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モデルや女優として活躍する長谷川ミラさん。ALL GENDER向けのファッションブランド運営、環境問題のイベント企画や社会問題についてのコミュニティを運営するなど幅広い活動を展開されています。最近ではZ世代を代表するSDGsオピニオンリーダーとして各メディアにも多く登場されています。そんな長谷川ミラさんに素材の展示会「MOLpCafe2021」にご来場いただきました。一体どんな感想を持たれたでしょうか。
取材・執筆・撮影・編集:MOLpおじさん
長谷川ミラ(以下、長谷川):モデルとラジオのナビゲーターをさせていただきながらファッションブランド「JAMアパレル」とファッション × 社会問題について取り組んだり、ディスカッションするコミュニティ「mimo」の運営をしています。
4年ほど前にロンドンの美大に留学していたのですが、イギリスってエコ大国でも知られていて当時からレジ袋税があったり、みんなマイボトルを持ち歩いていたり、カフェにふらっと入った時にも社会問題についてカジュアルに話してる人が多く、そうした光景がもっと日本でも起きたらいいなという思いから、社会問題について興味を持ち、SNS等での発信を始めました。
MOLpチーム(以下、MOLp):最近気になる環境問題は何ですか?
長谷川:天気・天候ですね。
寒暖差が激しかったり、この時期にこんな気温!とかすごい雨!みたいな。
日本だけじゃなくて世界各地で報道されてるので気になってますね。
MOLp:プラスチックにどんなイメージをお持ちでしょうか?
長谷川:私は正直、全然プラスチックに悪いイメージをもともと持っていなくて、自ら取材したりリサーチしていくとプラスチックは悪ではないと感じていて。
リサイクルもできるし、サステナブルな素材もあったりと感じ始めているところで、一概にエコバッグとかマイボトルとかはどうなのかなって思い始めてるフェーズにいます。
ただプラスチックがポイ捨てされた場合とか、たまたま落ちてしまった場合に、もし川とか海にたどり着いてしまったら、海洋ゴミとなって生態系に影響が出ることもあるので、そのバランスはすごく難しいと思ってます。
例えば化粧品のように、そもそも最初から長く使う目的のものはプラスチックでいいんじゃないかなと思っていて、それが壊れた場合にリサイクルできればいいと思います。
ただ、ストローとかゴミ袋とかコンビニで買えるものはポイ捨てされそうなイメージがあるので、コンビニにあるものが海洋汚染につながらない素材になったらひとつ大きなアクションになるのかなと考えています。その辺りはすごく気になりますね。
MOLpCafé2021の展示コンセプト「ネオプラスティシズム」
長谷川:こんにちは、長谷川ミラと申します。
今日はどんな展示を?
MOLp:三井化学と言う会社のMOLp(モル)という部活のような活動なのですが、素材の魅力を見いだして世の中に発信していこうという活動の発表の場になります。
今回のコンセプトはネオプラスティシズム。
言葉の間にプラスチックという単語がちょうど入っているんですね。
長谷川:本当ですね、ここに分かりやすく書いてますね。
MOLp:プラスチックと大量生産というのは時代を共にしてきたものです。プラスチック自体、大量生産のために生まれたような素材なので、そういう意味でも豊かさの開放に向けて一緒に時代を歩んできたものになります。
ただ、これからサステナブルな社会に変わっていくタイミングにあり、僕ら素材屋としても考え方を変えていかなくてはいけないし、具体的な行動に落とし込んでいかなくてはいけないということで、もう一度、素材と大量生産を見直そうということを自分たちの中で議論してきました。
RePLAYER
素材屋が考えるアップサイクル
見立てを変えることで価値を生む。
素材を知っているからこそ、その素材特性を生かしたアップサイクルプロジェクトを提案。
今回のRePLAYER-Flecon Tote Bagには、ひとつひとつにブロックチェーンが発行されている。
スマホで所有者の履歴が読み取れるので、持ち主が変わっていっても所有者の履歴が残ると、バッグのストーリーが物語として紡がれていく設計になっている。
MOLp:一般的なプラスチックの原料というのは、お米みたいなつぶつぶ状なんです。
それを、あちらに見えるフレコンバッグというものに詰めて、だいたい1トン(1000キロ)詰めてお客様にお届けしています。
1000キロ詰めてお客様にお届けして、お客様が使い終わったら、それを回収して、中を洗って、破れていたりしたら修理して、また原料を詰めてお客様へお届けする。
それをだいたい15年間大切に使い続けているんですね。
15年使い続けた後、廃棄するんですけどもったいないんです。なぜなら15年使い続けても残存強度として70〜90%ぐらいあるので、1000キロの70〜90%なので全然700キロとか運べちゃうわけです。
それを活かしてまた改めてバッグなどを制作した物がこちらになります。
長谷川:このバッグはそういったアップサイクルされたものだったんですね。
かわいい~!
