PROJECT DIARY

『MOLpCafé2024』徹底レポート。
10年の活動でMOLpは何を得て、どう進化したか?

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取材・執筆:宇治田エリ 写真:佐藤翔 編集:生駒奨(CINRA)

「MOLpに憧れて入社する人も」。立ち上げメンバーが語る、MOLpの強みと独自性

会期中には、2015年にMOLpを立ち上げに関わり、現在は三井化学のグリーンケミカル事業推進室でサステナブルな取り組みを推進している松永有理さんも来場。同じく立ち上げからクリエイティブパートナーとしてこの10年間、伴走する田子學さんとともに、今回の『MOLpCafé2024』の感想やこれからの期待を聞いた。

松永:前回の『MOLpCafé2021』は、社会課題を起点とした「Neo“PLASTIC”ism」をテーマに、「脱プラスチック」ではなく「改プラスチック」を提案するというものでした。一方で今回は「祭り」がコンセプトに組み込まれていて、MOLpを立ち上げた当初、田子さんやメンバーと一緒に「素材の魅力ラボの名前のとおり、素材を楽しんでほしいね」と込めた想いが10年経って原点回帰した感じを受けました。内容も面白かったですし、メンバーのみんなが楽しんでいる姿が感慨深かったですね。

今回僕がとくに気に入っている作品は『SLOW VASE TECH』です。これは5年前に田丸雄一さんが茎の美しさに着目してデザインしてくださったものなのですが、実際に5年経った『SLOW VASE TECH』は、通常のウレタンとは異なりほとんど黄変しておらず、「STABiO™」の透明性、耐久性が証明されていました。これって、活動を長く続けてきたからこそできる展示なんですよね。

これからも田子さんに伴奏していただきながら、メンバーが義務感ではなく楽しさや想いにもとづいて動ける場として続いていってほしいですね。

『SLOW VASE TECH』

田子:10年も活動していると、ずっと考えてきたけれど当時は実現できなかったことが、いまだったらできるという状況が増えてくるんですよ。単発で考えると、その場でしか考えられなくなりがちですが、MOLpはずっと10年つなげてやってきた。その姿勢がすごく重要だと思っていて。

田子學さん

田子:たとえば『OLIOK』も、かなり前から人の体温で柔らかくなり、冷たくすると固くなるという「HUMOFIT™」の特性を使ってワインクーラーができないか」と言っていたことが起点となっていたりして。当時は製造方法をいくつか変えて何度かトライしてきていたが、担当者が変わったことにより、新しい見方と発想が重なって、ようやく形になった。それができたのは、諦めずに地道に活動を続けてきたからこそなんですよね。だから語れる部分が多いし、ストーリーに深みがある。

『TAMANE』の前身である『KODAMA』もMOLp2年目につくられたものですし、そこから「VISION HUB™ SODEGAURA」に音響開発チームが立ち上がって、いかに音として表現できるかという方向にも広がっていきました。さらに並行して3Dプリントの技術も進化していったことで、最終的に江戸風鈴ぐらいの大きさと形で気持ちいい音がつくれるところまで行き着いたんです。

そうやって山積したイノベーションの種を芽吹かせることができたのは、諦めずに違う目線で掘り返すということを続けていったからなんですよね。そこが今回の祭りというくくりのなかで、いいかたちで見えるようになったなと思っています。

田子:あくまでも「部活であること」を守ってきたことで、ありがたいことにこうやって皆さんのアイデアが形になって見せる場ができて、いろんな人たちに来てもらいました。実際に、MOLpの活動に憧れて三井化学に入社される人たちも、最近はすごく増えているんですよ。

僕は企業を変えるってこういうことだと思っていて。責任はあれど重たく感じすぎず、楽しみながら自分たちなりに未来を考えていくということを、これからもMOLpのメンバーと一緒にやっていきたいです。

閉場後に行なわれた秘密の夜会。エクスクルーシブなパーティーに潜入し、参加者に直撃!

会期5日目にあたる11月2日の夜のこと。来場者がいなくなった会場では、秘密裏に「あるイベント」が開催されていた。それは、MOLpの新旧メンバーやこれまでのパートナーなどの関係者のみが参加するアフターパーティーだ。

MOLpの活動の楽しさ・素晴らしさはもちろん、当事者だけが知る苦労やまだ明かせない未来の展望などがそこかしこで語られた。取材班はこのパーティーに潜入し、来場されていた関係者の方々にも、MOLpの魅力や今後に期待したいことなどを聞いてみた。

<来場者スナップ>

■名前
KINOKONEKO

■職業・肩書
高校生

■Q&A
Q1:好きな素材は?
A1:ABSORTOMER™

Q2:『MOLpCafé2024』で気になったプロダクトは?
A2:『SEXY321/摩擦上等仏恥義理飛車レース』

Q3:MOLpの好きなところ、期待するところは?
A3:ワクワクするようなクリエイティビティ

■名前
加藤 大直

■職業・肩書
株式会社MagnaRecta Founder&CTO

■Q&A
Q1:好きな素材は?
A1:STABiO™、APEL™、MR™、SHIRANUI™

Q2:『MOLpCafé2024』で気になったプロダクトは?
A2:『SLOW VASE TECH』&『THE ZEN™/夜須礼乃坐』

Q3:あなたにとってMOLpとは?
A3:素材とデザインとエコシステムを含めた社会

■名前
広瀬 毅

■職業・肩書
合同会社JudgePlus代表/慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科

■Q&A
Q1:好きな素材は?
A1:SHIRANUI™、NAGORI™

Q2:『MOLpCafé2024』で気になったプロダクトは?
A2:『CAGELI/不知火花器』。なんできれいに曲がってるの?

Q3:MOLpの好きなところ、期待するところは?
A3:メンバーのみなさんが楽しそうにしていて、さらにぶっ飛ぼうとしているマインドが好き

■名前
杉本 雅明

■職業・肩書
エレファンテック株式会社 取締役/Co-Founder

■Q&A
Q1:好きな素材は?
A1:STABiO™

Q2:あなたにとって素材とは?
A2:ものづくりの原点

Q3:あなたにとってMOLpとは?
A3:No Borderであり、分子設計から試行錯誤するデザイン活動体であるところに魅力を感じています

■名前
猿渡 義市

■職業・肩書
株式会社日南 デザインディレクター

■Q&A
Q1:好きな素材は?
A1:NAGORI™、STABiO™

Q2:『MOLpCafé2024』で気になったプロダクトは?
A2:すべて。活動自体が気になります

Q3:MOLpの好きなところ、期待するところは?
A3:僕にとってMOLpは10年間ともにチャレンジしてきた仲間。新たなメンバーが加わった新MOLpにも期待しています!


アフターパーティーの最後には、三井化学の元研究開発本部長・常務であった星野太さんがスピーチ。MOLpの活動の原点は、星野さんが田子さんに伝えた「研究者の頭を引っ搔き回してほしい」という言葉からスタートしている。あれから10年たったいま、レジェンドからの言葉に、一同は真剣な表情で耳を傾けた。

星野さんの「MOLpは会社や社会の常識を打破し、固定概念をリセットするのに必要な存在。そのような存在であり続けるためには、継続しつづけることが大切です。始めることより、続けることがすごく大変であるけれど、型にはまらない自由な発想で、いまあるものを世の中に応用していってください」という言葉で締め括られた『MOLpCafé2024』。その後も素材愛をテーマにした歓談は尽きず、夜は更けていった。

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