリーンケミカル事業推進室 油井さん(左)、藤本さん(右)
サステナブル・ブランド国際会議に出展された背景を教えてください。
油井さん 今回は、昨年に続き2回目の出展となります。サステナブル・ブランド国際会議は有料のイベントであることもあり、毎年参加される方々の環境への意識の高さを感じます。また、各企業様の上層部の方がいらっしゃることも多いため、こういった場で当社の取り組みを紹介することで、特に知ってもらいたい方々に情報を届けることにつながっていると感じています。
藤本さん 参加される方々は、企業のブランディングなどを担当され、普段から企業のパーパスを発信されているような方が多い印象です。お互いに同じような役割を担っているからこそ、短い時間で深く理解いただけることが多いと感じています。
今年はどういったテーマでブースを出展されていますか。
油井さん 今年は、三井化学におけるグリーンケミカルのキーメッセージである「世界を素(もと)から変えていく」を、わかりやすく伝える展示をご用意しました。
来場された方々に、三井化学の取り組みを知ってもらい、原料を転換することでなぜ世界を素から変えていくことができるのか、そしてそれらのアプローチの重要性を理解していただけるような展示にしました。また、素(もと)から変えていくスキームをイラストで描き、その起点となる廃食油などからつくられる「バイオマスナフサ(バイオマス由来の炭化水素)」や、廃プラスチックを熱分解した「廃プラ分解油(廃プラ由来の炭化水素)」の実物を置くことで、より視覚的にも伝わりやすいようにしました。
三井化学の展示台
藤本さん カーボンニュートラル社会の実現のため、プラスチックの原料を石油由来からバイオマス由来に転換していく取り組み(左側)と、廃棄プラスチックを資源としてリサイクルすることでサーキュラーエコノミーを実現する取り組み(右側)の両輪を回していくことが重要です。最初の製品製造では温室効果ガス(GHG)排出量削減効果の高いバイオマスプラスチックを採用し、使用後の廃プラスチックはリサイクルして資源を循環させる。そのようなバイオ&サーキュラーな世界にしていくことが、サステナブル(持続可能性)を超えたリジェネラティブ(再生的)な社会の実現につながると三井化学は考えています。
バイオマス化やリサイクルなどの取り組みは、製品の環境価値向上の他に、企業活動のどのような側面に貢献できるのでしょうか。
油井さん 世界的に企業の温室効果ガス(GHG)排出量開示義務化の動きが本格化していることを背景に、GHG排出量削減の取り組みにより実効性が求められています。自社の企業活動に伴う直接/間接排出であるScope1・2だけでなく、サプライチェーン全体が関係するScope3のカテゴリ別排出量の開示も必須となってきており、今後はいかに効果的にScope3の削減を実現出来るかが大きなカギを握っています。
多くの企業のScope3においては、カテゴリ1(購入した製品・サービス)もしくはカテゴリ11(販売した製品の使用)におけるGHG排出量が占める割合が大きいですが、バイオマスプラスチックやリサイクルプラスチックを活用することで、カテゴリ1のGHG排出量を削減できます。
ただ、これまでのバイオマスプラスチックでは、ポリ乳酸に代表されるように、従来の石油由来のプラスチックと全く分子構造の異なるものが多く、そのラインアップも限られます。そのため、品質や機能の面から、バイオマスプラスチックへの転換が進みにくい状況がありました。
そこで、三井化学は「世界を素(もと)から変えていく」をコンセプトに、2021年12月から、化学産業の心臓部であるナフサクラッカー(分解装置)に、「廃食油」や「食用油を製油する過程で発生する廃棄油・残渣油」などの非可食由来の有機性廃棄物を原料としたバイオマスナフサ(バイオマス由来の炭化水素)を日本で先駆けて投入し、そこから製造されるあらゆる化学品(プラスチックなど)をバイオマス化する取り組みを進めています。また、2024年3月からは廃プラスチックを熱分解した廃プラ分解油(廃プラ由来の炭化水素)も同じくナフサクラッカーに投入し、ケミカルリサイクル由来の誘導品(化学品・プラスチック)の製造・販売も開始しています。