MOLp:ただ、もう少しデザインを入れたいなということも思いまして、じゃあ15年後に廃棄するということを考えた上で、あのフレコンバッグ自体をデザインし直そうと思い、実際にデザインし直した物があちらのフレコンバッグです。
長谷川:このフレコンバッグを使わなくなった時のことまで考えてる。これってなかなかできている会社さんいないんじゃないですか!?
MOLp:なにせ15年後のことなので難しいですよね。
実際にフレコンのデザインを変えて、アップサイクルした物がこちらです。
長谷川:すごいしっかりしてますね。
MOLp:こういうアップサイクルバッグって一般的に塩化ビニルという素材が使われるケースが多いんですよ。だけどこちらはEVAという素材なのでめちゃくちゃ軽いんですね。
素材自体だけで40%軽くなります。
ですので、大きなサイズのものでもすごく軽く作れるっていうのが一番のポイントですね。
プラスチックのリサイクル
MOLp:三井化学では、廃プラをケミカルリサイクルして、また原料に戻すプロジェクトも進めています。
リサイクル品が必然的に社会に増えていくということができたらなと思ってます。
MOLp:いろいろなものが混ざった状態。例えばポリエチレンとポリプロピレンのところにPETが入ってきたりするとケミカルリサイクルする際に配管を詰まらせるとかいろんな問題がある。
プラスチックもいろいろな素材があるから、それらが混ざって出てくるので非常に難しかったりするんですね。
長谷川:ゴミ処理施設に見学、何度か個人的に行ったことがあるんですけど、やっぱり今でも人の手で分別してるのを見るとすごい胸が痛くなります。自分たちが最初から分別しておけば作業員さんとかも楽になるはずだし、税金だってそこにかけなくいいはずなのに。
MOLp:ヨーロッパの場合だと最初に初期分別させようって動きもあるし、アメリカの場合、全部一緒に捨てて機械で全部分別させる動きもある。後でやるか先にやるかというところ。この辺も国ごとによって考え方が違うんで動きが違うんですね。
NAGORI
海水のミネラルから生まれたイノベーティブプラスチック「NAGORI®」
今回は、更なるアップデートを行い、陶器だけでなく、大理石、石などの新しい質感に挑戦しました。
また、新たにNAGORIに抗菌機能があることを発見し、質感と抗菌性の価値が最大限発揮されるマウスを制作。
MOLp:海水中に含まれるミネラルって無尽蔵にあるんですね。それを使ってプラスチック加工できるように改質していったものがNAGORIです。
長谷川:確かに石を触った時のような冷たさは感じますね。重いってほど重くはないけどもプラスチックで感じる重さではないですね。
MOLp:プラスチックって軽いことがいいことではあるんですけど、逆にそれが大事にしてもらえない部分でもあるのかなと思って。少し重量感を出すというようなコンセプトで作ったものですね。
長谷川:軽さみたいなものも人間が大切にするかしないかみたいな部分に影響する。
言われてみればあるかもしれないですね。
プラスチックごみについて
MOLp:実は今、日本のプラスチックごみの排出量は、だいたい一人あたりミラさんも私も30キロ以上出していると言われています。ぜひ30キロ、その量がこれを持っていただくと分かるので。
長谷川:どれだけ重いか、プラスチックは軽いですからね~。
長谷川:全然上がらないんだけど!
