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サステナブル素材とは?種類やメリット・デメリットについて紹介
地球温暖化による気候変動への危機感から、自然環境や生物多様性、社会問題などへの意識が高まっています。こうした中、アパレル業界や建築業界をはじめさまざまな分野から注目が集まっているのがサステナブル素材です。サステナブル素材とは何なのか、その種類や例、企業にとってのメリット・デメリットなどを紹介します。
INDEX目次
サステナブル素材とは
今、注目のサステナブル素材とは、環境や社会の課題に配慮した素材のこと。原料の調達、製造、販売、使用、廃棄といった一連のプロセスにおいて、環境や生物などに配慮がなされた素材、例えばCO₂をはじめとした温室効果ガスの削減に寄与するものもサステナブル素材のひとつに挙げられます。また、単に環境への配慮だけでなく、長期的な需要に対し、安定供給し続けることができることもサステナブル素材の条件のひとつと言えます。
注目される背景
SDGs
近年、注目とニーズが高まっているサステナブル素材。その背景にあるのが、2015年に国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals)の存在です。SDGsとは、誰一人取り残さない持続可能な世界の実現に向けて、2030年までに達成を目指す17の国際的な目標を指します。
日本では首相を本部長とするSDGs推進本部が2016年に設置され、持続的な経済・社会システムの構築、誰一人取り残さない包摂社会の実現、地球規模課題への取り組み強化、国際社会との連携・協働、平和の持続と持続可能な開発の一体的推進が重点事項として掲げられました。
また、地球温暖化を防止し、自然環境や生物多様性を保持するため、日本も各国と共に2050年のカーボンニュートラルを目標として掲げています。これを達成するには、温室効果ガス排出量の削減につながる社会のバイオマス化などの推進により、化石資源の使用を抑制していくことが重要になります。こうした地球規模の課題を背景に、サステナブル素材に注目が集まっているのです。
プラスチック資源循環戦略「3R+Renewable」
日本ではさらに令和元(2019)年にプラスチック資源循環戦略を策定し、リデュース(ごみの削減)・リユース(繰り返し利用)・リサイクル(再利用)にRenewable(再生可能資源)を加えた3R+Renewableを進めてきました。
アパレル業界
資源循環はどの分野においても取り組むべき課題ですが、中でも特に関心が高いのがアパレル業界です。アパレル業界は大量生産、大量消費、大量廃棄による環境負荷が高いこと、染色加工の際に大量の水や染料等を使用することもあり、環境負荷の低減が大きな課題となっています。加えて消費者の意識の高まりもあって、リサイクル繊維や植物由来のバイオ繊維、製造過程で環境に配慮した製品等へのニーズが高まっています。
これまで、アパレル業界では各企業が独自に「地球にやさしい」「サステナブル」等の表示を施していました。そこで経済産業省では令和6(2024)年に「繊維製品の環境配慮設計ガイドライン」を発表しています。
また、アパレル業界で活用されている象徴的なサステナブル素材に関する取り組みのひとつとして、持続可能性を重視した綿の生産方法を推進する非営利組織「ベターコットンイニシアチブ(BCI)」の展開が挙げられます。持続可能性が重視される現代のアパレル業界において、ベターコットンイニシアチブは、環境保護、社会的公正、経済的持続可能性を実現するための重要なプログラムとして注目を集めています。
膨大な流通量と複雑なサプライチェーンを持つアパレル業界において、すべての製品を100%持続可能なコットンで作るのは容易ではありませんが、この課題を解決するために、ベターコットンイニシアチブはマスバランス方式を採用し、今ではBCIの基準を満たしたベターコットンは、世界の全綿花流通量の約20%を占めるにまで普及しています。
マスバランス方式を利用し、持続可能性を重視したベターコットンでは、持続可能な素材と従来の素材を混ぜて使用しても、全体の流通システムにおける持続可能な素材の量を保証できます。これにより、利用側の企業は持続可能な素材の使用を確実に増やしつつ、コストや物流の課題を克服できるようになっており、ビジネスとしての持続可能性も担保している点も重要なポイントです。
広範な流通網と複雑なサプライチェーンを持つ産業においては、マスバランス方式など最適なアプローチを的確に選択していくことも、サステナブル素材の普及拡大には欠かせない要素であると言えます。
サステナブル素材の一覧
持続可能な社会に向けて人々の意識が高まるにつれ、注目が集まるサステナブル素材。大きく分けると以下のようなサステナブル素材があります。
①天然素材
繊維素材では、農薬や化学肥料を使わずに育てたオーガニックコットン、動物福祉に配慮した羊毛などがあり、建築資材では木材、土壁、漆喰、珪藻土などが挙げられます。
②植物由来の原料を使った素材(バイオマス由来の素材)
植物由来のサステナブル素材の中でも、繊維素材としては、石油の代わりにサトウキビやトウモロコシ、ひまし油などを使用した化学繊維などもあります。
プラスチックでは、植物などの再生可能資源を使用したバイオマスプラスチックがあります。バイオマスプラスチックに使われるバイオマスとは生物由来の再生可能な有機資源を指しており、廃棄物系バイオマス、未利用バイオマス、資源作物などの種類があります。
③リサイクル原料を使った素材
使用済み衣類をマテリアルリサイクルした繊維素材のほか、回収したペットボトルを使用した再生ポリエステル繊維もあります。建築資材でも、建築解体材を使ったパーティクルボードや、廃アルミサッシなどの再資源化が行われています。また、廃プラスチックを原料とした熱分解油(リサイクル由来の炭化水素)から様々な化学品をつくるケミカルリサイクルの取り組みも本格化しており、リサイクル原料の可能性はさらに広がりつつあります。
サステナブル素材のメリット・デメリット
サステナブル素材を採用することは、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
メリットとしてはまず、自然環境や生物多様性の保護に貢献できることが挙げられます。
また、企業はサステナブル素材を使用することで、環境や社会の問題に高い意識を持つユーザーに訴求することができ、ブランディングにつながるのです。
その一方で、デメリット(課題)もあります。サステナブル素材は、生産にコストや手間がかかる場合があります。また、それぞれの素材がどのような社会課題に、どのように寄与するのか、科学的なデータに基づいて検証したうえで、的確に判断していくことも重要です。
そういった意味では、環境負荷の指標としては、製品やサービスのライフサイクル全体における環境への影響を評価する「ライフサイクルアセスメント(LCA)」を把握することもポイントになります。
※LCAについては、「LCAを学ぼう!だれでもわかる、ビジネスに活かすライフサイクルアセスメント」にて詳しく解説しています。
サステナブル素材は、私たちの暮らしの持続可能性を高める重要な要素です。ただ、その効果を最大限に発揮するためには、その特性をしっかり見極めながら、適材適所でうまく活用していく必要があり、その目利き力を身に着けていくことも、私たちのこれからの暮らしに求められていることのひとつだと言えます。
三井化学では、「世界を素(もと)から変えていく」というスローガンのもと、 <「BePLAYER®」「RePLAYER®」>https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/index.htm |
- 参考資料
- *1:経済産業省「繊維製品の環境配慮設計ガイドライン 2024年3月29日」:
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/fiber/pdf/20240329-2.pdf