この「素(もと)から変える」アプローチでは、炭素原子(C)と水素原子(H)の由来を石油からバイオマスやリサイクルに転換しています。由来が変わるだけなので、物質としては全く変わりません。そのため、このアプローチで供給されるバイオマスプラスチックやリサイクルプラスチックの物性は、従来の石油由来のものと全く同等でありながら、ライフサイクルでのGHG排出量を削減できます。
現在、製品に使用されている素材をお客様と一緒に見直していくことで、バイオ&サーキュラーのメビウスの輪をうまく回し、Scope3の削減にも貢献しながら、リジェネラティブな社会を実現していきたいと考えています。
参考)https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/
GHG排出量削減のさらに先へ。貝印のサステナビリティを伝える展示とは
今回の出展の背景や展示でお伝えしている内容について教えてください。
消費者の意識やサステナブルな取り組みをしている企業・団体様と一緒に取り組みをしたいという想いから、サステナブル・ブランド国際会議への出展しており、今年で4回目の出展となります。
貝印ではサステナビリティに関する取り組みとして、自社での再エネ利用や社用車を環境負荷の少ない車種に段階的に切り替える取り組みなどを行っています。こうしたScope1、2におけるGHG排出量削減の取り組みにとどまらず、バイオマス素材や再生材を用いた商品開発といったScope3の削減に向けた取り組みも進めています。バイオマス素材を用いたヘアゴムについては、すでに販売も開始しました。
展示の様子
さらに再生材を用いた商品開発としては、ペットボトルキャップ由来の再生プラスチックを利用したツメキリやハサミなどの生産実証も始めています。回収、分別、ペレット化、製造と複数の工程を要するため、コスト面での課題はありますが、サーキュラーエコノミーの実現に向けて必要な取り組みだと感じています。
参考)https://www.kai-group.com/news/id/4569/
ペットボトルのサステナブル化に向けて、サントリーの展示とは
今回の出展の背景を教えてください。
サステナビリティに関する日本最大規模のイベントということもあり、サステナブル・ブランド国際会議には第1回から参加しています。当社の活動の発信のみでなく、他企業の取り組みを知り、サステナビリティに取り組む企業や団体の方と実際に会って情報交換ができるとてもよい場だと感じています。
今回の出展のテーマや内容について教えてください。
ペットボトルは悪(あく)と思われがちですが、ちゃんと回収すれば資源として再利用することができます。現時点ではペットボトルに対してネガティブな印象を持っている方が多いと考え、今年はポジティブに伝えるべく、当社のCMでも登場する「リサイクルボックス」と「ペットボトルポスト」を展示し、ペットボトルのサステナブル化に向けた取り組みを紹介しました。
展示の様子 左:リサイクルボックス、右:ペットボトルポスト
また、ペットボトルのサステナブル化を目指し、進めている取り組みの1つがペットボトルの水平リサイクル「ボトル to ボトル」です。日本のペットボトルの回収率とリサイクル率は世界的にも高い水準にありますが、回収したペットボトルから実際にペットボトルになる割合は3〜4割程度にとどまっています。再度ペットボトルにするには、キャップ、ボトル、フィルムの分別や、ペットボトルの中にごみを入れないなど、不純物が混ざらないようにする必要があります。さらに「ボトル to ボトル」の割合を高めていくためにも、引き続き生活者とのコミュニケーションを積極的に行っていきたいと考えています。
参考)https://www.suntory.co.jp/company/csr/env_circular/recycle/
展示テーマは「Breakthrough」。“年表”で示す、生活者に寄り添う花王の革新の歴史とは
今回の出展の背景と展示内容を教えてください。
ESG戦略に舵を切った際に、さらに社内外とコミュニケーションをとっていく必要があると考え、サステナビリティに特化したコミュニケーションの場を探し、サステナブル・ブランド国際会議への出展をはじめました。