MOLp:というぐらいプラスチックは軽いものだけど・・・
長谷川:こんなに重くなってしまうんですね。
MOLp:毎日使うようなパッケージ包装容器、それが非常に多いなという感じですね。
長谷川:大量生産のゴミですね。
MOLp:ただそれがあるからこそ、賞味期限がより長くなって、フードロスが大きく削減されているというメリットも大きいです。
また、マスクなど衛生的なものとかもまさしくそうですね。
そういうようなトレードオフがあったりするので、自分たちの中でどう折り合いをつけていくのか、それぞれが考えていくことが大事なのかなと思います。
長谷川:無駄なプラスチックとかそういう余分なものが減っていけばいいですよね。
長谷川:こちらの台の上には普段見たことがあるような。
MOLp:プラスチックごみって一言でいってもいろいろな素材があります。
だいたい日本で年間850万トンくらい廃プラスチックが出てると言われているんですけども、そういう中でもポリエチレンという材料とか、ポリプロピレンとかポリスチレン、塩ビ、PET(ポリエステル)というようにいろいろな種類があるんですね。
それぞれが一緒くたになっているっていう時にリサイクルしにくくなったりするんで、別々で本当は管理した方がいいんだけども、現実問題なかなかそうはいかないというところが現状ではあります。
長谷川:実はプラ一個では全然まとめられないよってことなんですね。
MOLp:PETなんかはペットボトルというような形でありますから分かりやすいので、これだけで回収されるというような仕組みにはなっている。
長谷川:ただPETでもこの中にポリエチレンがキャップとリングについてますので分別が必要ですね。
MOLp:PETボトルに関しては、実際は破砕したあとでPETは重いので水に沈む、ポリエチレンは軽いので水に浮く、それで分別して現場レベルのところでは最後分別されているので大丈夫ではあるという感じです。
MOLp:ここにあるように、本当にいろいろな材料が捨てられている状況にあります。
他に課題としては、複合された材料が多いことです。例えばこれだったら紙とポリエチレンというのが複合されているわけですね。こういうボトルだと5層になっています。
例えばこのフィルムは、PET、PEと表記されています。
こういうものはフィルムの表面側がPETで下側がポリエチレンというような2層になっているんですね。
また、パッケージって印刷もかけますので、そういう意味でも複層になっています。
ただ、この状態というのはマテリアルリサイクルには向かない。
実際は今、マテリアルリサイクルじゃなくて、サーマルとして熱で回収しようということで、これがそれを固めたRPFというものです。これが燃料として、鉄とか紙を作る時に燃料として使われています。
Vegan Down
フェイクって何だろう? 本物って一体なんだろう?
プラスチックだからこそできることもあるのではないだろうか。
三井化学ではこれまでにないふわふわの不織布によってエシカルなダウン代替素材を開発しました。
軽くて薄くて暖かく、アウトドアで重宝するダウンジャケットを提案。
長谷川:ここには思い切り最初から「フェイクって何だろう」、「本物って一体何だろう」って結構刺さるワードがあるんですけど。
MOLp:ここに展示しているようなダウンとかって、生きた水鳥から羽をむしり取って(ライブピッキング)血だらけになっているシーンって見るじゃないですか。
長谷川:今問題になってますよね。
MOLp:天然のものではあるんだけど、それが本当にエシカルなのかサステナブルなのかというと、そうではないような気がしていまして。それだったらこういうところをプラスチックに変えるという方がエシカルな方向性なんじゃないのかなと思ってます。
触っていただくとすごいふわふわで。世界で初めて成功したんです、このふわふわ感。
長谷川:そんなに羽毛と差はないんですか
MOLp:確かに羽毛、ダウンの方がやはり軽くて空気を含みやすいので暖かい部分はあります。
長谷川:でも充分補える。そんなに寒くないです!
質感研究の応用
MOLp:先ほど、素材キット「マテリウム」を見ていただいたんですけれども、質感を大事にする研究というのもやっていまして。それの応用が人の生活、人の命をどう守るかというところに貢献していたりするので、それを今回表現してみたものなんです。
長谷川:医療とかにも役立っている。
ちょっと目玉を触ってみますね。
目玉ってこんなプニプニなんですか!?
MOLp:その質感とはちょっと違いまして、メスで手術するときの質感を合わせたものです。
MOLpCafé2021を体験してみて
長谷川:化学ってすごく難しいっていうイメージで、私だけじゃなくて皆さんあると思うんですけども、今回の展示を見て、楽しいものなんだなって考え方が一変しましたね。
展示もすごく楽しかったですし、一つ一つの説明書きのフォントもすごいポップで、何かそういった部分も含めてすごいこだわりを感じて楽しく見学することができました。
MOLp:今回印象に残った展示はありかすか?
長谷川:どれも本当に印象に残ってるんですけども、やはり衝撃だったのが、元々プラスチックの粒を運ぶための袋(フレコンバッグ)が日常のバッグにアップサイクルされてる。
それだけじゃなくてそのアップサイクルされる未来のことを考えて、そもそものデザインを変えたっていうのは、何て言うんでしょう、作り手の思いというか、これからの時代どんどん作り手の責任になってくるのかななんて感じましたね。
何かプロダクトを作るときにこれを販売してこれを使って捨てるではなくて、その次のことまで考えるというのが、もしかすると次の時代の新しい価値観なのかなって可能性を感じました。
MOLp:プラスチックへのイメージは変わりましたか?
長谷川:もともとプラスチックに対して悪い印象はなかったんですけど、かといってすごく良い印象もなかったような気がするんですが、今日1日、お話を伺ってて、とにかく無限の可能性が詰まった素材なんだなって思いましたし、今私たちはこの地球上に生きててプラスチックなしで生きていくことはもう不可能だと思うので、どう共存していくか、そしてこの共存の仕方がはっきりと見えたような気がします。
日々研究してくださっている皆さんがいるおかげで、私たちの日常に落とし込んでくださっているのかなと感じましたね。
長谷川:感謝です!