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「捨てるという概念を捨てる」。
Loopが切り拓くリユースの可能性

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資源の有効活用や地球温暖化を防ぐために行なっている「リサイクル」。環境に良いイメージがあるこの取り組みですが、じつは、すべてのリサイクルが環境に良いわけではありません。

たとえば、プラスチックのリサイクルには時間やコストがかかります。そのうえ、日本の場合はその大半がゴミを焼却する「サーマルリサイクル」という方法によるもの。バイオマスプラスチックとは異なり、石油由来のプラスチックの焼却は、CO2の排出を伴うので、欧州ではリサイクルに該当しないともいわれています。

日本において、本当の意味での「環境にやさしいライフスタイル」は実現可能か。地球への負荷を減らし、廃棄物を減らしていくにはどうすればいい?

そんな環境課題に向き合うべく、今回は循環型ショッピングプラットフォーム「Loop(ループ)」の日本代表を務める、エリック・カワバタさんにお話をうかがった。そこで語られた、「リサイクルの限界」や「リユースの可能性」とは。

※ 本記事は、2021年冬号として発刊された三井化学の社内報『MCIねっと』内の記事を、ウェブ向けに再編集して掲載しています。

取材:MOLpおじさん

牛乳配達がヒントに? リユースを可能な容器でプラスチック削減に貢献

MOLp:近年とても話題になっている「Loop(ループ)」ですが、まずはどのような事業なのか教えてください。

エリック・カワバタ:循環型ショッピングプラットフォーム「Loop」は、2019年にグローバルにリサイクルビジネスを展開するアメリカのソーシャルエンタープライズ「テラサイクル」が開始した事業です。

これまで使い捨てにされていた日用品や食品などの容器、商品パッケージを、ステンレスやガラスなど耐久性の高いものに変え、繰り返し利用を可能にする商品提供システムを築いています。

エリック・カワバタ(Loop Japan合同会社日本代表)

MOLp:使い終わった容器を回収・洗浄し、商品を充填して再利用するんですね。

エリック・カワバタ:そのとおりです。日用品・食品メーカーや流通会社とパートナーシップを結んで行なっています。

最近、あまり見かけないかもしれませんが、牛乳配達のサービスがありますよね。配達員がビンに入った牛乳を届け、飲み終えたら回収し、メーカーが再利用していく。至ってシンプルな取り組みですが、この過程ではパッケージのゴミはほとんど発生しません。

私たちはこのような「リユース(再使用)」可能な容器の活用が地球への負荷を減らすことができるのではないかと考え、そこから生まれたのが、循環型ショッピングプラットフォーム「Loop」です。

「捨てるという概念を捨てる」。リユースの新たな可能性に挑むうえで重要な姿勢

MOLp:日本での展開はどのような状況でしょうか?

エリック・カワバタ:もともとLoopは、2019年にアメリカでサービスを開始し、ヨーロッパなどにもエリアを拡大していきました。日本ではLoopのECサイトでの展開から開始し、2021年からは流通大手の「イオン」と組んで店頭販売を開始しています。

Loopの店頭販売は、東京・神奈川・千葉のイオン19店舗からスタートし、2022年現在は66店舗まで増加。今年中には、店舗、商品の種類ともに、さらなる拡大を目指しています。

MOLp:以前、エリックさんの外部での講演を聞き、そこで語られた「捨てるという概念を捨てよう」という言葉にはハッとさせられました。

エリック・カワバタ:Loopは一連のリユースの仕組みを築き、生活への浸透を目指しています。使い終わると捨てるのではなく、ものを長く使う考えにシフトしていく必要があると考えています。つまり、「捨てるという概念を捨てる」ことが重要なんです。

MOLp:Loopのサービスはどのように利用するのでしょうか?

エリック・カワバタ:Loopの利用方法は至って簡単です。まずリユース容器に入ったLoop商品を購入してください。

それをご家庭などで使いきり、容器が空になったら専用の回収バッグに入れて集荷依頼をかけてもらうか、イオンなどの店頭に設置された回収ボックスに入れて、専用アプリで容器返却の連絡をしていただきます。

商品購入時に支払ったデポジットの容器代は、容器を返却すると専用アプリを通じて返金される仕組みになっています。

「ロッテ」「エステー」、「キッコーマン」などさまざまな企業がLoopに参画
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社会を長い目で見るために。Loopのデザインに込められた思いとは?

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