これまで数回出展させていただいていますが、今年はサステナブル・ブランド国際会議のテーマである「Breakthrough」に合わせて、過去に花王がどのようなブレークスルー、つまりイノベーションを起こしてきたか、年表を通してわかる展示ブースにしました。
展示の様子
たとえば、ESGの「E(Environment)」に該当する環境の取り組みに関したイノベーションの1つとして「容器の開発」があります。プラスチック使用量を削減するため、パウチ型の商品開発などが該当しますが、たとえ企業が環境に良いものを開発したとしても、生活者の協力なしではサステナビリティは進みません。生活者に負担をかけて環境への取り組みを進めるのではなく、「いかにだれでも楽で簡単にできるか」を考えて開発を進めています。
また、安全面からパウチにできない詰め替え商品では耐久性や安全性をクリアしながら、いかにプラスチック使用量を減らすかを検討し、商品開発をしています。たとえば、「ecoペコボトル」については、従来よりプラスチック使用量を40%削減し、かつ「ペコっ」とラクにつぶせて捨てやすい設計となっています。
出典:花王株式会社「『キュキュット 未来にecoペコボトル』新発売」
当社ではプラスチックの利用については、リデュース(減らす)、リプレイス(置き換える)、リユース(再利用する)、リサイクル(再資源化する)といった4Rの視点から推進しており、現在は先ほど紹介したような、包装容器を薄くしたり軽量化することによるプラスチック使用量の削減である「リデュース(減らす)」や生活者のみなさんが容器を繰り返し使用できるようつめかえやつけかえ用の製品を開発することにより「リユース(再利用する)」を行っています。
今後は、「Reduce(減らす)」「Reuse(再利用する)」にとどまらず、プラスチック包装容器に再生樹脂を導入することで「リサイクル(再資源化する)」の推進や、石油由来のプラスチックから植物由来など再生可能な原料への転換を進める「リプレイス(置き換える)」も進めていきたいと考えています。
2025年のサステナブル・ブランド国際会議を振り返って
さいごに、今年のサステナブル・ブランド国際会議についての感想を青木教授にお聞きしました。
「サステナブル・ブランド国際会議2025」の企業ブースの出展をご覧になって、いかがでしょうか。
青木教授 2日間で延べ5,000名が集まるサステナブル・ブランド国際会議のアクティベーション・ハブ(展示会場)。今年も、サステナビリティへの取り組みを紹介したい企業と、これらを知りたい人々の交流する機会となっていることを実感しました。自社のサステナビリティをさらに前進させたい企業が、ほかの企業と直接対話する機会となるだけでなく、NPO・NGO、生徒や学生、教育関係者と多彩なステークホルダーが立ち寄ることもあり、様々なコラボレーションのきっかけとなったと聞いています。
今後のサステナブル・ブランド国際会議に期待すること、企業の皆様へのメッセージをお願いします。
青木教授 トランプ政権となり、サステナビリティの進捗にかげりが見えるのではないかや、世界が保護主義化し、国際協調が崩れる傾向にあるという意見があります。
では現在の温暖化や貧困や飢餓への対応策もなく、これまでのビジネスの方法のままで良いでしょうか。今、大阪・関西万博では「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマで158カ国や国際機関、企業が様々にサステナブルな未来社会を描いており、もはや逆行することはないと感じます。
サステナビリティは一直線に到達できるものではなく、Adapt and Accelerationを繰り返しながら漸次進んでいくことかと思います。来年も世界(Global)から地域(Local)までの知恵と汗を集めます。ぜひご期待ください。
三井化学では、「世界を素(もと)から変えていく」というスローガンのもと、 <「BePLAYER®」「RePLAYER®」>https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/index.htm |