そざいんたびゅー

廃棄服のアップサイクルに世界が称賛。
NewMakeの挑戦と素材への気づき

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日々の生活や仕事のなかで「素材」と向き合う人たちの考え方に触れる、連載「そざいんたびゅー」。今回取材に訪れたのは、2021年7月に原宿にラボをオープンし、クリエイターやファッション企業など、多方面から注目を集めているサステナブルなファッションコミュニティー「NewMake」です。

NewMakeは、B品や余剰在庫といったアパレルの大量廃棄が問題となっているファッション業界に対し、アップサイクルをつうじて循環型ファッションの実現を目指しています。そこから見えてきた、つくり手のクリエイティビティーや素材に対する発見、未来のファッションのあり方とは? ディレクターの吉村真由(よしむらまゆ)さんと、アーティストでNewMakeメンバーのアスキさんに話をうかがいました。

取材・執筆:宇治田エリ 写真:タケシタトモヒロ 編集:川谷恭平(CINRA)

「B品」や余剰在庫の服はどこに行く? 年間50万トンの服を廃棄する日本の課題

MOLpチーム(以下、MOLp):現在、日本でごみとして出される衣服は、年間50万トンを超え、再資源化される割合はわずか5%。残りの95%は焼却や埋め立て処分されています(※環境省サステナブルファッション https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/ )。ファッション業界は世界で2番目に環境負荷をかけている産業といわれ、ファッション業界への風当たりは強くなっていると思います。

そんななか、ファッションコミュニティー「NewMake」では、企業から廃棄品を受け取り、メンバーたちによるアップサイクルをつうじて、廃棄品に新たな価値を生みだす活動をしていますが、実際にどういった経緯で立ち上がったのでしょうか?

吉村真由(以下、吉村):NewMakeは、服をつうじて大切な思いと物語をまとう新たなコミュニティーとして、2021年に誕生しました。ファッション業界というのは、どうしても「B品」と呼ばれる販売できない不良品が出てしまう業界です。NewMakeを運営するSTORY&Co.の代表も、もともとニューヨークでアパレルブランドを展開していて、業界が抱える廃棄衣料の問題を目のあたりにしていました。

一方、私自身も衣装の企画・制作の仕事を過去にしていて、同様の課題感を持っていました。また、服飾系の方や服づくりに興味がある方だけでなく、アーティストや映像クリエイターなど、さまざまな人が集まり、可能性を広げていける場を求めていたんです。こうした2つの思いから企業やブランドの余剰品を使ってなにかできないかということでNewMakeは生まれました。

NewMakeディレクターの吉村真由さん

MOLp:どういったブランドや企業から、どのような協力を受けているのですか?

吉村:環境問題に対する課題感やクリエイター支援に共感いただいたブランドがほとんどで、B品や余剰在庫といった、やむなく廃棄されるアパレルを寄付いただいています。また、コミュニティーではメンバーが服づくりに取り組むので、制作に必要なミシンはブラザー工業さんからご提供いただいていますし、ボタンやファスナー、壁紙などの材料も、各企業からご協力いただいています。

New Balanceやブラザー工業をはじめ、さまざまなブランド・企業が協賛

MOLp:ブランドの服を変えていくことは、企業側からしたらブランドイメージに関わるような問題にもなると思いますが、どのように協力を得ているのでしょう?

吉村:たしかに、その点を心配される企業さんは多いです。だからこそ私たちは、各ブランドの思いをしっかり受け取り、それをメンバーに引き継いだうえで制作を進めてもらっています。そうすることで、単なるリメイクではなく、ストーリー性を持ったアップサイクルにつながるコラボレーションになると、企業側からもご理解いただいています。

NewMakeで行われたスニーカーのアップサイクル企画「100sneakers100NewMakers」のグランプリ作品

コミュニティーはアウトプットの場にも。服飾学生をはじめ、若手アーティストが参加

MOLp:ブランド側としても、同じ思いを共有できていると思うと安心感がありますね。一方でアスキさんはコミュニティーのメンバーとしてNewMakeに参加していますが、どういったところに魅力を感じて参加されたのですか?

アスキ:ぼくは美大出身で、卒業後は若い美大生や若手アーティストたちの発表の場をつくるために、展示設営の仕事をフリーでしていました。自分の作品をつくることからは長らく離れていたのですが、一昨年くらいに体調を崩した際に自分を見つめ直し、ふたたび制作に立ち返ろうとドローイングをはじめるようになったんです。

アーティストのアスキさん。東京藝術大学卒業。ドローイングを通した意識の変容の研究や、新しいコミュニケーションの実践をするアート教室を主宰

アスキ:最近、世の中では、パンデミックによって崩壊したさまざまな仕組みが再生していく動きがありますが、アートにおいても同様のことが起きていて。これまでアート業界の関係者に握られていた、アートの根源的な楽しみ方が、ぼくたち一般の人の手のうちに戻り、みんなが表現者になる時代が訪れるんじゃないかと感じているんです。

そうなったとき、若い人たちと関わり合いながら、自分も制作して、迷っている人がいたら手を差し出し合えるような環境になっていればいいなと。そんなことを考えていた矢先に、NewMakeの立ち上げの話を知りました。

吉村:アスキさんが見学にいらっしゃった時期は、まだ初期の段階で、見学に来る方も服飾系の方がほとんど。これからいろいろな方に集まってほしいと考えていたタイミングだったので、アスキさんのようなアーティストに来ていただけたことは私たちとしてもうれしかったですね。

じつはNewMakeの壁なども、アスキさんにワークショップを考えていただき、みんなで描き上げたんですよ。

「みんなでコミュニティーをつくっていく」ことを店内のコンセプトにして、壁はあえて塗り途中のままに

廃棄服に息を吹き込むアップサイクル。意外性のある素材を使って生まれた制作物も

MOLp:現在、680名までメンバーが増えたそうですが、どういった人たちが参加しているのですか?

吉村:現在は5歳の子どもから、リタイアされた年配の方まで、職業のジャンルや経験を問わず、さまざまな人がコミュニティーに所属しています。「服づくりは難しそう」と感じていた方も、服に限らないさまざまな作品が生み出されていく様子をSNSやメディアで見て、「ここはいろいろとつくれる場所なんだ」とハードルが下がったんだと思います。

MOLp:この1年間で生まれた作品のなかで、印象に残るものはありましたか?

吉村:靴の専門学校に通う学生が制作したパンプスですね。一見、普通のパンプスに見えますが、良かったら触ってみてください。

スカートを立体的に見せるための「ダーツ」の膨らみをパンプスに採用

MOLp:あっ、ふかふかしていますね。新鮮な触感です。

吉村:じつはこれ、もともとは「NATURAL BEAUTY BASIC」から寄付していただいたタイトスカートなのです。先ほどお伝えしたように、まずはブランド担当者の思いを共有し、テーマを設定したうえでメンバーに制作していただくのですが、このときはブランドコンセプトでもある「ナチュラルでビューティーで、ベーシックなアイテム」というテーマでした。

このパンプスを制作した学生はタイトスカートのウエスト部分にある「ダーツ」という切り込みに注目し、その膨らみを表現したことで、ベーシックなパンプスでありながら、ふっくらとした素材の質感を感じられる新しい靴を生み出しました。

パイプ椅子の座面に「Coleman」のアウトドア用品を使った作品。制作者はこの作品をきっかけに自分のブランドを立ち上げたそう
広告代理店で新聞にかかわる人が制作した、新聞をプリントした布を貼ったスニーカー。NewMakeのコミュニティーで「生地にプリントしたい人集合」と呼びかけ、ブラザー工業のショールームで布への印刷体験をして生まれた
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